診断と治療
最新の医学情報を最高の執筆陣でお届けする内科総合雑誌のパイオニア!
|
2019年 Vol.107 No.2 2019-02-07
診療に活かす薬理・ブラッシュアップ

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 今井 靖
◆総論:内科診療のための臨床薬理学
内科医がおさえるべき臨床薬理―overview― 乾 直輝,他
最近の薬物開発の動向 湯地晃一郎
臨床研究における規制・倫理・法制度 中田はる佳
◆各論:日常診療に直結する薬理学
薬物動態学(PK)/薬力学(PD)を理解する 高柳理早,他
注意すべき薬物相互作用 松本直樹
薬物有害反応 鶴岡秀一
治療薬物モニタリング(TDM) 阪上倫行,他
妊婦・授乳婦における薬物使用の注意点 川上美里,他
高齢者における薬物使用の注意点 スタッヴォラヴット・アンヤポーン,他
腎障害・透析患者における薬物療法 北山智草,他
肝障害患者・心不全患者における薬物使用の注意点 安藤 仁
◆トピックス
Pharmacogenetics/Pharmacogenomics:薬物治療の遺伝学―個別化医療の進歩― 吉原達也,他
時間薬理:投与タイミングも考慮した最適な薬物療法とは 牛島健太郎
連載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
3週間持続する発熱,両眼の充血をきたした65歳男性 竹治明梨,他
◎注目の新薬
ダフクリア(フィダキソマイシン) 舘田一博
臨床例
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の頻度および発症要因に関する検討―長野県内20病院における発症例の検討― 近藤英司,他
今回実地臨床に役立つ薬理として“臨床薬理学”をオーバービューさせていただくこととしました.“臨床薬理学”という語は必ずしも馴染みの分野ではないかと思いますが,基礎医学としての“薬理学”を基礎にしつつもヒトにおける実践的薬物治療学として第二次世界大戦後,欧米で始まり本邦におきましても自治医科大学,大分大学を皮切りに全国にその領域の教室が作られた経緯があります.最近では創薬・育薬,治験・臨床試験の支援・実施,ゲノム薬理などその守備範囲はさらに拡大しており,特に内科系診療分野ではいずれの領域であっても避けては通れないところです.本特集では前半で実地臨床においておさえておくべき臨床薬理学,また抗体医薬,分子標的薬など最新の薬物開発の動向についてご解説をいただきました.薬物の開発における治験はご存知のとおり薬機法で規定されております.しかし,一般的な薬物療法に関する臨床研究については従来,“ヒトを対象とする医学系研究に関する倫理指針”の遵守のもと行われてきたわけですが,2018年4月に“臨床研究法”が施行され,①未承認・適応外の医薬品等の臨床研究,②製薬企業などから資金提供を受けて実施される当該製薬企業などの医薬品に関する臨床研究がこの法律に基づいた倫理審査・実施が求められることとなりました.この点の知識をクリアカットに整理できるようご寄稿いただいております.
また,日常の薬物療法において薬理学的知識を整理することで,よりよい薬物療法の実践に繋がると考えます.本特集の中盤では薬物動態学・薬力学,相互作用,有害反応,治療薬物モニタリング(TDM)と臨床に直結する薬理学のエッセンスを取り上げ,また妊婦・授乳婦,腎障害・透析患者,肝障害患者といった日常診療で遭遇する機会の多い,注意すべき病態における薬物療法の考え方についてレビューしていただきました.
最後にトピックスとして2つのテーマをあげました.1つは薬物療法に関わる遺伝子多型・変異を取り上げ,“precision medicine”の実践に繋がるお話をいただけるものと思います.もう1つは薬物療法において投与するタイミングで薬効に差が出る,周知の如くスタチンは夕方から眠前に投与したほうが効果がある,という話にも知られるとおり投与タイミングを科学する時間薬理という考え方があります.これらの話題は身近な診療にも活かせるポイントを多く含んでおります.本特集を薬物療法についての知識のブラッシュアップとしてご活用いただき,明日からの診療の一助となれば幸甚に存じます.
自治医科大学内科学講座循環器内科学部門/薬理学講座臨床薬理学部門
今井 靖