診断と治療
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2019年 Vol.107 No.4 2019-04-05
遠隔医療の進歩

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
特 集 遠隔医療の進歩
ねらい 鈴木則宏
◆総論
遠隔医療とは―経緯と現状,課題― 東福寺幾夫
遠隔医療の種類 長谷川高志
遠隔医療の実際 近藤博史
新しい医療インフラとなるオンラインを活用した医療の展望 武藤真祐
遠隔医療に関わる法的規制と規制緩和 辻 正次
遠隔診療のメリットとデメリット(ProとCon) 川渕孝一
◆各論
2018年度診療報酬改定で新設された遠隔診療関連項目 藤田卓仙
遠隔医療に導入される機器の現状と将来
―遠隔在宅医療を実現するインターネット社会― 村井 純,他
在宅医療と遠隔医療 太田隆正
在宅見守りと遠隔医療 鈴木亮二
周産期医療と遠隔医療 小笠原敏浩
睡眠医療と遠隔医療 富田康弘
在宅生体モニタリング機器情報遠隔伝送 中村昭則
精神科遠隔医療 堀込俊郎,他
歯科と遠隔医療 長縄拓哉
薬剤処方・服薬指導と遠隔医療 小澤竜三
今後の遠隔診療モデル 吉田晃敏
患者・市民に対する遠隔医療啓発活動
―難病患者の立場からできること― 大木里美
遠隔医療の未来
―行政とモデル病院から 高まる遠隔在宅医療への期待 松本純夫
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
“関節リウマチ”の治療に難渋すると紹介された37歳男性 鈴木康倫
◎注目の新薬
アジレクトⓇ(ラサギリンメシル酸塩) 大城 咲,他
わが国では多くの産業の領域で,ICT(情報通信技術)化が進み,種々の作業・業務が効率化されてきている.医療の領域でも厚生労働省と総務省がICTの導入と活用化を進めている.多くの医療機関で一般化されてきている電子カルテはその最たる事例である.厚生労働省ではデータへルス改革推進本部が設置され,法令面でも医療ビッグデータ法(次世代医療基盤法)の制定が進められている.具体的に進められているのが,ネットワーク化による医療関係者間の患者情報共有である.2018年度診療報酬改定において「遠隔医療」関連項目が新たに認定され算定項目となった.
日本遠隔医療学会によると,「遠隔医療(Telemedicine and Telecare)とは,通信技術を活用した健康増進,医療,介護に資する行為をいう.」と定義されている.したがって,遠隔医療はどのような人々の間で行われるかによって,いろいろな種類に分かれる.まず,医師など医療従事者間で実施されるものがある.また,医療従事者から治療や健康管理などのサービスを提供するものがあり,これが「遠隔医療」あるいは「遠隔診療」とよばれるものである.さらに,地域における複数の医療機関の間で患者情報を共有するもの,すなわち患者情報をデータベースに登録して参照する情報共有を目的とするもので,これも「遠隔医療」の一部をなすといえる.
遠隔診療には,在宅見守り,周産期医療,生体モニタリング,精神疾患診療の領域での活用など多くの利点がある.しかし,他方,遠隔医療には,現実として種々の課題が横たわっている.個人情報をはじめとする法的規制と情報の管理の厳密化や,遠隔診療を実施するにあたって導入すべき機器の開発と一般化などの課題がある.
このように,わが国における遠隔診療は,まだスタートを切ったばかりであるが,すでにいくつかのモデル地区では試験的に種々の医療が実施されている.
本特集は,近年めざましいICTの医療領域への導入に着目し,遠隔医療の現状と課題,そして今後の展開について理解を深めることを目的とした.
慶應義塾大学名誉教授/湘南慶育病院病院長
鈴木則宏