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書籍詳細

日本医師会生涯教育シリーズ

環境による健康リスク診断と治療社 | 書籍詳細:環境による健康リスク

奈良県立医科大学 副学長

車谷 典男(くるまたに のりお) 監修

秋田大学大学院医学系研究科環境保健学 教授

村田 勝敬(むらた かつゆき) 編集

産業医科大学医学部 教授/国立環境研究所エコチル調査コアセンター長

川本 俊弘(かわもと としひろ) 編集

国立成育医療研究センター 理事長

五十嵐 隆(いがらし たかし) 編集

兵庫医科大学公衆衛生学 主任教授

島 正之(しま まさゆき) 編集協力

初版 B5判 並製ソフトカバー,2色刷(一部カラー) 368頁 2017年11月01日発行

ISBN9784787823076

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定価:本体5,500円+税

本書は,日本医師会長の諮問「国民や医師会員の環境保健に係わる教育推進のための教材の具体的検討」に対する環境保健委員会の答申(2016年3月)に基づき誕生したテキストである.地域の第一線で活躍する医師に,医学・医療の専門家として備えておくべき環境保健に関する最新知見を提供することを意図して作成された.定評ある日本医師会雑誌特別号の書籍化.

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目次

カラー口絵―みてわかる環境による健康リスク
地球温暖化の現状  塩竈秀夫
オゾン層破壊の終息と紫外線  小野雅司
越境汚染物質の現状  鵜野伊津志
放射能汚染  田代 聡
火山噴火による環境汚染の広がり  真木雅之・樋口健太・秋葉澄伯
洪水・ゲリラ豪雨の被災状況  久保達彦
大震災の被災状況  小早川義貴
震災アスベストの発生源  外山尚紀
アスベスト関連疾患としての中皮腫の臨床所見と病理  岡部和倫
環境中における農薬の動態と管理  上島通浩
豊島産業廃棄物不法投棄事件とその後  中地重晴
医療機関における化学物質管理と廃棄物処理  村田俊二
慢性砒素中毒症の皮膚・粘膜病変  堀田宣之

序  横倉義武
監修・編集のことば  車谷典男
監修・編集・執筆者紹介

Ⅰ 環境問題の基礎
わが国の環境問題  佐藤 洋
環境に関する日本医師会宣言  今村 聡
持続可能な開発目標(SDGs)  亀山康子
環境倫理  池邉 寧
予防策の原則  益永茂樹
胎児の環境としての母体と生活習慣病  福岡秀興
環境のリスクアセスメント  苅田香苗・村田勝敬
環境のリスクコミュニケーション  堀口逸子・佐藤 洋
パリ協定  久保田 泉
水銀に関する水俣条約  斉藤 貢・坂本峰至
環境基本法  井谷 修・兼板佳孝
公害健康被害の補償等に関する法律  伊木雅之
化学物質排出移動量届出(PRTR)制度  浦野紘平
エコチル調査  川本俊弘・新田裕史
環境による健康リスク評価における疫学の役割  中村好一

Ⅱ 有害環境因子によるおもな疾患
循環器系疾患  八巻尚洋・竹石恭知
呼吸器系疾患  長瀬隆英
消化器系疾患  柿崎 暁
神経系疾患  岩田豊人・村田勝敬
腎・泌尿器系疾患  長屋直哉・堀江重郎
皮膚・感覚器系疾患①―皮膚  谷田宗男
皮膚・感覚器系疾患②―視覚  石橋真吾
皮膚・感覚器系疾患③―聴覚  小川 郁
内分泌・代謝系疾患  梶尾 裕・大西 真
造血器系疾患  井田孔明
アレルギー・免疫系疾患  牧田英士・海老澤元宏
運動器系疾患  芳賀信彦
生殖器系疾患  山本直子・甲賀かをり
成長と発達①―先天異常  黒澤健司
成長と発達②―発達障害など  神尾陽子

Ⅲ 環境汚染に伴う健康リスク
A 大規模災害に伴う健康リスク
放射能汚染による健康リスク①―福島原発:ヒトの被曝の現状と健康調査計画  細矢光亮
放射能汚染による健康リスク②―福島原発:環境汚染の広がり  吉田 聡
放射能汚染による健康リスク③―福島原発:甲状腺がんをめぐる論争  田代 聡
放射能汚染による健康リスク④―チェルノブイリ原発事故  今中哲二
火山性ガスと火山灰による健康リスク  岩澤聡子・大前和幸
大震災による健康リスク①―災害死  山内 聡
大震災による健康リスク②―震災関連死亡  小早川義貴
大震災による健康リスク③
 ―PTSD などメンタルヘルス不調  三木崇弘・立花良之・藤原武男
大震災による健康リスク④―循環器疾患リスクの上昇  青木竜男・下川宏明
洪水・ゲリラ豪雨に伴う二次健康リスク  久保達彦
震災アスベスト  神山宣彦
B 地球環境変化による健康リスク
オゾンホールと紫外線  錦織千佳子
地球温暖化①―地球温度の変化  塩竈秀夫
地球温暖化②―生物媒介感染症と環境  髙崎智彦
地球温暖化③―水・食料媒介感染症  砂川富正
地球温暖化④―暑熱による超過死亡  本田 靖
越境汚染物質①―PM2.5  渡部仁成・倉井 淳
越境汚染物質②―黄砂  橋爪真弘
C 流通後製品の残留・廃棄物による健康リスク
鉛  村田勝敬・前田恵理
残留性有機汚染物質(POPs)①―ストックホルム条約とわが国のPOPs の状況  小泉昭夫
残留性有機汚染物質(POPs)②―ダイオキシン類と内分泌攪乱化学物質  遠山千春
残留性有機汚染物質(POPs)③―ポリ塩化ビフェニル(PCB)  原口浩一
農薬・殺虫剤  上島通浩
廃棄物  中地重晴
D 医療機関の化学物質管理と廃棄物処理
水銀―日本医師会の取り組み  羽鳥 裕
消毒剤  尾家重治
抗がん剤  熊谷信二
感染性廃棄物  宮入 烈
麻酔薬  西山隆久・近江明文
E その他(公共・企業・個人の活動)の健康リスク
電磁波  小島原典子・山口直人
騒音  松井利仁
低周波音  松井利仁
アスベスト  森永謙二
砒素  吉田貴彦
シックハウス症候群  相澤好治
室内汚染としての受動喫煙  加治正行
化学物質過敏症  内山巌雄
窒素酸化物  新田裕史
微小粒子状物質(PM2.5)  島 正之
一酸化炭素  加藤元博
光化学オキシダント  上田佳代
ベンゼンなどによる大気汚染  欅田尚樹
愛玩動物に由来する人獣共通感染症  吉川泰弘
花粉症  大久保公裕・村上亮介
カビ  渡辺 哲・亀井克彦
レジオネラ感染  倉 文明

Ⅳ 環境汚染による健康障害事例
水俣病  坂本峰至・村田勝敬
イタイイタイ病  堀口兵剛
四日市喘息  池田若葉・山崎 亨・島 茂
大気汚染―わが国における歴史と現状  島 正之
光化学スモッグ事件
 ―かつて問題となった光化学スモッグによると思われる事例  香川 順
慢性砒素中毒症(土呂久・笹ヶ谷・中条町)  車谷典男
日本化学工業六価クロム事件(江東区)  柳澤裕之・須賀万智・石井義脩
大阪府豊能郡美化センター・ダイオキシン類汚染  車谷典男
クボタ・アスベスト近隣曝露  車谷典男
ナホトカ号重油流出事故  坪内 彰・金山ひとみ・日下幸則
森永砒素ミルク中毒事件  龍田 希・村田勝敬
環境問題からの教訓  前田恵理・村田勝敬

Ⅴ 関連法規(抜粋)
環境基本法  根津智子
大気汚染防止法  根津智子
公害健康被害の補償等に関する法律  根津智子
地球温暖化対策の推進に関する法律  根津智子
循環型社会形成推進基本法  冨岡公子
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律  冨岡公子
石綿による健康被害の救済に関する法律  冨岡公子

Ⅴ 関連法規(抜粋)
環境基本法  根津智子
大気汚染防止法  根津智子
公害健康被害の補償等に関する法律  根津智子
地球温暖化対策の推進に関する法律  根津智子
循環型社会形成推進基本法  冨岡公子
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律  冨岡公子
石綿による健康被害の救済に関する法律  冨岡公子

附 録
わが国におけるおもな公害・自然災害・環境問題年表(戦後)  車谷典男
関連ウェブサイト等のURL リスト  冨岡公子

コラム・ミニコラム
地球サミット(国連環境開発会議)  車谷典男
DOHaD 説   福岡秀興
リスクトレードオフ  益永茂樹
衛生仮説  松本健治
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)  車谷典男
温熱条件と熱中症による搬送リスク  小泉昭夫
おもな地球環境条約  車谷典男
酸性雨(酸性沈着)  車谷典男
環境省・環境再生保全機構からの案内 
アスベストの発がん機序  岸本卓巳
ヒートアイランド現象  車谷典男
公害問題と環境問題  車谷典男

索引

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序文



 日本医師会は,1973 年に環境汚染による疾病や医療に関する委員会を設置して
以来,一貫して,高い専門性を持った地域医療の実践者として,公害問題・環境
問題に取り組んできた.1982 年からは名称も現行の環境保健委員会と改めて,日
本医師会長からの諮問に対して先見的な答申を続けてきている.その中で最近の
大きな成果のいくつかが2009年に公表した「環境に関する日本医師会宣言」であり,
医療機関から水銀をなくす取り組みであり,そして今回の本書『環境による健康
リスク』の刊行である.
 環境問題は大きな社会的関心を集めている.2011 年3 月11 日の東日本大震災に
おける地震・津波被害と東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染の
甚大さや,相次ぐ地球環境の不安定化などによるものであろう.
 こうした「大きな」環境問題も含めて,実は環境に起因する,あるいは環境が
関与する健康リスクは数えきれない.日常診療の場において環境を意識すること
がいま改めて問われており,「環境による健康リスク」の科学的エビデンスに基づ
き,予防医学的な行動変容も含めて地域医療を進めることは実地医家にとって必
須の見識と考える.
 そのような背景から,本書では「環境による健康リスク」を広範に取り上げ,
最新の知見を具体的かつ平易に取りまとめていただいた.その中に教訓も読み取
れることであろう.近年にない凝縮された環境医学のエンサイクロペディアであ
る.会員の先生方には,本書を通じて「環境による健康リスク」に関する認識を
一層深め,日常診療に生かすとともに,地域における専門家としてのオピニオン
リーダーの役割を果たしていただきたいと願う.
 最後に,「環境による健康リスク」という広く複雑な課題の成書化に多大なご尽
力をいただいた,監修の車谷典男先生,編集の村田勝敬先生,川本俊弘先生,
五十嵐 隆先生,編集協力の島 正之先生,そしてご執筆いただいた多くの先生方に
心より感謝申し上げる.

 平成29 年10 月
日本医師会会長
横倉義武


監修・編集のことば

 本書は,日本医師会長の諮問「国民や医師会員の環境保健に係わる教育推進のための教材の具体
的検討」に対する環境保健委員会(大塚明廣委員長・当時徳島県医師会副会長)の答申(2016 年3 月)
に基づき誕生したテキストである.特に地域の第一線で活躍する医師が,医学・医療の専門家とし
て備えておくべき環境保健に関する最新知見の提供を意図したものである.しかし,こうやって出
来上がりを手にしてみると,ひとえに執筆者の先生方の造詣の深さの賜物であるが,複雑かつ様々
な環境問題を医学的な立場からこれほど平易に記述した類書は今までなかったことに気づく.広く
医学・医療関係者,環境保健の研究者や行政関係者,教育関係者,そして医学生や環境学専攻学生
諸氏に役立つ良書にもなっているように思う.
 環境が一旦汚染されると,悲惨な健康被害が集団発生し,時には死者を発生させながら多くの人
たちの一生を不健康なものとする.古くは明治初期の足尾鉱毒事件,1950 年代後半から相次いだ
水俣病や四日市喘息,イタイイタイ病,最近はアスベストの近隣曝露による中皮腫問題など多くの
例がある.そうした環境汚染による健康被害について,被害者は自分に何ら責任はない,偶然そこ
に住んでいただけで被害にあったという不条理感を強く抱いている.さらには,環境対策に取り組
んでいれば回避できていたはずとも思っている.共感できる感情である.汚染された環境も容易に
回復できず,社会的損失は甚大としか言いようがない.
 私たちは,こうした社会的痛みから学んできたのも確かである.その結果,比較的局地的な高濃
度汚染による,被害者と加害者の構図が明瞭であった上述のような公害事件は減った.しかし,そ
の一方で,時には国境を越えたグローバルな問題として,それゆえ国際協調が必要で,かつ地球温
暖化問題のようにすべての人が被害者であると同時に原因者である環境問題がより切実な課題とな
ってきている.影響を受ける人が桁違いに多く,関係する環境系も反応も複雑で,それだけに未解
明点や論争が多く,各国の政治的思惑もしばしば絡むため,公害問題とは違った意味の難しさを抱
えている.問題解決に向けた共通認識の形成には,何がわかっていて何が不明で,何が事実で何が
曖昧で,どのような質のエビデンスがありリスクの大きさはどの程度かなどを明らかにすることが
前提となる.それらの点を記述する努力をしたのも本書の特徴である.
 記録をたどると,2010 年3 月の櫻井治彦委員長(慶應義塾大学名誉教授)による環境保健委員会答
申に始まり,2012 年3 月の佐藤 洋委員長(東北大学名誉教授)の環境保健委員会答申を経て,今回
2016 年の答申で本書の実現に至ったことになる.この間,多くの委員の先生方の真摯な論議と日
本医師会の環境問題にかける情熱があった.本書の上梓にあたって,すべての関係者に深く謝意を
表したい.

 平成29 年10 月
監修・編集者を代表して
車谷典男