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見逃さない!
LCI内視鏡診断アトラス診断と治療社 | 書籍詳細:LCI内視鏡診断アトラス
もう迷わない・見える・わかる・使えるスクリーニングの極意

自治医科大学内科学講座消化器内科学部門

大澤 博之(おおさわ ひろゆき) 編著

初版 B5判 並製 152頁 2020年11月02日発行

ISBN9784787824295

定価:9,900円(本体価格9,000円+税)
  

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LCIの登場により内視鏡スクリーニングの診断学は劇的に変貌した.周囲との色調コントラスト上昇により視認性に優れ,今まで見えなかった癌が見えるようになり,極早期の診断が容易になった.LCIは遠景でも十分に明るく,早期胃癌の拾い上げに,BLIは近景での胃癌や食道癌の拾い上げに有用である.本書では,白色光画像では判別が難しい臨床写真を,実に538枚も収載している.消化器内視鏡での診断に困ったときの1冊.

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目次

序文
執筆者一覧
略語一覧


1 臨床におけるレーザー内視鏡の見方

各論
A 胃
a.LCI,BLIの色調の基本と設定値
 i)胃における色調の見え方
  Introduction
  1.H. pylori未感染と現感染の画像の違いは?
  2.H. pylori除菌前後の粘膜変化は?
  3.胆汁逆流による腸上皮化生はどうみえる?
  4.萎縮,胃癌,腸上皮化生の画像の違いは?
  5.胃炎の褪色 オレンジ 紫色の理解
  6.色彩強調 C1からC3への変更 紫色は?
  7.色彩強調 C1 C2 C3の違いは?①
  8.色彩強調 C1 C2 C3の違いは?②
  9.胆汁はLCI,BLIどちらに影響する?
  10.接線方向観察はどの設定がよくみえる?
b.LCIによる診断と鑑別
 i)早期胃癌─色調による診断学─
  Introduction
  1.ピュアオレンジは高分化腺癌?
  2.オレンジレッドと病理所見の関係は?
  3.オレンジレッドは高分化腺癌と……
  4.発赤が強いオレンジレッド病変は?
  5.発赤が強い病変 LCIの色調と病理は
  6.2つの色調を有する病変はどう考える?
  7.LCIで分化度が悪いと予測できるか
  8.いくら状形態で分化度が悪い病変は?
  9.0-IIb半周が紫の周囲粘膜でもLCI有利
  10.紫で囲まれていない場合は?
  11.白色光観察の褪色調はどう変化する?①
  12.白色光観察の褪色調はどう変化する?②
  13.色調変化 同系色→橙色 褪色→橙白色
  14.褪色調の胃癌,腺腫を鑑別するには?
  15.平坦な褪色調病変を診断する
  16.胃腺腫 LCI,BLIの色調変化は?
 ii)オレンジの鑑別
  Introduction
  1.囲まれるオレンジ,間隙のオレンジって?
  2.不均一に分布するオレンジを鑑別する
  3.多発する類円形の均一なオレンジは何か?
  4.接線方向観察でLCIはどうみえる?
  5.癌それとも胃底腺型腺窩上皮?
  6.類円形のライトオレンジ粘膜は何か?
  7.平坦なオレンジの領域をみつけたら?
 iii)良性と悪性の鑑別
  Introduction
  1.陥凹性病変 色調で簡単に鑑別できる?
  2.前庭部ビランを確診するには?
  3.体下部のビラン 色調で鑑別
  4.前庭部の凹凸粘膜を鑑別する
  5.経鼻内視鏡 ビラン様所見をみつけたら?
  6.前庭部の変形をLCIで鑑別する
  7.ピットホール 紫で囲まれたオレンジレッド
  8.癌性潰瘍瘢痕と通常潰瘍瘢痕を観察する
  9.ビラン性病変 LCIとBLI拡大所見は?
  10.紫とオレンジ混在の隆起ビランの診断は?
  11.経鼻内視鏡 紛らわしい画像を診断する
  12.粘液が付着した陥凹性病変をみつけたら?
 iv)白色光観察ではみえない病変
  Introduction
  1.白色光で本当にみえない早期胃癌は?
  2.腸上皮化生の中から胃癌を拾い上げよう
  3.白色光でみえない0-IIb胃癌を探そう
  4.幽門輪部の病変をみつけるには?
  5.白色光では視認しにくい病変は?
  6.半年前に見逃された早期胃癌を探そう
  7.陥凹型腸上皮化生の中から癌を探すには?
  8.陥凹性病変 胃癌は何か所?
 v)多病変からの拾い上げ
  Introduction
  1.多発する褪色調病変の中から癌を探そう
  2.2個の隆起性病変を鑑別するには?①
  3.2個の隆起性病変を鑑別するには?②
  4.早期胃癌と腺腫が併存する場合は?
  5.複数の隆起から癌を拾い上げるには?
 vi)癌を見逃しやすい部位
  Introduction
  1.噴門部癌 接線方向の観察
  2.見逃しやすい噴門部癌の観察は?
  3.噴門部癌オレンジとライトオレンジ
  4.見逃さない噴門部癌 LCIの色調
  5.色調変化に乏しい幽門輪部癌は?
  6.残胃癌はどうみえる?
  7.瘢痕部近傍の早期胃癌の観察は?
 vii)範囲診断
  Introduction
  1.範囲診断に優れたLCI画像
  2.随伴病変の範囲診断とLCI
  3.白色光画像で見えない0-IIbをみつける
  4.幽門部の変形部の診断
  5.境界診断 インジゴカルミンとの比較
  6.多彩な粘膜変化を鑑別するには?
  7.範囲診断,紫のピットホール
 viii)H. pylori未感染癌・除菌後胃癌
  Introduction
  1.除菌後粘膜の色調を理解する
  2.除菌後胃癌 領域のある色調>表面構造
  3.除菌後胃癌も色調パターンは同じ?
  4.除菌後のわずかな隆起の診断は?
  5.体部小弯の陥凹 炎症それとも癌?
  6.オレンジレッドに紫が混在 どう考える?
  7.胃底腺型胃癌 窩間部の色調と組織は?
  8.発赤調胃底腺型胃癌 深達度は?
  9.H. pylori未感染癌(腺窩上皮類似腺管)
  10.H. pylori未感染胃癌 芋虫状隆起
  11.亜有茎性ポリープ状H. pylori未感染胃癌
 ix)未分化型胃癌・手つなぎ型胃癌
  Introduction
  1.褪色調の未分化癌はどうみえる?
  2.褪色調の小さな未分化癌
  3.白色光観察でみえない小さな未分化癌
  4.手つなぎ型腺管癌の色調と領域性
  5.オレンジの広範な早期未分化胃癌

B 食道・咽頭
  Introduction
  1.バレット食道 経鼻ではどうみえる?
  2.バレット食道 近接観察で何を学ぶ?
  3.バレット食道内の類円形病変は?
  4.バレット食道癌の典型的な色調変化は?①
  5.バレット食道癌の典型的な色調変化は?②
  6.扁平上皮下伸展の評価はLCI?BLI?
  7.白色光でみえないバレット食道癌を診断
  8.食道癌(扁平上皮癌)はどうみえる?
  9.食道扁平上皮癌 AVAはどうみえる?
  10.食道癌ヨード染色purple color sign?
  11.食道癌ヨード染色 全周不染域の鑑別は?
  12.食道癌ヨード染色まだら不染域の鑑別は?
  13.角化を伴う早期食道癌を診断する
  14.食道癌basaloid carcinoma,血管は?
  15.中咽頭(low-grade dysplasia)の診断は?
  16.下咽頭癌(後壁)の診断および治療は?
  17.披裂部下咽頭梨状窩の咽頭癌の所見は?

C 十二指腸
  Introduction
  1.球部の胃上皮化生はどうみえる?
  2.褪色調の十二指腸腺腫?癌?
  3.同色調の十二指腸腺腫?癌?
  4.発赤調の十二指腸腺腫?癌?
  5.十二指腸結節状変化は腺腫?癌?


付録
 付録1 胃癌取扱い規約第15版のT,N,M,Stageの抜粋
 付録2 内視鏡的切除後の治療方針アルゴリズム
 付録3 外科切除例からみた早期胃癌のリンパ節転移頻度
 付録4 ESD後追加外科切除例からみたリンパ節転移頻度
 付録5 cStage0,I食道癌治療のアルゴリズム
 付録6 壁深達度(T)
 付録7 Barrett食道腺癌
 付録8 食道表在癌の壁深達度亜分類
 付録9 拡大内視鏡分類

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序文

序文

 内視鏡医によって診断が異なるのは患者のためにならない.白色光画像では異常なしと診断されてもLCIでは癌と診断される.逆に炎症なのに無駄な生検が施行される.これは診断に迷いがあるからであって「もう迷わない,瞬時に鑑別可能」な診断法があれば理想的である.
 電気機器による画像の進歩はめざましく,その歴史を振り返ってみるとテレビジョンやパソコンにしても,初期のモノクロ画像は,時代とともに鮮やかなカラー画像へと変貌していった.一方,内視鏡スクリーニングの歴史も古く,白色光画像による診断法が長きにわたって検討されてきた.白色光画像はモノクロ画像ではないが,色調として十分に進歩し変化してきた画像とはいえない.「最近,内視鏡を受けたのに何も異常は指摘されなかった.」と不思議な顔で首をかしげる胃癌患者をみてきた.白色光画像では実際には見えていないので仕方ないのかもしれない.しかし,患者の立場からすれば「最新の内視鏡検査機器を使えば癌と診断されます.」と説明されても納得できないのかもしれない.
 LCIの登場により内視鏡スクリーニングの診断学は劇的に変貌した.今まで見えなかった癌が見えるようになり,色調診断が形態診断よりも有利であることはすでに多くの内視鏡医によって支持されている.形態的な変化に進行する前に診断に至るという,いわゆる極早期の,特に平坦型病変の診断が容易になり,患者のQOLへの貢献度は計り知れない.周囲との色調コントラスト上昇によりLCIは癌の視認性に優れ,見逃しを少なくし詳細な微細画像の観察が可能である.LCIは遠景でも十分に明るく,遠景から近景まで早期胃癌の拾い上げ診断に有用であり,BLIは近景での胃癌や食道癌の拾い上げ診断およびそれらの精査として有用である.
 一方,スクリーニング内視鏡では多くの患者にとっては癌ではないという診断が重要である.LCIは癌と炎症を異なる色調で示すことにより,非癌部の診断にも優れており,検査時間の短縮にも寄与する.このような診断能はバレット食道癌などにも応用される.
 今後は人工知能(AI)内視鏡が登場し,その精度は形態だけでなく色調および微細構造を含めていかに精緻な所見を教師画像として覚えさせるかに依存してくる.見逃されている画像を「異常なし」として,あるいは「癌」として覚えさせるかによってその性能は左右される.そこには最終的には内視鏡医の診断能がAIに反映されることになり,現時点ではLCIを含めた内視鏡画像の知識の習得がAI診断にも影響すると考えられる.また,AIによる癌の診断ではAIまかせではなく,その所見を解釈する能力も内視鏡医には求められる.内視鏡医は常に新しい診断法を学んでいくという姿勢が必要である.
 最後に本アトラス画像を編集するにあたり,多大な御尽力をいただいた自治医科大学内科学講座消化器内科学部門富士フイルムメディカル国際光学医療講座秘書の鈴木英恵氏に深謝します.

2020年7月
自治医科大学内科学講座消化器内科学部門
大澤 博之