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書籍詳細

血液検査×総合診療 非血液専門医・ジェネラリストのためのBasic&Practical血液診療診断と治療社 | 書籍詳細:血液検査×総合診療 非血液専門医・ジェネラリストのためのBasic&Practical血液診療

獨協医科大学埼玉医療センター輸血部 部長

樋口 敬和(ひぐち たかかず) 著

医療法人社団平静の会 西崎クリニック/元聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長

岡田 定(おかだ さだむ) 推薦

初版 A5判 並製 384頁 2022年03月21日発行

ISBN9784787825483

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血液診療全般に通じ,かつジェネラリストである超実力派著者による「非血液専門医」「ジェネラリスト」のための血液診療指南書の決定版!「非血液専門医」「ジェネラリスト」の方に向け,症例ベースで,日常診療の現場で血液疾患をどのように考え,診断し,対応すればいいかといった思考の過程を見える化し,非専門医が対応可能な血液疾患患者に適切に対応するために必要なことのエッセンスを凝縮しました! これ一冊で,あなたも血液検査を基に診断できる!もう血液疾患は怖くない!

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目次

推薦の辞 岡田 定
はじめに
主要な略語一覧
基準値一覧


Part A 検査所見からのアプローチ

赤血球系の異常
1 貧血のBasic & Practice
1-1 貧血のBasic
1-2 貧血のPractice
コラム 温泉の効用

2 赤血球増加症(多血症)のBasic & Practice
2-1 赤血球増加症のBasic
2-2 赤血球増加症のPractice
コラム 使えるものは何でも使う!①

白血球系の異常
1 白血球減少
1-1 白血球減少のBasic & Practice
1-2 好中球減少のBasic & Practice
1-3 リンパ球減少のBasic & Practice
1-4 その他の白血球分画の減少

2 白血球増多
2-1 白血球増多のBasic & Practice
2-2 好中球増多のBasic & Practice
2-3 リンパ球増多のBasic & Practice
2-4 好酸球増多のBasic & Practice
2-5 その他の白血球分画の増多

3 異型リンパ球のBasic & Practice
3-1 異型リンパ球のBasic
3-2 異型リンパ球のPractice
コラム 中国4000年の歴史?

血小板の異常
1 血小板減少のBasic & Practice
1-1 血小板減少のBasic
1-2 血小板減少のPractice
コラム 使えるものは何でも使う!②

2 血小板増多のBasic & Practice
2-1 血小板増多のBasic
2-2 血小板増多のPractice

汎血球減少
1 汎血球減少のBasic & Practice
1-1 汎血球減少のBasic
1-2 汎血球減少のPractice

血清蛋白の異常
1 血清蛋白の異常のBasic & Practice
1-1 血清蛋白の異常のBasic
1-2 血清蛋白の異常のPractice


Part B 臨床症状からのアプローチ

出血傾向と凝固傾向
1 出血傾向のBasic & Practice
1-1 出血傾向のBasic
1-2 出血傾向のPractice

2 凝固傾向のBasic & Practice
2-1 凝固傾向のBasic
2-2 凝固傾向のPractice

リンパ節腫脹と脾腫
1 リンパ節腫脹のBasic & Practice
1-1 リンパ節腫脹のBasic
1-2 リンパ節腫脹のPractice
コラム こぶとりじいさん

2 脾腫のBasic & Practice
2-1 脾腫のBasic
2-2 脾腫のPractice

意識障害
1 意識障害のBasic & Practice
1-1 意識障害のBasic
1-2 意識障害のPractice

発熱
1 発熱のBasic & Practice
1-1 発熱のBasic
1-2 発熱のPractice

疼痛
1 疼痛のBasic & Practice
1-1 疼痛のBasic
1-2 疼痛のPractice

浮腫
1 浮腫のBasic & Practice
1-1 浮腫のBasic
1-2 浮腫のPractice


Part C 健康診断からのアプローチ

健康診断で見つかった血液異常をどうするか?
1 健康診断で見つかった血液異常のBasic & Practice
1-1 健康診断で見つかった血液異常のBasic
1-2 健康診断で見つかった血液異常のPractice


Part D 診断・治療後のアプローチ

診断・治療後のフォローを依頼されたら
1 フォローを依頼された場合のBasic & Practice
1-1 フォローを依頼された場合のBasic
1-2 フォローを依頼された場合のPractice

文献一覧
索引
著者略歴

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序文

推薦の辞

 本書は非血液専門医・ジェネラリストのための本である.
 診療には「木を診る診療」と「森を診る診療」がある.血液専門医は木を診て,ジェネラリストは森を診る.
 血液専門医は木を診ることに精一杯で,森を診ることに疎い.ジェネラリストはいつも森を診ていて,木のことは血液専門医に丸投げしがちである.
 血液専門医は専門性が高くなればなるほど,ジェネラリストの世界がわからなくなる.慢性骨髄性白血病(CML)が疑われる患者に対する関心は高いが,「ジェネラリストがどのようにCMLを疑えばよいのか」には関心は低い.
 ジェネラリストには血液診療の専門性がとても高くみえる.血液診療に自分がどこまで関わってよいのかよくわからない.できれば関わりたくないと思う.白血病やリンパ腫が疑われるなら,すぐに紹介しなければと思う.ジェネラリストでもある健診の担当医は,「異型リンパ球」をみたらすぐに「ひょっとして白血病?」と思ってしまう.血液専門医に紹介する際には,受診者に「白血病の疑いがあります」などの不要な情報を与えてしまう.血液専門医に紹介された患者がどのように診断され治療されるか,には思いが至らない.
 「木を診る診療」と「森を診る診療」との間には大きな川がある.本書は,その川に橋を架ける本である.ジェネラリストが血液専門診療に渡る橋になる本である.
 これ一冊で血液診療の全貌を見渡すことができる.血液診療全般に通じしかもジェネラリストである樋口敬和先生ならではの本である.
 血液診療に限らず,「非専門医のための○○診療」のような本や雑誌の特集号をよく見かける.執筆者はその分野の専門医である.ただ残念なことに,その内容の多くはあまりに専門的すぎる.「非専門医のための○○診療」のタイトルとは裏腹に,「専門医による専門医のための○○診療」本であることが少なくない.
 ジェネラリストには,そこまで専門的な知識はいらない.もっと現場で実際に役に立つわかりやすい知識がほしい.でも,執筆している専門医はジェネラリストではないので,「ジェネラリストのための○○診療」は書けないのである.
 本書は,血液専門医でかつジェネラリストでもある一人の著者による「ジェネラリストのための血液診療」の本である.従来の「非専門医のための○○診療」の本とは一線を画している.
 血液診療のBasicとPracticeがジェネラリストの視点でまとめられている.「血算を主とする血液検査所見」「血液疾患にみられる臨床症状」「代表的な血液疾患の診断と治療」のポイントがわかりやすい.具体的な症例の臨床推論が織り込まれているので楽しく読める.エビデンスレベルはとても高い.
 Part Aの「赤血球系・白血球系・血小板の異常,汎血球減少,血清蛋白の異常」からのアプローチは,ジェネラリストと血液専門医が共有すべき血液診療のエッセンスである.
 Part Bの「意識障害」「疼痛」「浮腫」からのアプローチ,Part Cの「健康診断で見つかった血液異常をどうするか?」,Part Dの「診断・治療後のフォローを依頼されたら」は,ジェネラリストと血液専門医との橋渡しそのものである.
 あなたが研修医であれば,さまざまな専門診療の中で「血液診療はどのようなものか」という全体像を,これ一冊でつかむことができる.
 あなたが専攻医で血液診療に関わるのであれば,あなたが血肉にすべき知識のほとんどはこの一冊に凝縮されている.
 あなたが総合診療医,一般臨床医,非血液専門医として活躍されているのであれば,「血液診療は近寄りがたい」という思いを払拭してくれる.
 あなたが血液専門医であれば,「ジェネラリストの視点の血液診療」を学ぶことができる.血液診療の全守備範囲の基本を学び直すこともできる.
 日本には,縦割りの多くの科を横断的に診ることのできる総合診療,感染症,救急,集中治療を専門にする医師はまだまだ少ない.しかも,それらジェネラリストと専門医との間には大きな川が横たわっている.
 私は長年の血液専門医に続いて,人間ドック医,そして今は高齢者の総合診療医をしている.私のような者には,本書のような本当の意味での「ジェネラリストと各専門医とを橋渡ししてくれる本」がありがたい.
 専門医でありジェネラリストの手になる「ジェネラリストのための○○診療」の各科の本があればと願う.本書はそのシリーズの嚆矢となってほしい.

2022年2月

医療法人社団平静の会 西崎クリニック 院長
 岡田 定




はじめに
 この本は,タイトルが示すように,「非血液専門医」「ジェネラリスト」が,日常診療の現場で血液疾患をどのように考え,診断し,対応すればいいかを,理解,確認,整理して(Basic),実際に診療にあたれるように(Practical),症例を基にして(Practice),「1冊で血液疾患のエッセンスをカバーする」というコンセプトで企画されました.Part AとPart Bはそれぞれ血液所見と臨床所見からの血液疾患のアプローチとエッセンス,Part Cは健康診断で見つかった異常の対応の実際,Part Dは医療連携も含めて日常診療で遭遇しそうな状況での対応,がおもな内容で,系統的ではありませんが,全体で血液疾患の総合的かつ実践的なテキストになっています.
 日本血液学会のホームページによれば,2022年1月31日の時点で血液専門医数は小児科医も含めて4,450人です.かつては絶滅危惧種の朱鷺にも喩えられたことのある血液専門医です.何とか絶滅は免れたようですがまだまだ少数派で,臨床の現場で活躍されている先生方のほとんどが「非血液専門医」です.しかし,実際の臨床で,自分で血液疾患と思って血液内科を受診する患者さんはほとんどなく,血液専門医が診る血液疾患の患者さんのほぼすべてが(転院などを除いて),「非血液専門医」からの紹介による患者さんです.つまり,血液疾患のファーストタッチは「非血液専門医」が行っており,すべての診療科の医師が血液疾患患者を診る可能性があります.この本は,「臨床研修医を含む血液専門医以外の医師が総合診療的なアプローチで血液疾患を実際に診療できる」ことを目指しており,タイトルの「血液検査×総合診療」が示すように,「ジェネラリスト」や「ホスピタリスト」として活躍している,あるいはこれらを目指している,先生方を意識しています.
 血液疾患の診断,治療には専門性を必要とするものも多く,血液疾患は専門施設で専門医が診療にあたるものだという“常識”が支配的になり,「血液疾患が疑われたらすぐに血液内科に紹介」となってしまうことは理解できます.確かに専門施設で専門医が診療にあたるべき患者さんや状況も多いのですが,ファーストタッチ以外にも,専門施設以外で非血液専門医が診療できる血液疾患も多いです.この本の内容は,「非血液専門医」「ジェネラリスト」が,対応可能な血液疾患患者に適切に対応するために必要なことのエッセンスです.したがって,あまり専門的なことは書いてありません.ただし,血液専門施設,血液専門医に紹介した後の検査や治療などについて,「非血液専門医」「ジェネラリスト」の守備範囲を少し超えて記載してあります.血液専門医に紹介する際に,紹介後に行われるであろう医療内容を説明するのに必要であることと,血液疾患の全体像を捉えるために有用と思われるからです.また,総合内科専門医試験などの試験を少し意識しました.ただし,血液疾患の治療は,分子標的薬を中心に新規治療が次々に開発されており,このような本では到底すべてをカバーしきれません.原則として,現時点における初発未治療例に対する標準治療のみが記載されていることをご了承ください.臨床研修医の先生方にとっても,病棟で接する血液疾患の多くは造血器腫瘍治療中の患者さんでしょうから,これらの内容が有用であると思いますし,研修でカバーしきれない領域・疾患についても研修していただけると思います.また,様々な理由で血液疾患を十分に経験できない先生方にも,血液疾患を一通り研修していただけるような内容になっていると思います.さらに,臨床研修中あるいは終了後に血液疾患患者を診る機会が少なかったために血液疾患を何となく避けるようになっておられる先生方も,血液疾患に対する苦手意識を払拭していただけると期待しています.
 この本には骨髄検査の標本写真はありません.骨髄検査自体は血液専門医でなくても行える検査ですが,骨髄所見を自分で確実に診断するには,やはりある程度の専門性が必要であると考えられ,この本は,非血液専門医がそこまで対応することは目指していないからです.一方,末梢血液塗抹標本は,検査室がある施設ならば,非血液専門医でも十分に評価,診断が可能であると考えられ掲載しました.ただし,白血病や異常,異型リンパ球などの異常細胞は,あまりにも多くの種類,形態があり,このような出版物では明らかに不十分で,血液専門医でも診断に苦慮する場合も多いためあえて掲載せず,赤血球と血小板の標本のみを「できれば,これくらい……」という期待を込めて,掲載しました.
 これまでに多くの「非血液専門医」の先生方に血液疾患の患者さんをご紹介いただき,こちらからも外来・入院によるフォローをお願いして対応していただいてきました.Part Dには,その際の経験が強く反映されています.かなり無理な依頼もあったかと思いますが,ご快諾いただいた先生方にこの場を借りて深謝いたします.
 この本は,これまでに共著にて上梓した『レジデントのための血液診療の鉄則』(医学書院,2014年)と『診療所/一般病院の血液診療Do & Don’t』(日本医事新報社,2018年)を総合診療的なアプローチで補完するような内容になっています.前2作の編集を行っていただいた岡田定先生には,聖路加国際病院でレジデントとして歩みはじめたときから始まり,血液内科医としてスタートした昭和大学藤が丘病院内科(血液),さらに聖路加国際病院血液内科と,長年にわたりいろいろなシチュエーションでご指導いただき,今回の企画にも当初からお世話になりました.改めて御礼申し上げます.また,獨協医科大学埼玉医療センター臨床検査部の星孝夫主任には,Practiceのプレゼンテーションにご協力いただき深謝いたします.最後になりましたが,刊行にあたり大変お世話になった診断と治療社の渡邉和教さまをはじめとする編集部の皆様,そして企画から刊行まで迅速かつ熱心にサポートしていただいた企画部の小室裕太郎さまに深く感謝いたします.

2022年2月 立春に

獨協医科大学埼玉医療センター輸血部 部長
 樋口敬和