産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2017年 Vol.84 No.5 2017-04-18
産科出血に立ち向かう
―どこまでできる? 診療所から大学病院まで

定価:本体2,700円+税
企画 田中 守
1.母体死亡原因解析からみた産科出血管理 / 田中佳世・他
2.麻酔科からみた産科出血管理 / 角倉弘行・他
3.輸血,緊急輸血の実際 / 山本晃士・他
4.回収式自己血輸血 / 森川 守・他
5.遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤 / 小林隆夫
6.IVR(interventional radiology) / 西尾美佐子
7.子宮内バルーンタンポナーデ / 杉山 隆
8.子宮型羊水塞栓症 / 小田智昭・他
9.前置癒着胎盤の管理 / 松本 直・他
10.産科出血に対する手術法―帝王切開時大出血への妙手3つ / 松原茂樹
11.J–MELSでの産科出血管理教育 / 三宅康史
12.ALSOでの産科出血管理教育 / 鈴木 真
13.分娩後出血対応における助産師の役割 / 片岡弥恵子
連載
医療裁判の現場から 第1回
帝王切開既往後の経腟分娩(VBAC)を試みたところ
子宮破裂を起こし,新生児が死亡した事例 / 清水 徹
若手の最新研究紹介コーナー
Preeclampsia(PE)serum disrupts the autophagy/
lysosome pathway cooperated with endoplasmic
reticulum(ER)stress / 中島彰俊
来たれ!私たちの産婦人科 第5回
国立病院機構長崎医療センター 産婦人科 / 安日一郎
Essay 外界事情
妊娠糖尿病の診断 / 矢沢珪二郎
Essay 青い血のカルテ
梅毒と浅田飴 / 早川 智
症例
進行子宮頸癌患者の子宮留膿腫・子宮穿孔に対し
穿孔部ドレーンチューブ留置が奏効した1例 / 中野和俊・他
自律神経過反射をきたした高位脊髄損傷合併妊娠の1例 / 岡田麻美・他
突然の多量性器出血によりショック状態を呈した子宮動静脈奇形の1例 / 猪飼 恵・他
卵巣原発の大細胞神経内分泌癌の1例 / 成松昭夫
執筆者紹介
バックナンバー
投稿規定
次号予告
産科危機的出血の管理については,「産科危機的出血への対応ガイドライン」が作成されて以来,各分娩取り扱い施設での対応が格段に向上してきている.日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会,日本周産期・新生児学会,日本麻酔科学会,日本輸血・細胞治療学会が合同でガイドラインを作成していることが象徴するように,各診療科の協力体制が産科出血への対応の鍵となっている.本特集号が発刊される頃には,最新版のガイドラインが読者の皆様の手元に届いていると思われる.最近では,日本IVR学会からも産科危機的出血に対するIVR施行医のためのガイドラインが提案され,救急医学分野を中心とした日本母体救命システム普及協議会(J—CIMELS)によるスタッフ用プログラム(J—MELS)の提供や,米国より導入されているALSOの教育システムなど多方面からの積極的な母体救命への提言がなされるようになってきた.
わが国において,なお母体死亡の大きな原因を産科出血に起因することを考えると,さらなる母体救命率の向上のためには,最新知識の普及や技術の発展,教育が必須であると思われる.本特集では,産科危機的出血の管理向上に尽力されている各診療分野における斯界のエキスパートの医師や助産師の先生方に執筆をお願いした.それぞれの立場からみた,母体出血に対する最新治療,教育法,今後の展望について解説していただき,現時点で最善の選択ができるようなホットな情報を提供していただいている.「産科危機的出血への対応ガイドライン」に記されているように,産科危機的出血の発生を回避するとともに,各施設がおかれた状況を正確に判断して最適な方法を選択し,院内マニュアルの整備や分娩にかかわるすべてのメディカルスタッフの十分な理解のもと,各々が適切な行動ができるような教育およびシミュレーションが重要である.
本特集が一人でも多くの母体の救命に役立つことを願ってやまない.
(慶應義塾大学医学部産婦人科 田中 守)