産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2019年 Vol.86 No.2 2019-01-18
妊娠高血圧症候群_PIHからHDFへ

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
企画 田中 守
1.妊娠高血圧症候群の過去・現在・未来 / 齋藤 滋
2.妊娠高血圧症候群定義・臨床分類改定 / 渡辺員支
3.疫学研究―日本産科婦人科学会周産期登録データベース調査から / 佐藤昌司
4.疫学研究―妊産婦死亡調査から / 桂木真司・他
5.妊娠高血圧症候群発症予測スクリーニング検査 / 夫 律子
6.妊娠高血圧腎症の発症原因―sFlt?1,PlGF / 大口昭英・他
7.妊娠高血圧症候群の発症原因―(プロ)レニン受容体 / 市原淳弘・他
8.妊娠高血圧症候群の発生要因―血管内皮NO合成酵素 / 山本珠生・他
9.妊娠高血圧症候群の発症原因―子宮内炎症 / 成瀬勝彦
10.妊娠高血圧症候群の発症原因―母体炎症 / 牛田貴文・他
11.子宮腺筋症と妊娠高血圧症候群 / 橋本彩子・他
12.抗リン脂質抗体と妊娠高血圧症候群 / 出口雅士・他
13.TMA(血栓性微小血管症)とHELLP症候群 / 松本雅則
14.母体脳組織酸素飽和度検査 / 内田季之・他
15.妊娠高血圧症候群母体から出生した児の長期神経発達予後 / 山本将功・他
16.ホスホジエステラーゼ5阻害薬 / 真木 晋太郎・他
連載
若手の最新研究紹介コーナー
ラット脳性麻痺モデルを使ったプロゲステロンの脳障害回避効果の検証と作用機序の解析 / 河原井麗正
来たれ!私たちの産婦人科 第26回
関西医科大学附属病院 産婦人科 / 岡田英孝
原著
子宮頸部円錐切除術後の管理における細胞診の子宮内頸部/移行帯細胞の検討 / 齋藤強太・他
症例
2型糖尿病妊婦に合併した急性壊死性食道炎の1例 / 相京晋輔・他
同胞の治療が契機となり判明した姉妹発症の処女膜閉鎖症 / 鈴木将裕・他
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次号予告
妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)は,古くは妊娠中毒症とよばれ,何らかの中毒物質が母体血中に流れることによって起こる高血圧,蛋白尿,浮腫を三主徴とする症候群とされてきた.妊娠を中断し,分娩することで病態が改善することから,分娩で排出される胎児・胎盤が母体に影響を及ぼしているのは明らかであるが,いわゆる「中毒物質」は発見されず,実際的な予防や治療法を手に入れることができていないのが現状である.いまだにHDPに対する治療は分娩であり,われわれは常に分娩と早産となった新生児の予後を天秤にかけながら分娩の時期を計っているのが現状である.HDPは,その疾患概念の国際的な変化とともにPIH(pregnancy induced hypertension)からHDPへと呼称も変更されてきているが,周産期における最大の解決すべきテーマであるのはいうまでもない.
そこで,本特集号では最新のHDPに対する知見を網羅して,未来へ向けた現時点での地平を確認することを念頭に,妊娠高血圧症候群(HDP)のすべてを盛り込んだ意欲的な企画とした.最初に2020年に国際妊娠高血圧学会(ISSHP)を奈良で主催される齋藤 滋先生に国際的な状況を含めた最新の状況と未来について解説していただくとともに,HDPの定義・臨床分類の改定,疫学的調査,予防治療へ向けた妊娠初期のスクリーニング検査,発症機序に関する最近の知見,新生児予後,最新の検査法,治療法について斯界の専門家に解説していただくこととした.また,血液学では血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)と,溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)が統合された血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy:TMA)という概念も導入され,HELLPの考え方も変わりつつある.今後,HDPの理解が飛躍的に進み,多くの産婦,新生児が救われるようになることを期待してやまない.
(慶應義塾大学医学部産婦人科 田中 守)