小児科診療
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2015年 Vol.78 No.6 2015-05-13
小児の輸液・栄養管理の基礎と実践

定価:本体2,600円+税
序 文 /児玉浩子
Ⅰ 総 論
小児の水・電解質代謝と酸塩基平衡の特徴 /五十嵐 隆
脱水症のみかたと輸液の基本 /関根孝司
小児の栄養管理の基本 /児玉浩子
経腸栄養法の適応と実践 /南部隆亮・他
静脈栄養法の適応と実践 /増本幸二
Ⅱ 病態と輸液・栄養管理
小児におけるショックの認識と管理・輸液蘇生 /境野高資
熱傷時 /春成伸之
脳炎・脳症・髄膜炎 /水口 雅
尿崩症,SIADH,CSWS /依藤 亨
急性胃腸炎 /田尻 仁
急性肝炎・肝不全 /別所一彦
ネフローゼ症候群 /髙橋和浩
心不全 /黒嵜健一
糖尿病のケトアシドーシス,sick dayの輸液・栄養管理 /鈴木潤一・他
有機酸・脂肪酸代謝異常症,尿素サイクル異常症 /小林弘典
重症心身障害児(者) /口分田政夫・他
論 説
育てにくさへの支援から始める /岡 明
原 著
若年性特発性関節炎における赤血球動態の検討 /和田靖之・他
原 著
夜尿症に対するデスモプレシン口腔内崩壊錠増量による治療効果の検討 /池田裕一・他
児玉浩子 /帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科
輸液は脱水症や電解質異常の補正およびショック時や急性胃腸炎,糖尿病性ケトアシドーシスなど各種疾患での治療・病態改善に必要不可欠で,迅速に対応しなければならない.特に,小児は体水分比率が成人に比べて高く,水分・電解質バランスを改善することはきわめて重要である.したがって各種疾患での輸液療法に関しては,該当疾患のガイドラインや書籍,論文でも多く紹介されている.一方,栄養に関しても,栄養状態の改善が疾患の重症化軽減や回復促進に重要であることが認識され,NST(nutritional support team)が広く普及している.また,それに関する論文も多く発表されている.特に日々発育・発達している小児では,栄養状態を良好に保つことはきわめて大切である.
生命の危機に直面した治療・病態改善のための輸液の施行中は,しばしば栄養管理が二の次になりがちである.しかし,どのような状態の小児でも,日々,エネルギーは消費されている.基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)は1~2歳で61.0,3~5歳で54.8,6~7歳で44.3,8~9歳で40.8と年少児ほど多く,エネルギー必要量は,1~2歳で900~950 kcal/日,3~4歳で1,250~1,300 kcal/日である(日本人の食事摂取基準2015年版).すなわち,エネルギーの供給が少ないと,小児は日々消耗し,低栄養の状態になる.エネルギーのみならず,蛋白質,ビタミン類,ミネラル類も日々消費されており,適切量摂取していないと欠乏になり,様々な症状・障害を発症する.低栄養状態が易感染性,疾患の重症化・回復の遅延,発育・発達障害,活動性低下,筋肉量減少等をきたすことは,NSTの研究等でも明らかである.したがって,輸液を行わなければならない患児においても,栄養状態を常に念頭に置いて,適切な栄養療法を同時またはできるだけ早期に行う必要がある.
概して今までのガイドラインや論文などでは輸液と栄養療法が別々に記載されているものが多い.本特集では,輸液・栄養法を一連の対応・治療としては捉えることを主旨に,より診療で役立つ内容になることを目標とした.Ⅰ.総論の5項目は総説として輸液・栄養管理の概要が記載されている.最新の輸液,栄養法の基本を理解することができる.Ⅱ.病態と輸液・栄養管理では,それぞれの疾患での輸液・栄養管理が一連の対応・治療として記載されている.大変難しい主旨にもかかわらず,執筆していただいた先生方にこの場を借りて感謝申し上げる.しかし,そのぶん,実践的な特集になったと思われる.小児の栄養・輸液の重症性を再認識していただき,日常診療に役立てていただければ幸甚である.