小児科診療
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2019年 Vol.82 No.4 2019-03-13
小児科医に知ってほしいミトコンドリア病UPDATE

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /三牧正和
Ⅰ.ミトコンドリアとミトコンドリア病
ミトコンドリア病とは何か /古賀靖敏
ミトコンドリアの基礎知識 /太田成男
ミトコンドリアの遺伝支配 /森 雅人
ミトコンドリア病の臨床検査 /近藤秀仁・他
ミトコンドリア病の診断システム /村山 圭
ミトコンドリア病の遺伝カウンセリング /竹下絵里・他
Ⅱ.ミトコンドリア病の主要病型
Leigh症候群 /小川えりか
MELAS /後藤雄一
MERRF /伊藤 康
慢性進行性外眼筋麻痺症候群 /須藤 章
MNGIE症候群 /石山昭彦
NARP症候群 /内野俊平
Alpers病(Alpers—Huttenlocher症候群) /斎藤義朗
ミトコンドリア心筋症 /武田充人
Ⅲ.治療の展望
ミトコンドリア病の治療薬開発の現況と今後の展望 /宮内彰彦・他
ミトコンドリアDDSが拓く新しいミトコンドリア病治療戦略 /山田勇磨・他
生殖医療からのアプローチ /末岡 浩
原 著
島田療育センターはちおうじ開設6年間の療育外来の検討 /小沢愉理・他
三牧正和 /帝京大学医学部小児科
ミトコンドリア病は先天代謝異常症のなかで最も頻度の高い症候群であり,多臓器にわたる多彩な症状を呈するため,専門領域の如何を問わず小児科医がしばしば遭遇する疾患です.また,ミトコンドリア病の原因はきわめて多様で,その病態の理解は容易ではありません.しかしながら,近年の遺伝学的検査等の長足の進歩により診断率が向上しており,また,治療法の開発も進んでおり,正確な病因診断に基づいた診療が期待される時代に入ったといえます.臨床現場に立つ小児科医も新しい変化を知り,適切に対応する責務があると強く感じます.
本号は,診断が困難で,かつ不治の病とされてきた小児のミトコンドリア病と対峙する小児科の先生方に,知恵と希望を届ける特集になることを願って企画させていただきました.そのために,ミトコンドリア病の診断や治療に向けて第一線で精力的に取り組んでこられた先生方,日本の研究をリードされている先生方に,ミトコンドリア病の基礎と臨床につき,一般小児科医の先生方にもわかりやすく解説いただきました.
最初に,ミトコンドリア病,あるいはミトコンドリアとはどのようなものか,実臨床に役立つ基本的情報をわかりやすく解説いただきました.疾患を理解するために必須の生物学的な知識につき,基礎医学の観点からもご紹介いただいています.また,実際の臨床の現場で必要な遺伝に関する知識とともに,患者に対した際に必要となる臨床検査や特殊検査を活用した診断プロセスについて整理いただきました.
続く各論においては,一般小児科医が遭遇する可能性のある病型について,実際の診療にかかわっている小児科の先生方に解説いただきました.ミトコンドリア病の症状は非常に多彩で,疾患を網羅するのは困難でしたが,その病型を知ることは迅速な診断や疾患特異的な対応のために大変重要ですので,実臨床で役立てていただけることと思います.
最後に,ミトコンドリア病克服に向けた展開につき,研究段階の治療開発を含め紹介いただいています.教科書やマニュアル等の成書ではフォローしきれない最新情報についても,今後の展望と課題も含め解説いただいています.臨床の現場に立つ小児科の先生方にぜひ知っていただきたい,夢を与えてくれる情報が含まれていると思います.
本特集を企画させていただき,いずれの先生方もその臨床の経験や研究の成果を熱い想いとともに披露くださったことに,強い感銘を受けました.発展途上でさらなる検討が必要な課題もありますが,ミトコンドリア病の研究の進歩と,それがもたらす診療の変化が起きつつあることを実感することとなりました.ミトコンドリア病の患者レジストリや共同研究の呼びかけもなされており,多くの先生方にミトコンドリア病の基礎・臨床研究に参画いただくことが期待されます.本特集がミトコンドリア病診療の質の向上に役立つとともに,疾患克服にむけた一層の連携の実現の契機になれば,望外の喜びです.
最後になりましたが,大変お忙しいなか本特集のために貴重な原稿をご執筆くださった先生方に,心より感謝申し上げます.