小児科診療
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連載「Photo Quiz」ではビジュアルに画像診断のポイントを解説.
2019年 Vol.82 No.5 2019-04-12
研修医の「そこが知りたい!」小児アレルギーの疑問

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /永田 智
Ⅰ.診断・評価の疑問
本当に乳児喘息? /長谷川久弥
長引く咳嗽は喘息と関係ある? /田中敏博
気がつかないアナフィラキシーとは? /草川 功
すぐに対応するべき薬疹,蕁麻疹みたいだけどちょっと違う疾患とは? /常深祐一郎
血便があれば牛乳アレルギー? /山田啓迪・他
呼吸機能検査は何のためにやる? /髙橋浩樹・他
特異的IgE抗体検査はどう解釈する? /大谷智子
Ⅱ.治療の疑問
長時間作用性β2刺激薬の正しい使い方は? /松原知代
乳幼児の吸入ステロイド薬の上手な使い方は? /勝沼俊雄
オマリズマブ,メポリズマブに挑戦するには? /濵野 翔・他
外用ステロイドの上手な始め方,やめ方とは? /池澤善郎
長期間続けられるスキンケアとは? /末廣 豊
舌下免疫療法に挑戦するには? /大久保公裕
非専門医のための食物アレルギー食事療法とは? /小林茂俊
Ⅲ.説明の疑問
アドヒアランスの低い気管支喘息患者の家族には? /阿部利夫・他
ステロイド忌避のアトピー性皮膚炎患者の家族には? /中原剛士
アドレナリン自己注射薬の使用をためらう教育者には? /千葉幸英
自己流の食事治療を行う食物アレルギー患者の家族には? /今井孝成
原 著
川崎病診療におけるプレセプシンの有用性の検討 /田尾克生・他
永田 智 /東京女子医科大学小児科
気管支喘息,アトピー性皮膚炎,食物アレルギー,花粉症といった小児のアレルギー疾患は,小児科外来の疾患別の受診頻度の常にベスト3に入るcommon diseasesである.小児科医であれば必ずや出会う疾患であることから,誰でもみられる疾患で,今さら診断や治療のスキルアップが必要ではない領域と思われがちであった.このありがちな「勘違い」にこそ,小児科外来診療の魅力を半減させ,わが国の小児診療レベルの停滞を招くピットホールがあったと考えられる.
一方で,世間の小児アレルギーへの興味は高まっているといわざるを得ない.特に,世間の関心は食物アレルギーに集まり,一部の小児のもつ特殊な疾患というイメージは払拭されたようである.今まで小児にしかないと思われていた小麦アレルギーが日常麺類やパンを食べていた成人でも起こり得ることが知られ,食物アレルギーによって発症すると思われていたアトピー性皮膚炎が実は反対の因果関係であったことなど,まさにコペルニクス的な展開は,一般の人たちの興味をひくに十分な話題提供であったといえる.
これらのトピックは,かつてはありふれたcommon diseasesであった小児アレルギーのイメージを打ち破り,より専門性の高いステージがあること,経験論では解決できない複雑なメカニズムが背景にあることを教えるものであった.また,これらをきっかけに,小児アレルギー専門医のみならず一般小児科医の関心も,かつての気管支喘息から食物アレルギーに大きくシフトしてきたようでもある.昨今の小児アレルギー分野の学術誌の特集は,特定の分野やトピックで占められることが多くなってきたことも特徴といえよう.
日進月歩の今日の医学にあって,かつての常識は過去の遺物になり,新しい薬剤の上市によりガイドラインも次々と塗り替えらえている今,これから小児科を勉強せんとする研修医にとって,小児アレルギー分野は混とんとしたものに見えるようである.今こそは,このカオス的な空気を打開するような小児アレルギー領域の知見の整理が必要と思い立ったのが本特集である.
本特集では,研修医の視点に目線を落として,明日からの日常診療に必要な幅広く基礎的な事項,根拠ある実践的な内容の座右の書になるような趣旨のものを考え,各領域のエキスパートの先生方にご執筆を依頼させていただいた.
末筆ながら,多忙の中,ご執筆をご快諾いただいた全著者の先生方に,心より敬意と謝意を申し上げます.