小児科診療
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2019年 Vol.82 No.9 2019-08-09
小児の食中毒

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /片山和彦
Ⅰ.総 論
近年の食中毒の発生状況 /砂川富正
小児嘔吐下痢症の鑑別診断 /菅田 健・他
食中毒の病因物質の特定 /貞升健志
食中毒発生時の対処法 /森田邦雄
Ⅱ.細菌性食中毒
サルモネラ /西村直子
カンピロバクター /新庄正宜
腸管出血性大腸菌 /森口直彦
ブドウ球菌 /西 順一郎
腸炎ビブリオ /荒川英二
ウェルシュ菌 /門間千枝
ボツリヌス症 /加藤はる
Ⅲ.ウイルス性食中毒
ノロウイルス,サポウイルス /片山和彦
アストロウイルス /中西 章
ロタウイルス /津川 毅
アデノウイルス /髙橋健一郎・他
A型肝炎ウイルス,E型肝炎ウイルス /鈴木亮介
Ⅳ.寄生虫による食中毒
寄生虫による食中毒 /小西良子
症例報告
経管栄養中に腸管気腫症と門脈ガス血症を発症した神経性食思不振症の1例 /河合泰寛・他
サイトメガロウイルス感染症に伴う再発を認めた反復性耳下腺炎の1例 /青井輝希・他
片山和彦 /北里大学北里生命科学研究所・感染制御科学府ウイルス感染制御学Ⅰ
子どもが突然吐いた,おなかが痛いと泣き止まない,熱が出てぐったりしてきたなど,お子さんの突然の症状に驚き,小児科を受診するご家族は不安でいっぱいです.子どもの腹痛の原因となる疾患にはいろいろありますが,外来を受診する嘔吐下痢などの胃腸症状を伴う子どもを的確に診断し,治療方針を立て,可能な限り早く治療を開始することは,ご家族の不安を取り除くことはもちろん,子どもの命にかかわる重症化を防ぐうえできわめて重要です.
本号の特集では,子どもによく起こる胃腸炎のうち,自然毒以外の食物が原因で起きる胃腸炎,小児に頻発する微生物による食中毒に焦点を絞り,診療現場ですぐに役立てていただけるような実践的知識と各種病原体の特徴をわかりやすく,最新の知見も含めてまとめました.総論として,小児嘔吐下痢症患者に対する初期対応では,小児嘔吐下痢症の診断の進め方,診断の流れをチャートのように示しつつ解説しました.次に,食中毒の診断については,子どもの胃腸炎症状が食中毒によるものかを見極めるスキルを中心に概説しました.特に,食中毒が疑われる場合,細菌性,ウイルス性,自然毒,寄生虫など病原因子の鑑別診断への流れについて解説しました.さらに,食中毒発生時の対処法については,実際に食中毒が発生した場合の実践的対処方法に関して概説しました.近年,食中毒の発生状は,徐々に変化しつつあります.例えば,昨年度はついにアニサキスによる食中毒事例報告数が,ノロウイルスによる食中毒報告数を上回るなど,想定外の傾向が認められました.そこで,このような事態を把握していただくために,国立感染症研究所感染症疫学センターのデータ,食中毒統計などに基づいた,近年の食中毒の状況を解説するとともに,国立感染症研究所でまとめられている各種データの読み方(感染性腸炎のグラフ,IASR,IDWRに掲載されているグラフの違いを含めて)についてまとめました.各論では,細菌感染症(サルモネラ菌,カンピロバクター,病原性大腸菌,ブドウ球菌,腸炎ビブリオ,ウォルシュ菌,ボツリヌス菌)と,ウイルス感染症(ノロウイルス,サポウイルス,アストロウイルス,ロタウイルス,アデノウイルス,A型肝炎ウイルス,E型肝炎ウイルス),寄生虫(クドア,アニサキス)に分け,詳細に解説すると同時に,最新の情報の紹介も試みました.
子どもの食中毒(腸管感染症)の原因となる病原微生物を,的確かつ迅速に診断し,それぞれに対応した適切な治療法を選び,治療していただけるよう,本号をご活用いただけますと幸いです.