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書籍詳細

筋ジストロフィー患者さんのための楽しい食事診断と治療社 | 書籍詳細:筋ジストロフィー患者さんのための楽しい食事

国立療養所 南九州病院

福永 秀俊(ふくなが ひでとし) 監修

国立療養所 松江病院

河原 仁志(かわはら ひとし) 編集

初版 A5判 並製 112頁 2002年04月15日発行

ISBN9784787812568

定価:本体1,300円+税
  

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筋力低下に伴う嚥下障害をもつ患者さんにとって食は悩みの多いこと。栄養補助食品のことから嚥下しやすく誤飲を防ぐ調理の工夫,患者さんに人気の献立までより実用的に解説

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目次

監修の序

筋ジストロフィー患者さんと食事
 病気の特徴と食事について
 どれくらいのカロリーをとったらよいのだろう
 便秘などの消化器症状のあるとき
 食事をするときの工夫
 食の楽しみ
食事の工夫〜楽しく!おいしく!安全に〜
 嗜好に合った食事が一番!
 上手に利用しよう!嚥下補助食品・栄養補助食品
 栄養バランスを考えて!
 もっと楽しく食べよう!
 食べるときに気をつけよう!
 口の中をいつもきれいに!
下ごしらえの仕方〜愛情をそそげば必ず美味しく仕上がる〜
 美味しさを感じるのは
 なぜ嚥下障害食が必要なのか
 調理・下ごしらえの工夫次第で“食事”は楽しめる
 チョットの工夫で食べやすく!
 冷凍食品をうまく活用しましょう
 トロミをつけるコツ
 嚥下障害食を作るために活用したい調理器具

レシピ集
―主食― 7品目
―主菜― 14品目
―副菜― 9品目

食事の工夫〜患者さんのお母さんより〜
 うちの食卓
 より楽に自分で食事をするために
 うちでの食事のとりかた
―レシピ(お母さん方よりおよせいただいたもの)―
 鶏肉のトマトスープ煮
 チンゲン菜とかぶと豆腐のスープ煮
 マカロニグラタン

ご案内
社団法人 日本筋ジストロフィー協会
社会福祉法人 全国心身障害児福祉財団

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序文

楽しく,おいしく,安全な食事を

      厚生労働省精神・神経疾患研究委託費
      「筋ジストロフィー患者のケアシステムに関する総合的研究班」班長
          (国立療養所南九州病院院長) 福永秀敏

 世間一般の人にとって,「筋ジストロフィー」という言葉の響きはいかなるものだろうか.私のように20年近く筋ジストロフィーの患者さんと身近に接してきた者にとっては,ちょっと想像しがたいものになっている.ただ,マスコミなどで時に風聞する「かわいそうで同情に値する人たち」や,「病気と闘う健気な人たち」という常套的評価には少し戸惑いを感じている.彼らもわれわれとほとんど変わりない「普通の人たち」と言えるからである.
 そこでこのような先入観を取り払ってもらうためには,まず現場を見ていただいたほうがいいと思うので,私は外来者には努めて病棟を案内することにしている.当院の場合,2つの病棟に分けられている.年齢もさまざま,そして筋ジストロフィーと一言でいっても,学問的にはいろいろなタイプの病気が混在している.まず詰め所に近い部屋のM氏は32歳,鼻マスク歴(人工呼吸器)8年になるが,当院の着床前診断などの倫理問題に対するスポークスマン的役割を果たしてくれる.そして,また外見の武骨さ(ちょっと失礼かな)からは想像できない色彩感覚の持ち主で,彼の描く油絵の色使いは逸品との評価である.同室のM君は20歳,最近気管切開して人工呼吸器をつけている.10歳のとき入院してまず発した言葉,「この病棟に入院して,良くなって退院できた人はいるのですか」と質問して保育士さんを狼狽させた前歴がある.洗面所を過ぎて隣の部屋のH氏は,気管切開し人工呼吸器をつけて8年になる.28歳のときに詠んだ歌,「23年生きたるよりも,気管切開5年を迎ふる今が楽しく」をそのままに,わずかに動く右手親指を駆使したやさしく華麗なコンピューターグラフィックは,まさしくプロの技といえる.彼の描く花の絵は,近くの歯科医院の壁に飾られ,また本の挿絵にも採用されている.鹿児島で開催された世界火山会議の応募作品では,「桜島と百合」が特別賞に輝いた.また同室のI氏は脊髄性筋萎縮症であるが,歌人として有名である.その歌集「海の彼方に」は,朝日新聞の大岡信氏の折々の歌にも取り上げられた.「治るよね問いくる子らの澄める目に,うんと言う嘘神許されよ」と性格そのままに,歌にもやさしさを滲ませている.廊下をはさんで二人部屋のI女史は,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーで呼吸器をつけているが,最近視力が失われつつある.パソコンで軽妙洒脱でちょっぴりエロチックな短編を物にしてきたが,それができなくなるという危機に直面した.しかし,多くのボランティアの励ましと工夫で,音声入力での作業を獲得しつつある.現在78人の患者さんが入院しているが,一人一人が素晴らしい能力を持っている.そしてまた普通に生活し,普通に喜怒哀楽を表現している.
 さて本題の「食事」の問題に触れたい.当院の食事の風景を思い浮かべると,ベッドサイドで介助を受ける人から,食堂で自分で食事できる人まで,病気の種類や進行度により千差万別といえる.ただ介助なしに自分で食事のできる人は数えるほどしかいない.また嗜好の問題なのか,調理の問題なのか,もっとも頭を悩ましてきたのが残飯量の多さである.特に魚料理(太刀魚など)のときはひどくて,電動車椅子が売店に列をなす事態となる.栄養価的に計算されたバランスのよい献立は確かに重要ではあるが,まず食べて体内に入ってしまわないことには何にもならない.何かいい方法はないかと試行錯誤中に,本書の編集者の河原仁志先生の講演を聞く機会があった.「インド人は毎日カレーを食べている」という言葉は天啓にも似た響きがあり,目からうろこの落ちる思いであった.確かに言われてみればそうである.もっとも患者さんがカレーが好きだからと言って,365日カレーをという訳にはいかないが,まずは「楽しく,おいしく」食べてもらってこその食事である.そして「安全に,必要量」が伴えば,まさに鬼に金棒といえる.
 本書は河原先生立案で,当研究班に属し筋ジストロフィー病棟を擁する全国27施設の栄養室が総力を結集して作られている.食事のこと,調理の工夫や要点,実際のレシピに至るまで微に入り細に入り,患者さんの食べる気持ちになって書かれている.
 また筋ジストロフィー患者さんに最適な食事は,嚥下障害を伴う多くの難病や高齢の患者さんの食事の悩みとも共通する部分が多い.そのような患者さん方の食事にも応用できたら望外の喜びである.
 最後にこの本の作成にあたり,お世話になった執筆者の方々,筋ジストロフィー協会,厚生労働省の担当者に深甚の感謝の意を表したい.

                    2002年4月