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書籍詳細

糖尿病網膜症診断と治療社 | 書籍詳細:糖尿病網膜症
専門医によるベストアドバイス

山形大学医学部視覚病態学教授

山下 英俊(やました ひでとし) 著

山形大学医学部視覚病態学

川崎 良(かわさき りょう) 著

初版 B5判 並製 152頁 2003年06月01日発行

ISBN9784787812896

定価:本体8,400円+税
  

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糖尿病網膜症の基礎研究から臨床診断・治療法に至る幅広い研究・開発の進歩を概観しその最新情報をわかりやすく解説しつつ,現時点における問題点とその解決法にも言及する.

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目次

1 糖尿病患者を診る
2 糖尿病眼合併症の病像
3 糖尿病網膜症の診断法
4 糖尿病網膜症の新しい検査
 4-1 眼科学的検査
 4-2 糖尿病網膜症の疾患感受性遺伝子
5 糖尿病網膜症の重症度分類
6 糖尿病性網膜症の研究
 6-1 糖尿病モデル動物と網膜症,他の合併症
 6-2 糖尿病網膜症の分子病態
 6-3 糖尿病網膜症の臨床疫学的研究
7 糖尿病網膜症の治療
 7-1 内科的な治療の戦略
 7-2 新しい網膜症治療薬の可能性を探る
 7-3 網膜光凝固:適応と効果
 7-4 硝子体手術−適応と効果
 7-5 白内障の手術:適応と効果
 7-6 緑内障手術の適応と効果
 7-7 糖尿病視神経障害
索 引

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序文

失明予防からより快適な視力を生涯保証する医療へ

 全世界で糖尿病患者が急速に増加しつつある.当然,糖尿病網膜症患者の数は増加し,視力低下,失明が大きな問題になってきている.住民を対象にした疫学研究(population-based study)によると,40歳以上の日本人での糖尿病の有病率は10%にも及ぶ.大きな問題は二つある.ひとつは40歳代,50歳代の患者で糖尿病網膜症を発症する場合がかなりみられるようになってきていることである.病院で患者さんを診察していると,会社や仕事の時間を気にしつつ診療が終わるとすぐに飛んで帰る方が多くみられる.治療に専念することが難しく,はからずも視力低下や腎透析などにより,仕事内容を変えざるを得ないこともある.医療費がかかるのみでなく,これら患者さんが生み出すはずの社会的経済的な富が失われることとなる.もうひとつは,人口の高齢化に伴う老後のQOLの問題である.人間的で豊かな生活をおくるためには良好な視力が必須であることは説明を要しないであろう.糖尿病の患者さんを診るということは,多くの合併症を克服して,豊かな社会生活,老後の楽しみを保証することが主要な目的になるが,糖尿病網膜症医療についての期待を考慮すると“失明しない医療”から“日常生活が不自由なく暮らせるレベルを目指す医療”へとレベルアップが社会から求められているということである.
 上記の目的を達成するべく,近年,糖尿病網膜症についての研究も多方面で目覚ましい進歩が見られる.疫学的な研究,分子病態での研究,眼科クリニックでの多くの実用化された検査診断法,治療法の長足の進歩,糖尿病治療チームの中への網膜症治療の役割分担などである.糖尿病網膜症の診療に携わり多くの患者さんを診ていても,自分の専門以外についてすべての分野で最新の進歩に遅れないでいるのすら大変困難なほどである.糖尿病網膜症の研究が進歩することは“うれしい悲鳴”にもあたるすばらしいことである.したがって現時点で,網膜症研究の糖尿病診療,研究の中での位置づけを明らかにし,最新の診断,治療法を解説し,さらには現時点での問題点,解決に向けての新しい研究を網羅した本がこのような時代にはなおさら必要ではないかと考え,本書を企画した.ポリシーは糖尿病網膜症のすべての分野を網羅し,わかりやすく,最新の情報を盛り込み,そして新しい時代への抱負を盛り込んだ解説を掲載するというかなり欲張りな要求であったにもかかわらず,各分野のエキスパートの先生方からの原稿はこちらの要求をはるかに超えた読み応えのあるものとなった.
 どれだけ最新情報を盛り込んだとしても上梓された瞬間から最新ではなくなる,すなわち,より新しい情報,知識が積み重ねられていくと考えられるが,本書のわかりやすい解説は新しい時代を切り開いていく基本的な考え方をも示しており,十分に意味のあるものと考える.本書が今後の糖尿病網膜症の基礎研究と臨床に役立つことを確信している.

2003年4月 山下英俊 山形大学医学部視覚病態学