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ミューズの病跡学Ⅱ美術家篇診断と治療社 | 書籍詳細:ミューズの病跡学Ⅱ美術家篇

日本大学医学部産婦人科講師

早川 智(はやかわ さとし) 著

初版 A5判 アジロ製本,イラスト約30点有 200頁 2004年03月20日発行

ISBN9784787812940

定価:本体2,300円+税
  

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歴史上の著名な美術家を,それぞれの作品等を通して作者の精神 的・身体的疾患を現代医学から推測,病気と作品への影響をユーモアをまじ えて解説した.

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目次



PartⅠ ルネッサンス美術の時代
 1.レオナルド・ダ・ヴィンチⅠ
    レオナルド・ダ・ヴィンチと左利き
 2.レオナルド・ダ・ヴィンチⅡ
    未完成作品とADHD
 3.ピエロ・デラ・フランチェスカと甲状腺腫瘍
 4.聖コスマスと聖ダミアン:
    フラ・アンジェリコと移植医療
 5.聖母子像のバビンスキー反射
 6.ミケランジェロの痛風結節
 7.三王礼拝と贈り物
 8.ヒエロニムス・ボスと愚者の石
 9.ブリューゲルと聖ヴィトゥスの舞踏(St. Vitus dance)
10.アルブレヒト・デューラーと四体液説そして脾腫
11.チェリーニの関節炎とクラミジア
12.エル・グレコと乱視

PartⅡ バロック,古典派美術の時代
 1.カラバッジオの眠るキューピッド
 2.レンブラントⅠ
    バテシバの乳癌
 3.レンブラントⅡ
    自画像と老化
 4.恋の病と尿検査
 5.ヴェラスケスと宮廷の侏儒たち
 6.プーサンの振戦とパーキンソン病
 7.ゴヤの視力障害
 8.ホガースと胎児アルコール症候群

PartⅢ 印象派美術の時代
 1.ゴッホに見えた世界
 2.モネの視力障害
 3.ルノワールとリウマチ
 4.ドガの視力障害
 5.色覚異常の画家 シャルル・メリオン
 6.ロートレックの低身長
 7.ウィリアム・ブーグローとフランス美人画

PartⅣ 20世紀美術の時代
 1.ピカソと福笑い
 2.マチスの虫垂炎
 3.エゴン・シーレ,グスタフ・クリムトとスペイン風邪
 4.ムンクの飛蚊症
 5.ミシェル・フーコー,キース・ヘリング
    そしてロバート・メイプルソープ

参考文献(全文)
参考文献(各項目)
著者紹介

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序文

基礎,臨床を問わず,欧米の学会で有名な先生が特別講演を行うときの話の
枕に,専攻される疾患や治療の歴史的側面を紹介するのは常道のようです.
筆者の専攻する生殖免疫学,産婦人科学のみならず,外科,内科,眼科,病理
学などの雑誌に,しばしば著名人の歴史的考察を行った論文が見られます.
本業の傍らこれらの文献を渉猟することが数年来図書館通いの密かな楽しみに
なっていました.そのうち,読むだけでは物足らず,若干の現代医学的考察を
加え,1999年以来,「産科と婦人科」誌に音楽家,画家,文学者などの病気と
作品への影響に関するエッセイを連載させていただきました.2002年暮れには
音楽家だけをまとめ「ミューズの病跡学 I音楽家 篇」のタイトルで上梓しま
したが,幸い好評をもってお迎えいただくことができました.
 本書ではその続篇として画家,彫刻家をとりあげています.画家自身が罹患
することで作品に影響が生じた可能性の強い疾患や,画中に描かれたモデルの
疾患,往古の医療をとりあげ,ルネッサンスから20世紀まで,32の画家もしく
は作品を検討しました.モネやゴッホ,レンブラントのように,年齢を重ねる
ことと同時に明らかに医学的理由で画風が変わってきたり,甲状腺腫やバビン
スキー反射,乳腺腫瘍など,疾患概念が確立する以前に画家がいかに正確にモ
デルを観察していたかが判り,大変興味ある結果が得られました.
 この分野での類書としてはTrevor‐Roperによる古典的名著“The World
Through Blunted Sight”(1970),Sandblomによる“Creativity and
Disease”(1982),Marmor & Ravinによる“The Eye of the Artist”(1997)
がありますが,筆者としては新しい視点で論じることができたのではないかと
自負しております.
 読者の方に本書でとりあげた作品を直接ご鑑賞いただくか,画集やインター
ネットで検索できるよう,作品を所蔵する美術館をできるだけ明記しました.
さらに蛇足ではありますが,一部の章末にその画家が活躍したのと同時代の作
曲家の作品を紹介しました.作品と直接関係があるものもないものもあります
が,その“時代の精神Zeitgeist”(故大野 乾博士の好まれた言葉ですが)
を代表する作品を同時に鑑賞するのは悪くないと思っています.
 本書の執筆にあたり,ご意見ご指導を賜りました恩師,故大野 乾博士,
大野 翠夫人,日本大学医学部病理学教室 桜井 勇名誉教授,公立あきる病
院副院長 西成田 進博士,日本大学眼科学教室 岩田光浩講師(II‐7,
III‐1,III‐2,III‐4,III‐5),先端医学講座分子免疫アレルギー部門
羅 智靖教授(I‐3),免疫学微生物学教室 清水一史教授(IV‐3),日本
大学医学部学生 葉山惟正君,ゲラの段階でご意見をいただきました,趣味を
同じくする畏友 朝岡 聡氏,今村有策氏,産婦人科免疫研究室の千島史尚
講師,大田啓明先生,村林千穂先生,東京慈恵会医科大学産婦人科の川口里江
先生,前著同様,当直の間に執筆の時間と場所とインターネット環境をご提供
いただきました萩原 寛(萩原医院),平田善康(平田クリニック)両博士,
Pensione AcademiaオーナーのTomoko & Gabrielle Tudiniご夫妻,連載出版の
ご許可をいただきました日本大学医学部産婦人科学教室 山本樹生教授,
佐藤和雄前教授に厚く御礼申し上げます.本書がこのような形をとることがで
きますのは診断と治療社栗田洋子女史に負うところ大でありますし,資料の収
集に多大なご協力をいただいた日本大学医学部産婦人科 鈴木(唐崎)
美喜さん,日本大学医学部図書館,日本大学芸術学部図書館司書の皆様に深謝
します.
 イラストは「ミューズの病跡学I 音楽家 篇」同様,日本大学医学部
産婦人科学教室 永井宣久博士の手を煩わせました.単なる模写に留まらず対
象とする画家の画風でその画家の肖像を描くという難しいテーマに挑んでくれ
ましたので,その点にご注目いただければ幸いです.本書が読者諸賢の美術鑑
賞の一助になれば筆者としては望外の喜びです.
 子供の頃から折を見ては上野や京都の美術館に連れて行ってくれた両親,
早川 晋,早川光子に本書を奉げます.

2003年11月1日 万聖節 ローマ Pensione Academiaにて
早川 智