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すぐに役立つ双子・三つ子の保健指導BOOK診断と治療社 | 書籍詳細:すぐに役立つ双子・三つ子の保健指導BOOK
これだけは知っておきたい多胎育児のコツと指導のポイント

加藤 則子(かとう のりこ) 編集

初版 A5判 並製 200頁 2005年01月31日発行

ISBN9784787814005

定価:本体3,200円+税
  

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両親が抱える多胎育児ならではの困難や悩みに対処するための知識 と情報を整理.子育ての知恵から母親学級の運営まで,成長・発達 に伴う具体的な支援内容をわかりやすく紹介します.保健師,助産 師,保育士,育児サポーターなど,育児に関わる専門家必携の手引 書

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目次

編集・執筆者一覧
はじめに
本書の案内図

第1章 多胎児についての基礎知識…………………………大木秀一
A あなたの地域・病院で,双子・三つ子は何組ぐらい生まれるの
か? …2
 1.多胎出産の動向
 2.多胎妊娠に影響する要因
 3.都道府県別にみた多胎出産の動向
B 卵性診断
 1.卵性の種類
 2.卵性を知ることの意味
 3.卵性を判定する方法
 4.卵性診断用質問紙票の使い方
 5.生まれた時に告げられる卵性のまちがい
C 成長と発達
 1.根拠に基づいた助言の重要性
 2.乳幼児期の多胎児の発育データ
 3.双子の発育を考える場合のポイント
 4.双子の出生体重
 5.乳幼児期の身長,体重,体格
 6.出生時から3歳時までの二人の体重の差
 7.双子の運動発達
 8.双子のことばの発達
 9.小児期に見られる気になるくせ
 10.双子の利き手

第2章 多胎児の妊娠,出産について〜多胎妊娠のリスクとは何か〜
……………………………………………………………………竹内正人
A 妊娠
 1.多胎妊娠の診断
 2.現場での多胎妊娠の分類
 3.膜性診断の実際
 4.超音波診断による胎児形態スクリーニング
 5.妊娠中の体重増加
 6.管理入院
 7.妊娠中の生活とマイナートラブル
 8.胎児発育
 9.切迫早産,早産
 10.TTTS(双胎間輸血症候群)
 11.TTTSの治療法
 12.双胎胎児1児死亡と管理
 13.死児への対応と情緒的サポート
B 多胎妊娠の分娩
 1.分娩様式の選択
 2.双胎経膣分娩の時期
 3.経膣分娩の進行状況
 4.産婦の生む力を引き出すケア
 5.帝王切開の時期と方法
 6.経膣分娩,帝王切開のメリット,デメリット
 7.里帰り分娩
C 分娩直後,新生児
 1.多胎児と予後
 2.新生児仮死
 3.早期の母子接触

第3章 親(育児担当者)が知りたい多胎情報〜どこにいけば見
つかる?〜……………………………………………………三枝きよみ
A 主に妊娠中における制度やサービス
 1.妊娠届(母子保健法第15条)
 2.母子健康手帳の交付(母子保健法第16条)
 3.健康診査(母子保健法第12条)
 4.自治体の学級(母子保健法第9条)
 5.妊産婦の訪問指導(母子保健法第17条)
 6.プレネイタルビジット(出産前小児保健指導事業)
B 働く女性の母性健康管理
 1.男女雇用機会均等法における母性健康管理
 2.労働基準法における母性保護措置
C 出生後の制度や利用できるサービス
 1.出生届(戸籍法第49条,第52条)
 2.低出生体重児の届け出(母子保健法第18条)
 3.養育医療(母子保健法第20条)
 4.未熟児の訪問指導(母子保健法第19条1項,3項)
 5.新生児の訪問指導(母子保健法第11条1項,2項)
 6.育成医療(児童福祉法第20条1項,3項,4項)
 7.診療情報提供
 8.医療保険からの出産育児一時金・配偶者出産育児一時金(健
  康保険法第101条)
 9.出産手当金(健康保険法第102条)
 10.育児休業(育児・介護休業法)
 11.育児休業給付(雇用保険法)
 12.児童に関する各種手当(児童手当・児童扶養手当・特別児童
  扶養手当・障害児福祉手当)
D 育児支援
 1.育児支援家庭訪問事業
 2.その他の事業
 3.相談にのってくれる施設

第4章 保健指導の実際〜具体的な取り組みから〜
A 妊娠・産褥期の保健指導…………………………………服部律子
 1.妊娠中の保健指導
 2.産褥期の保健指導
 3.病院での多胎学級
B 多胎児の親の心の悩みへの対応…………………………空井智子
 1.「同じように」したい親心
 2.育児のスタートの頃
 3.発達に差が出た時
 4.それぞれの意志をあらわす時
 5.義父母のこと
C 双子学級の運営について…………………………………大岸弘子
 1.目的
 2.参加対象
 3.内容
 4.プログラムの実際
 5.講師について
 6.参加者の声
 7.育児ボランティア
 8.活動上の留意点
 9.今後双子学級に求められるもの
D 親の会について………………………………………久保田奈々子
 1.多胎育児サークルの意義
 2.サークルの成り立ち
 3.サークルに参加しない人できない人〜サークルが不要なので
  はない〜
 4.サークルの活動
 5.サークルが抱える問題〜行政サイドがサークルに協力できる
  こと〜
 6.多胎児の親の会の最近のかたち〜メーリングリスト〜
 7.多胎育児サポートネットワーク〜全国的な多胎育児支援を目
  指して〜
E わからないのはあなただけじゃない……………………渋川悦子
 1.多胎児の育児支援事業のはじまり
 2.多胎児の育児支援事業
 3.アンケート調査の実施
 4.現在の朝霞保健所管内の状況
 5.多胎児の育児支援は必要です
 6.母親の声
F 虐待への対応〜予防と支援〜……………………………山田和子
 1.増える虐待
 2.虐待の基本的な知識
 3.多胎児における虐待の発生状況〜双子を中心に〜
 4.支援について
G 生活面での具体的なアドバイス……………………久保田奈々子
 1.それぞれの時期における多胎育児の特徴
 2.授乳
 3.入浴
 4.食事
 5.休養(睡眠・お昼寝)
H 障害をもった子と家族の支援……………………………横山美江
 1.多胎児における障害児の発生状況
 2.障害児をかかえる母親の健康状態と支援

第5章 親からの相談Q&A
Q1 同時授乳にはどのような方法がありますか?どのような点が便
  利ですか?また,どのような場合は無理なのでしょうか?
  ………………………………………………………………大岸弘子
Q2 多胎児を育てる親の気持ちについてどのような点に気をつけれ
  ばよいですか?………………………………………久保田奈々子
Q3 多胎児の親にとって,どのような言葉が一番つらいのでしょう
  か?……………………………………………………久保田奈々子
Q4 双子が成長していく上で,お互いがどのようにふれあい,影響
  しあいますか?……………………………………………空井智子
Q5 不妊治療を受けると多胎児が生まれやすいといいます.子ども
  が大きくなってから,不妊治療のことをどのように説明すれば
  よろしいでしょうか?……………………………………竹内正人
Q6 幼稚園や学校のクラスは同じが良いでしょうか?それとも別々
  のほうが良いのでしょうか?……………………………空井智子
Q7 男女の双子が増えています.それぞれの発達や成長の違いをふ
  まえた親の言葉かけが必要になるかと思いますが,どのような
  点に気をつければ良いでしょうか?……………………空井智子
Q8 多胎育児サークルの情報はどこで手に入りますか?
  …………………………………………………………久保田奈々子

この本の活用のために…………………………………………加藤則子
 1.案内図
 2.チェックポイントとは
 3.育児文化の創生

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序文

はじめに

 双子の育児はその特有の大変さゆえに,特別な支援を必要としま
す.親の声に耳を傾けると,健診や保健指導の場で,こうしてくれ
たらよかった,こんなことを教えてほしかった,という要望がとて
も多いのです.
 そうはいっても,現場の保健師さんたちはとても忙しいです.双
子だけでなく母子保健全般,さらに老人,精神,障害者など,いろ
いろな仕事をかかえていて,その中で,「どのように有効に目的と
する活動にエネルギーを向けていけばよいのか」は,悩みの種だと
思います.これには手引き書が必要になってくるでしょう.多胎行
政支援の実態調査を行なった場合,参考にしたい情報の一位にマニ
ュアルがあげられるのも,このような背景によるものでしょう.
 実際最近では双子の育児に関する書物が増えており喜ばしいこと
だと思います.しかしながら,双子の支援にあたるかもしれないと
いうことでそのすべてを熟読することはできません.おのずと優先
順位が生じるものです.職種としては医師である私が,保健師さん
たちの取り組みの上での優先順位を判断するのは僭越だと思ったの
ですが,緊急かつニードが高いと思ったのでご提案申し上げる次第
です.ご批判いただければ幸いです.
 本書は多胎児の親の方のいろいろな声をすいあげた部分や,実際
に支援する保健師さんの生の声をのせた部分もありますが,読んで
くださるのが保健従事者の方なので,医学用語を用いれば簡潔に説
明できる部分については,ためらわずその方法をとっています.ま
た,地域保健の分野では,地域の情報を積極的に収集していくこと
が重要です.地域の行政のからんだ支援や,多胎児の自主サークル
などの取り組みは,時間とともにどんどん変わるものです.これを
この書物にリストアップするより,現物にリアルタイムでアクセス
していただきたいと思い,どうすればアクセスできるかの記述にむ
しろ力をいれました.また,あとの案内図もご活用いただきたいで
す.妊娠中から幼児期までのさまざまな時期に,それぞれ課題ごと
に本書のどこを見ればよいかが示されています.
 終わりになりましたが,編集に協力下さった久保田奈々子さん,
田中輝子さん,終始暖かくお世話下さった診断と治療社の土橋幸代
さんに心より感謝申し上げます.また,本書の企画にあたりまして
は,ビネバル出版発行の書物をいくつか参考にさせていただきまし
た.
 本書を読むことで,少しでも楽な気持ちで支援に取り組んでいた
だけるようになりましたら幸いです.

2005年1月
国立保健医療科学院 研修企画部  加藤則子




この本の活用のために

1 案内図
 この本をより使いやすくするためののようなものを冒頭のページ
に掲載しましたのでご覧下さい.この本を使っていただく場面には
いろいろなことが考えられます.明日双子の家庭に訪問に行く…,
双子の妊娠届けがあった…,これから母子健康手帳を渡して面接す
る…,あ,そうだ冊子『双子の育児』(平成12年,当時の厚生労働
省から配布されました.現在は母子事業団から買えます.)を探し
てこなければ…,面接では何て言おう…,取りに行ったついでにこ
の本をちょっと見てこようか…,のような,日常すぐに使う必要が
起こることもあるでしょう.また,頻度としてはまれな,むずかし
い状況のケースを抱えている時,どのような注意が必要かという情
報が要ることもあるでしょう.また何か聞かれた時答えられるよう
に知識を仕入れておこうとか,いざというときにあわてないために
知っておこうという場合もあるでしょう.
 そのような用途に応じて,どのページを開けばいいのかというこ
とを,なるべく視覚に訴えてわかりやすくお示ししたつもりです.
この本に書かれた情報は,主にどのような月年齢の双子に,どのよ
うな援助をするか,その時にどのような情報が必要になるかという
ふうに見ていくものです.その中には,このような困難事例をもっ
たら…とか,双子の育児教室を開きたいのだが…,といった内容の
ものもあるように思えます.それらのニード別に,探しやすいよう
にレイアウトしました.ぜひ参考にしていただきたいと思います.

2 チェックポイントとは
 さて,多胎児の健康管理をしていく上で,チェックポイントを知
りたい,ということをよく聞きます.多胎児には小さめに生まれる
など,多くの発育発達上の特徴があり,多少単胎児とは異なること
を念頭にして考えなければならないことはよく言われますが,実際,
多胎児の発育発達が良いかどうかを知る時,どの点とどの点をみれ
ば良いのか,というふうに書かれたものはあまりないようです.実
のところ,双子を見ていく上で,チェックポイントといいますか,
何を見るかということは,単胎児とあまり変わりません.そしてど
の程度まで大丈夫かという,その時点その時点での線引きを細かく
することにはあまり意味はなく,時間が経つにつれそれがどのよう
になっていくのかを見ていくのが重要です.経過観察の結果,これ
はどうも通常の発育発達の状況からどんどんはずれていっている,
と感じる時には問題視する,この方針も単胎児のそれと同じです.
その上で,双子の特性に留意していけば良いと思います.つまり特
性の主な点としては,早めに小さく生まれると言うことに関してと,
ことばの発達についてが主なポイントになると思います.大木先生
がすでに詳しく解説してくださっていますが(第1章),その要点
をまとめると以下のようになると思います.
 双胎児の出生体重は単胎児のそれより小さいので,双胎児の出生
体重を単胎児用の基準値で評価すると,余計にハイリスク扱いにな
り,また,実はハイリスクであるものを,かえってわかりにくくす
る恐れもあります.双胎を含め多胎専用の出生体重の基準が一般化
される必要があるということを,大木先生にお示しいただきました.
一般に,双胎児と単胎児の体重・身長の差は,1歳までに顕著な回
復を見せ,その後も回復傾向を続けます.学童期になれば単胎児と
の差はほとんど消失しています.双子の赤ちゃんの間で出生時の体
重や身長が異なるのは,赤ちゃんがおなかのなかにいる時の胎盤を
介する臍帯血管からの栄養が異なっていたためと思われます.生後
の発育が異なるのは,男女差,発育のタイプの個人差,体質の個人
差などの他に,まれに発育障害が症状の一部となる疾患である場合
もあります.
 予定日から早く生まれた場合はその分を差し引いて,修正した月
齢で考えるのがいいでしょう.双胎の場合,平均的な妊娠期間は37
週と1日ですので,多胎のほとんどの例では,この差し引きをした
ほうが良いことになります.発育の場合も発達の場合もそうです.
多胎児の間で体の大きさが違っても,一人一人が個人なのだから育
ちも違って当たり前なのです.同じ子どもでも飲まない時,食べな
い時があるように,元気で機嫌が良ければ,必要は満たしていると
考えて良いのです.
 くびの座りや寝返り,歩き始めなどが遅いと感じた時でも,いた
ずらに不安がるのは良いことではありません.しかし逆に見逃せな
い兆候を楽観的に考えてしまうのも早期発見に結びつきにくくする
一要因ともなります.
 双子の赤ちゃんの成長は,体の大きさばかりでなく,知的な面で
の発達も大切です.お母さんの優しい眼差し,優しいことばがけが,
赤ちゃんの精神面や感情面での発達に大切なのはいうまでもありま
せん.きれいな音楽,美しい絵本などで視聴覚を十分刺激したり,
また,平衡感覚やバランスを刺激する運動も工夫してみてください.
多胎児のことばが遅れがちであるのには,いろいろな理由があると
言われています.たとえば,多胎児の育児が忙しいため充分な言葉
かけができず,矯正したり教えたりしにくいとか,多胎児が母の気
をひくために急いで話しかけようとして早口になってしまい発音が
はっきりしないとか,多胎児同士の非言語的コミュニケーションが
成り立ってしまって意志の疎通が良すぎる,などがその原因と言わ
れています.
 多胎児の言語の発達がゆっくりだと,母親はさまざまな言葉かけ
によって,悩む場合もあり,救われる場合もあります.
 「いろいろな観察による検査をして,その他に特別障害や異常は
見られない,ことばの遅れはあっても,人のいうことも理解できて
いるし,心配はないだろうと言われました.その専門家の言葉によ
り救われた気持ちがしました.」
「3歳の健診では,積極的な言葉かけ,それも1対1で行なうように
と言われました.でも私はそういうことは随分意識してやってきた
つもりでした.しばらく経ってから,言語治療士に出会うことがで
き,百人の子どもがいればそのうちの10人は何の障害も異常もない
という話を聞きました.一割も….うちの子はまさにそれでした.
忙しいから仕方がないと言われるとつい自分を責めたくなっていま
した.『言葉かけを一生懸命したり,絵本を読み聞かせたり,母親
がしてやるべきことをちゃんとやっていてもことばの遅い子はいる
し,また何もしてやらなくても早い子もいるよ.』という言葉に救
われました.数年後,よくしゃべれるようになり,心配していたの
が嘘のようになりました.他に異常がないなら気長に見ていけばい
いのです.心配していた時の気持ちは忘れられません.」
 ことばの遅れに関しては,自分の判断だけで悩むことのないよう
に,例えば親しい友人に相談してみるとか,先輩ママの意見を聞い
てみるのも良いでしょう.母親がドーンと落ち着いて子どもを受け
とめてあげることが一番なのです.

3 育児文化の創生
 お読みいただきましたように,多胎児の育児は単胎児のそれとは
想像もできないような負担の大きいものです.それをなんとかのり
きっていこうと,親は必死でいろいろな工夫をします.食い入るよ
うに情報を探します.いわゆる「手抜き」と言われるかもしれない
ことも,それで保護者が疲れすぎず,対児感情をまあまあのところ
にもっていられるのなら,むしろ勧められることでさえあるという
場合もあります.多胎児には多胎児の目安があるというのは何も発
育や発達のことだけではありません.
 多胎児特有の,さまざまな工夫の生かされた育児方法.初めてみ
ると一瞬驚くような方法でも,必要が生んだこのような方法は大変
すばらしいものだと思います.これは一つの文化として位置づけら
れるに違いありません.その代表的なものの一つが同時授乳でしょ
う.が,それに限らず,さまざまなアイディアや裏技,微妙なタイ
ミングや手順のコツ….それらすべてが賞賛に値する文化であるよ
うに思えてなりません.
 この文化に市民権をもたせていくことが,多胎児支援の必要性を
社会に広く認知していってもらうことにつながると思うのです.そ
してこの文化を親の会などを通じて伝承し,また創意工夫によって
新しい文化をつくっていく,このいとなみを,保健従事者もぜひサ
ポートしていきたいと思うのです.
(加藤則子)