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書籍詳細

あなたが育てる自閉症のことば
2歳からはじめる自閉症児の言語訓練診断と治療社 | 書籍詳細:2歳からはじめる自閉症児の言語訓練
~子どもの世界マップから生まれる伝え方の工夫~

福岡教育大学

藤原 加奈江(ふじはら かなえ) 著

初版 B5判 並製 96頁 2005年10月14日発行

ISBN9784787814128

定価:本体1,900円+税
  

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言語聴覚士,心理士,保育士,保健師,医師などのスタッフ,家族 を対象に,子どもの世界マップを活用し,ことばを育てていく具体 的な方法を,場面ごとにイラストを多用してわかりやすく解説した 一冊.

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目次

目次

はじめに

I ことばとコミュニケーション
 A.自閉症とことば
 B.ことばとコミュニケーション
 C.コミュニケーションとは

II コミュニケーションの発達と自閉症
 A.ことば以前のコミュニケーション
  1.アイ・コンタクト(視線の使い方)
  2.感情のコミュニケーションの発達
   a.顔の認知の発達
   b.感情表現,感情理解
  3.模  倣
  4.発声と喃語
  5.ジェスチャーによるコミュニケーション
 B ことばによるコミュニケーション
  1.ことばの出現
  2.1歳児のコミュニケーション
   a ことばの理解
   b ことばの表出
   c その他のコミュニケーション・スキル
  3.2歳児のコミュニケーション
   a.ことばの理解
   b.ことばの表出
   c.その他のコミュニケーション・スキル
  4.3歳児のコミュニケーション
   a.ことばの理解
   b.ことばの表出
   c.その他のコミュニケーション・スキル
  5.4〜5歳児のコミュニケーション
   a.ことばの理解
   b.ことばの表出
   c.その他のコミュニケーション・スキル

III 自閉症の見立て
 A.診断としての見立て
  1.広汎性発達障害と自閉症
  2.自閉症スペクトラム
  3.高機能自閉症,高機能広汎性発達障害
  4.診断にまつわるトラブル
  5.言語障害との違い
  6.AD/HDとの違い
  7.LDとの違い
  8.個性か障害か
 B.支援のための見立て
  1.チームで行う評価
  2.情報を集める
   a.既成の検査
   b.その他の情報収集
  3.クールな目で子どもたちを観察することの大切さ
  4.子どもの世界を探る3つのマップ

IV ことばを育てるために
 A.子どもたちの世界をわかりやすく整える
  1.子どもの世界をわかりやすく整える工夫
   a.まずは日々の生活体験から気づく
  2.意図的にものの使い方を紹介する
  3.こだわりは力なり
 B.伝えられる経験と伝える経験:コミュニケーションの紹介
  1.もの(実物)を使って「伝えられる」経験をする
  2.「伝えること」を経験する
   a.要求を伝えることに気づいていない場合
   b.すでに行為で要求している場合
   c.困った行動(問題行動)はシンボルを紹介するよい機会
 C.コミュニケーション・シンボルについて
  1.シンボルの種類
  2.新しいことは確実なシンボル・レベルで
  3.シンボル・レベルは状況に応じて変えるもの
  4.シンボルの長さ
 D.時間の壁をスケジュールで乗り越える
  1.子どもが求めている情報を提供する
  2.自分をコントロールする力を増す
  3.苦手な変化に対抗する力を増す
  4.スケジュールまでの移動の工夫
  5.大人が子どもを思うように動かす手段ではない
 E.一人ひとりの子どもの世界に合わせて伝える
  1.例:「今は水遊びをしない」ことを伝えたい
   a.A君(5歳)の「世界マップ」(関係すると思われる項目の抜粋)
   b.Bちゃん(5歳)の「世界マップ」(関係すると思われる項目の抜粋)
   c.C君(5歳)の「世界マップ」(関係すると思われる項目の抜粋)
  2.伝え方の工夫のための3つのステップ
 F.見直そう,ことばのかけ方
  1.曖昧な表現をしていませんか?
  2.余分なことばかけは混乱のもと
  3.「だめ」はショックを与えるだけ
 G.最大の難関,苦手な表出を支援する工夫
  1.表出の3つのステップ
   a.こんな便利なものがあることを紹介する
   b.嫌なことを避けられる経験も大切
  2.自分で考えていいことを伝える
  3.伝える方法を紹介する
   a.伝える方法の紹介のしかた
   b.紹介する場面はわかりやすく
   c.焦らず確実さを優先させて
   d.思い込みで紹介の機会を逃さないように
   e.いわゆることばの訓練
   f.語彙を増やす
   g.文を組み立てる
   h.お話を組み立てる
   i.より高度な表現方法を紹介する
  4.「伝えること」を実行する
 H.チームで育てる子どものことば

おわりに
あとがき

チェックリスト
 アイ・コンタクト
 顔の認知
 感情表現
 感情理解
 模  倣
 発  声
 ジェスチャー
 遊び方
 感  覚
 記  憶
 認  知
 注  意
 衝動性
 自発性
 計  画
 モニター力
 運動機能
 不安のコントロール
 好きなこと,嫌いなこと
 伝え手として

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序文

自閉症の子どもたちと一緒に過ごすとき,「どうして,わかって
くれないのかな…」とか「どうしてこんなことするの!意味わから
ない!」と途方にくれることがよくあります.本書は,この二つの
「どうして」を「ああ,それでなんだ」に変え,そしてさらに「じ
ゃ,こうすればいいのかも」とすることをめざしています.また,
自閉症のことばを育てるのは言語訓練室のなかではなく,日々の生
活の場こそが大切だと考えています.特に,就学前の子どもたちに
とっては,1日のうち長く時間を過ごす,お母さんをはじめとする
ご家族の役割は大きいものになります.言語聴覚士,心理士,保育
士,保健師,医師などのスタッフ,そして家族が共通の理解をもっ
て子どもたちを支援するとき,子どもたちのことばがぐんぐん育つ
のだと思っています.本書は,子どもたちに関わる方が一緒に読め
る本をめざし,イラストや漫画をたくさん使い「わかりやすく」を
モットーにしました.さらに,各項目ごとに「チェックリスト」を
設け,今までと違った視点から子どもたちを観察し,子どもたち一
人ひとりの世界を探るツールにしました.また,実際に出会った子
どもたちから教えてもらった貴重な経験を「子どもたちから」につ
づりました.そして,最近の自閉症研究の話題を「コラム」にまと
めました.

A ことばが通じるということ
 生まれてから,「見る」という経験がない方や「聞く」という経
験がない方に「赤い帽子を取って」と言ったり,「太鼓の音を合図
に歩いてください」と言っても伝わり難いですね.ことばが通じる
ためには,見えているものがだいたい同じ,聞こえているものがだ
いたい同じ,食べるとか寝るとか経験がだいたい同じ,つまり,お
およそ世界が同じであることが必要になってきます.

B 未知の世界
 「雨があたると頭にアナが空く」と雨を痛がる自閉症の子どもが
います.見えない自分の背中は存在しないと感じる自閉症の方もい
ます.自閉症では感覚だけでなく,情報の整理の仕方,記憶の仕方,
感情の理解や表現の仕方など色々な面で私たちと違っていることが
知られています.つまり,同じ空間にいるけれども別な世界に生き
ているのです.そして,その世界は私たちにとって未知の世界です.

C 自分から伝えることと想像が苦手な子どもたち
 違った世界に住んでいても,「ここはこんな風に違うんだね」と
伝え合ったり,想像力を働かせて「こういう事なのかもしれない」
と理解すれば,世界の違いをわかり合うこともできるでしょう.と
ころが,困ったことに自閉症の子どもたちは自分から伝えることや
想像力を働かせて相手の状況を推測することが苦手です.そのため,
私たちの方から子どもたちにわかるように,伝える方法を探し出す
しかありません.そのためには,子どもたちが,何がわかって何が
わからないのかを知る必要があります.自閉症の子どもたちは,わ
たしたちが想像するよりもはるかに個人差が大きいので,一人ひと
りの世界を私たちの手で探っていかなければなりません.

D 子どもの世界マップ
 子どもたちの世界がどうなっているのかを探るための方法として,
本書では3つの子どもの世界マップを提案しています( 図34:56,
57ページ参照,図31:44ページも参照).一つは感覚,運動,認知,
ことばなど現在の子どもの持っている特徴とスキルなどをまとめた
「特徴・スキルマップ」,二つめは子どもが1日をどう過ごしている
かの「時間マップ」,三つめは子どもがどこへ行って何をしている
かの「空間マップ」です.この3つのマップを合わせて,子どもの
世界が立体的に見えてくることを期待します.そして,そのマップ
をもとに子どもにわかるように伝える工夫を探します.

E もう一つの知識
 自閉症の子どもたちのことばを育てるために,子どもたちの情報
に加えてもう一つ知っておかなければならないことがあります.そ
れは,ことばについての知識です.私たち自身が,自分たちが使っ
ていることばがどんなものかということを知っておく必要がありま
す.そして,自閉症の子どもたちのことばは,それとどこがどんな
ふうに違うのかということを知ることが,効果的にことばを育てる
鍵になります.本書では,まず,私たちが使っていることばとその
習得についてお話し,自閉症の子どもたちではどこが違うのかをみ
ていきます.次は子どもたちの一人ひとりの世界マップづくりで,
どんな情報をどのように集めていくかをお話します.そして最後に,
その子どもの世界マップを使って子どものことばを育てていく具体
的な方法についてお話します.