研修医・若手医師が困る『体液異常への対応』と『輸液処方』に役立つ!
本書の特徴:①体液の基礎から,体液異常の鑑別診断,治療まで解説,②体液異常ごとのフローチャートで鑑別の手順がわかる,③学習内容ごとに症例解説・演習問題があり,理解を深められる.
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目次
執筆者一覧
序
…………………………………大平整爾
学習を始める前に
重要事項と臨床で頻出する数式
…………………………………河田哲也,伊丹儀友
体液組成の基礎
細胞内液,細胞外液中の電解質
腎臓の構造と機能
臨床で頻出する数式
血漿浸透圧推定式
アニオンギャップ
日本腎臓学会が推奨する日本人用のGFR推算式
Schwartzの式
尿中x排泄率
A-aDO2
●診断・治療のアルゴリズム
1日目 水分バランスとその異常
…………………………………小松康宏
①水分バランスの調節機構
a 水分バランスの調節因子
b 血清Na+濃度
②水分バランス異常の結果としての低Na血症,高Na血症
a 低Na血症
b 高Na血症
症例で確認しよう
演習問題
2日目 ナトリウム(Na)バランス(体液量の恒常性維持)とその異常
…………………………………河田哲也
①Na+の基本生理学
a Na+の体内分布
b Na+の体内動態
c Na+の生理作用
d Na+バランスの調節機構
②Na+バランス異常(ECFの量的異常)
a Na+バランス異常の評価
b ECF過剰(=Na+過剰)
c ECF減少(=Na+喪失)
症例で確認しよう
演習問題
3日目 カリウム(K)バランスとその異常
…………………………………白髪宏司
①K+の基本生理学
a K+の体内動態
b K+の濃度調節酵素
②K+バランス異常
a 血清K+の濃度異常(概要)
b 低K血症
c 高K血症
症例で確認しよう
演習問題
4日目 カルシウム(Ca)・リン(P)バランスとその異常
…………………………………横山啓太郎
①Ca2+の基本生理学
a Ca2+の体内分布と体内動態
b Ca2+バランス調節因子
c 血清Ca2+値の補正
②Ca2+バランス異常
a 低Ca血症
b 高Ca血症
③Pの基本生理学
a Pの体内分布と体内動態
b Pの恒常性と調節機構
c 血清P値
④Pバランス異常
a 低P血症
b 高P血症
症例で確認しよう
演習問題
5日目 マグネシウム(Mg)バランスとその異常
…………………………………平山智也
①Mg2+の基本生理学
a Mg2+の体内分布
b Mg2+の体内動態
c Mg2+の生理作用
②Mg2+バランス異常
a 低Mg血症
b 高Mg血症
症例で確認しよう
演習問題
……………………………………………………………………
Coffee Break
腎性骨異栄養症の変遷
恩師のA先生との食事
ケトアシドーシスへの対応について
「先生,血糖が高いのですが」
低K血症の合併症
抗アルドステロン薬はrenal aspirin!?
……………………………………………………………………
6日目 代謝性酸塩基平衡障害
…………………………………森 篤史,西野友哉
①酸塩基平衡の基本事項(1)
a 代謝と酸塩基平衡
b 血液のpHと血液ガス
②代謝性酸塩基平衡障害
a 代謝性アシドーシス
b 代謝性アルカローシス
症例で確認しよう
演習問題
7日目 呼吸性酸塩基平衡障害・混合性酸塩基平衡障害
…………………………………原田孝司
①酸塩基平衡の基本事項(2)
a 肺胞換気と酸塩基平衡
②呼吸性酸塩基平衡障害
a 呼吸性アシドーシス
b 呼吸性アルカローシス
③混合性酸塩基平衡障害
④酸塩基平衡障害の分類
症例で確認しよう
演習問題
8日目 輸液の基礎と高カロリー輸液
…………………………………戸川 証,加藤明彦
①輸液の基礎と維持輸液
a 必要水分量
b 電解質
c 輸液製剤
②是正輸液(脱水の補正)
③高カロリー輸液
④輸液速度の決定法
症例で確認しよう
演習問題
9日目 小児における水・電解質異常
…………………………………伊丹儀友
①小児の体液バランス異常
a 脱水
②小児のNa+バランス異常
a 低Na血症
b 高Na血症
③小児のK+バランス異常
a 低K血症
b 高K血症
④小児のCaバランス異常
a 低Ca血症
b 高Ca血症
⑤小児のPバランス異常
a 低P血症
b 高P血症
⑥小児のMgバランス異常
a 低Mg血症
b 高Mg血症
⑦小児の酸塩基平衡障害
a 代謝性アシドーシス
b 代謝性アルカローシス
症例で確認しよう
演習問題
10日目 手術前後の水・電解質異常
…………………………………渕之上昌平
①周術期の体液バランス
a 周術期脱水のおもな原因
②周術期の電解質異常
a Na+の異常
b K+の異常
③周術期の輸液
症例で確認しよう
演習問題
11日目 高齢者における水・電解質異常
…………………………………松村 治
①高齢者における体液環境の特徴
②高齢者の腎機能
a ネフロンの構造
b 腎機能の評価
③高齢者の水・電解質異常
a 水(体液量)の異常
b Na+の異常
c K+の異常
d Ca・P・Mgの異常
e 酸塩基平衡の異常
症例で確認しよう
演習問題
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序文
腎機能として,1)血圧に関与するホルモン(レニン)の生成分泌,2)造血促進因子(エリスロポエチン)の生成分泌,3)ビタミンDの活性化などが注目されていますが,「体液の質的および量的恒常性を維持する」機能を最も基本的なものとして捉える必要があります.
具体的には尿の排泄に伴う過剰水分および物質・老廃物・薬剤の排出であり,血液pHの調整となります.
腎機能がある程度以上保持されている状態下では,水分・電解質・酸塩基の平衡は自動的に調整されるものなのですが,いったん腎機能に障害が生じると日常臨床で卑近に行われる輸液の投与,利尿薬やその他薬剤の処方などにも細やかな配慮が必要となります.昨今のように慢性腎臓病(CKD)を有する高齢者が加療対象者として増加してくると,当該患者の腎機能を正確に把握したうえで(すなわち,CKDのステージ分類を意識した)綿密な治療計画を定める必要性が一段と高まります.慎重な配慮を欠く輸液や薬剤の投与は,予期しない悪影響を患者にもたらすことがまれではありません.
腎機能の基本的な知識なくして,今やいかなる薬剤・輸液も行い得ないことを銘記しなければなりません.
そこで本書は,医療現場のあらゆる場面で必要不可欠な知識と技術である輸液療法を中心に据え,研修医・若手医師を読者対象として,臨床の現場に即した基本的要点を簡明・明解に提示することを目論みました.各章では,それぞれの基本生理学,定義,臨床症状,診断と鑑別,原因,治療法などに言及し,さらに具体的な症例および演習問題を掲げて理解を深めるような構成に努めました.
本書による短期間の集中的な学習により,研修医・若手医師が取得すべき,必要最低限の水分・電解質・酸塩基平衡などに関する諸事項を身に付け,諸賢の臨床能力を一段と高めることを期待したい所存です.
2010年3月
札幌北クリニック
大平整爾