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食べて治す食物アレルギー診断と治療社 | 書籍詳細:食べて治す食物アレルギー
特異的経口耐性誘導(SOTI)

神奈川県立こども医療センターアレルギー科

栗原 和幸(くりはら かずゆき) 著

初版 B5判 並製 104頁 2010年05月07日発行

ISBN9784787817686

定価:本体3,400円+税
  

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食物アレルギーの根本治療として,経口免疫療法が着目されている.「ちょっと食べてみる」から始まった特異的経口耐性誘導(SOTI)について,著者の実施経験・その方法について紹介した.

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目次

Contents

 はじめに  

                     ★:“新しい考え方”において検討課題となる部分

第1章 食物アレルギーの現況とその問題点

   1.食物アレルギーの頻度
    1)食物アレルギーの真の罹患率★ 
   2.食物アレルギーの症状
    1)反応の起こる部位★ 
    2)遅発型反応★ 
    3)アトピー性皮膚炎の原因としての食物アレルギー★ 
    4)アトピー性皮膚炎の新しい理論★ 
    5)アナフィラキシー★ 
   3.食物アレルギーの診断
    1)特異的IgE★ 
    2)プリックテスト★ 
    3)ヒスタミン遊離試験★ 
    4)除去試験★ 
    5)負荷試験★ 
    6)ちょっと食べてみることの重要性★ 
   4.食物アレルギーの治療
    1)クロモグリク酸ナトリウム細粒★ 
    2)抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)の選択★ 
    3)アタラックスィ-Pの注射は使うべきでない★ 
    4)ステロイド★ 
    5)β2刺激薬★ 
    6)ロイコトリエン受容体拮抗薬,PAF受容体拮抗薬★ 
    7)アドレナリン(エピネフリン)★ 
   5.即時型食物アレルギー反応の治療チャート
   6.問題点のまとめと現状

第2章 新しい理論─実は新しくない─

   1.免疫療法(減感作療法)
    1)免疫療法が有効なハチ毒アレルギー 
    2)国民病とさえいわれる花粉症には免疫療法を 
    3)免疫療法が有効であった職業喘息の報告 
    4)食物アレルギーに対する免疫療法(注射法) 
    5)アレルギー性鼻炎に対する免疫療法 
    6)わが国における免疫療法の現状 
   2.経口免疫寛容
    1)患者指導用パンフレット 
    2)1911年の論文 
    3)動物実験における経口免疫寛容のデータ 
    4)経口免疫寛容の免疫学的機序 
    5)経口免疫寛容の臨床応用 
    6)アレルゲン除去の大原則は食物にあてはまらない 
   3.予防的除去の検証
    1)母乳か人工栄養か 
    2)母親の食事制限は必要か 
    3)予防的食物除去の試みと失敗 
   4.食物アレルギーの発症機序─経皮感作の可能性─

第3章 特異的経口耐性誘導(SOTI)
  
   1.特異的経口耐性誘導(SOTI)の歴史
    1)始まりは1908年か 
    2)その後の経緯 
    3)最近の評価 
   2.筆者の取り組み
   3.急速特異的経口耐性誘導(rush SOTI)
    1)一般的な注意点 
    2)目的 
    3)対象 
    4)方法 
    5)筆者の経験から 
    6)rush SOTIの考察 
   4.緩徐特異的経口耐性誘導(slow SOTI)
    1)rush SOTIよりも重要─基本は「ちょっと食べてみる」─ 
    2)目的 
    3)対象 
    4)方法
   5.今後の課題
    1)除去か耐性誘導か 
    2)rushかslowか 
    3)実施方法の改善 
 
第4章 発症予防は可能か

   1.アレルギー疾患の増加
   2.食物アレルギーの特殊性─経口免疫寛容─
   3.食物アレルギー予防に関するこれまでの知見のまとめ
   4.今,どうするか

 索引

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序文

はじめに

筆者は,ここ数年来意識の端に浮かんでいた特異的経口耐性誘導(specific oral tolerance induction : SOTI)に関するアイデアを徐々に具体化し,プロトコールを完成して院内の倫理委員会を通過させた.そして2007年9月,急速特異的経口耐性誘導(rush SOTI)の最初の症例の経過を固唾をのんで見守っていた.花粉症などに対する急速免疫療法(減感作療法)で1日5回注射する治療はルーティーンの治療として行っており,注射が経口摂取に替わるだけという楽観的な気持ちの反面,散々な結果の心配もないわけではなかった.患児はアナフィラキシー既往の卵アレルギーの9歳女児で,事前に行った二重盲検プラセボ対照食物負荷試験での生卵白の症状誘発閾値は0.36gであった.1日5回,卵白を毎回増量する過程で,ひどくはないが皮膚症状や消化器症状を繰り返し,増量は一進一退であった.やはりそう甘くはないかと思われたが,途中からはどんどん順調に増量が可能となった.当初は数グラムでも食べられるようになればと思っていたが,18日目にはゆで卵1個が食べられるようになった.
この症例は,これまでなら「あなたは一生卵は食べられない,間違えて食べると危ないので完全除去を」と指導していたはずだが,この大きな成果に励まされて症例を増やしていくと,次々に目を見張る成果が確認できた.食物アレルギーについて改めて勉強し直すうちに,食物アレルギーに対する経口免疫療法,耐性誘導療法は,1990年代からポツポツと,どちらかといえば非主流の研究者達が少しずつその成果を発表していることを知ったが,これまで一般的に考えられ行われている食物アレルギーの対応は,実はもっと根本的なところで,大きな誤りを犯しているのではないかという考えに到達することになった.
筆者は,2008年12月発刊の日本小児アレルギー学会誌に「食べれば,食物アレルギーは治る─True or wrong?(日本小児アレルギー学会誌 2008:22;737-744)」という総説を書いた.このときはまだ「True or wrong?」を末尾につけざるをえなかったが,その後,時間の経過とともに「Yes, it' s true!」であることの確信を深めつつある.
新しい理解に沿って食物アレルギーの対応方法を変えていくことで,①これまで公的にまとめられているガイドラインや手引きには全く存在しなかった「食物アレルギーそのものの治療」が可能となるのではないか,②そして食物アレルギーは,指導する医療者側も実践する患者側も実はもっと楽に対応できるのではないか,③さらには食物アレルギーの一部は予防が可能なのではないか,といったことを考えるようになり,本書をまとめることを決心した.
 食物アレルギーの人にアレルゲンとなる食品を食べさせるという方法は基本的にある程度の危険性を秘めており,この方法を慎重に広く実践していただくなかで,効果を発揮する免疫学的機序が解明され,より安全でより確実な実施方法が確立されていくことを祈願する.
読者諸兄のご批判を仰ぎたい.

2010年4月
栗原和幸