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医療の生産性向上と組織行動診断と治療社 | 書籍詳細:医療の生産性向上と組織行動
黒字経営へのプロセス改革

日本生産性本部めいこく会・社会福祉法人武蔵野館理事

渡邉 孝雄(わたなべ たかお) 著

産業能率大学医療マネジメントコース講師

小島 理市(こじま りいち) 著

春日部厚生病院看護部長

佐藤 美香子(さとう みかこ) 著

初版 B5判 並製 176頁 2010年11月25日発行

ISBN9784787818171

定価:本体2,800円+税
  

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医療経営を生産性の視点で捉え,組織の活性化と経営改善を成功させるための考え方とノウハウを解説.わかりやすい用語解説やコラム,実践に役立つ具体例を満載した.

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目次

はじめに―本書の利用にあたって


第 Ⅰ 章 経営理論としての生産性
1 生産性とは
 1. 生産性とは
  1) 定義 2) 生産性の要因 3) 生産要素の寄与度と再定義
  4) 生産性とマネジメント 5) 生産性向上で考慮すべき視点
  6) 病院の生産性 7) 未来戦略のための成果配分
 2. 付加価値とは
 3. 労働生産性とは
  1) 労働装備率(K/L) 2) 資本生産性(O/K) 3) 付加価値率(V/OP)
2 経営指針(ガイドライン)としての生産性(計数管理)
 1. 損益計算書から損益分岐点分析(CVP分析)をする
  1) 収益の増加 2) 変動費の低減 3) 固定費の削減
  4) 総合的取り組み
 2. 部門別生産性の把握―管理会計制度の活用
 3. 決算書以外のデータによる分析―戦略情報システム(SIS)
3 イノベーションと生産性向上
4 機会原価(Opportunity Cost)と生産性向上
5 マネジメントと生産性向上
 1. 経営理念と生産性向上(ストレッチ・レバレッジ)
  1) ストレッチ(stretch) 2) レバレッジ(leverage)
 2. 経営戦略と生産性向上
 3. 組織文化と生産性向上
 4. 品質管理・品質保証(QA)と生産性向上
6 マーケティングによる生産性向上
7 ドライバー・KFSからみた生産性向上
 1. 平均在院日数の短縮
 2. 設備実働率の向上
  1) 病床稼働率の向上 2) 高度先進医療設備の実働率の向上
8 生産性向上で人間性疎外を克服・モラール(morale)向上

 
第 Ⅱ 章 病院の生産性の現状と分析 
 1. 病院の労働生産性
 2. ベンチマークとしての労働生産性
 3. 病院の労働生産性が著しく低い原因
 4. 看護師の労働生産性が低い原因
  1) 離職率の高さと低生産性 2) 間接業務時間の多い看護業務
  3) 高コスト業務,不採算業務を多く負担している看護部門
  4) 他科の応援をする看護師


第 Ⅲ 章 病院における生産性向上の方法・事例 
1 経営資源の有効活用の事例
 1. ヒト―最も重視される経営資源・人材育成
  1) 組織開発(OD) 2) 人事評価制度
   事例紹介 1 医師のケース(医師の活性化)   
   事例紹介 2 医師のケース(医師の評価制度)   
   事例紹介 3 看護師のケース(7対1導入の功罪)  
   事例紹介 4 看護師のケース(申し送りの廃止)  
   事例紹介 5 臨床工学技士(役割の明確化とUR)  
   事例紹介 6 ボランティア(目に見えない高い貢献度)  
 2. モノ―目に見える経営資源,管理方式が生産性向上に影響大
   事例紹介 7 事務部門・薬剤部・中央材料室(ロジスティックの重要性)
   事例紹介 8 高額医療機器のUR(確たる見通しをもって導入) 
   事例紹介 9 空きスペースの活用(機会利益を生むスペース)  
 3. カネ―広範な医療活動を支える資金力(経営資源)
   事例紹介 10 診療報酬請求漏れ対策(役割分担と相乗効果) 
   事例紹介 11 未収金の回収(将来の増加を見据えた対応) 
 4. 情報―医療および経営に不可欠な役割を担う経営資源
   事例紹介 12 戦略的情報システム(SIS)の事例と今後の課題  

2 イノベーションと生産性向上に関する事例
   事例紹介 13 病院のイノベーション(外科系手術に適用される腹腔鏡手術) 
   事例紹介 14 業務のスキルアップの提案(タスクごとに標準時間を設定)  
   事例紹介 15 IT技術の駆使(携帯から閲覧できる患者カルテ,24時間面会可能)
3 経費削減による生産性向上の事例
  1) 付加価値率向上へのアプローチ 2) 作業・時間の合理化
  3) 外部委託費の削減
   事例紹介 16 コスト削減の取り組み方(ムダ・ムリ・ムラの削減)  
   事例紹介 17 医薬品・医療材料のコスト削減の提案 
   事例紹介 18 SPDについての提案  
4 経営理念・経営戦略によるストレッチ・レバレッジの事例
   事例紹介 19 経営理念とリーダーシップ・組織文化 
5 経営戦略による生産性向上の事例
   事例紹介 20 戦略志向の高い病院
   事例紹介 21 地域保健医療を中心とする経営理念の高い病院 
6 組織風土改善による生産性向上の事例
   事例紹介 22 経営参加で職員の創意工夫を引き出す病院 
   事例紹介 23 組織風土の醸成にシステムを活用
7 品質管理・品質保証による生産性向上の事例
   事例紹介 24 ブランド化した専門病院  
   事例紹介 25 医療事故防止をTQCからTQMへ発展させて対応 
   事例紹介 26 トップダウンによる医療事故防止体制の限界 
   事例紹介 27 クオリティクラス認証(JHQC)  
8 マーケティングによる生産性向上の事例
 1. 立地条件によるマーケティング
 2. ランチェスター戦略
 3. マインド・シェアとハート・シェア
 1) マインド・シェア向上とPR活動・広報活動
 2) ハート・シェア向上
   事例紹介 28 立地条件を脱却するさまざまな試み  
   事例紹介 29 スポーツメディシンで地域ニーズに対応  
   事例紹介 30 食事・配食サービスを地域介護へ展開  
   事例紹介 31 地域住民に親しまれる広報誌  87
   事例紹介 32 患者満足度(PS)・職員満足度(ES)を追求する病院  
9 総合的取り組みの事例
  1) サウスウエスト航空の事例 2) 四谷メディキューブの事例 
  3) 亀田総合病院の事例 4) レガシィ医療財団の事例
   事例紹介 33 サウスウエスト航空の業界革命  
   事例紹介 34 四谷メディキューブの事例  
   事例紹介 35 亀田総合病院の事例  
   事例紹介 36 レガシイ医療財団の事例  
 

第 Ⅳ 章 看護の可視化と生産性
1 看護部門の生産性
 1. 看護の生産性とは
  1) 看護は生産性がある 2) 生産性向上は業務の仕組み,システム化
 2. 看護の背景・経緯と生産性の重要性
 3. 看護の生産性の測定
  1) 消費した経営要素のインプット 2) 医療活動の成果(アウトカム)
  3) 医療サービスの成果を「質」と「量」から測定
 4. 看護の労働生産性
 5. 看護の付加価値生産性
 6. 看護を取り巻く生産性の課題
 7. 看護の生産性向上の対策
2 看護の生産性の変革
 1. アメリカの医療・看護の現状
 2. 生産性向上のための看護方式
  1) 看護方式の種別 2) 看護方式導入の必要性
  3) 看護方式の導入の留意点
 3. 看護管理体制の適正化の必要性
  1) 看護単位をアメリカ並みに
  2) 2交替制のほうがスタッフの満足度が高い
   事例紹介 37 負荷加重時間帯の工夫で看護職員の意欲向上 
 4. 看護情報システムの整備
  1) 看護記録は重要な証拠
 5. 看護活動の業務の効率化
  1) 直接ケア時間の中には,看護補助者に委譲できる業務がある
   事例紹介 38 他職種ができるスキルを委譲して呼吸器ケア業務の
一部をコラボレートしよう  
 2) 看護補助者に業務を委譲
   事例紹介 39 スキルミックスを活用して看護の生産性を向上しよう
   事例紹介 40 回復期リハビリ病棟の主体的看護の取り組みによる生産性の向上  
 6. 看護要員管理
  1) 日本の従来の要員管理手法の欠点,
  2) 診療報酬としての看護の生産性
  3) アメリカにおける看護要員配置
 7. 生産性の成果・アウトカムの指標
  1) 経営資源適正活用評価(UR)
  2) 看護必要度による看護方式システム
  3) 看護活動の質の保証 4) マグネットホスピタル
  5) アメリカ看護協会のアウトカム指標
  6) 看護活動のコストとしての生産性
  7) アメリカで活躍するRN,CNC,NPの業務における相違点
3 人財育成と看護の生産性
 1. 目標管理(MBO)
  1) MBOはスタッフ自らがポジティブに取り組む仕組み
  2) MBO成功の鍵は管理職の支援 3) 管理職との面接が重要
 2. キャリア開発(CDP) 
  1) キャリアとは人間の生き方,表現 
  2) 個人のニーズと組織のニーズがマッチするようにする 
 3. 人事評価制度 
  1) 組織の求める個人の期待像を明確にする  
  2) 技能の高い看護師の態度や行動はベストプラクティス 
 4. コーポレート・ガバナンス 
 5. 看護の生産性に影響する諸要因の動向 
  1) ワークライフバランス 
  2) 子育て支援策―子育て中の短時間勤務制度の義務化 
   事例紹介 41 安心して働ける環境の提供による生産性の向上 
  3) 介護休業法 4) 特定看護師 5) 新人看護師臨床研修制度 
  6) 近代看護理論と看護の生産性 
 6. 近代看護理論と看護の生産性 
 7. 看護の生産性の展望と理念・リーダーシップ 
  1) 組織文化と看護の生産性の向上 
  2) 自己実現と働きがいのある職場づくり 
  3) 個人別のキャリア開発プログラムと組織の変革 

巻末資料
参考文献
索  引
執筆者紹介

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序文

はじめに―本書の利用にあたって
 「生産性」とは,生産諸要素の有効利用の度合いである.この生産諸要素は労働,技能,創造力,資本,情報,信用(ブランド),エネルギー,市場などを指す.製造業に限らず,医療・福祉,金融・証券,流通,情報技術サービス,等でも重要指標として活用される.また,官公庁サービス,国民経済統計における国際比較等についても使われるようになった.
 「生産性」は,環境の変化に対して,社会生活・医療サービスなどを不断に適応させて最適の組織で進歩と改善を目指すという考えである.そのために,新技術,新しい仕事の仕組みを適用して,知恵,創造力を傾注することである.そして生産性の向上とは,生み出された価値を相対的に大きくすることといえる.つまり生産性とは,人類の進歩に対する信念であり,また,人びとの生活を豊かにするために,あらゆる経営資源を駆使することなのである.
 日本の戦後の驚異的経済復興は,製造業を中心に国を挙げて生産性向上運動を実施した成果である.しかし現在,わが国の労働生産性は先進国中最下位に凋落し,全産業平均で米国比の70%に止まっている.OECD(経済協力開発機構)の諸国平均の米国比75%をも下回っている.内容をみると,精密,電機,自動車,製鋼,IT(情報)関連はほぼ同水準であるが,医療,金融,流通,運輸・航空等サービス産業は,米国比60%以下,特に医療・福祉部門は約40~50%と低迷している.
 人口減少,超高齢化による医療費急増など,多くの難問題を克服して,安定した病院経営を維持するには生産性の向上こそ緊急の重要課題となってきた.
 生産性の考えは,戦後,イギリス,アメリカ,フランスなど先進国の生産性向上運動をモデルに導入された.わが国では,すでに50年前から,日本生産性本部,全国公私病院連盟,公的機関等で生産性の詳細な統計,測定,分析が行われてきたが,その重要性の理解がなく,また医療機関では利用方法がわからないため,十分活用されてこなかった.特に,医療では,生産性や付加価値生産性の意義,その技法・利用方法は,一般産業のように普及せず,経営に活用されていないのが現状である.
 一方,欧米における医療の現場では,生産性を基準として経営管理体制を確立して,経営方針,人事・経営管理,診療・疾病管理,病棟要員管理,業績の評価・比較,設備計画,病棟管理,リスク・マネジメント等に活用し,諸問題を解決し,期待される成果を達成している.
 そして日本は,MRI,CT等,先進診断機器など人口当たりの装備設置数は世界一であるが,医療の労働生産性は一般産業の大企業の約50%,1人当たり780万円程度と低迷している.にもかかわらず,遺伝子診断,臓器移植,iPS幹細胞の発明的研究,重粒子の核医学治療,IT革命など画期的な先端医療技術が開発され医療の環境は急展開を見せてもいる.
 その中で抱えている問題と生産性を考える上で必要な要素には以下のものが上げられる.
1) 医療の外部環境の問題
 (1) 医療に関する規制は厳しい.その結果,情報・技術,専門職など医療資源が偏在し地域医療崩壊等の問題が起きている.
 (2) 国民健康保険制度の報酬は,医療資源のインプット(専門職の配置,設備面積等)に対して決まる.診療のプロセス,成果・アウトカムではない.換言すれば,医療サービスの質よりも,医療サービスの量に対して支払われている.
 (3) 医療政策,社会保障政策の運営について総合的かつ一貫したビジョンがなく,病院経営の方針が立たない.
 (4) 公正な医療の質の評価,指標の管理機関・制度がない.①病院の医療サービス,ケアの成果・アウトカム,②医療サービスの質,③CS患者満足度等,④診療情報の質,⑤専門職の技能,等の質の測定,評価指標の整備が遅れている.
2) 医療の内部環境・病院の経営の問題
 (1) 経営理念・使命でビジョンを明確に示して重点戦略を展開するケースが少ない(人材育成・組織開発を進めるよりも,規模拡大先進技術で生産性向上を図るなど).したがって,職員が共鳴し奮い立つ目標も動機もなく組織は活力を欠く.
 (2) 人材育成面で専門職の技能教育制度の遅れ
 (3) 資本と経営の分離が遅れている.米国のように経営専門職である最高執行役員(CEO)や管理部長(COO)を外部より迎えるケースは少ない
 (4) 情報の非対称性:主な情報は医療側が握り,情報の透明性がない.
 (5) 患者の不信感,疎外感があり患者サービス低下,事故や不合理な問題を把握していない.
 (6) 達成すべき生産性の目標がない.
 これらの問題は,生産性向上を阻害する要因としてあげられる.
3) 医療の現場の現状
 医療現場では,情報の透明性の推進,EBM(科学的根拠による医療)やクリニカルパスのチーム医療などを実践して医療の高度化に対応している.ただし,経営理念・経営戦略目標を明確に人の知恵・技能や経営資源の総動員,経営パラダイムの変革が求められている.
4) 生産性向上の運動と経営合理化の違い
 この2つは同義ではない.「経営合理化」の一般的解釈は,ヒト・モノ・カネ・技術等の投入(インプット)をコスト,それによって得られるものを産出(アウトプット)と考え,もっぱら産出量(生産量)を考える.合理化の改善は,投入する経営資源の削減(カット)によってインプット,アウトプットのバランスを図るという考え.
 一方,「生産性」は,働く人の福利厚生・豊かさ,労働生産性の向上を重視する考えである.
5) 生産性を考える際には,労働生産性を重点的に用いる
 生産性については,いろいろな生産要素について測定・活用が調査研究されている.例えば,資本生産性,全要素生産性(Total Factor Productivity;TFP)価値生産性,医薬品・診療材料の物的生産性,設備生産性について測定が行われているが,本書では労働生産性を重点的に説明する.それは,労働生産性の次の3つの特質をもつからである.
 ① 測定が比較的に簡便で時系列比較,病院間,国際間比較ができる.
 ② 働く人は,消費者であり,人格を持ち他の経営資源と異なる.
 ③ 生産性向上の成果を3者に配分するのが生産性運動.つまり,働く人,,消費者,経営に配分するとしている.生産性を向上し,働く人へ成果配分をすれば,所得増・時間短縮となり,生活が豊かになる.また,社会人としてキャリア開発と同時に“ワーク・ライフ・バランス”,を目指すことが可能となる.
6) 生産性は組織の活性化,人的資源の推進・人材育成により達成する
 成功した事業所・病院では,すぐれたリーダーシップが経営理念,使命を明確にして病院の目指す方向と・目標を組織の隅々まで徹底している.
 職員の各自の目標,役割と担当職務・説明責任が明確にされ,リーダーシップに共鳴して,各自が創意工夫を活かすことで自己実現が可能となり,働く人は働き甲斐・充実感を感ずる.組織の活性化は,全員参加の経営組織を作ること,すなわち職員の創意と知恵を振り絞って,目標にチャレンジし,それが,公正に評価されるシステム・労働環境を作ることであり,これが生産性向上の第一歩といえる.
 職務の調査分析によって,働く人が働きやすい環境と組織を作ること,“人”の主体性中心の運営を提言してきたが,“仕事”を中心に,仕事に職員を張り付ける従来のやり方とは180度の変革である.
 それにより次の効果を図ることができる.
(1) 生産性向上は,人材育成・技能向上で促される
 一人ひとりの視点でキャリア開発を進めることが,生産性向上の原点である.
 医療の現場は,慢性的に退職続出,技能の蓄積ができていないのが実情で,組織開発,生産性向上の大きな障害となっている.そのため働く人が安定して専門のキャリアが形成できるように,ライフステージごとに,そのステージにあった,多様な働き方を選択できる環境整備が必要である.また,病院・事業所の枠を超えて,キャリアを継続的に追及して職業能力が向上できる仕組みの構築が必要である.
 このような,キャリア開発を目指す人材育成,組織づくりは,生産性向上に不可欠であり,職務分析・調査,個人の役割,説明責任の明確化,コンピテンシー(模範的達成能力)設計などのキャリア・開発の技法を整備することが重要である.
(2) 生産性向上は,ワーク・ライフ・バランスの実現を図る
 生産性向上は,働く人のワーク・ライフ・バランスの実現を目指す.職業キャリアと生活全体キャリアとの調和の検討が欠かせない.現場では,長時間労働と有給休暇の未消化などが問題となっているが,生産性向上で多様な人材,様々な生活に,バランスのとれた持続できる働き方が不可欠である.
 以上の状況を踏まえ,本書を編纂するにあたって重点をおいたのは次の点である.
 ① 現状,病院経営の赤字部門は,一般に“外来部門,”“入院部門”,すなわち看護部門が関与している部門である.したがって,本書では看護の近代化,生産性向上の技法を,10数年にわたる米国研修の経験をもとに,高生産性の技法を解説した.
 ② 生産性の向上を重点的に進めるため,コスト合理化,プロセス変革,仕事の仕組みの改革,組織のモラールの向上,マーケティング,人材育成などの問題点について,病院経営,看護管理,医療管理への応用・活用について平易に解説した
 ③ 日常,医療職,看護職が使う臨床の専門用語(Jargon),管理上の問題点などをできるだけ紹介した.生産性の理解を深め,具体的に応用するときの便利を考え,多数の事例を紹介し,用語(Term Commentary)やコラム(Column),豊富な図表やグラフを用いて解説した.
本書で学んでいただきたいこと
 本書をまとめると,近時,注目されている,“医療提供のプロセス重点の改革”を,全職員の経営参加・知恵の結集で”進めることが,生産性向上の出発点だということである.
 生産性は,業務効率の向上に止まらず,医療の質の向上と,患者,職員などすべてのステークホルダーの福利と幸福をはかる考えである.
 疾病の治癒と健康回復の成果測定が極めて困難であることから,治療のプロセスの質の向上を図ることが生産性向上の基本といえる.また,公正に評価し専門技能者を指導するなど,評価・管理する制度が必要である.すなわち,ガイドラインやプロトコールの整備と充実,また,医療チームが患者本位の目標の達成に向けて,継続的に活動することが,生産性向上の基本といえる.
 医療の経営に携わる方々,また新規に病院経営を学習する方々にも参考になるよう,病院経営を医療サービス提供サイドおよびサービスを受けるサイド(患者・地域社会)の両面から考察し,経営の核心に触れるよう編纂した.
 全職員で,生産性向上を図り組織の改革を進めるにあたり,本書を参考に,相互理解を深め,情報共有の指針としていただければ幸いである.
 本書の出版にあたり,戦略論のH・アンゾフ先生,元ハーバート大関連デコネスの行動医学H, ベンソン先生,レガシー医療財団のJ・ロンデスベット先生.サマリタン病院のC・エバンス先生.カリフォルニア大(元産業能率大学)W・ケリー先生,日本赤十字豊田看護大奥村潤子先生,ワシントン大看護学部H・ヤング先生,スタンフォード大学医療フォラム,医療関連シンクタンク,産業能率大学五月女芳男先生,日本生産性本部,他,多くの方々から貴重な情報,指針,アドバイスをいただき,心から感謝いたします.また,企画・整理などに協力いただいた㈱診断と治療社,社長藤実彰一氏,編集部長堀江康弘氏,編集部荻上文夫氏,ご三方に厚くお礼を申し上げます.
 2010年10月 吉日
 執筆者代表 渡邉 孝雄