食物アレルギー外来での栄養指導の経験をもとに,原因食物を除去しながら必要な栄養がとれる献立の作成方法や指導の際に必要な知識や指導におけるコツを解説.様々な原因食物について,栄養成分,代替食品,混入の可能性があるため注意が必要な加工品,調理による抗原性の変化などアレルギーに関わる特徴などを具体的,豊富に掲載.食物アレルギーの発症機序,検査,治療等の基本的な知識・情報も網羅.この1冊で食物アレルギーの栄養指導に自信がもてる.
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目次
第1章 食物アレルギーの基礎知識
1 アレルギーが起こるしくみ
A 定義と分類
B 食物アレルギーの発症機序(原因)と予後
C 食物アレルギーの症状
1)即時型症状
2)非即時型症状
D 食物アレルギーの原因となる食品
2 診断に必要な検査
A 問診
B 検査
1)好酸球数
2)総IgE値
3)特異的IgE抗体
4)ヒスタミン遊離試験(HRT)
5)皮膚テスト
6)食物経口負荷試験
3 治療のすすめ方
A 食事療法
B 薬物療法
1)インタール®
2)ヒスタミンH1受容体拮抗作用のある抗アレルギー薬
4 救急時における診断と処置
A アナフィラキシーの定義と特徴
B 症状と重症度分類
C 対応
1)プレホスピタル
2)医療機関での対応
第2章 実際の食事指導のすすめ方
1 食物除去の考え方
1)目的
2)すすめ方の基本
2 除去食の指導
1)除去食指導基準
2)指導基準の決定方法
3 食事日誌の活用
1)記録のつけ方
2)原因食物を見つけ出す
3)栄養管理
4 原因食物の除去食と代替食の指導
A 鶏卵 〔卵除去の場合の栄養指導〕
B 牛乳 〔牛乳除去の場合の栄養指導〕
C 小麦 〔小麦除去の場合の栄養指導〕
D 大豆 〔大豆除去の場合の栄養指導〕
E 米 〔米除去の場合の栄養指導〕
F そば
G ピーナッツ(落花生)・ナッツ類
H 魚類
I 甲殻類,軟体類
J 肉類
K 果物,野菜
5 離乳食のすすめ方
1)1回食(前期:5~6カ月頃)
2)2回食(中期:7~8カ月頃)
3)3回食(後期:9カ月以降)
6 献立計画の指導
1)発育・発達と食生活
2)食事摂取基準
3)栄養状態の把握
4)除去食のない場合の献立作成
5)除去食のある場合の献立作成
6)栄養計算結果について
7)献立作成のアドバイス
7 食品表示の見方
1)表示対象食品
2)注意喚起表示
3)代替表記,特定加工食品表記,対象外食品例
4)加工食品ラベルの専門用語
5)問題点
8 授乳期の食事指導
1)鉄分を多く含む食品をとる
2)カルシウムを多く含む食品をとる
3)適度な水分をとる
4)乳脂肪分,糖分のとり過ぎに注意する
5)エネルギーのとり過ぎに注意する
6)アレルギーのリスクを考慮する
9 妊娠中の食事指導
1)発症予防に関して
2)妊娠時のn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取
10 除去食の解除
1)除去食の解除を目的とした食物経口負荷試験適応の判断(耐性獲得の判断)
2)除去期間と解除のための食物経口負荷試験時期
3)低アレルゲン化した食品を利用した食物経口負荷試験
4)耐性獲得の判断のための食物経口負荷試験後の対応
第3章 食事指導・相談におけるコツ
1 信頼関係を築くには
1)問診の重要性
2)今までの治療を全面否定しない
3)厳しい要求はしない
4)患者側の希望も受け入れて
5)希望をもたせる
2 除去食療法の患児,家族への影響と対策
A 除去食療法の患児への影響と対策
1)栄養充足への不安
2)集団給食などでの差別
3)食べたいという欲求への対応
4)行動の制限
B 家族(特に母親)への影響と対策
1)心理的負担
2)食生活上の負担の増加
3 除去食療法をすすめるうえでの問題
A 治療の中断
1)除去食療法による疲弊の場合
2)合併症の悪化の場合
B 思い込みによる除去食療法への誤った対応
1)根拠のない除去食療法の場合
2)除去食解除が不安な場合
4 アナフィラキシーへの対応
1)アドレナリン(エピネフリン)自己注射器(エピペン®)について
2)エピペン®の使用について
3)重篤なアナフィラキシーを起こした患児と保護者への対応
5 日常生活や保育園・幼稚園・学校での対応
A 日常生活での注意点
B 給食への対応
1)除去食のみの対応
2)代替食を含めた対応
3)献立による対応
C 除去食指示書の書き方
D アナフィラキシー時の対応について
付録 A~K
◆アレルギー関連情報が得られるホームページのURLリスト
索引
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序文
改訂第2版の序
初版発行後4年が経過し,食物アレルギーの分野ではガイドラインを中心に大きく変遷の時期を迎えている.食物アレルギーという疾患概念が学会や社会に台頭し30年余を経ており,医学の進歩とともに変化していくことは当たり前のことであるが,日常診療における患者自身の訴えは過去と変わりはない.関係者の努力によりアドレナリン自己注射の保険適応などにおいて進歩は認められるものの,社会への十分な浸透にまでは至っていないのが現状であり,今後は学校などでの体制の整備が急務となってくるであろう.
また,除去食療法という食事療法が見直され,経口免疫療法など,様々な考え方や治療法が提唱・議論されており,患者自身や臨床医も治療法に迷う時代に入っていると思われる.今回の本書改訂版の執筆依頼に際し,除去食療法を名目に本書を発行すべきか否かは悩むところではあったが,多くのアナフィラキシー児が搬送されてくる日常を経験している一臨床家として,現実的な指導マニュアルも必要であると鑑み記することとした.
本書は,東京女子医科大学東医療センター小児科食物アレルギー外来にて実際に行ってきた臨床経験をまとめたものである.したがって,参考文献もガイドラインを中心とし,学術的な研究をまとめたものではない.説明が不十分な点もあるが簡便性を追求したためのもので,成書を参考されたい.
最後に,改訂版の編集にあたり企画や校正に尽力された診断と治療社の土橋女史と松本女史に深謝致します.
2012年8月
大谷智子
初版の序
最近,食物アレルギー児の増加が報告されている.食物アレルギーの社会的関心も高まり,食物アレルギー診療の手引き(厚生労働省),食物アレルギー診療ガイドライン(日本小児アレルギー学会)が刊行された.また,食品衛生法が改正され,特定アレルギー食品の食品表示が義務づけられた.さらに,ハチ毒にのみ認可されていたアドレナリン(エピネフリン)の自己注射の適応が,食物によるアナフィラキシーショックにも拡大され,小児にも適用が認められるようになっている.しかしながら,食物アレルギー児に対する食育,保育の面での対応は不十分である.日常生活において家族の食卓は重要な存在であり,食物アレルギー児だけではなく家族における食生活のQOLを良くするために早急な対応が必要である.
東京女子医科大学東医療センター(旧第二病院)小児科アレルギー外来にて15年以上にわたり,管理栄養士である畔柳佳枝先生とともに多くの食物アレルギー児の栄養指導に関わっている.医師,栄養士という立場だけではなく,母親としての目線から細かく食材や献立の紹介を行い,母親をいながら行ってきた食物アレルギー外来の経験を本書に記載した.今後の食物アレルギー児診療の一助となれば幸いである.
2008年10月
大谷智子