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前立腺癌治療の最先端改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:前立腺癌治療の最先端改訂第2版
切らずに治す高密度焦点式超音波療法(HIFU)

東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科 教授

内田 豊昭(うちだ とよあき) 著

改訂第2版 A5判 並製 104頁 2009年12月25日発行

ISBN9784787817365

定価:1,760円(本体価格1,600円+税)

近年増加している前立腺癌の治療法として,従来の開腹による根治的前立腺全摘術より低侵襲で画期的と注目される高密度焦点式超音波療法(HIFU).本法開発の著者が患者目線からわかりやすく解説.

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目次

前立腺癌治療の最先端

目  次

第1章 前立腺って何?
1 前立腺の場所と働きはこうなっている
2 前立腺の病気

第2章 前立腺癌とは
1 前立腺癌の原因はこんなところにあるのです
2 前立腺癌は急激に増えています
3 前立腺癌と前立腺肥大症の症状は同じ
4 前立腺癌を早く見つけるためにはこんな検査法が必要です

第3章 前立腺癌に似た病気にはこんなものがあります
1 泌尿器科領域で最も多い前立腺肥大症
2 ほとんど症状が同じ膀胱頸部硬化症
3 幅広い年齢に分布する慢性前立腺炎
4 おしっこの勢いがなくなる尿道狭窄

第4章 前立腺癌はこうやって治す
1 前立腺癌の進み具合(病期分類)
2 前立腺癌の顔つき(悪性度)
3 前立腺癌の治療法
4 すでに転移のある進行性前立腺癌にはこんな治療法があります
5 自分の前立腺癌の進み具合に合った治療法を選択するには?

第5章 HIFUとは
1 HIFU(ハイフ)とは
2 HIFU機器の変遷
3 HIFUを受ける時の注意

第6章 退院後に注意すべきこと
1 禁止事項
2 注意事項

第7章 これまでの経験と成績
1 治療患者数と治療回数
2 患者さんの内訳と機器の変遷
3 手術時間の短縮
4 HIFUの効果
5 治療後のPSA値の変化
6 放射線療法後に再発した患者さんに対するHIFU
7 前立腺全摘術後に吻合部に再発した患者さんに対するHIFU

第8章 HIFU後の合併症と対策
1 尿道狭窄
2 精巣上体炎
3 一時的尿失禁
4 尿道直腸瘻
5 膀胱頸部硬化症
6 血精液症
7 急性腎盂腎炎
8 勃起不全
9 逆行性射精

第9章 再HIFUの基準

第10章 限局性前立腺癌に対するHIFUの長所

第11章 よくある前立腺癌のQ&A
1 前立腺肥大症と前立腺癌の症状の違いはあるのですか?
2 前立腺肥大症といわれましたが、前立腺癌になりやすいのでしょうか?
3 発見時はPSA値が一〇〇ng/mLで、今はホルモン療法で一ng/mLに
なっていますがHIFUの適応はあるのですか?
4 前立腺が六〇gで大きいといわれましたが、HIFUは可能ですか?
5 前立腺の中に大きな石があるといわれましたが、HIFUは可能ですか?
6 HIFU後、前立腺はどうなっているのでしょうか?
7 HIFU後、治っているかどうかの目安は?
8 HIFUはその日のうちに帰れますか?
9 治療費は? 保険が使えますか?
10 HIFU後の痛みはどうですか?
11 HIFU後、車は運転できますか?
12 HIFUが終われば前立腺癌は治ったのでしょうか?
13 前立腺癌になったら性生活は控えたほうがよいのでしょうか?
14 前立腺癌になったら注意すべきこと、あるいはならないための予防法は
あるのでしょうか?
15 自由診療ですが、医療費控除の対象となりますか?

付録 HIFU療法可能な施設はこんなところ

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序文

推薦のことば

 「癌は早期に発見して、早期に除去する」というのが現在でも基本的原則であることに変わりはありません。しかし最近では、この「除去」の中身が変わってきました。前立腺癌に対しても、早期のものには開腹手術である根治的前立腺全摘術が今もって世界で広く行われています。また、開腹の代わりにお腹に穴をあけて行う腹腔鏡下前立腺摘出術という方法もあります。ですが開腹式であろうと腹腔鏡式であろうと、患者さんにとっては大手術であることに変わりはありません。そこで、どこも切らずに治そうという方法がいろいろと研究されてきたのですが、そのなかでもHIFUは前立腺への至近距離にある直腸内から治療する方法のエースです。
 この方法は、もともとは前立腺肥大症を治療する目的のハイテク医療法でした。米国のFocus Surgery社で開発され、その治験は米国のインディアナ大学、オーストリアのウイーン大学、日本の北里大学の三大学が同時に担当しました。その最初の協議には私も参加しましたが、内田豊昭教授(当時は北里大学泌尿器科講師)は日本での治験の実務担当者で、精力的にそれに取り組み、米国のFDAの認可に先立って、日本の厚生省(当時)の正式認可を取り付けました。
 しかし、離れた場所から強力な超音波を当てて、目的とする部位でその焦点を合わせて高熱を発生させ、病巣を焼き殺すという、コンピューターコントロール下で行う精密機械療法は癌の治療にも有効なはずです。そこで内田教授は一九九九年からHIFUを前立腺癌の治療にも応用する研究に取り組み、その有効性を実証して現在に至っています。それに伴ってHIFU治療を求めて東海大学八王子病院を訪れる患者さんは増加する一方で、今では同院泌尿器科は多忙を極めています。とはいえ今はインフォームドコンセントが必要な時代で、治療を受ける患者さんには、そのやり方、有効性ばかりか、どのような合併症があるか、また他にどのような治療法があるかをも十分に説明して理解してもらう必要があります。それにはこの本は患者さんにとっても施術する専門医にとっても大きな助けになるはずです。また所得税の確定申告の際の医療費控除の範囲まで説明してくれている気配りにも感心しました。

二〇〇九年 十二月
北里大学名誉教授  小柴 健


はじめに
 前立腺癌は男性特有の病気で、六〇歳以上の方に多く発生します。わが国でも近年、急激に増加しています。特に七年前に、天皇陛下が前立腺癌で手術されたことをきっかけに、多くの皆さんに前立腺癌について関心をもっていただくようになりました。早期に発見された前立腺癌の治療法としては、天皇陛下も受けられた根治的前立腺全摘術という開腹手術が最も標準的な治療法として長く施行されてきました。しかし近年、前立腺癌の治療でもただ治ればいいというだけでなく、患者さんの生活の質(QOL)を低下させない、より患者さんにやさしい多くの治療法が開発されました。
 私の開発した高密度焦点式超音波療法(HIFU)は、約一一年前の一九九九年一月から開始した比較的新しい前立腺癌の治療法です。最初の三年間は学会などで発表してもあまり信用されず、そんなことで前立腺癌が治るわけがないとの反応が多かったものです。その後、全国規模の治験が始まり、実際に患者さんの経過を他の医師に直接診ていただくにつれて、少しずつ泌尿器科のなかでもHIFUの効果を信用していただけるようになりました。HIFUを前立腺癌の治療として応用してから一一年、これまでに約一、〇〇〇例の前立腺癌の患者さんに本法を施行してきました。これからも症例を積み重ね、一日でも早く正式な前立腺癌治療として保険収載され、患者さんの金銭的負担が少なくなるよう努力していきたいと思っています。この本が前立腺癌に悩む男性諸氏の朗報となり、また少しでもお役に立てることができればと願っています。
 最後に、私の無理難題ともいえるHIFU機器改良の要望に努力していただいた米国Focus Surgery社のNarendra N. Sanghvi氏、Roy Carlson氏と、これまで私の治療を助けていただいた、タカイ医科工業の篭崎修平、島崎 裕、山下健司、古口直樹、佐藤高浩、吉田知広技術員、この本を出版してくださった診断と治療社に心よりお礼を申し上げます。

二〇〇九年 十二月  著者