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“治せる”医師をめざす

疾患・症状別 はじめての漢方治療診断と治療社 | 書籍詳細:疾患・症状別 はじめての漢方治療
―原典条文と最新エビデンスに基づいた漢方医学実践―

大阪医科大学健康科学クリニック

後山 尚久(うしろやま たかひさ) 編集

初版 B6判 並製 336頁 2013年05月20日発行

ISBN9784787820020

定価:本体3,500円+税
  

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日常診療のなかでよく遭遇する65の疾患・症状別に,適切な漢方薬の選び方を原典条文(経験)と最新エビデンス(証拠)に基づき専門家が伝授.「疾患概念と背景」,「処方ガイド」,「漢方薬の作用機序」を図表やデータを多く用い,コンパクトに紹介.クリニカルパール,ピットフォールのコラムも充実.これから漢方治療をはじめたい,またすでに漢方治療をはじめている臨床医にも読み応えのある一冊.好評書『“治せる”医師をめざす漢方医学入門』の姉妹編,登場!

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目次

序 文   後山尚久
執筆者一覧 

総 論
 “治せる”医師をめざす医療実践における漢方の役割 
 後山尚久

各 論
 内 科 
   呼吸器科 
  1  風邪(ひきはじめの風邪)   峯 尚志
  2  気管支喘息   菊地和彦
  3  慢性閉塞性肺疾患   加藤士郎
  4  気管支炎・咳・痰   加藤士郎
   循環器科 
  5  高血圧症   向坂直哉
  6  低血圧症   永嶺宏一,喜多敏明
   消化器科 
  7  腹痛・疝痛   西田愼二
  8  下痢(過敏性腸症候群)   西田愼二
  9  便秘   堤 英雄
  10 吐き気(悪心)・嘔吐   山川淳一,小林淳二
  11 胃痛   藤原祥子
  12 胃食道逆流症   入江祥史
  13 機能性ディスペプシア   入江祥史
   神経科 
  14 頭痛   河野恵子
  15 顔面痛   河野恵子
  16 自律神経失調症・ふらふら感   佐藤泰昌
  17 片頭痛   小暮敏明
   内分泌・代謝科 
  18 肥満・メタボリックシンドローム   宇野智子,佐藤祐造 82
  19 糖尿病   宇野智子,佐藤祐造
   血液科 
  20 貧血   栁堀 厚
   免疫・膠原病内科 
  21 関節リウマチ   小暮敏明

 産婦人科 
  22 冷え   後山尚久
  23 月経前症候群   後山尚久
  24 月経困難症   後山尚久
  25 月経不順   後山尚久
  26 不妊症   後山尚久
  27 子宮下垂・子宮脱   後山尚久
  28 切迫流産   後山尚久
  29 更年期障害   後山尚久
  30 マタニティブルー   後山尚久

 小児科 
  31 小児の風邪・インフルエンザ   山川淳一,犀川 太
  32 夜尿症   福富 悌
  33 起立性調節障害   福富 悌

 皮膚科 
  34 アトピー性皮膚炎   小林裕美,石井正光
  35 にきび   小林裕美,石井正光
  36 せつ・癰・面疔   武市牧子
  37 皮膚のかゆみ   武市牧子
  38 掌蹠膿疱症(手掌)   前田 学
  39 酒さ様皮膚炎   前田 学
  40 多汗症   田原英一

 泌尿器科 
  41 尿のトラブル・頻尿・尿道痛   宮原 誠
  42 男性生殖障害   宮原 誠

 耳鼻咽喉科 
  43 鼻炎・花粉症   内薗明裕
  44 耳鳴   柳 裕一郎
  45 めまい   内薗明裕
  46 難聴   内薗明裕
  47 咽喉頭異常感症   元雄良治

 眼 科 
  48 結膜炎・眼精疲労   西川実徳

 整形外科 
  49 肩こり   古賀実芳
  50 腰痛   穴吹弘毅
  51 打撲・捻挫   穴吹弘毅
  52 こむら返り   古賀実芳

 精神科 
  53 イライラ・不安感   西田愼二
  54 不眠症   西田愼二

 口腔外科愁訴 
  55 歯痛・口腔痛   山口孝二郎
  56 顎関節症・口腔心身症   山口孝二郎

 緩和医療・終末医療 
  57 全身状態の改善   南澤 潔
  58 精神症状の改善   南澤 潔
  59 疼痛の軽減   古賀実芳

 QOLの向上 
  60 内科的愁訴   喜多敏明,永嶺宏一
  61 女性のがん   加藤育民
  62 女性の不安・不眠   加藤育民
  63 癌性貧血   元雄良治

 救急医療 
  64 感染性胃腸炎・嘔吐・下痢   加島雅之
  65 低アルブミン性浮腫   加島雅之

漢方方剤索引 
用語索引 

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序文

 日頃から,医師の皆さんに伝えたいことがあって僭越ながら講演やセミナーで声に出し,ちょっとした書きもので文字にしていることがある.漢方の勉強や臨床実践の際に,初めから難しい理論を持ち出して形而上学的な思考をしないでほしいということだ.だって,漢方医学 ⇒ 「証」 ⇒ 陰陽五行論 ⇒ 黄帝内経・素問・難経 ⇒ 上古天真論 ⇒ 東洋哲学 ⇒ 漢語世界 ⇒ ちんぷんかんぷんとならないだろうか? 漢方医学の世界の根底に「陰陽五行論」があるとすると,まずこれに同意し,患者の発熱の病態が陽証なのか,足先のしびれは慢性的な陽虚のためなのか,等々と熟考しなければならない.これははっきりいってしんどいことだ.漢方医学は,“複雑系現象”を扱うものだから,還元主義的に100%診断ができて,世の中にこれしかないという方剤を処方できる医療体系ではないことは大半の臨床家が感じている.だから,はるか昔の臨床大家は,たとえば陰陽とか虚実等の概念で,心の模様や身体の不調を説明することで病態把握に得心して,様々な有効成分を含む漢方の絶妙な組み合わせにより治療を試みたのであろう.随証治之(証に随って之を治せ)という表現は漢方診療の大原則とされているが,これは漢方医学の基本が現代でいうtailor-made medicineであり,すべてが科学的に説明できない心と体を持つ「治療を受ける側の論理」を十分にくみ取ろうという姿勢から成り立っていることの表現だと私は愚考する.残念ながら,現在の西洋医療の軸となっている線形(系)の専門科医療における臓器別診療ガイドラインには随証治之は組み込まれない.漢方医療にはウイリアム・オスラーが強調する“アート”の部分があり,それを構成する人の感性というのは科学を超えるものがある.人という崇高な生き物の解明に,科学はまだまだだ.
 “治してなんぼ”という,がめつい大阪商人風の言い方があるが,漢方医学は“治療学”に高い価値観を置いている.治せる医療でなければならない.一方,高度先進先端医療の闊歩する世の中で,漢方医学的臨床アプローチで病気の診断が正確にできて治療が完結する時代ではなくなったことも私たちは知っている.どうしても先進的西洋医療との助け合いになる.読者の中には医者人生の中で本気で漢方に取り組もうとする時期に,基礎漢方理論の完全な理解から臨床に進もうとする,まじめで頭のよい臨床家が少なくないであろう.そういう方向から漢方を勉強したいと思っておられる諸氏には,実に不真面目,手抜きと批判されるだろうが,見方によっては西洋医療よりも漢方医療がはるかに力を発揮することが知られている疾患の医療から,漢方に一歩を踏み出す方向を受け入れてみてはどうだろうか.
 漢方医療の体系は偉大な医師たちの長年の経験則から生まれたものだが,そこには臨床経験に根ざした病態の緻密な考察や検証,多くの取捨選択がある.すなわち,臨床と合致しない理論は捨てられ,治療に使えない病態の読み方や処方も消えてきた歴史がある.西洋医療とは比較にならないほどの実験的検証の篩を経た膨大な臨床エビデンスの蓄積が,「風邪には葛根湯」,「便秘には大黄甘草湯」あるいは「疳の虫には抑肝散」という定番を今に残したのであろう.
 本書は,最初に手にとっていただく漢方臨床書として,西洋医学を学んだ医師にとってなじみやすい“疾患名からの漢方選び”というスタンスで,西洋医学でも漢方医学でも臨床力を有する本当の“治せる医師”に執筆していただいている.また,拙著『“治せる”医師をめざす漢方医学入門』(診断と治療社)にさっと目を通していただくことで漢方医学の輪郭をなんとなく感じていただき,漢方熱が冷めないうちに姉妹篇ともいうべき本書で一応の臨床漢方学を学んで欲しい.それからじっくり腰を据えて,ゆっくり年月をかけて,臨床に直結し応用できる理論と深みのある漢方治療学を勉強していきませんか.

新緑の香風舞う高槻にて
大阪医科大学健康科学クリニック 所長
未病科学・健康生成医学寄附講座 教授
後山尚久