産婦人科漢方研究のあゆみNo.30診断と治療社 | 書籍詳細:産婦人科漢方研究のあゆみNo.30
産婦人科漢方研究会(さんふじんかかんぽうけんきゅうかい) 編集
初版 B5判 並製 144頁 2013年04月10日発行
ISBN9784787820136
定価:本体2,000円+税冊
第32回産婦人科漢方研究会学術集会の講演内容に一部投稿論文を追加して1冊にまとめた.ランチョンセミナー「ペインクリニック領域への漢方応用」,特別講演「癌患者の生活の質を改善させる漢方薬」ほか,優秀演題賞,各論文を収載.
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目次
巻頭言 杉山 徹
ランチョンセミナー 座長 杉山 徹
ペインクリニック領域への漢方応用
野萱 純子
はじめに
Ⅰ 慢性痛の現状
Ⅱ 慢性痛の病態
Ⅲ 急性痛から慢性痛治療のフレームワーク
Ⅳ 慢性痛治療の難しさ
Ⅴ 漢方応用の利点
Ⅵ 症例
Ⅶ 考察
特別講演 座長 齋藤 滋
癌患者の生活の質を改善させる漢方薬
―作用メカニズム解明から臨床試験への
トランスレーショナルリサーチ―
上園 保仁
はじめに
Ⅰ 癌悪液質とは
Ⅱ 口内炎と半夏瀉心湯
Ⅲ 漢方薬の国際化
おわりに
優秀演題賞 座長 山本 樹生
ジエノゲスト投与に伴う不正性器出血に
対する芎帰膠艾湯の有効性
中山 毅 宮野奈緒美 石橋 武蔵 田中 一範
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
シンポジウム 癌治療のQOL向上を目指した漢方薬の現状と展望
座長 吉川 史隆 八重樫伸生
婦人科癌化学療法における食欲不振に
対する六君子湯の効果
米澤 理可 中島 彰俊 鹿児山 浩 草開 妙
森尻 昌人 伊東 雅美 鮫島 梓 橋本 佳子
島 友子 日高 隆雄 齋藤 滋
はじめに
Ⅰ 対象と方法
1.食欲不振に対する六君子湯の効果
2.倦怠感・気力低下に対する六君子湯の効果
Ⅱ 結果
1.食欲不振に対する六君子湯の効果
2.倦怠感・気力低下に対する六君子湯の効果
Ⅲ 結論
Ⅳ 考察
芍薬甘草湯を用いた抗癌剤の副作用対策
―パクリタキセルを用いた化学療法による疼痛
杉田 匡聡
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 症例
Ⅳ 考察
1.芍薬甘草湯の導入
2.芍薬甘草湯の作用機序と副作用
3.癌化学療法
おわりに
論文① 座長 嘉村 敏治
長期的なホットフラッシュに三物黄芩湯が
有効であった1例
堀場 裕子 牧田 和也 横田めぐみ
岩田 卓 青木 大輔 吉村 典
はじめに
Ⅰ 症例
Ⅱ 臨床経過
Ⅲ 考察
おわりに
HRTで十分な効果が得られなかった
更年期障害に対して,HRTと漢方療法併用
により(十分な)効果を得られた症例の検討
齋藤 真実
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
患者背景に精神的ストレスがある過活動膀胱
患者に対する清心蓮子飲の有効性の検討
柴田 健雄 笹川 寿之 高木 弘明 牧野田 知
はじめに
Ⅰ 過活動膀胱と心因性頻尿について
Ⅱ 方法
Ⅲ 症例
Ⅳ 清心蓮子飲について
Ⅴ 考察
おわりに
慢性外陰痛(vulvodynia)に対する
漢方製剤の効果
塩田 敦子 秦 利之 鈴木 恵子
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 症例
Ⅳ 考察
おわりに
不妊治療において気血水の異常のうち,
どの異常を優先して治療すべきか?
沖 利通 堀 新平 河村 俊彦 堂地 勉
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 成績
1.症例背景
2.使用群と非使用の証の相違
3.投薬あるいは妊娠前後の証の変化
Ⅲ 考察
論文② 座長 深澤 一雄
子宮留膿腫における排膿散及湯の排膿効果
山際 三郎 熊澤 雄一 加藤 順子 太田 俊治
友影 龍郎 藤本 次良 小倉 寛則 豊木 廣
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
子宮・両側付属器摘出後の晩期障害に
対する漢方療法の経験
高取 明正 小川 達博 西田 傑 石原 佳代
はじめに
Ⅰ 症例
Ⅱ 考察
同時化学放射線療法(CCRT)の副作用に
対する五苓散の効果
佐藤 泰昌 森 崇宏 吉田 奈央
山本志緒理 森 美奈子 小野木京子
田上 慶子 横山 康宏 山田 新尚
はじめに
Ⅰ 症例
Ⅱ 考察
おわりに
大学病院婦人科外来における
十全大補湯処方57症例の解析
高橋 伸子 石谷 健 池田真理子 小関真理子
木崎 尚子 深澤 祐子 鈴木 志帆 駒形 依子
鈴木 宏美 秋澤 叔香 松井 英雄
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
婦人科悪性腫瘍術後患者に対する
大建中湯の使用経験について
首藤 聡子 山田 恭子 三田村 卓 小田切哲二
加藤 達矢 小林 範子 武田 真人 渡利 英道
金内 優典 櫻木 範明
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
論文③ 座長 千石 一雄
子宮筋腫に対する桂枝茯苓丸を
中心とした待機療法
笹川 寿之 柴田 健雄 高木 弘明 牧野田 知
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
希発月経と多嚢胞性卵巣が防風通聖散と
当帰芍薬散にて改善を認めた1例
森下 真成 中井 恭子 南野 英隆 蔭山 充
志馬 千佳 福田 武史 古山 将康 石河 修
はじめに
Ⅰ 症例
Ⅱ 経過
Ⅲ 考察
おわりに
妊婦に対する駆瘀血剤の投与
佐野 敬夫
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 症例
Ⅲ 症例のまとめと結果
Ⅳ 考察
おわりに
当科における抗リン脂質抗体陽性不育症
症例に対する柴苓湯を中心とした治療法
の臨床効果
藤本 剛史 今石 裕人 嘉村 敏治
はじめに
Ⅰ 対象と方法
1.対象
2.方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
子宮筋腫合併妊娠による嵌頓子宮の疼痛に
対し当帰芍薬散を用いた1例
渡辺 修 山本 悦子 谷貝 顯博 竹内 一郎
はじめに
Ⅰ 症例
Ⅱ 臨床経過
Ⅲ 考察
おわりに
甘草エキスは妊娠子宮平滑筋収縮を
二段階で抑制する
角 玄一郎 辻 祥子 金森 千春 梶本めぐみ
西垣 明実 曺 寿勇 都築 朋子 中嶋 達也
岡田 英孝 安田 勝彦 神崎 秀陽
はじめに
Ⅰ 対象と方法
1.患者背景と組織採取
2.ヒトおよびラット妊娠子宮平滑筋の収縮力の測定
Ⅱ 結果
1.ヒト妊娠子宮平滑筋に対する収縮抑制効果の検討
2.ラット妊娠子宮平滑筋に対する収縮抑制効果の検討
Ⅲ 考察
おわりに
論文④ 座長 水沼 英樹
育児ストレスによる情緒不安定な症例に
対する四逆散エキスの有用性の検討
中井 恭子 蔭山 充 森下 真成 志馬 千佳
福田 武史 浮田 勝男 平井 光三 今中 基晴
古山 将康 石河 修
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
産婦人科における当帰湯の使用経験
木下 哲郎
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
Ⅲ 考察
おわりに
片頭痛患者における「冷え症」の
年代別の差異に関する検討
牧田 和也 稲垣美恵子 北村 重和
はじめに
Ⅰ 対象と方法
Ⅱ 結果
1.患者背景
2.「冷え症」の診断基準を満たす者の割合
3.片頭痛患者全体の「冷え症」に関する症状別頻度
4.「冷え症」に関する重要項目における年代別差異
5.「冷え症」に関する参考項目における年代別差異
6.「冷え症」に関する重要項目・参考項目以外の
症状の年代別差異
Ⅲ 考察
おわりに
長年にわたる外陰部瘙痒症に
白虎加人参湯が著効した症例の検討
髙田 杏奈 賀来 宏維 新沼 花恵
三浦 史晴 杉山 徹
はじめに
Ⅰ 症例
Ⅱ 考察
おわりに
論文⑤
骨と漢方
左雨 秀治 坂本 忍
産婦人科漢方研究会会則
産婦人科漢方研究会世話人会議事録
投稿規定
編集後記 苛原 稔
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序文
巻頭言
例年にない残暑の盛岡市で第32回産婦人科漢方研究会学術集会を開催でき,成功裡に終了できました.これも産婦人科領域で漢方研究を推進されている先生方の御協力の賜物と存じております.
さて,本学術集会では,私の専門性より,癌治療の根幹である標準的治療における癌患者のQOLの維持という点から漢方医療の有用性を中心に据えさせていただきました.古くからの友人で久しぶりの再会を果たした上園保仁先生に特別講演として「癌患者の生活の質を改善させる漢方薬─作用メカニズム解明から臨床試験へのトランスレーショナルリサーチ─」のご講演をいただきました.エビデンス(科学)は基礎研究を基盤とした臨床研究から確立されますので,漢方方剤の効果と副作用を科学的に解明していくことは非常に重い課題と考えます.患者中心の医療にはこの科学性とは別に担当医師の専門性と患者の希望が求められます.この観点から我々,漢方薬を処方する医師には患者一人ひとりを見極めた方剤を決定するという,西洋医学とは異次元とも考えられる,一歩一歩の経験の積み重ねという対応も必要ではないでしょうか? ここに科学性が加わると病名投与に接近した処方も可能となります.実際,一般講演では婦人科癌標準的治療であるCCRTやパクリタキセルなどを用いた化学療法に伴う副作用,術後癒着予防に対して,五苓散,十全大補湯,大建中湯,六君子湯,芍薬甘草湯の使用経験に基づく効果が示されました.さらに,ランチョンセミナーでの野萱純子先生の「ペインクリニック領域への漢方応用」でもその意を強くすることができました.
一方,産婦人科医療は多岐に及び,女性のQOLを守る女性医学は重要な分野であり,ホルモン剤とともに漢方薬の効果に期待されます.更年期障害,HRT,片頭痛,子宮筋腫,内膜症治療におけるジエノゲストの不正出血などをkey wordとして多くの研究成果をご発表いただきました.治療に苦慮する稀な外陰痛・外陰?痒感への漢方薬の効果にも興味を惹かれました.さらに,今回は演題は少なかったのですが,不妊や妊婦における治療でのご発表もいただきました.
最後に,学術集会を支えていただいた代表世話人,齋藤 滋先生に心より感謝申し上げます.また,プログラム作成から会の進行まですべてを取り仕切っていただいた株式会社ツムラに深謝申し上げます.第33回学術集会で皆様にお会いできることを楽しみにして稿を閉じさせていただきます.では福岡で.
岩手医科大学医学部産婦人科 教授
杉山 徹