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小児科医のための
小児泌尿器疾患マニュアル 改訂第3版診断と治療社 | 書籍詳細:小児泌尿器疾患マニュアル 改訂第3版

元聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科客員教授/元神奈川県立こども医療センター泌尿器科部長

寺島 和光(てらしま かずみつ) 著者

改訂第3版 A5判 並製 144頁 2015年10月20日発行

ISBN9784787822178

定価:3,520円(本体価格3,200円+税)
  

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専門医だけでなく,小児科医,一般医,研修医にも小児泌尿器疾患について広く理解してもらうための解説書.総論で泌尿器疾患の特徴・症状と診断,検査法を解説した後,泌尿器疾患ごとの特徴や診察,治療方法などの各論を解説する.写真や図・表を多用し,専門医でなくともわかりやすい解説としている.改訂第3版では,全項目において用語や解説を更新し,特に「機能障害性排尿」「性分化異常」の項目は大幅に書き改められた.

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目次

総 論—Ⅰ.小児泌尿器疾患の特徴
   —Ⅱ.小児泌尿器疾患の症状と診断
   —Ⅲ.小児泌尿器疾患の理学的検査
   —Ⅳ.尿検査と腎機能検査
   —Ⅴ.尿路の画像検査
   —Ⅵ.尿路の核医学検査
尿路感染症
血尿と蛋白尿
夜尿症・昼間尿失禁・機能障害性排尿
停留精巣
精巣水瘤・精索水瘤
精巣捻転
包 茎
尿道下裂
性分化異常
膀胱尿管逆流
神経因性膀胱
後部尿道弁
水腎症
巨大尿管(水尿管症)
重複尿管
囊胞性腎疾患

用語解説
付 録
略語一覧

索 引



COLUMN 目次
医学用語考
笑えない話
Proteusとは?
doctorの動詞形
おねしょの効用
orchis vs orchid
陰囊に関する小咄2題
かわいそうなオチンチン
病気が左側に多い理由
VUR余話
二分脊椎と葉酸
水腎症のギネスブック

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序文

改訂第3版の序

 本書は2002年に初版が,2006年に第2版が刊行された.さいわい多くのドクターやナースに評価されて増刷を3回行うことができ,そのたびに内容を新しくしてきた.第3版では,小児泌尿器科学の進歩を十分にとり入れ,ほぼ全項目でup-to-dateな,よりわかりやすいものにし,いっそうの充実を図った.特に「夜尿症・昼間尿失禁・機能障害性排尿」と「性分化異常」の項は大幅に改めた.性分化異常については,インターセックスの診療に関する国際会議が2005年に開催され,それまでとは大幅に違った疾患名や分類が提唱された.この提唱は世界の多くの国で受け入れられ,今やDSD(disorders of sex development)という概念はわが国でも定着している.本書でもこれに沿った内容に改め,鑑別診断のフローチャートなども追加して理解が深まるようにした.使用した医学用語は日本医学会,泌尿器科学会および小児科学会が編集した用語集を参考にした.しかし学会間で用語が異なることがあり,その場合は最適と思われるものを採用した(コラムの「医学用語考」をご覧いただきたい).
 ここで江戸時代の儒学者である貝原益軒(1630~1714)が83歳のときに著した「養生訓」(松田道雄訳)を紹介したい.本書には益軒が理想とする健康論が詳しく書かれている.300年以上前のものであるにもかかわらず,現代にも十分に通じるものがあり,興味深い.ここではやや辛口の文を載せる.
 「医は仁術である.仁愛の心を本とし,人を救うのを志とすべきである.自分の利益ばかり考えてはいけない」
 「学問があって,医学にくわしく,医術に熱心で,たくさんの病気をみて,その経過を知っているのは良医である.医者になって医学を好まず,医道に志がなく,また医書を多く読まず,読んでもじっくり考えず,学理に通じなかったり,または医書を読んでも旧説にこだわって,臨機応変の処置ができなかったりするものは,医者ではなく職人である」
 「保養の道は自分で病気の用心をするだけではなく,また医者をよく選ばないといけない.天下にかけがえのない父母のからだ,自分のからだを庸医(やぶ医者)の手にまかせるのは危険である」

 2015年5月 寺島和光



改訂第2版の序

 本書はおもに小児科医を対象とした臨床小児泌尿器科学の解説書として,2002年に初めて刊行された.さいわい多くの先生から高い評価をいただき,3刷まで発行することができた.初版から4年が経過したが,この間,医学の発展に伴ってこの分野でも着実な進歩がみられた.また新しい医師養成制度である臨床研修制度も始まった.
第2版では,次のようなことにとくに重点を置いてきめの細かい改訂を行った.
 1.小児泌尿器科学の臨床面における進歩を反映した最新の内容とした.
 2.小児科医だけでなく,新臨床研修制度のもとの研修医にも本書が十分理解できるように配慮した.
 3.専門用語は,日本泌尿器科学会などが提唱し,この分野の専門誌でほぼ統一されていることばをできるだけ使用した.さらに英語の用語との整合性をもたせるようなことばを選んだ.このため,たとえば移動性精巣は遊走精巣に,陰囊水腫は精巣水瘤に変更した.
 4.新しく次のような項をもうけて,いっそうの充実を期した.
 1) 「用語解説」として,おもに研修医を対象に本文で使われているやや特殊な用語やカテーテルの種類を解説した.
 2) 付録として,「小児の導尿の方法」,「男子のバルーンカテーテル留置法」,「男性の尿路系」,「性分化のプロセス」,「男女の性器系の相同器官」をのせた.
 3) よく使用される英語の「略語一覧」をのせた.

 2006年3月 寺島和光



初版の序

 小児泌尿器科であつかう分野は小児の尿路系と性器系(おもに男児)の疾患である.治療の中心はやはり外科的療法であるが,尿失禁や尿路感染症のように内科的療法が対象となる疾患も少なくない.臨床医学全体からみれば小児泌尿器科が占める割合は小さいが,重要な分野であることは他科と同じである.尿路系の疾患はすべて腎機能に影響を及ぼしうる.そして最終的には腎不全にまで発展する可能性がある.たとえば尿道憩室のように,一見あまり関係がないような疾患でさえも,時には高度の腎障害をおこすことがある.尿路系と性器系は発生学的に密接な関係があるので,互いに影響しあう.尿管異所開口が原因で精巣上体炎をひきおこすこともある.
 一方,性器系疾患については,将来の生殖機能に関係するということも重要であるが,同時に性器という臓器に対して男子はどうしてもコンプレックスをもちやすいという問題も大きい.医師からみればまったく心配のないような包茎でも,本人は深刻に悩んでいるということがある.無意味なコンプレックスを解消するのも医師の大切な仕事である.小児の診療では,父親よりも母親に患児の病気の説明をすることが多いが,残念ながら一般に女性は男子性器についての理解が乏しいというむずかしさもある.
 昨今のめざましい医学の進歩は,小児泌尿器科の分野においてももちろんみられるが,なかでも水腎症,膀胱尿管逆流,尿道下裂および包茎に対する評価法,治療方針,手術法などがとくに変ってきたといえる.全般的に,多くの疾患で外科的療法よりも内科的療法(保存療法)を選択する傾向にある.
 本書は,おもに小児科のドクターを対象に,小児の主要な泌尿器疾患について最新の知見を解説したマニュアルである.したがって,外科的療法の記述は必要最小限にとどめた.本書が小児科医をはじめ,小児の泌尿器疾患をみる機会のある内科医や研修医にとって日常診療のお役に立つことができれば幸いである.

子に飽くと申す人には花もなし   芭蕉

 2002年3月 寺島和光