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書籍詳細

小児急性脳症診療ガイドライン2016診断と治療社 | 書籍詳細:小児急性脳症診療ガイドライン2016

日本小児神経学会  監修

小児急性脳症診療ガイドライン策定委員会 編集

初版 B5判 並製 156頁 2016年08月01日発行

ISBN9784787822284

定価:本体3,200円+税
  

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急性脳症の急性期における診療に役立つよう,定義と検査,鑑別診断,治療,予後等を網羅した診療ガイドライン.本ガイドラインは総論と各論に大きく分けて記載し,総論では急性脳症の軽症~中等症~重症のすべての症例に活用できるよう,また各論では3つの主たる病態(代謝異常,全身性炎症反応,興奮毒性)に括ることで複雑な病態にも対応できるよう工夫した.急性脳症の研究で世界を先導する日本で編纂された待望の書.

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目次

発刊にあたって
序文

Introduction
推奨グレード一覧
略語一覧

第1章 急性脳症の概念と疫学
 1 急性脳症の定義
 2 急性脳症の疫学
 3 急性脳症の予後

第2章 急性脳症の診断と検査
 1 急性脳症の診断に必要な診察と検査,タイミング
 2 急性脳症の鑑別診断
 3 急性脳症の画像診断
 4 急性脳症の脳波検査

第3章 全身管理と脳低温・平温療法
 1 けいれん重積・遷延状態への対応
 2 急性脳症の全身管理
 3 脳低温・平温療法の適応と方法

第4章 代謝異常による急性脳症
 1 先天代謝異常症による急性脳症の特徴
 2 先天代謝異常症の診断と検査
 3 ミトコンドリア救済の治療

第5章 全身炎症反応による急性脳症
 1 炎症のマーカー
 2 副腎皮質ステロイドの意義,適応,方法
 3 ガンマグロブリンと血液浄化の意義,適応,方法
 4 急性壊死性脳症(ANE)の診断と治療

第6章 けいれん重積を伴う急性脳症
 1 けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)の診断と治療
 2 難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS)の診断と治療

第7章 その他の急性脳症
 1 Dravet症候群に合併した脳症の診断と治療
 2 先天性副腎皮質過形成に伴う脳症の診断と治療
 3 可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)の診断と治療
 4 腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症に併発する脳症の診断と治療

索引

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序文

発刊にあたって

 日本小児神経学会は小児神経疾患の診療標準化を目指しており,2011年にはガイドライン統括委員会を発足させました.最初の成果である「熱性けいれん診療ガイドライン2015」に引き続き,このたび「小児急性脳症診療ガイドライン2016」を発刊することとなりました.急性脳症の定義と検査,鑑別診断,治療,予後などについて網羅的に記載することにより,学会員のみならず一般小児科医や救急医の皆様にも役立つことを願っております.
 ワクチン普及などにより細菌性髄膜炎が減少した結果,急性脳症は後天性脳障害の主な原因となりました.日本の年間の急性脳症発症数は400~700名と推定され,その約4割で急性期死亡や神経学的後遺症を認めるといわれます.1994~1995年シーズンに,インフルエンザ関連急性脳症により多数の方々が亡くなられたことは記憶に新しいところです.1998年に立ち上がった厚生労働科学研究インフルエンザ脳症研究班(森島班)により「インフルエンザ脳症ガイドライン」が策定されましたが,その後も,インフルエンザウイルス以外の原因による急性脳症の総括的な診療ガイドラインが求められていました.
 本ガイドラインは,水口 雅先生を委員長として10名の委員からなる日本小児神経学会「小児急性脳症診療ガイドライン策定委員会」によって原案が作成され,アドバイザーとして,本学会前ガイドライン統括委員会担当理事の杉江秀夫先生,東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第二講座の小島原典子先生によるご指導,本学会評価委員ならびに評議員による内部評価,関連学会による外部評価,さらにAGREE IIによる最終評価を経て発刊に至りました.
 急性脳症においては,その臨床病型に応じた治療方針が重要と思われます.しかし,この点に関してエビデンスレベルの高い論文はなく,特異的治療・特殊治療に関しては推奨グレードを付けていないものがあることをご理解ください.今後も,けいれん重積の鑑別診断,急性脳症が想定される場合の治療戦略の確立など,基本病態の解明と治療法の確立には年余にわたる検討を要すると思われます.
 実際の診断・治療方針の決定は,主治医の総合的判断に基づいて行われるべきであることは言うまでもありません.また,急性脳症の病態理解は日々深まっております.本ガイドラインをご活用いただき,皆様からのフィードバックをいただくことにより,今後の改訂に役立てて参りたいと思います.

2016年7月

日本小児神経学会
理事長 高橋孝雄
ガイドライン統括委員会担当理事 前垣義弘
ガイドライン統括委員会委員長 福田冬季子



序文

 2013年秋に構想された小児急性脳症診療ガイドラインの策定は2年半の歳月を経て2016年に結実し,刊行の運びとなりました.この間,多くの関係者のみなさまにたいへんお世話になりました.厚く御礼申し上げます.
 ガイドライン策定の背景と経過,様々な立場で参画していただいた方々のご尽力につきましては,Introductionの章で触れさせていただきます.この序文では,急性脳症が全体としてどのようなものであるか,それに応じて本ガイドラインがどのように作られているかを概観させていただきます.
 急性脳症をひとことで言えば,「感染症の経過中に生じる意識障害で,ある程度以上の重症度と時間経過を呈するもの」です.全体としてある程度のまとまりまたは共通性をもつグループである反面,急性壊死性脳症(ANE),けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD),脳梁膨大部脳症(MERS)など複数の症候群からなる雑多ないし不均一な集合体でもあります.1980年頃は急性脳症の研究が緒についたばかりで,古典的Reye症候群と診断されるたかだか数%の症例を除けば,他の大多数が「分類不能の急性脳症」のままという時代でした.しかしその後,急性脳症の研究は大きく進歩し,ANE(1993~1995年),AESD(1999~2004年),MERS(2004年)などの新しい症候群の確立を経て,2007年頃には症候群分類が一応定着しました.2016年現在では60%の症例が急性脳症のいずれかの症候群に分類されています.しかし現在もなお,残る40%の症例は「分類不能の急性脳症」のままであることも事実です.
 急性脳症の病態生理は複雑ですが,1996年以降の20年間に病因,病態の解明が進み,最近では,①代謝異常(特にミトコンドリアのエネルギー産生),②全身性炎症反応(いわゆるサイトカインストーム),③興奮毒性(けいれん重積状態を契機とする神経細胞死)の3つを主な病態と考える立場から,整理が進んでいます.症候群のうち代謝異常を主とするものとしては古典的Reye症候群,全身性炎症反応を主とするものとしてはANE,興奮毒性を主とするものとしてはAESDが代表的です.一方,この3つの病態は相互に関連しており,急性脳症の重症例の一部ではうち2つないし3つが悪循環を形成しつつ,いずれも高度に達するために,かえって症候群としての特徴が不明瞭となり,①②③のどれにも分類しがたいような状態像になることがよくあります.このような症例は多くの場合重篤な経過を辿り,予後不良であることが多いのです.逆に,3つの病態がいずれも軽度にとどまるような軽症例では,意識障害の程度と持続という点では急性脳症の基準を一応満たすものの,臨床検査や頭部画像にこれといった異常所見を示さず,こちらも「分類不能」となります.幸いにしてこのような症例は軽症のまま経過し,自然に軽快して予後良好であることが多いことは周知のとおりです.
 本ガイドラインは前半で急性脳症の総論,後半で各論を記載しています.総論は急性脳症のすべての症例に当てはまる原則ですので,軽症~中等症~重症のすべてで,どの症候群でも分類不能の急性脳症でも活用していただきたいものです.一方,各論は主たる病態,前述の①②③別に分けて記載してあります.したがって,そのいずれか1つを主病態とする症候群では,例えば古典的Reye症候群なら代謝異常の章(第4章),ANEなら全身炎症反応の章(第5章),AESDならけいれん重積の章(第6章)といった具合に,該当する章を参照していただきたく思います.また,3つのうち2つ以上が合併するような重症例では,各論の複数の章を使っていただくことになりますし,反対に3つの病態がいずれも軽度にとどまる軽症例では,多くの場合,総論に記載された支持療法のみで十分と考えられます.
 本ガイドラインは急性脳症の共通性と不均一性の両方を踏まえたうえで編纂しました.しかし,その本態はとても複雑で,前述のような整理では捉えきれない面がありうることは否めません.そのことは,一部の症例における本ガイドラインの使いづらさにつながるかもしれません.本ガイドラインは急性脳症の研究の発展の初期段階で編纂されたものであり,未解決の問題点を多く抱えています.発刊後は,多くの方々に使っていただきながら問題点を指摘していただき,それらの問題を解決しながら,より良いガイドラインに育ててゆきたいと希望しております.

2016年7月

日本小児神経学会
小児急性脳症診療ガイドライン策定委員会委員長 水口 雅