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ベッドサイド型 人工膵臓取り扱いマニュアル診断と治療社 | 書籍詳細:ベッドサイド型 人工膵臓取り扱いマニュアル

国立国際医療研究センター病院糖尿病内分泌代謝科 第二糖尿病科 医長

中條 大輔(ちゅうじょう だいすけ) 編集

国立国際医療研究センター病院食道外科 医長

山田 和彦(やまだ かずひこ) 編集

 

初版 A5判 2色(一部4色) 140頁 2017年05月15日発行

ISBN9784787822987

定価:本体4,500円+税
  

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持続的に患者の血糖を測定し,至適量のインスリンを自動で投与して血糖を良好にコントロールし,高血糖も低血糖も起こさない理想的な処置・治療のための人工膵臓装置.この装置の運用に必要な実践的情報が満載.単なるマニュアルではなく,実例に基づいた有用性の解説,トラブルを抑えるコツ,tips and errorsも充実.院内マニュアル作成に役立つ至極の一冊.

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目次

序 文   廣井透雄

医師編
1. 概 要   中條大輔
 A)人工膵臓とは
 B)人工膵臓の歴史
 C)使用目的の概要
2. 人工膵臓を用いた治療法―目的,理論,適応,実施要領・注意点
 A)血糖管理の目的   山田和彦
 B)人工膵臓の目的とその理由   山田和彦
 C)実施要領
  1)周術期血糖管理の実施要領   高橋信行
  2)膵・膵島移植における実施要領   霜田雅之
 D)施行中の注意点―おもに血管確保について   山下 智
3. 実例に基づいた人工膵臓治療の解説   北川博之,花﨑和弘
 A)周術期血糖管理の重要性
 B)食道切除における血糖管理
 C)肝切除,膵切除における血糖管理
 D)トラブルを抑えるコツ
 E)まとめ
4. 人工膵臓を用いた検査法(グルコースクランプ法)
 A)目 的   大杉 満
 B)理 論   大杉 満
 C)適 応   大杉 満
 D)実施要領と結果の解釈   古川康彦,田村好史
 E)施行中の注意点   古川康彦,田村好史
5. 検査および治療の依頼手順   高橋信行
 A)人工膵臓による治療
 B)人工膵臓による検査
 C)人工膵臓使用に際しての依頼手順
6. 実施体制   岡本竜哉
 A)実施に携わる人員
 B)実施場所
 C)保管場所
7. 検査および治療の保険収載について   中條大輔
 A)人工膵臓を用いた治療の保険収載
 B)人工膵臓を用いた検査の保険収載

看護師編
1. 人工膵臓の目的   米廣由紀
2. 人工膵臓の導入と看護師の役割   米廣由紀
3. 装置準備から処置終了までの流れ
 A)手 順
  1)治療における手順の概要   磯田英里
  2)検査における手順の概要   肴屋絵里香
 B)使用中の観察項目   磯田英里
 C)アラーム対応   磯田英里
 D)フラッシング操作   磯田英里
 E)採血不良改善後の操作   萩原明子
 F)採血ルート固定の工夫   萩原明子
 G)その他運用上の注意点   萩原明子
4. 記録について
 A)治療における記録内容   萩原明子
 B)検査における記録内容   肴屋絵里香
5. チェックリスト   米廣由紀
6. 事務的事項   米廣由紀
 A)コスト収載
 B)必要薬剤のオーダーなど

臨床工学技士(ME)編
1. 人工膵臓業務への臨床工学技師のかかわり   深谷隆史
 A)人工膵臓業務を行うこととなった背景
 B)現状の人工膵臓について
 C)これから紹介する臨床工学技士の業務内容
 D)業務にかかわる理由
2. 人工膵臓装置の原理   髙野太輔
 A)原理・システム
 B)回路構成
 C)保守管理
3. 準備物品,STG-55のセットアップ手順,運用開始~運用終了まで   部田健人
 A)準備物品
 B)STG-55セットアップ手順とプライミング
 C)運用開始から運用終了まで

索 引

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序文

人工膵臓はわが国で開発されたシステムであり,診療報酬が認められていたが,包括医療費支払い制度(DPC)では請求が認められなかったため使用例は少数に留まり,専門家以外ではまだあまり知られていないと思われる.
血糖変動が著しい侵襲の大きな手術の周術期に血糖を正常近くに保つと,手術治療成績の向上,術後合併症の減少,入院日数の短縮が得られることが示されている.日常の医療現場では糖尿病患者で血糖を測定し,スライディングスケールなどを利用してインスリンの投与量を決めて血糖コントロールを行っていると思われるが,現実的には患者,医療スタッフの負担が大きい割には,血糖を良好にコントロールすることが難しく,想定外の高血糖,低血糖となることもあり,インスリンに関するヒューマンエラーも起こり,医療安全上も大問題となることがある.特に重症糖尿病患者では,高血糖昏睡や,急性心筋梗塞など思わぬ合併症を引き起こしかねない重症低血糖を絶対に避けなければならない.これに対し,人工膵臓は持続的に患者の血糖を測定し,至適な量のインスリンを自動で投与して血糖を良好にコントロールし,高血糖も低血糖も起こさない理想的な処置・治療である.
このように優れた人工膵臓であるが,近年の医療安全においては新規医療技術の導入を安全に行うために,マニュアルの作成,説明・同意文書の作成,スタッフの教育,医療施設内の専門委員会での審議など,事前に十分に準備をすることが求められている.当院においては以前から人工膵臓が存在していたが,平成28年の診療報酬の改定でDPC病院においても人工膵臓の診療報酬請求が別途可能となったため,本格的な運用にあたり,糖尿病内分泌代謝科,外科,集中治療室の医師,生活習慣病病棟,集中治療室の看護師,臨床工学技師の混成チームを結成し,院内のマニュアルを作成した.当院の医療安全管理体制ではすべての院内マニュアルは医療安全管理室がチェックすることになっているが,人工膵臓のマニュアルは写真も多く,糖尿病や集中治療室の専門家以外でも大変にわかりやすいものであると思われた.
今後は,糖尿病患者の周術期,外傷,分娩時など,人工膵臓が日本中で使用されていくことが予想されるが,新しい医療機器の導入には上述したようなハードルがある.そこで,当院で作成したマニュアルを院内だけで使用するのではなく出版することにより,他の医療機関の人工膵臓導入の手助けとして利用していただくこととした.書籍化にあたり,院内のスタッフがさらにわかりやすく記載し直しただけではなく,大学などで人工膵臓の先駆的な仕事をされてきている医師にも執筆をお願いし,単なるマニュアルではなく,実例に基づいた有用性の解説,トラブルを抑えるコツ,tips and errorsを充実させた.
なお,人工膵臓の算定には厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているという,人工膵臓検査および人工膵臓療法の施設基準に係る届出を事前に地方厚生局長等に行うことが必要である.
最後になるが,本書が人工膵臓の正しい知識を医療スタッフに広め,多くの患者がその恩恵にあずかることを希望する.

2017年4月
国立国際医療研究センター病院 副院長
廣井透雄