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書籍詳細

みんなで考える 性分化疾患診断と治療社 | 書籍詳細:みんなで考える 性分化疾患
-本人と養育者と医療者のために-

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 監修

大阪母子医療センター消化器・内分泌科

位田 忍(いだ しのぶ) 編集

大阪母子医療センター消化器・内分泌科

川井 正信(かわい まさのぶ) 編集

大阪母子医療センター泌尿器科

松井 太(まつい ふとし) 編集

帝京大学医療技術学部看護学科小児看護学

石見 和世(いわみ かずよ) 編集

大阪母子医療センター看護学部

江口 奈美(えぐち なみ) 編集

初版 B5判 並製 120頁 2019年09月20日発行

ISBN9784787823984

定価:本体4,500円+税
  

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大阪母子医療センターでの経験を基に、性分化疾患(DSD)の多職種で行う臨床管理について解説.DSD診療にて重要となる移行支援や自立支援,法的側面の記載も充実し,DSDの子どもや家族へのフォローアップについても配慮した.また,子どもと家族に向けたQ&Aや移行支援シートなど,臨床の場でDSDの子どもや家族に遭遇したときに役立つ情報を網羅した.

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目次

巻頭言   倉智博久
序文   位田 忍
執筆者一覧

第1章:DSDとは
  1.性分化の過程   川井正信
  2.DSDの診断と検査   川井正信
  3.DSDの分類   川井正信  

第2章:DSDの臨床管理(本人,養育者,医療者への対応)
  1.新生児期に診断された場合   吉田美寿々  
  2.乳児期~小児期に診断された場合   庄司保子  
  3.思春期以降に診断された場合   庄司保子  

第3章:DSDの治療とその選択
  1.外科治療   松本富美  
  2.内科治療   庄司保子  

第4章:一般の子どもの心理的成熟,性教育
  1.性に関するこころの育ちと性別違和   山本悦代,小杉 恵  
  2.わが国の性教育の現状と課題   島田憲次,佐保美奈子  
 コラム 助産師による出張性教育   藤川陽子  

第5章:DSDの教育と自立支援―移行期医療,移行期外来の役割
  1.移行期医療とは   位田 忍
  2.大阪母子医療センターにおける移行支援―自立支援   江口奈美,山本悦代  
  3.大阪母子医療センターのDSDの移行期医療   位田 忍,伊藤衣里,石見和世,江口奈美,菅田純子  

第6章:DSDの成人期医療の問題点
  1.外科手術に伴うもの,癌化の問題   松井 太  
  2.内科的観点から(性腺補充を中心に)   橋本香映  
  3.妊孕性(男性)   松井 太  
  4.妊孕性(女性)   川口晴菜  

第7章:DSDサポートチームとその役割
  1.サポートチーム   石見和世  
   a 精神・心理的サポート   山本悦代,小杉 恵  
   b 遺伝カウンセリング   松田圭子,岡本伸彦  
   c 看護師   石見和世,菅田純子  
  2.患者・家族会   石見和世  

第8章:DSDに係る制度,その他
  1.DSDで出生届はどのように出すのか?性別を変える場合の手続きは?(法律制度)   松山聡子,松井 太  
  2.医療助成はあるか?小児慢性特定疾病と指定難病(医療制度)   惠谷ゆり  

Q&A 位田 忍,川井正信,松井 太,伊藤衣里,石見和世,江口奈美,菅田純子  
  乳児期
   Q1.今の時点で何か気をつけることはありますか?
   Q2.この子は将来自分の性別に違和感をもちますか?そのときはどうしたらよいですか(性別変更など)?
   Q3.手術の費用などが不安です.
  幼児期
   Q1.子どもに質問されたとき何と答えればよいですか?
    「なぜ病院に行くの?」
    「(たとえばCAH例で薬を飲んでいる場合)なぜ薬を飲むの?」
    「(乳児期に手術をした場合)この傷はなに?」
    「(外性器に違和感がある場合)なぜ自分のは人と違うの?」
   Q2.園や学校へは何と説明したらよいですか?
  学童期
   Q1.(内服がある場合)薬はいつから自分で管理できるようになりますか?
   Q2.(生理がこない場合)生理のことはなんと説明したらよいですか?
   Q3.本人への病気の説明はしたほうがよいですか?
   Q4.(子どもができにくい場合)いつ頃本人へ伝えたらよいでしょうか?
   Q5.本人への病気の説明はどのようにしたらよいですか?
   Q6.(外性器に違和感がある場合)林間学校,修学旅行で集団での入浴があるときは皆さんどうしていますか?
  思春期
   Q1.(生理がこない場合)友達に聞かれて返答に困っているようです.よい返答の仕方はありますか?
   Q2.(内服がある場合)薬の飲み忘れがあるようです.反抗期で言っても聞きません.どうしたらよいでしょうか?
  青年期
   Q1.(パートナーがいる場合)パートナーへの説明に悩んでいるようです.どうしたらよいでしょうか?

資料 子どもの自立を支援するための移行支援シート

索引

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序文

巻頭言

  この度,大阪母子医療センターから「みんなで考える性分化疾患-本人と養育者と医療者のために-」を上梓することとなりました.
  性分化疾患(DSD)の原因遺伝子の特定,疾患にassociateしてみられる遺伝子異常の解析や発症の機序などに関する研究の最近の進歩には目を見張るものがあります.また,以前は半陰陽あるいはインターセックスなどと呼ばれてきた本疾患も,DSDの名称が広く受け入れられ,その疾病分類もほぼ確定したと考えられます.これらの新しい知見を記述したDSDの成書は多くありますが,本書でも,疾病の遺伝子異常や発症のメカニズム,診断,外科・内科的治療について正確な知見を記述しています.加えて,本書の大きな特徴は,子どもと家族への対応,DSD児の移行期医療や性教育のあり方などにも触れていることです.遺伝カウンセラーや心理士など多くの職種の方々が担うべき役割についても記載しました.また,DSDをもつ養育者の態度・姿勢,養育者が子どもに対してどのように病気の説明をすべきかなどについても詳しく解説しています.さらに,患者会のこと,出生届の出し方についても法的な知識を含め丁寧に解説しました.
  当センターに小児医療部門が開設された1991年から一貫して,新生児にambiguous genitaliaを認めた場合には「性別判定会議」を開催してきたことからも理解していただけますように,当センターにとってDSDは重要なテーマです.性別判定会議は,医師,看護師だけでなく,遺伝カウンセラー,臨床心理士,ソーシャルワーカーなども含めた多職種で構成されており,上記のように多方面から子どもを支援しています.
  DSDは,十分な経験をもったスタッフがそろった施設で扱われるべき,社会的緊急疾患です.したがって,多くの施設ではambiguous genitaliaなどを発見された時には,専門施設へ紹介されることとなると思われますが,子どもとその家族に接するときに本書を役立てていただければ幸いです.
  本書の作成発刊にあたっては,診断と治療社のご支援をいただきました.

2019年7月
大阪母子医療センター
総長 倉智博久



序文

  2012年現・大阪母子医療センターでのハワイ大学Diamond教授の講演で「性分化疾患(disorders/differences of sex development : DSD)は身体的体質であり病気ではない.DSDのサポートにあたっては嘘がないことが重要で,本人,養育者,医療者など,関わるすべての人達の出発点を同じにしなければ真のサポートはできない.」と述べている.これ以降大阪母子医療センターでは,DSDの子どもに「いつ」「どのように」伝え,どのように長期フォローをしたらよいかを多職種で検討し始めた.子ども自身が病名と病態を知ることは,DSDの状態で一生を過ごす子どもが成人へ向けて自立する第一歩である.
  DSDは,性腺,性器の発育が非典型的である状態と定義され,臨床的にはambiguous genitaliaを呈し性別判定が必要なことが多い.性腺原基は卵巣にも精巣にも分化できるbipotentialである.基本的には女性型にプログラムされており,様々な因子が働き男性型に誘導される.最近の知見では女性型の分化も能動的であることがわかってきた.この分化過程のどこかに問題が生じることがDSDを招く.臨床管理では,新生児・乳児期の集学的チームによる医学的診断と性別判定への提言が有用であり,症例の蓄積が行われている.2005年に第1回,2015年に第2回国際コンセンサス会議が行われ,言葉の定義や診断・治療,社会的サポートに言及している.わが国では,日本小児内分泌学会を中心に「性分化疾患初期対応の手引き」が作成され(学会HP参照),DSD診療の標準化を目指している.集学的チームによるサポートが有効であり,このチームには小児内分泌科医,小児泌尿器科医,(小児)婦人科医,新生児科医,産科医,児童精神科医に加えて,看護師,臨床心理士,医療ソーシャルワーカー,助産師が含まれる.
  さらに,DSDは移行期医療の対象で,生涯にわたる最良の医療管理と自立支援を行う必要がある.DSDの病態とこれまでの治療経過を段階的に繰り返しての説明(教育)を子どもと養育者に行うことが望ましいが,わが国ではまだ確立されたものがない.大阪母子医療センターではDSD移行外来を2016年10月に立ち上げた.おもな担当者は泌尿器科医,内分泌科医,担当看護師で,必要に応じてこころ科,小児婦人科,臨床心理士,遺伝カウンセラーが診療する.初期対応の後に,5~6歳をめどに,養育者に再度病態と性の発達について説明することから始めて,10~12歳(1/2成人式),15歳頃,18歳頃に年齢に応じた説明を繰り返し行っている.
  DSDの臨床管理では様々な観点からの対応が必要であるが,希少疾患であるために個々の対応は試行錯誤に陥り,子どもと養育者を混乱させることが起こる.したがってDSDの臨床管理は習熟した医療機関での診療が推奨されている.今回,DSDの初期対応を中心にまとめた『性分化疾患ケースカンファレンス』(位田 忍,島田憲次編集主幹.診断と治療社 2014)の続編としてDSDの長期臨床管理をまとめる機会を得た.本書が新生児から青年期までの子どもたちと養育者と医療者の診療現場で使われDSDの子どもたちが少しでも安心して成人していく過程の役に立てば幸いである.

2019年7月
編集を代表して
大阪母子医療センター 消化器・内分泌科
臨床検査科主任部長 位田 忍