HOME > 書籍詳細

書籍詳細

高血圧診療ステップアップ診断と治療社 | 書籍詳細:高血圧診療ステップアップ
高血圧治療ガイドラインを極める

日本高血圧学会 編集

初版 B5判 並製 306頁 2019年05月18日発行

ISBN9784787824028

正誤表はPDFファイルです.PDFファイルをご覧になるためにはAdobe Reader® が必要です  
定価:6,050円(本体価格5,500円+税)
  

ご覧になるためにはAdobe Flash Player® が必要です  


「高血圧治療ガイドライン2019」に準拠した学会公認テキスト.ガイドラインの“行間”を知りたい,高血圧の日常診療をさらにスキルアップしたい読者のために,わかりやすく解説.専門医,また専門医をめざす医師のための「高血圧専門医ガイドブック」の改訂新版でもある.高血圧診療にかかわるすべての医師必携の好著.

関連書籍

ページの先頭へ戻る

目次

I.総論

 A.高血圧の疫学
  1.高血圧と各種疾病との関連
  2.国民の血圧の現状と推移
  3.日本人の高血圧の特徴
  4.公衆衛生上の高血圧対策
 B.血圧調節機序
  1.概論
  2.遺伝的要因
  3.環境要因
  4.RAA系
  5.交感神経系
  6.腎臓と食塩
  7.血管機序
  8.心臓


II.血圧測定

 A.血圧測定と臨床評価
  1.診察室(医療環境下)血圧測定
  2.血圧値の分類
  3.高血圧の病型分類
 B.24時間血圧測定・家庭血圧
  1.24時間自由行動下血圧測定(ABPM)
  2.家庭血圧測定法
  3.血圧測定の精度管理
 C.白衣高血圧,仮面高血圧,血圧変動性
  1.家庭血圧とABPMに基づく診療手順
  2.白衣高血圧
  3.仮面高血圧
  4.血圧変動性
 D.脈拍の変動
  1.脈拍数の意義
  2.脈拍変動と自律神経
  3.double product


III.高血圧の診察

 ◇高血圧の診察
  1.診断の組み立て
  2.病歴聴取
  3.身体所見


IV.臨床検査

 A.一般必須検査
  1.臨床検査はどこまで信頼できるか?
  2.尿,血液検査
  3.血液生化学検査
  4.心電図
  5.胸部X線
  6.眼底検査
 B.特殊検査(1)―エコー・CT・MRI(頸部,心,腎血流)
  1.頸部血管エコー
  2.心エコー
  3.腎エコー
  4.四肢動脈エコー
  5.腹部CT,MRI
  6.頭部CT,MRI
  7.アルブミン尿,蛋白尿
  8.高感度CRP
 C.特殊検査(2)―動脈硬化指標
  1.足関節上腕血圧比(ABI)
  2.脈波伝播速度(PWV)
  3.心臓足首血管指数(CAVI)
  4.脈波解析・中心血圧
  5.血流依存性血管拡張反応(FMD)
  6.おわりに
 D.内分泌検査
  1.各種ホルモン検査
  2.副腎静脈サンプリング(AVS)
 E.核医学・造影・腎生検
  1.核医学検査
  2.造影検査
  3.腎生検


V.治療

 A.高血圧の管理および治療の基本方針
  1.治療の目的
  2.高血圧治療および高血圧対策の対象者
  3.生活習慣の修正,非薬物療法,薬物療法
  4.予後評価と管理計画のためのリスク層別化
  5.初診時の高血圧管理計画
 B.治療対象と降圧目標,治療法の選択
  1.治療対象
  2.降圧目標
  3.生活習慣の修正
  4.降圧薬の開始時期
  5.降圧薬治療
 C.高血圧治療における留意事項
  1.初期治療
  2.長期治療(継続治療)
  3.抗血小板薬・抗凝固薬併用中の血圧管理
  4.QOLへの配慮
  5.アドヒアランス,コンコーダンス
  6.過降圧となる血圧レベル
  7.降圧療法の費用対効果
  8.降圧薬の中止
 D.生活習慣の修正
  1.食事・節酒
  2.運動
  3.禁煙
  4.その他
 E.降圧薬治療の概論
  1.降圧薬の選択の基本
  2.降圧薬の使用方法
  3.相互作用と副作用
 F.降圧薬の特徴と薬理・副作用
  1.Ca拮抗薬
  2.レニン・アンジオテンシン(RA)系とARB/ACE阻害薬
  3.直接的レニン阻害薬(DRI)
  4.利尿薬
  5.β遮断薬(含αβ遮断薬),α遮断薬
  6.中枢性交感神経抑制薬,古典的な血管拡張薬
  7.ミネラルコルチコイド(MR)拮抗薬


VI.高血圧性合併症の特徴と治療

 A.脳血管障害
  1.脳卒中超急性期・急性期
  2.慢性期
  3.無症候性脳血管障害
 B.心疾患
  1.高血圧と心疾患
  2.心肥大
  3.冠動脈疾患
  4.心不全
  5.心房細動・不整脈
 C.腎疾患
  1.慢性腎臓病
  2.糖尿病性腎症,糖尿病性腎臓病
  3.人工透析・腎移植
  4.急性腎不全,急性腎障害
 D.血管疾患
  1.大動脈解離
  2.胸部・腹部大動脈瘤
  3.閉塞性動脈硬化症


VII.他疾患を合併した高血圧の治療

 A.糖尿病,脂質異常症,肥満,メタボリックシンドローム
  1.糖尿病
  2.脂質異常症
  3.肥満
  4.メタボリックシンドローム
  5.特定健康診査・特定保健指導
 B.睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  1.頻度
  2.OSASの診断と重症度
  3.循環器疾患のリスク
  4.高血圧の特徴と機序
  5.OSAS合併高血圧の治療
  6.おわりに
 C.痛風・高尿酸血症,慢性閉塞性肺疾患・気管支喘息,肝疾患
  1.痛風・高尿酸血症
  2.慢性閉塞性肺疾患(COPD)・気管支喘息
  3.肝疾患


VIII.認知症を合併した高血圧への対応

 ◇認知症を合併した高血圧への対応
  1.高血圧と認知機能障害・認知症
  2.高齢期高血圧治療と認知機能
  3.認知症合併高血圧
  4.米国,欧州ガイドラインでの取り扱い


IX.高齢者高血圧

 ◇高齢者高血圧
  1.高齢者高血圧の特徴
  2.高齢者高血圧の基準と疫学研究成績
  3.高齢者高血圧の診断
  4.高齢者高血圧の治療


X.小児の高血圧
 
 ◇小児の高血圧
  1.小児の高血圧の頻度,経年変化
  2.小児の血圧測定と高血圧基準値
  3.小児高血圧の病態
  4.小児肥満と高血圧
  5.胎児期の栄養と高血圧
  6.小児・高校生の本態性高血圧の問題点
  7.小児期における生活習慣の修正
  8.高血圧の管理
  9.小児高血圧の診断・治療にかかわる課題


XI.女性の高血圧

 ◇女性の高血圧
  1.若年女性にみられる二次性高血圧
  2.妊娠高血圧症候群(HDP)
  3.授乳に関する降圧薬
  4.更年期における高血圧


XII.特殊条件下の高血圧

 A.高血圧緊急症・切迫症
  1.高血圧緊急症・切迫症
  2.おもな高血圧緊急症および切迫症
 B.高血圧緊急症以外の一過性血圧上昇
  1.高齢者や自律神経障害を有する者
  2.パニック発作(パニック障害),過換気
  3.偽性褐色細胞腫
 C.外科手術前後の血圧コントロール
  1.術前の高血圧および臓器障害の評価
  2.手術前後の血圧変化
  3.周術期の降圧薬の使用
  4.歯科手術と血圧管理


XIII.治療抵抗性高血圧

 ◇治療抵抗性高血圧
  1.治療抵抗性高血圧の定義と頻度,予後
  2.治療抵抗性高血圧の要因
  3.治療抵抗性高血圧への対策


XIV.二次性高血圧

 A.二次性高血圧の概論
  1.二次性高血圧とは
  2.二次性高血圧をきたす疾患
  3.二次性高血圧の頻度
  4.二次性高血圧のスクリーニング
 B.腎実質性高血圧
  1.定義と頻度
  2.診断
  3.病態と特徴
  4.原疾患と降圧療法
 C.腎血管性高血圧
  1.定義と頻度
  2.病態
  3.診断
  4.治療
 D.内分泌性高血圧
  1.概念
  2.原発性アルドステロン症(PA)
  3.その他のミネラルコルチコイド過剰症
  4.クッシング症候群
  5.褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)
  6.その他の内分泌性高血圧
 E.血管性高血圧
  1.高安動脈炎
  2.その他の血管炎性高血圧
  3.大動脈縮窄症
  4.心拍出量増加を伴う血管性高血圧
 F.脳・中枢神経系疾患による高血圧
  1.脳・中枢神経疾患における高血圧
  2.中枢性昇圧機序
  3.神経血管圧迫症候群
 G.遺伝性高血圧
  1.リドル症候群
  2.ゴードン症候群
  3.ミネラルコルチコイド過剰症候群(AME)
  4.グルココルチコイド奏効性アルドステロン症(GRA)
  5.家族性アルドステロン症3型(FH III)
  6.11β-水酸化酵素欠損症(11β-OHD)
  7.17α-水酸化酵素欠損症(17α-OHD)
  8.妊娠時増悪早期発症高血圧
  9.短指症を伴う遺伝性高血圧(HTNB)
  10.代謝異常クラスター(a cluster of metabolic defects)
 H.薬剤誘発性高血圧
  1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  2.カンゾウ(甘草),グリチルリチン
  3.グルココルチコイド
  4.免疫抑制薬
  5.エリスロポエチン
  6.エストロゲン
  7.交感神経刺激薬
  8.がん分子標的薬


XV.臨床研究を適切に行うために

 ◇臨床研究を適切に行うために
  1.臨床研究の変遷と研究者に求められるもの
  2.利益相反のハンドリングと研究倫理 高血圧専門医は正しいスキルとリテラシーを
  3.高血圧の臨床研究はどこへ向かうのか? ビッグデータはバイアスの塊である



column

 column 1  成人の本態性高血圧患者において,家庭血圧を指標とした降圧治療は,診察室血圧を指標とした
           治療に比べ,推奨できるか?
 column 2  白衣高血圧者は経過観察を行うべきか?
 column 3  降圧治療において,厳格治療は通常治療と比較して脳心血管イベントおよび死亡を改善するか?
 column 4  高血圧患者における減塩目標6g/日未満は推奨されるか?
 column 5  治療抵抗性高血圧に対してMR拮抗薬の投与を推奨するか?
 column 6  積極的適応がない高血圧に対して,β遮断薬であるカルベジロールやビソプロロールは第一選択薬
           として推奨できるか?
 column 7  冠動脈疾患合併高血圧患者の降圧において,拡張期血圧は80mmHg未満を避ける必要があるか?
 column 8  心筋梗塞または心不全を合併する高血圧患者において,ACE阻害薬はARBに比して推奨されるか?
 column 9  左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF:heart failure with preservedejection fraction)
           において収縮期血圧130mmHg未満を目標とする降圧は推奨されるか?
 column 10 [1] 糖尿病非合併CKD(尿蛋白あり)での降圧療法の第一選択薬はRA系阻害薬か?
         [2] 糖尿病非合併CKD(尿蛋白なし)での降圧療法の第一選択薬はRA系阻害薬か?
 column 11 糖尿病合併高血圧の薬物療法では,脳心血管病の発症を低下させるために,収縮期血圧降圧目標
           として140mmHg未満よりも130mmHg未満を推奨するか?
 column 12 糖尿病合併高血圧の降圧治療では,Ca拮抗薬,サイアザイド利尿薬よりも,ARB,ACE阻害薬を
           優先するべきか?
 column 13 降圧薬治療は高齢高血圧患者の認知機能の保持に有効か?
 column 14 妊娠高血圧で減塩は推奨されるか?
 column 15 脳心血管病の高リスクを有する患者の非心臓手術において,周術期のβ遮断薬使用は推奨されるか?
 column 16 原発性アルドステロン症の治療として,副腎摘出術を施行した場合と,MR拮抗薬で治療を行った
           場合で,予後に差はあるか?



おもな略語一覧

索引

ページの先頭へ戻る

序文

序文

 2019年は新しい時代「令和」の始まりです.また,「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)が施行され,「脳卒中・循環器予防元年」でもあります.高血圧は,わが国の患者数が4,200万人とも推定されており,脳卒中,心筋梗塞や心不全,腎不全などの脳心血管病の最も重大な危険因子の一つです.したがって,高血圧の予防と治療が脳卒中・循環器病の一次予防・二次予防の最重要課題です.
 日本高血圧学会は,高血圧の標準的な診療方法を示す「高血圧治療ガイドライン」を2000年以来,約5年ごとに改訂していますが,2019年4月に第5版「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」が公表されました.JSH2019では,(1)わが国における血圧値以外の脳心血管病のリスクを評価して,血圧値とあわせて高血圧治療の道筋を決定する,(2)降圧療法の脳心血管病の発症と再発を予防するための降圧目標の再評価が行われ,独自のシステマティックレビュー・メタ解析を含めて,新たなエビデンスが蓄積したことにより,多くの病態や疾患での降圧目標を引き下げる,(3)降圧療法の進歩にもかかわらず治療中の患者において(JSH2014の)降圧目標に達成している割合は50%程度にすぎない“Hypertension Paradox”を解消するためには,医師自身のclinical inertia(臨床イナーシャ)の克服や多職種協働による非薬物療法が重要となることなどが謳われています.
 また,2008年(平成20年)に高血圧学会が専門医制度の運用を開始し約10年が経過し,すでに日本高血圧学会認定専門医は700名を越えています.高血圧専門医の役割は,(1)一般,総合医,および循環器・腎臓・内分泌内科・脳卒中などの特定領域の専門医では難渋する治療抵抗性高血圧について,多領域方面の知識と経験から,その成因と病態を明らかにし治療にあたる,(2)高血圧の約10%を占める二次性高血圧を適切に診断・治療する,(3)今後実用化が期待される腎交感神経デナベーションなどの高血圧のデバイス治療にあたり,適切な治療適応の検討と管理を行う,(4)本人が気づいていない高血圧の認知,高血圧の発症や予防に向けた教育・啓発活動,さらに国民全体に血圧値を下げるための政策提言や情報発信などを通じて,脳心血管病の抑制,健康状態の向上を図ることにより,国民の福祉に貢献することです.脳卒中・循環器病対策基本法が制定された今,脳心血管病の予防と治療における高血圧専門医の重要性はますます高まっています.
 本書「高血圧診療ステップアップ―高血圧治療ガイドラインを極める―」は,JSH2009発表にあわせて初版が出版され,その後第3版まで出版された「高血圧専門医ガイドブック」をさらに発展させたものです.高血圧専門医ならびに専門医をめざす医師のみならず,JSH2019をより深く理解し,さらなる高血圧診療のステップアップをはかりたい医師を対象にした教科書です.ガイドラインには十分記載できなかった病態や治療についてもくわしく述べてあります.高血圧専門医,専門医をめざす医師の自己研鑽に加えて,幅広い医師の高血圧診療に役立てていただくことを祈念しています.

2019年5月

特定非営利活動法人 日本高血圧学会 理事長
伊藤 裕
特定非営利活動法人 日本高血圧学会 専門医制度委員会 委員長
高血圧診療ステップアップ作成委員会 委員長
甲斐久史