HOME > 書籍詳細

書籍詳細

産婦人科医療裁判に学ぶ 裁判にならないためのポイント診断と治療社 | 書籍詳細:産婦人科医療裁判に学ぶ 裁判にならないためのポイント

「産科と婦人科」編集室 編集

初版 B5判 並製 192頁 2021年12月23日発行

ISBN9784787825094

定価:4,180円(本体価格3,800円+税)
  

ご覧になるためにはAdobe Flash Player® が必要です  


「産科と婦人科」で好評連載中の「医療裁判の現場から」を再編集し,書籍化.医師が負う責任や紛争化した際の解決法,裁判所の考え方などについて事例をもとに対策のポイントをわかりやすく解説しました.また,医師からの質問に対し弁護士が答えるQ&Aも収録しており,日常診療に役立つヒントが満載です.各科に共通する問題が取り上げられているので産婦人科以外の医療専門職の方々にも読んでいただきたい1冊です.

ページの先頭へ戻る

目次

推薦の辞 / 「産科と婦人科」編集顧問
はしがき / 秦 奈峰子
基本的な用語
紛争予防・心がけチェックリスト
執筆者一覧

第1章 総 論
1.医療過誤が起きた場合に医師はどのような責任が問われるのでしょうか? / 秦 奈峰子
2.どのような場合に民事責任を負うのでしょうか? / 秦 奈峰子
3.どのような場合に過失が認められるのでしょうか? / 秦 奈峰子
4.インフォームド・コンセントではどんなことに気をつけるべきでしょうか? / 秦 奈峰子
5.紛争化した場合の解決までの道のりは? / 秦 奈峰子
6.紛争化を防ぐために,適正な解決のために,日頃からできること / 秦 奈峰子

第2章 事例集
1.民事と刑事,行政処分
1.刑事事件
乳腺腫瘍切除術後の女性患者にわいせつ行為をしたとして,乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われた事例 / 秦 奈峰子
2.証明妨害行為
医師の証明妨害行為(診療録等の改ざん・看護師への偽証教唆)について刑事処分・行政処分(医業停止処分)がなされたほか,民事訴訟においても損害賠償責任を負うものとされた事例 / 清水 徹

2.医療水準と過失
1.産科ガイドライン
①オキシトシン投与や分娩方法についての過失により児を低酸素状態に至らしめ,児は脳性麻痺および肺炎等の影響による急性呼吸不全により死亡したものの,過失と死亡結果との間の因果関係の有無について争われた事例 / 福原正和
②吸引分娩により分娩された児に脳性麻痺等の障害が生じたケースにおいて,初回の吸引カップ装着から吸引手技終了まで20分以上を要したことについて医師の注意義務違反が否定された事例 / 水上裕嗣
2.肺塞栓症ガイドライン
①子宮脱の治療のため,仙棘靱帯子宮頸部固定術等の手術を受けた原告が,手術から2日後に肺血栓塞栓症による低血圧ショックおよび意識障害を発症し,遷延性意識障害が残ったことにつき,医師の注意義務違反が認められた事例 / 鵜澤亜紀子
②帝王切開術後4日目に他院へ転送されるも肺血栓塞栓症により死亡した患者につき,医師に術後DVTを疑い,必要な措置を怠った過失と結果との間の因果関係が認められた事例 / 山田隆史
3.産科危機的出血へのガイドライン
分娩後に羊水塞栓症を原因とするDICに陥り転送先にて死亡した患者について,注意義務違反に基づく慰謝料請求が認められた事例 / 津久井見樹
4.VBAC
帝王切開既往後の経腟分娩(VBAC)を試みたところ子宮破裂を起こし,新生児が死亡した事例 / 清水 徹
5.無痛分娩
①無痛分娩下で行った吸引・鉗子分娩等によって帽状腱膜下血腫を発症し児が死亡した事例につき,適応の確認不足を過失として損害賠償を認めた裁判例 / 笠間哲史
②無痛分娩事例における民事損害賠償責任,医療事故と刑事責任 / 秦 奈峰子,笠間哲史
6.添付文書
①分娩誘発剤投与後に新生児が重度の虚血性低酸素脳症に罹患し約2年4カ月後に死亡した事例において,病院側の分娩監視装置を連続的に装着して分娩監視を行う義務を否定した事例 / 津久井見樹
②児が新生児仮死の状態で出生したことにつき,陣痛促進剤を慎重に投与すべきであった注意義務違反,急速遂娩を実施すべきであった注意義務違反が認められた事例 / 粟野公一郎
7.確立された知見のない分野での医療水準
減胎手術における手技,術式選択,感染症対策等について医師の注意義務違反が否定された事例 / 福原正和,水上裕嗣
8.鑑 定
出産直後の妊産婦が出血性ショックにより死亡した場合において病院側の不法行為責任が認められた事例 / 島田佳子
9.カルテ記載の重要性
妊娠高血圧症候群の管理目的で入院したものの,HELLP症候群・子癇等により死亡した患者について,帝王切開後の管理が,血液検査および降圧剤投与に関して不十分であったとして過失が認められた事例 / 猪瀬秀美

3.説明義務(患者の自己決定権)
1.インフォームド・コンセント
①排卵誘発剤を使用したところ卵巣過剰刺激症候群および脳血栓症を発症し左上肢機能全廃の後遺症が残った事例について,医師の説明義務違反を認めた事例 / 秦 奈峰子
②帝王切開による分娩中に夫の代諾により子宮を全摘されたことにつき,説明義務違反に基づく損害賠償責任が認められた事案 / 山田隆史,粟野公一郎
2.出生前診断等
①羊水検査結果を見誤ってダウン症ではないと説明していたが,出生した児は同症であり,かつ同症の合併症によって死亡した事例につき,検査結果の誤報告と,児の出生や死亡との因果関係は否定したが,両親の慰謝料については認めた裁判例 / 笹山桂一
②遺伝学的検査,出生前診断における過誤と損害賠償責任―先天性風疹症候群,ダウン症の事例から― / 秦 奈峰子
③遺伝学的検査,出生前診断における過誤と損害賠償責任―ペリツェウス・メルツバッハ病の事例から― / 秦 奈峰子
3.人工妊娠中絶における配偶者の同意
配偶者の同意を得ずに行われた人工妊娠中絶について,配偶者の慰謝料が認められた事案 / 秦 奈峰子

第3章 医療裁判Q&A
1.肺塞栓症ガイドラインに関する事例のQ&A
帝王切開術出産患者の術後DVT発症による死亡の注意義務と因果関係が争われた事例 / 山田隆史,粟野公一郎
2.産科ガイドラインに関する事例のQ&A
無痛・吸引分娩後に児が脳性麻痺となり3年後に死亡した事例について,分娩時の過失および過失と死亡結果との因果関係の有無について争われた事案 / 水上裕嗣,福原正和
3.インフォームド・コンセントに関する事例のQ&A
帝王切開による分娩中に夫の代諾により子宮を全摘されたことにつき,説明義務違反に基づく損害賠償責任が認められた事案 / 山田隆史,粟野公一郎
4.確立された知見のない分野での医療水準に関する事例のQ&A
減胎手術における手技,術式,感染症対策等について医師の注意義務違反が否定された事例 / 福原正和,水上裕嗣

索引
判例索引

ページの先頭へ戻る

序文

推薦の辞

 産婦人科医にとって,「訴訟」や「裁判」という言葉は「大出血」や「心音低下」と同等,あるいはそれ以上に怖い言葉ですし,できれば触れたくない言葉だと思います.しかし,産婦人科医として働いている以上,常に医療過誤や訴訟のリスクから逃れることはできません.一方,これらをどのように回避するか,また,これらが起こった後にどのようなステップで進行していくのかについて知っているかと問われるとほとんど知識がないのが実際ではないでしょうか.
 私たちは2015年から「産科と婦人科」の編集委員を担当させていただきましたが,編集会議の雑談の中で,自分たちも含めてこの現状を何とかしたいと話していました.そこへちょうど診断と治療社の常務取締役で弁護士の藤実正太先生からのご提案もあり,2017年より「医療裁判の現場から」という連載を開始することができました.これは実際に起こった産婦人科関連の事案について,医療事件に精通する弁護士の先生方に解説していただき,産婦人科医の医療過誤や訴訟に関する知識の獲得と日常臨床上の注意喚起に資することを目的としたものであり,本書はその25回分の連載をまとめたものです.
 連載の各原稿については,毎回,執筆された弁護士の先生と内容について議論をさせていただきました.その中でわかったことは,われわれ産婦人科医は法曹界についてはまるで素人であるということでした.弁護士の先生方のお使いになられる用語ひとつについても「」でしたし,裁判所や患者側の弁護士がどのような思考経路で判断して動くのか,また,賠償額の決め方などは目から鱗の連続でした.そこで単なる事例集にとどまらず,各種用語や医療過誤・訴訟の基本的なところから実際の流れを理解できるように追加記載をお願いしました.本書では,これらをさらにテーマごとにまとめていますので,より理解しやすくなっていると思います.
 もう1つの本書の特徴としては,臨床医の気持ちや実際の考え方を理解したうえで,解説いただいているという点にあると思います.議論の中で,弁護士の先生方も現場の考え方を十分に理解されていない場合があるのではないかと感じた点については,実際の臨床での判断や対応方法を説明させていただきました.本書のような医療訴訟事例の解説企画はいくつかありますが,実際に医療サイドが知りたいところ,疑問点,納得のいかない点を弁護士の先生にぶつけて,そのうえで解説いただいたという点では画期的なことではないでしょうか.
 もちろん患者さんや家族との紛争化はないに越したことはないですが,「備えあれば憂いなし」,いざという時に焦らないように,ぜひ本書を通読いただき,手元において時間のある時に読み返していただくことをお勧めします.

2021年12月

「産科と婦人科」編集顧問(50音順)
東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 大須賀 穣
東京歯科大学市川総合病院産婦人科 髙松 潔
慶應義塾大学医学部産婦人科 田中 守
東北医科薬科大学産婦人科 渡部 洋




はしがき

 本書は,「産科と婦人科」誌上で2017年第84巻5号~2021年第88巻3号まで25回にわたり掲載された記事をもとに,おもに,臨床に従事する医師を対象として,患者との間での紛争化を防ぐために,あるいは仮に紛争化した場合にも適正で納得できる解決を得られるように,日頃からどのような心がけや準備をしておけばよいか?という視点から編集したものです.
 第1章では,医師が負う責任,紛争化した場合の解決方法,裁判所の考え方などを紹介したうえで,具体的にどのような対策をとるべきか,ぜひ知っておいていただき,今日から実践していただきたいことにポイントを絞って,できるだけ平易な表現でお伝えするよう努めました.
 第2章以降は,医療事件に精通する弁護士らが執筆し,近年の産婦人科領域の医療訴訟事件を紹介し,法的分析を加えた裁判事例集となっています.いずれも,産婦人科関連の事件ですが,手術,合併症,インフォームド・コンセント,カルテ記載など,専門領域を問わず共通する問題が多数取り上げられています.具体的な事例から学ぶことも多いと思われ,産婦人科医師のみならず全診療科の医師あるいは看護師などほかの医療専門職にとっても参考となるはずです.とりわけ,いくつかの事例については,医師からの質問に対し弁護士が答えるというQ & A方式となっており,具体的事例を題材にしながら弁護士や裁判所がどのように考えるのか,わかりやすく知ることができます.具体的事例を想定しながら対策を知りたい場合には,後半の事例集だけでも,とるべき対策を知ることができますので,前半を読み飛ばしたり,興味のある事例だけを読んでいただくだけでも,今日の診療から早速役に立つヒントがあるはずです.
 本書が,患者のため社会のために日々尽力する医師にとって,患者との間の紛争を予防するための「傾向と対策」をお示しし,ひいては,萎縮医療に陥らず本来あるべき医療に集中していただくことの一助となれば幸いです.
 連載「医療裁判の現場から」の内容について,いつも鋭いご指摘と適切なご助言をくださった「産科と婦人科」編集委員(現編集顧問)の東京大学教授・大須賀 穣先生,東京歯科大学教授・髙松 潔先生,慶應義塾大学教授・田中 守先生ならびに東北医科薬科大学教授・渡部 洋先生には,この場を借りて深く感謝申し上げます.各執筆者には,連載「医療裁判の現場から」に賛同し弁護士としての激務の合間を縫って貴重な時間を割いて執筆いただきました.さらに本書刊行にあたり,担当の事例についてアップデートするなどしていただき,改めて感謝申し上げます.最後に,本書刊行にあたり,的確なアドバイスや励ましのお言葉とともにご尽力いただいた,診断と治療社常務取締役・弁護士の藤実正太先生,編集部の荻上文夫さん,馬場瑞季さんに,心からの感謝の意を表します.

2021年12月

編著者として 秦 奈峰子