小児・周産期病理アトラス診断と治療社 | 書籍詳細:小児・周産期病理アトラス
独立行政法人 国立成育医療研究センター病理診断部(どくりつぎょうせいほうじん こくりつせいいくいりょうけんきゅうせんたーびょうりしんだんぶ) 編集
独立行政法人 国立成育医療研究センター病理診断部部長
中澤 温子(なかざわ あつこ) 執筆者
独立行政法人 国立成育医療研究センター病理診断部病理診断科医長
松岡 健太郎(まつおか けんたろう) 執筆者
独立行政法人 国立成育医療研究センター研究所小児血液・腫瘍研究部分子病理研究室室長
大喜多 肇(おおきた はじめ) 執筆者
初版 A4判 並製 120頁 2012年04月20日発行
ISBN9784787819253
定価:6,820円(本体価格6,200円+税)冊
国立成育医療研究センターにおいて設立以来10年間に経験された非腫瘍性疾患の症例を豊富に紹介したカラーアトラス.臨床現場で遭遇することが多い疾患を取り上げて,実際に病理診断を行った経験によるエッセンスを掲載してある.初学者にも理解しやすいように各疾患を1頁または2頁にまとめた.疾患概念,病理所見のポイント,診断のプロセスの3点にしぼった.
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目次
推薦のことば /松井 陽
はじめに /中澤温子
執筆者一覧
第1章 奇形症候群 /佐藤泰樹,大喜多 肇
■概説
1. 結節性硬化症
2. Beckwith-Wiedemann症候群(EMG症候群)
3. WAGR症候群・Denys-Drash症候群
第2章 頭頸部 /佐藤泰樹,中澤温子
■概説
1. 正中頸 胞・側頸 胞
2. 第一次硝子体過形成遺残・Coats病
第3章 呼吸器 /浦野文彦,松岡健太郎
■概説
1. 気管支狭窄・閉鎖
2. 肺分画症
3. 先天性 胞性腺腫様肺奇形
4. 新生児呼吸窮迫症候群
5. 肺高血圧症
第4章 消化管 /佐藤泰樹,松岡健太郎
■概説
1. 先天性食道閉鎖症
2. 腸管閉鎖・腸管狭窄
3. 消化管重複症
4. 臍腸管遺残
5. Hirschsprung病
6. 先天性横隔膜ヘルニア
第5章 肝臓・胆道・膵 /中野夏子,中澤温子
■概説
1. 胆道閉鎖症
2. 肝内胆管減少症
3. 先天性胆道拡張症
4. 新生児肝炎(症候群)
5. 劇症肝不全
6. 自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎,原発性硬化性胆管炎)
7. 新生児・乳児の胆汁うっ滞性疾患
8. 先天性肝線維症
9. 代謝性肝疾患
10. 先天性高インスリン血症─膵島細胞症
第6章 腎 /佐藤泰樹,松岡健太郎
■概説
1. 先天性腎疾患
2. 遺伝性腎疾患
3. 微小変化群と巣状分節性糸球体硬化症
4. 膜性増殖性糸球体腎炎
5. 溶連菌感染後糸球体腎炎
6. IgA腎症(紫斑病性腎炎を含む)
7. ループス腎炎
8. 膜性腎症
第7章 造血器・リンパ節 /岡松千都子,中澤温子
■概説
1. 血球貪食症候群
2. 特発性血小板減少性紫斑病
3. 小児不応性血球減少症と再生不良性貧血
4. リンパ腫の鑑別疾患(組織球性壊死性リンパ節炎と伝染性単核球症)
5. 結核性リンパ節炎
第8章 泌尿・生殖器 /中野夏子,大喜多 肇
■概説
1. 性腺の形成異常と性分化疾患
2. 停留精巣
3. 閉塞性乾燥性亀頭炎
第9章 神経系 /佐藤泰樹,里見介史,大喜多 肇
■概説
1. 胞性疾患
2. 二分脊椎(髄膜瘤,髄膜脊髄瘤)
3. てんかん
第10章 胎盤 /伊藤由紀,松岡健太郎
■概説
1. 絨毛膜羊膜炎
2. 常位胎盤早期剥離
3. 癒着胎盤
4. 妊娠高血圧症候群
5. 胎盤感染症
6. 双胎間輸血症候群
7. 子宮内胎児死亡
8. 子宮内胎児発育不全
9. 絨毛性疾患
第11章 剖検,病理技術
■概説 /松岡健太郎
1. 剖検 /渡辺紀子,松岡健太郎
2. 検体処理と切り出し /中野夏子,松岡健太郎
3. 病理技術 /山崎茂樹,辰野美知子,松岡健太郎
あとがきにかえて /松岡健太郎
索引
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序文
推薦のことば
「小児・周産期病理アトラス」は,国立成育医療研究センター開設10周年という記念すべき年に上梓され,掲載症例はすべて,国立成育医療研究センターにおいて病理診断されたものである.この10年間に当センターで病理診断された症例は,組織診21,467例,細胞診21,001例,病理解剖242例に達し,多数の稀少な症例が含まれている.本書では,これらの貴重な,なかなか経験することのできない小児・周産期疾患について,初学者にも理解しやすいように多数の肉眼写真,組織写真を用いて,丁寧に解説されている.
小児腫瘍の教科書やアトラスは比較的多くあるが,小児・周産期の非腫瘍性疾患のアトラスはほとんどなく,ベッドサイドで気軽に開ける装丁であることも,研修医や若手医師にとっては有用と思われる.近年,胎児超音波やCT,MRIといった画像診断の発達により,術前診断がかなりできるようになってはいるが,病理学的診断の価値は不変で,むしろ病態の正確な判断や治療効果の判定などにおいて,ますます臨床的意義が深くなっている.
本書により小児・周産期病理学に興味を持つ若い医師たちが,啓発され,診療・研究にさらに力を注ぎ,小児・周産期医療の発展に寄与することを切に願っている.
2012年3月
(独)国立成育医療研究センター病院長
松井 陽
はじめに
小児病理学pediatric pathology, Kinderpathologieは,発生病理学,周産期病理学を包括し,成長・発達という小児特有の動的背景のなかで構築される.すなわち,肉眼的,顕微鏡学的な病理学的変化は,常に正常の発生,出生後の成長・発達過程をふまえて評価されなければならない.また小児・周産期疾患は,発生異常と密接な関連をもつ場合が多く,発生学の見地からも病態を熟考することが必要である.小児は成長・発達過程にあり,その途上で奇形,腫瘍など様々な異常が生じてくる.特に乳幼児では全身の細胞がさかんに増殖をしており,腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患との鑑別がしばしば困難である.これらの小児病理学における問題は,成人病理学とは異なるものであるが,病理診断が治療方針の決定に不可欠であり,病態の理解や死因の究明を目的とするという点は共通である.本書は,小児科,小児外科,産婦人科の研修医,若手医師が小児・周産期疾患の診療にあたって,最初に手に取る小児・周産期病理学の入門書となることを目的とし,国立成育医療研究センターにおいて設立以来10年間に経験された非腫瘍性疾患の症例を集積したアトラスである.病理診断部の歴代のレジデント,病理医,臨床検査技師が協力して分担執筆し,できるだけ理解しやすい視覚的教材を目指して編集した.本書は系統的な教科書ではなく,臨床現場で遭遇することが比較的多い疾患を取り上げている.実際に病理診断を行った経験による隠れたエッセンスが随所にある反面,専門病理医にとっては物足りない部分もあると思われるが,入門書としてご容赦いただきたい.なお,本書では腫瘍性疾患については取り上げていないが,優れた成書がすでに多数刊行されており,小児腫瘍についてはそれらを参照願いたい.
治療後の人生が長い小児において,病理診断は彼らの将来を左右するといっても過言ではない.多くの医療者が小児・周産期病理学への理解を深めるために本書を活用されることを心から願ってやまない.
おわりに,本書の上梓にあたり,終始忍耐強くご協力いただいた診断と治療社の柿澤美帆氏,中村 裕氏をはじめ編集にあたられた皆様方に厚く御礼申し上げたい.
2012年3月
(独)国立成育医療研究センター病理診断部部長
中澤温子