染色体端部微細欠失の中でも頻度が高いとされる1p36欠失症候群.厚労省の研究班による全国実態調査の結果や,家族会へのアンケート結果,手記をはじめ,関連する遺伝学の基本情報から,病態,臨床症状,マイクロアレイ染色体検査,診断基準,療育介入,てんかん発作を含めた各種合併症への対応,学校生活など,小児科医,コメディカル,患者家族に向けてわかりやすく書かれた,1p36欠失症候群のすべてがわかるハンドブックである.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
第1章 総 論
A 染色体異常 /山本俊至
B 染色体サブテロメア欠失と症状 /山本俊至
C 1p36欠失症候群の臨床症状 /山本俊至
D 1p36欠失症候群の原因 /山本俊至
E 遺伝学的診断方法の進歩 /下島圭子
F 遺伝カウンセリング /山本俊至
G 1p36欠失症候群の診断基準 /山本俊至
H 1p36欠失症候群の疫学 /佐藤康仁
I 全国実態調査結果 /島田姿野
第2章 各 論
A 顔貌の特徴 /山本俊至
B 合併症と検査 /松尾真理
C 表現型と遺伝子型の関連(genotype-phenotype) /島田姿野
D てんかんの特徴と治療 /前垣義弘
E 発達と療育指針 /平澤恭子
F 摂食障害と一般的な医療ケア /渥美 聡・他
G 唇裂・口蓋裂合併者に対する一般的な診療方針 /加古結子
H 1p36欠失症候群と行動特性・言語 /平澤恭子
I 社会福祉サポート /山本俊至
J 学校生活 /山本俊至
K 希少難病研究と患者会 /山本俊至
L 1p36欠失症候群に関するインターネット情報について /星 佳芳・他
第3章 家族会と家族の手記
A 家族からの手記
B 家族会に対するアンケート調査の結果 /島田姿野
索引
ページの先頭へ戻る
序文
序 文
1p36欠失症候群は染色体端部微細欠失の中で最も頻度が高いといわれています。しかし、実際には医師の間ですら認知度が低く、多くの患者さんが診断されないまま、見逃されている可能性が高いと考えられます。
私たちは平成18年ごろからマイクロアレイ染色体検査による微細染色体異常の診断プロジェクトに取り組み始めました。原因不明の精神発達遅滞やてんかんを伴う多くの小児の患者さんを対象に解析してみると、1p36欠失が最も多く見つかりました。臨床症状からは何の病気、あるいは何症候群か判断できず、通常の染色体検査を行っても診断がつかないため、マイクロアレイ染色体検査を行って初めて診断された患者さんの中で最も頻度が高いということは、1p36欠失症候群が臨床症状や通常のルーチン染色体検査では診断が得られない、つまり見逃されているということを意味しています。
私たちはこの結果に基づいて、小児科医の間での本症候群の認知を広めるために厚生労働省難治性疾患克服研究事業に応募したところ、平成22年度から「1p36欠失症候群の実態把握と合併症診療ガイドライン作成」というテーマで研究事業が採択されました。本書は、平成22年度から研究班のメンバーとともに行ってきた全国実態調査の結果や、研究班が設立を支援した患者家族の会と協力してご家族を対象に実施したアンケート調査の結果をもとに、小児科医、コメディカル、そして患者さんのご家族のためにまとめたものです。
本書により1p36欠失症候群の患者さんへの理解がより一層進み、早期診断と早期の療育介入、てんかん発作に対する適切な治療などが行われることを希望してやみません。
平成24年8月吉日
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
「1p36欠失症候群の実態把握と合併症診療ガイドライン作成」
研究代表者 山本俊至