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小児の咳嗽診療ガイドライン診断と治療社 | 書籍詳細:小児の咳嗽診療ガイドライン

日本小児呼吸器学会 (にほんしょうにこきゅうきがっかい) 作成

獨協医科大学医学部小児科学

吉原 重美 (よしはら しげみ) 監修

住友病院小児科

井上 壽茂 (いのうえ とししげ) 監修

東海大学医学部専門診療学系小児科学

望月 博之(もちづき ひろゆき) 監修

初版 B5判 並製 168頁 2014年04月08日発行

ISBN9784787819703

定価:本体3,000円+税
  

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日本小児呼吸器学会が作成した,わが国初の小児の咳嗽疾患に対する診断・治療ガイドライン.咳嗽の原因疾患は多岐にわたり,時に治療に難渋するものもあるが,そういった非特異的咳嗽や長引く咳嗽に対しての適切な治療や管理方針についても標準的指針を示した.巻頭カラーには、急性咳嗽、遷延性咳嗽,慢性咳嗽のほか,救急外来でみる咳嗽のフローチャートを掲載し,専門医だけでなく,小児の咳嗽診療に携わる医療関係者すべての方にご活用いただきたい1冊.

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目次

急性咳嗽の鑑別診断フローチャート
遷延性咳嗽の鑑別診断フローチャート
慢性咳嗽の鑑別診断フローチャート
救急外来でみる咳嗽の鑑別診断フローチャート
カラー口絵

刊行にあたって
作成にあたって

第1章 咳嗽の概念,病態生理,評価法
A.概念・分類
B.病態生理
C.評価法の解説
第2章 咳嗽の疫学
A.全体,ならびに急性咳嗽,遷延性咳嗽,慢性咳嗽の別による疫学
B.海外との比較
C.成人との比較
第3章 咳嗽の診断
A.問 診
B.咳嗽患者の身体所見
C.咳嗽患者の検査所見
1 血液・感染検査
2 生理学的検査
3 画像検査
D.鑑別診断(年齢による咳嗽の原因疾患の特徴)
E.確定診断の進め方
1 急性咳嗽のフローチャート
2 遷延性咳嗽のフローチャート
3 慢性咳嗽のフローチャート
4 救急医療の必要な咳嗽フローチャート
第4章 咳嗽の治療
A.治療の進め方
B.薬物による治療
1 中枢性鎮咳
2 抗菌薬
3 去痰薬
4 β2刺激薬
5 副腎皮質ステロイド
6 ロイコトリエン受容体拮抗薬
7 ヒスタミンH1受容体拮抗薬
8 ヒスタミンH2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害薬
9 クロモグリク酸ナトリウム(DSCG)
10 抗コリン薬
11 Th2サイトカイン阻害薬
12 漢方薬
 一般医薬品(OTC薬)・民間療法
C.非薬物療法による治療
1 呼吸理学療法
2 鼻汁吸引と鼻腔洗浄
3 加 湿
第5章 おもな疾患
A.気道系の先天異常
1 上気道
2 下気道
B.感染症
1 急性鼻咽頭炎(普通感冒)
2 鼻・副鼻腔炎(ウイルス性・細菌性)
3 気管支炎・肺炎・胸膜炎
4 急性細気管支炎
5 百日咳
6 ウイルス性クループ
7 急性喉頭蓋炎
8 肺結核
C.アレルギー疾患
1 喘 息
2 アレルギー性鼻炎(通年性・季節性)
3 咳喘息
4 アナフィラキシー
5 アトピー咳嗽,喉頭アレルギー
D.気道異物・胃食道逆流症・誤嚥
1 気道異物
2 胃食道逆流症(GERD)
3 誤嚥(吸引)・吸入
E.心因性咳嗽
F.その他
1 喫煙・受動喫煙
2 大気汚染と室内空気汚染
G.咳嗽が遷延・重症化しやすい基礎疾患

今後の課題と展望

付 録 咳嗽を伴うおもな疾患の特徴
索 引

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序文

刊行にあたって

 このたび,日本小児呼吸器学会(本学会)は「小児の咳嗽診療ガイドライン」を発行することにいたしました.「咳のガイドライン?そんなに困っていないけど?」まずそう思われる方もおられるのではないでしょうか.咳嗽はそれほど当たり前の症状であり,咳嗽のおもな原因である急性気道感染症については,特別な知識がなくても診療できる場合がほとんどだからです.
 私も小児科医になって最初の10年くらいは,救急対応を要する症例やまれな疾患に目を向けがちでした.しかし,小児病院の呼吸器外来を担当するようになってからは,咳嗽を診療することの奥深さに気づかされました.初診の主訴でもっとも多かったのが,『長引く咳』だったからです.
 最初の頃,長引く咳といえば気道感染によるものと,いわゆる気道過敏性の亢進によるものしか頭になく,両者の治療法はかなり異なっているので白黒つけやすいだろうと考えていました.実際,診断がつき治療がうまくいくと,子どもの咳がおさまり,ご家族から大変喜ばれました.その一方で,どちらとも診断できない,いつまでも医者を悩ませる咳も少しずつ増えていきました.そうなると,いろいろと情報を集めたり,新たな治療法を試みたりするしかありません.咳嗽に対する私の関心は急速に高まっていきました.と同時に,雑誌の特集や講演会などからの情報によって,同じような関心は全国的にも高まっていることを知るようになりました.
 このような背景のなか,2011年の本学会で,本ガイドライン作成委員会の先生方を中心に,はじめて小児の咳嗽に関するシンポジウムが開かれました.そして,これを機に,学会員以外の方々へも咳嗽についての質の高い情報が提供できればと考え,学会をあげて本ガイドラインを作成することにいたしました.
 本ガイドラインでは,小児の咳嗽診療に必要とされるさまざまな事項が,それぞれのエキスパートによって客観的な立場から解説されています.とくに,咳嗽の原因で困ったときにはできるだけ正確な鑑別診断ができることを,また,治療法の定まっていない疾患に対しては,現時点での最適な治療が行えることを目標に作成してあります.したがって,臨床医への道を歩み始めた方々にはまさに指針として,そして,ある程度経験を積まれた方々にはご自分の知識の確認あるいは修正のために,本ガイドラインを存分にご活用いただきたいと思います.
 疾患によってはエビデンスが十分でなく,今後,さらに検討が必要な領域もあります.したがって,本ガイドラインはこの先も進化していく予定ですので,皆様からもいろいろなご意見を頂戴できればと願っています.
 最後に,本ガイドライン作成にあたりまして,ご尽力くださいました多くの先生方に心から感謝申し上げます.

 2014年3月

日本小児呼吸器学会 運営委員長
川﨑一輝



作成にあたって

1 本ガイドラインの目的・読者対象
 日常診療において,咳嗽を主訴として来院する患児は多数います.そのため,すでに欧米では小児の咳嗽に関するガイドラインが作成されております.それらのガイドラインの疫学・診断・治療内容は役に立つものの,必ずしもわが国の現状にあてはまらないところもあります.そこで,わが国の小児咳嗽疾患の特徴をふまえたうえで,よりよい診療を行うために,読者対象は小児呼吸器専門医のみならず,一般実地医家や研修医などの若手医師としました.そして本ガイドラインは,学会主導による,わが国初の客観性のある「小児の咳嗽診療ガイドライン」を目指して作成いたしました.
2 小児の咳嗽の特殊性
 咳嗽の原因の多くは急性の呼吸器感染症です.また咳嗽の多くは一過性ですが,時に長引くものもあります.このような長引く咳嗽は,急性咳嗽と区別して遷延性咳嗽や慢性咳嗽とよばれています.長引く咳嗽の小児特有の原因として,感染性因子以外に,先天性の形態異常や気道異物によるもの,アレルギーに関連したもの,受動喫煙によるものや心因性のものなどがあげられます.また小児では,アナフィラキシーや急性喉頭蓋炎のような救急に対応が必要な咳嗽疾患もあります.そのため,小児咳嗽の特殊性を十分に理解したうえで診療に臨むことが大切と考えます.
3 本ガイドラインの作成手順
 日本小児呼吸器学会の運営委員会において,2012年4月に「小児の咳嗽診療ガイドライン」作成委員会が発足されました.それに基づき,日本小児呼吸器学会運営委員の中から8名の委員が選出されました.その後,この8名の作成委員を中心に本ガイドラインを作成しました.執筆した原稿は,作成委員による複数回の編集会議と査読で議論を重ね,2013年12月に,おもに小児呼吸器学会会員のパブリックコメントと小児呼吸器学会運営委員・顧問の査読を経て検討,推敲した後,「小児の咳嗽診療ガイドライン」として発刊に至りました.多くの貴重なご意見をいただきました先生方に深謝申し上げます.
4 エビデンスレベル
 本ガイドラインでは,治療に関する勧告のエビデンスレベルについて,適宜,それぞれの項目文末の文献に記載しました.なお,エビデンスレベルは「Minds診療ガイドライン作成の手引き2007」に従っています.

エビデンスのレベル分類
Ⅰ システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
Ⅱ 一つ以上のランダム化比較試験による
Ⅲ 非ランダム化比較試験による
Ⅳa 分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳb 分析疫学的研究(症例対照研究,横断研究)
Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
Ⅵ 患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見

5 本ガイドラインの使用法
 本ガイドラインの特徴として,海外や成人と比較しながら,わが国の小児の咳嗽の原因を年齢別に,かつ代表的な疾患を重点的に解説しています.また,用語の定義,疾患名などはなるべくわかりやすく統一を図りました.
 小児咳嗽の診断・治療の進め方の基本は,十分な鑑別診断を行い,的確な診断のもと,それぞれの疾患に見合った治療を行うことです.そこで確定診断の進め方として,巻頭カラーに,①急性咳嗽,②遷延性咳嗽,③慢性咳嗽,④救急外来でみる咳嗽,の四つの鑑別診断フローチャートを掲載しました.また本文には,そのフローチャートのポイントも記載しています.フローチャートに沿って即座に確認したい疾患を読み進められるように工夫しましたので,ぜひご活用ください.
6 利益相反
 ガイドラインの透明性・公平性を担保するために,本ガイドラインの作成委員には学会事業として無償で編集・執筆を行っていただきました.また本ガイドラインの作成には,製薬会社などの企業の資金は用いられておらず,特記すべき利益相反(conflict of interest)はありません.
7 医薬品適応外薬の使用
 保険適用のない薬剤および投与量を使用する場合は,薬剤の特性,副作用を十分に理解している必要があります.適応外薬を安易に使用することは避けなくてはなりません.また,適応外薬を使用して副作用などの問題がおきた場合には,医薬品副作用被害救済制度の補償対象とならない場合があることに留意し,このことは患児やその保護者に周知しておく必要があります.


「小児の咳嗽診療ガイドライン」作成委員会 委員長
吉原重美