HOME > 書籍詳細

書籍詳細

外傷救急のパラダイムシフト
ダメージコントロールサージェリー診断と治療社 | 書籍詳細:ダメージコントロールサージェリー
新しい概念と治療法

亀田総合病院救命救急科

伊藤 憲佐 (いとう けんすけ) 

亀田総合病院救命救急科

葛西 猛 (かさい たけし) 

東京医科歯科大学救急災害医学分野救命救急センター

加地 正人 (かじ まさひと) 

埼玉医科大学救急人材育成講座 深谷赤十字病院救命救急センター

金子 直之 (かねこ なおゆき) 

国立病院機構兵庫青野原病院

栗栖 茂 (くりす しげる) 

八戸市立市民病院救命救急センター

今 明秀 (こん あきひで) 

佐賀大学医学部救急医学講座

阪本 雄一郎 (さかもと ゆういちろう) 

帝京大学医学部附属病院外傷センター

新藤 正輝 (しんどう まさてる) 

聖マリアンナ医科大学救急医学講座

平 泰彦 (たいら やすひこ) 

帝京大学医学部附属病院外傷センター

角山 泰一朗 (つのやま たいいちろう) 

兵庫県立加古川医療センター救命救急センター

当麻 美樹 (とうま よしき) 

帝京大学医学部附属病院外傷センター

中澤 佳穂子 (なかざわ かほこ) 

帝京大学医学部附属病院外傷センター

藤田 尚 (ふじた たかし) 

日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野

松本 尚(まつもと ひさし) 

初版 B5判 並製 216頁 2013年12月24日発行

ISBN9784787820433

定価:本体7,500円+税
  

ご覧になるためにはAdobe Flash Player® が必要です  


本書はダメージコントロールの基本的概念について論じるともに,各論においては胸部外傷,腹部外傷,末梢血管損傷,四肢骨盤外傷,多発外傷におけるダメージコントロールの実践的手術手技について詳述した.「ダメージコントロール=パッキング」との既成概念を破り,患者の生理学的状態を迅速に見極め,definitive treatmentへ斬り込む“new concept of damage control”を世に問う一冊.

関連書籍

ページの先頭へ戻る

目次

CONTENTS
執筆者一覧
序文
総論
A ダメージコントロールの概念と歴史的背景 葛西 猛
 1 ダメージコントロールの新しい概念
 2 ダメージコントロールの歴史的背景
B ダメージコントロールの構成要素 今 明秀
 1 abbreviated treatment
 2 生理学的機能の回復
 3 planned reoperation
C ダメージコントロールの適応条件 阪本雄一郎
 1 生理学的予備力の限界
 2 hostの条件
 3 臓器の損傷形態
 4 腹部臓器損傷に多部位臓器損傷の合併
 5 施設の対応
D ダメージコントロールを選択する生理学的基準 当麻美樹
 1 術前,術中のdeadly triadの定義とその是正
 2 術前,術中の輸血量あるいは推定出血量
E ダメージコントロールのパッキングの仕方 金子直之
 1 両葉に跨るIIIb型肝損傷,IIIb型肝損傷に傍肝静脈損傷合併
 2 膵頭部断裂,上腸間膜動静脈損傷合併
 3 開放性骨盤骨折
 4 under‐packing,over‐packingに注意
F 大動脈遮断 松本 尚
 1 左開胸大動脈遮断の手技
 2 RT下での大動脈遮断の効果
 3 大動脈遮断用カテーテルの挿入
 4 遮断のタイミングと遮断時間
G ダメージコントロールと経カテーテル動脈塞栓術(TAE) 伊藤憲佐
 1 根本的理念
 2 症例呈示
H 腹部コンパートメント症候群(ACS) 中澤佳穂子,藤田 尚
 1 IAP,IAH,ACSの定義
 2 ACS(IAH)の臨床所見 
 3 ACSの予防と一般的閉腹(TAC)
 4 再手術時のOAに対する手技
 5 OAの合併症

各論
A 胸部外傷におけるダメージコントロール 平 泰彦
 1 輪状甲状間膜切開と気道出血
 2 緊急開胸〔救急室開胸(ERT)〕
 3 肺損傷
 4 気管・気管支損傷
B 胸部外傷(心損傷)におけるダメージコントロール 松本 尚
 1 心損傷
C 腹部外傷におけるダメージコントロール 葛西 猛/金子直之/栗栖 茂
 1 重症型肝損傷
 2 脾損傷 
 3 腎損傷,腎血管損傷,尿管損傷,膀胱損傷 
 4 膵損傷 
D 動静脈損傷 角山泰一朗,藤田 尚 
 1 結紮可能な動静脈損傷,結紮不可能な動静脈損傷 
 2 胸部大動脈損傷 
 3 腹部動静脈損傷に対するアプローチと治療の概略 
 4 四肢動静脈損傷 
E 骨盤損傷 新藤正輝 
 1 不安定型骨盤骨折 
 2 骨盤開放骨折 
F 四肢損傷 新藤正輝 
 1 GustiloタイプIIIA,IIIB開放骨折 
 2 GustiloタイプIIIC開放骨折 
G 多発外傷とダメージコントロール 加地正人 
 1 多発外傷とダメージコントロール 
 2 胸部外傷と腹部外傷の合併とダメージコントロール 
 3 心損傷(心タンポナーデ) 
 4 腹部主要血管損傷とERT,ERL,ダメージコントロール 
 5 腹部外傷と骨盤骨折 
 6 開腹先行時の骨盤骨折からの出血制御法 

索引

ページの先頭へ戻る

序文

序文
 外傷診療においては,病態が重篤であればあるほど,その治療のために加えられる侵襲は大きくなる.つまり,外傷による侵襲と手術による侵襲の総和が大きければ大きいほど患者の生理学的予備力は低下し,患者を救命することが難しくなる.患者の生理学的予備力が十分であれば,ある程度の手術の侵襲に耐えられるかもしれないが,生理学的予備力が不十分であるならば定型的手術を回避し,患者の病態に相応する治療手技を選択しなければならない.これがダメージコントロールの基本概念である.
 ダメージコントロールの内容は,最も侵襲が少ない簡略化手術(abbreviated treatment,多くはガーゼ充填術を採用)を選択し,ICUで生理学的疲弊状態(deadly triad)の改善に努める.これが成し遂げられたならば24~72時間後に計画的再手術(planned reoperation)として定型的治療(definitive treatment)を完徹することの3因子から構成される.1908年にPringle(1)は初めて重症型肝損傷に対してガーゼ充填術を行ったが,その手術成績は極めて不良であった.しかしながら,1993年にRotondoら(2)によって,より積極的な治療法として蘇り,重症型肝損傷の治療手技として確立されるに至った.今日,ダメージコントロールの手法は腹部外傷のみならず,胸部外傷,多発外傷,四肢骨盤外傷,一般外科領域まで波及しているが,それらに対する手技はガーゼ充填術に特化しつつある.しかしながら,患者の生理学的予備力,損傷の重症度,施設の体制,術者の手術に対するスキルによってはガーゼ充填術以外の治療法,例えば肝縫合術,resectional debridement, trauma Whipple procedure,脾摘除術,腎摘除術,pulmonary tractotomyなどが選択される余地は十分にある.これは編者が考えているnew concept of damage controlである.この概念に沿って術式が選択されるならばplanned reoperationの必要はなくなる.この結果,短期間に2回の手術を必要としたconventional concept of damage controlに比較して,deadly triadあるいは酸素負債の病態は短時間に改善できる.このことにより,ダメージコントロールの治療成績はより一層向上することが期待される.
 本書では総論としてダメージコントロールの基本的概念について論じる.一方,各論においては胸部外傷(心,大血管,肺,気管,気管支),腹部外傷(肝,膵,脾,腎,尿管,膀胱),末梢血管損傷,四肢骨盤外傷,多発外傷におけるダメージコントロール(conventional concept of damage controlに加えてnew concept of damage controlを含む)の実践的手術手技について詳述する.本書がダメージコントロールを理解する上で参考となり,実際の臨床に応用されることで,一人でも多くの重症患者が救命されることを願っている.

 2013年12月
亀田総合病院 救命救急科部長
救命救急センター長
葛西 猛

(1)Pringle JH: V. Notes on the Arrest of Hepatic Hemorrhage Due to Trauma. Ann Surg 1908;48:541‐549
(2)Rotondo MF, et al:“Damage control”: an approach for improved survival in exsanguinating penetrating abdominal injury. J Trauma 1993;35:375‐382