原発性アルドステロン症とホルモン異常に基づく高血圧に関して,医師と患者さんとが協力して作り上げた原発性アルドステロン症の実用書.「病気の理解」「症状」「検査」「薬による治療」「手術による治療」「手術後」「情報入手と専門医へのアプローチ」と7つのステージにわけて原発性アルドステロン症患者さんからの疑問50を集め,専門医によるわかりやすい解説をQ&A形式で掲載.見た目にもわかりやすさを追求し,イラストを多用した.
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目次
推薦のことば―医師の立場から―
推薦のことは―患者の立場から―
発刊にあたって
編集者のプロフィール
執筆者一覧/謝辞
原発性アルドステロン症患者さんの体験談
わたしの体験談①
わたしの体験談②
わたしの体験談③
わたしの体験談④
ステージ1:病気の理解
Q1 ホルモンの異常が原因の高血圧がありますか?
Q2 副腎はどんな臓器ですか?
Q3 アルドステロンが多いとなぜ血圧が上がるのですか?
Q4 原発性アルドステロン症ってどんな病気ですか?
Q5 原発性アルドステロン症の「原発性」はどんな意味ですか?
Q6 原発性アルドステロン症を放置するとなぜ悪いのですか?
Q7 どんな場合に原発性アルドステロン症の疑いがあるのですか?
Q8 副腎の腫瘍はがんではないのですか? 転移しませんか?
Q9 副腎の腫瘍は放っておくとどんどん大きくなるのですか?
Q10 原発性アルドステロン症は子どもに遺伝するのですか?
Q11 血圧は薬で安定していて体調もいいです.それでも原発性アルドステロン症の検査が必要ですか?
ステージ2:症状について
Q12 早期診断にはどんな症状に気をつければいいですか?
Q13 通常の高血圧(本態性)と症状に違いがありますか?
Q14 原発性アルドステロン症ではどうして尿の量が多くなるのですか?
Q15 下肢のむくみがありますが,原発性アルドステロン症と関係がありますか?
Q16 降圧薬を服用しても血圧が下がりにくいのはなぜですか?
ステージ3:検査について
Q17 どのような検査があるのですか? 目的は?
Q18 検査は外来通院でもできますか?
Q19 スクリーニング検査で何を調べるのですか?
Q20 検査の当日,血圧の薬は飲んでもいいのですか?
Q21 機能確認検査とは何ですか?
Q22 カプトプリル負荷試験とはどんな検査ですか?
Q23 その他の機能確認検査についても説明してください
Q24 副腎CT検査で何がわかるのですか?
Q25 副腎静脈サンプリングの目的と合併症は?
Q26 副腎シンチグラフィはどんなときに実施するのですか?
Q27 副腎静脈サンプリングをすれば必ず病気の部位がわかりますか?
Q28 検査のための入院日数や入院回数はどのくらいですか?
ステージ4:薬による治療について
Q29 原発性アルドステロン症にはどんな治療法がありますか? 選択肢を教えてください
Q30 原発性アルドステロン症でも減塩,運動,禁煙は必要ですか?
Q31 薬にはどのような種類がありますか? またその作用は?
Q32 薬の副作用は心配ないですか?
Q33 薬はいったん服用しはじめると一生止められないのですか?
Q34 原発性アルドステロン症に有効な漢方薬はありますか?
Q35 原発性アルドステロン症と診断されたら手術は必須ですか?
Q36 手術せずに薬で原発性アルドステロン症を治療することができますか?
その場合,かかりつけ医に診てもらえますか?
ステージ5:手術による治療について
Q37 手術する場合,入院期間と入院費用はどのくらいですか?
Q38 手術の方法とその合併症は?
Q39 手術をすれば血圧の薬を飲まなくてもよくなるのですか?
Q40 手術をしたらどのくらいで血圧は下がりますか?
Q41 手術後も血圧が正常化しない場合はどうするのですか?
Q42 副腎を片方取っても体に後遺症は残りませんか?
Q43 将来,残った副腎に病気が起きて働きが悪くなったらどうなりますか?
ステージ6:手術後について
Q44 副腎の手術後,仕事に復帰できるまでの期間は?
Q45 副腎の手術後,日常生活で気をつけることは何ですか?
Q46 手術後に新たな薬が必要になることはありますか?
Q47 副腎の手術後,かかりつけ医で投薬治療ができますか?
Q48 手術で治った場合でも再発の可能性はありますか?
ステージ7:最後に(情報の入手と専門医へのアプローチ)
Q49 原発性アルドステロン症が心配な場合はどこに相談するのがいいですか?
Q50 検査を受けたいとき,かかりつけ医にはどのように言えばいいですか?
文献一覧
情報収集の際に役立つ書籍・サイト
参考資料:原発性アルドステロン症 一般的な検査と治療の流れ
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序文
推薦のことば―医師の立場から―
かつてはまれな高血圧と考えられていた原発性アルドステロン症は,近年,検査法の著しい進歩により,高血圧患者さんの3~4%を占めることが判明してきました.日本の成人の約1/3が高血圧を有することから,原発性アルドステロン症が疑われる患者さんはかなり存在すると思われます.実際に,最近,一般検診や人間ドックを受けられる方が多くなり,その際に原発性アルドステロン症が疑われる方の発見頻度が,明らかに高くなっています.
このような状況をみて,原発性アルドステロン症とホルモン異常に基づく高血圧に関して,日本の第一人者であられる成瀬光栄先生が中心となり,医師と患者さんとが協力して原発性アルドステロン症に関する実用書を発刊されました.この本は,原発性アルドステロン症がどんな病気であり,検診時やかかりつけ医によってその疑いが指摘された時にどう対応したらよいのか,どんな精密検査をどのようなところで受けるのがよいのか,正しい診断がなされたらどのような治療を受け,治療後の経過がどうなるのか,さらにその後どんな注意をして生活していくのがよいかなど,原発性アルドステロン症が疑われ,検査や治療を実際に受けられた患者さんの体験を含めて,Q & Aの形式で大変解りやすく解説された意義ある実用書であります.
原発性アルドステロン症が疑われる患者さんはこれから一層多くなることや,放置されると通常の高血圧よりも脳卒中,心筋梗塞や腎障害を生じやすいことも明らかになりましたので,原発性アルドステロン症の疑いがもたれた方は,不安にならずにこのような本を是非お読みいただきたいと思います.また,このような患者さんの看護にあたられたり,お世話する方々にも是非お読みいただきたく,自信をもって本書を推薦させていただきます.
2014年11月
慶應義塾大学 名誉教授
日本臨床内科医会 会長
猿田享男
推薦のことば―患者の立場から―
原発性アルドステロン症と診断されたのは,下肢の筋力低下で歩行困難になったときです.それが,長年にわたり悩まされてきた高血圧の原因でした.馴染みのない病名に数々の不安と心配が交錯し,断片的な情報を基に,右往左往したことを思い出します.患者さんにとって,病状にあわせて,知りたい情報がタイミングよく的確に提供されるなら,不安と恐れが軽減され,病気に立ち向かう勇気が湧いてきます.本書は,原発性アルドステロン症の情報を患者さん目線で解説されており,「病を知り,それを克服する気力」を与えてくれます.患者さんが「今,直面している不安と疑問」から「これから出会う不安と疑問」までが50項目の質問形式で解説されています.患者さんが経験する症状の出現,検査の種類と目的,服薬・治療の内容,手術治療と術後管理に関する質問について,簡潔な文章で書かれています.さらに,解説ごとにイラストが配置されており,キーポイントがはっきりとわかります.質問形式であるため,読者はページをめくるごとに専門医と対話している錯覚に陥ります.
高血圧患者の3~10%が原発性アルドステロン症に起因するといわれています.高血圧の人が本書を手にし,「もしかしたら原発性アルドステロン症かも‥?」と疑われるきっかけになれば幸いです.また,本書によって,医師が高血圧患者さんを診察したとき,「原発性アルドステロン症を念頭に入れた検査が必要だ」と決断される契機になったり,患者さんが「今,何に不安と疑問を持っているか?」を知り,適切なアドバイスを与える指針になることを願っています.
原発性アルドステロン症は「手術で治る高血圧症」であり,高血圧に伴ういろいろな病気の発症リスクから解放され,普段通りの日常生活に復帰できるようになります.このことを体験した者から,「原発性アルドステロン症の発症から完治までの道筋を教えるガイド本の発刊は大きな朗報であり,不安・心配を克服力に変える良書である」と患者さんや医療従事者に伝えたいと思います.
2014年11月
杉村順夫(元・患者)
発刊にあたって
高血圧はわが国でももっとも患者さんの数が多く,脳卒中や心臓,腎臓の病気も密接に関連する重要な病気です.その多くは体質と生活習慣が重要な原因となる本態性高血圧ですが,約10~20%は特定の原因による二次性高血圧と呼ばれる病気です.その中で近年,世界的にも最も注目されているのが「原発性アルドステロン症」です.治る可能性があること,高血圧に占める頻度が高いこと,通常の治療しても十分に血圧が下がらない原因になること,心血管系合併症が多いこと,などがその理由です.わが国では約100万人以上もの患者さんがいる可能性があります.このことから,日本高血圧学会,日本内分泌学会から診療方針に関するガイドラインが発表されていますが,まだまだ一般の方にはわかりにくい病気であるのが現状です.
私たちは2008年に,専門医向けの著書「原発性アルドステロン症診療マニュアル」を出版後,専門外の医師向けの著書「わかりやすい原発性アルドステロン症診療マニュアル」,次いで患者さんも対象とした「もっとわかりやすい原発性アルドステロン症診療マニュアル」を刊行しました.しかし,診断される患者さんの数が非常に多くなってきたのに伴い,全国の患者さんから,様々な相談を受けることが多くなり,この病気についてもっと患者さんの目線に立った書籍が必要であると考えていました.そこでこの度,患者さん向けの「患者さんのための原発性アルドステロン症Q & A」が刊行されることになった次第です.制作には多くの患者さんのご意見を参考にするとともに,項目,編集,コラムなどでも実際の患者さんに多大なご協力を頂きました.紙面を借りて改めて深く感謝申し上げます.今後,本書が原発性アルドステロン症患者さんにとって,病気の正しい理解に役立つことを心より期待して止みません.
2014年11月
国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 副センター長
内分泌代謝高血圧研究部 部長
成瀬光栄