糖尿病学2015診断と治療社 | 書籍詳細:糖尿病学2015
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授
門脇 孝(かどわきたかし) 編集
初版 B5判 1色(口絵カラーあり) 168頁 2015年05月20日発行
ISBN9784787821737
定価:10,450円(本体価格9,500円+税)冊
日進月歩の進歩を遂げる糖尿病学のなかでも特にわが国発の研究に重点を置いて重要な課題を取り上げ,専門的に解説したイヤーブック.今年もこの 1 年の基礎的研究,展開臨床研究の成果が 18編の論文に凝集されている.糖尿病研究者のみならず,一般臨床医にとっても必読の書.
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目次
口絵
序文
執筆者一覧
基礎研究
1.ES/iPS細胞からの膵臓β細胞への分化誘導
[白木伸明,粂 昭苑]
■はじめに
■ES細胞とiPS細胞
■多能性幹細胞から膵臓細胞へ
■成熟β細胞への分化誘導
■ヒトES細胞由来の内分泌前駆細胞を用いた臨床試験
■今後の課題
■おわりに
2.IAPPによる膵β細胞障害
[藤谷与士夫,綿田裕孝]
■はじめに
■2型糖尿病と膵島アミロイドポリペプチド
■ヒトIAPPの凝集能と細胞毒性
■IAPP(アミリン)の生理的機能
■ヒトIAPPトランスジェニックマウス
■ヒトIAPPが毒性を示す場所はどこか?
■オートファジーとヒトIAPP
■ヒトIAPPノックインマウスを用いたオートファジー研究
■おわりに
3.2型糖尿病発症にかかわるモーター蛋白質KIF12複合体の発見
─抗潰瘍薬による新しい予防戦略の可能性を拓く
[田中庸介,廣川信隆]
■はじめに
■KIF12ノックアウトマウスの樹立と膵β細胞障害
■膵β細胞を守るKIF12蛋白複合体の発見
■KIF12蛋白複合体の減少はβ細胞脂肪毒性の鍵となる
■KIF12蛋白複合体をターゲットとした新たな糖尿病予防戦略への期待
4.骨髄で造血に必須の微小環境(ニッチ)を構成する脂肪・骨芽細胞前駆細胞
[長澤丘司]
■はじめに
■造血幹細胞ニッチとは?
■骨芽細胞とSNO細胞
■血管内皮細胞
■CAR細胞(造血に必須の脂肪・骨芽細胞前駆細胞)
■Nestin陽性細胞
■造血に必須の脂肪・骨芽細胞前駆細胞の形成・維持の分子機構
■おわりに
5.褐色脂肪細胞の熱産生を制御する視床下部−延髄−交感神経回路
[中村和弘]
■はじめに
■褐色脂肪組織の交感神経支配
■延髄から脊髄への熱産生指令
■視床下部から延髄への熱産生指令
■体温調節中枢による熱産生出力の制御
■今後の研究の展望
6.シナプスにおけるインスリン/PI3K経路と記憶学習
─インスリン経路が線虫の味覚学習を制御する仕組み
[富岡征大,飯野雄一]
■はじめに
■味覚忌避学習とインスリン/PI3K経路
■味覚忌避学習を制御するインスリン受容体アイソフォーム
■シナプスにおけるインスリン/PI3K経路と記憶学習
■記憶学習を制御するインスリン/PI3K経路の詳細な理解に向けて
7.SIRT7の肝臓脂質代謝における役割
[山縣和也]
■はじめに
■Sirt7 KOマウスにおける脂肪肝の抑制
■肝臓のSIRT7による核内受容体TR4の制御
■SIRT7によるE3ユビキチンライゲース複合体制御
■おわりに
8.Mincleと肥満関連疾患
[菅波孝祥,小川佳宏]
■はじめに
■自然免疫におけるMincleの役割
■肥満の脂肪組織におけるMincle発現
■脂肪組織炎症におけるMincleの意義
■異所性脂肪蓄積におけるMincleの意義
■メタボリックシンドロームにおける慢性炎症の波及
■おわりに
9.減量手術の有効性におけるFXR,TGR5を介した胆汁酸シグナルの役割
[宮地智洋,内藤 剛,田中直樹,海野倫明]
■はじめに
■FXRを介した胆汁酸シグナル
■TGR5を介した胆汁酸シグナル
■減量手術と血中胆汁酸および胆汁酸シグナルの変化
■血中胆汁酸増加の機序
■胆汁酸と腸内細菌叢
■当教室の研究から
■おわりに
10.高血糖や活性酸素により生成されたメチルグリオキサール(MGO)による慢性腎臓病
[城 愛理,稲城玲子,南学正臣]
■糖化ストレスとメチルグリオキサール
■慢性腎臓病とは
■糖化ストレスと慢性腎臓病のかかわり
■慢性腎臓病による糖化ストレスの亢進
■まとめ
展開研究・臨床研究
11.日本人2型糖尿病者の膵β細胞障害─ランゲルハンス島の病理から
[八木橋操六]
■はじめに
■膵β細胞の成長,加齢による変化
■膵β細胞の肥満による変化
■日本人2型糖尿病の膵β細胞変化
■β細胞容積減少で糖尿病発症を説明できるか
■β細胞脱落の機序
■α細胞の増加の意義と分化転換の提唱
■膵島アミロイド沈着の役割
■これからの糖尿病治療に向けて
12.災害後の血糖コントロールと内因性インスリン分泌能:東日本大震災研究
[今井淳太,田中満実子,片桐秀樹]
■はじめに
■災害と血糖コントロールに関するこれまでの報告
■東日本大震災と血糖コントロールに関するこれまでの報告
■東日本大震災前後の糖尿病患者の変化
■東日本大震災後に血糖コントロールが悪化した群と改善した群の比較
■内因性インスリン分泌低下患者で震災後の血糖コントロールが顕著に悪化する
■なぜ震災後の血糖コントロールは内因性インスリン分泌能低下患者でより悪化したのか?
■おわりに
13.2型糖尿病における腸内フローラの意義─その臓器としての役割
[金澤昭雄,綿田裕孝]
■はじめに
■腸内フローラの糖代謝における役割
■肥満と腸内フローラ
■2型糖尿病と腸内フローラ
■定量的RT─PCR法を用いた腸内フローラの解析
■日本人2型糖尿病における腸内フローラの乱れ
■おわりに
14.日本人の食事摂取基準(2015年版)
[佐々木 敏]
■はじめに
■総論
■各論:エネルギー
■各論:栄養素
■生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連
■まとめ
15.特定保健指導対象者への生活習慣介入による体重・内臓脂肪の減少のメリットと減量目標
[津下一代,村本あき子]
■はじめに
■特定健診・特定保健指導制度の概要
■特定保健指導の効果
■特定保健指導における減量目標
■内臓脂肪量変化と臨床検査値変化の関連
■おわりに
16.高度肥満に対する減量手術の有効性と安全性─適正な運用の必要性
[宮崎 滋]
■はじめに
■肥満外科手術
■外科手術の推移
■有効性と安全性
■今後の肥満外科手術のあり方
17.大血管・細小血管合併症のリスク評価─JDCS/J−EDITリスクエンジン
[田中司朗,曽根博仁]
■はじめに
■アジア人2型糖尿病患者の特徴
■JJリスクエンジンの概要
■リスクエンジンの技術的課題
■リスクエンジンの比較
■今後の発展
18.重症低血糖と心血管疾患
[辻本哲郎,後藤 温,野田光彦]
■はじめに
■2型糖尿病における重症低血糖と心血管疾患
■1型糖尿病と2型糖尿病の重症低血糖時の全身状態
■重症低血糖の予防と今後の課題
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序文
2015年も従来どおり日本糖尿病学会年次学術集会に合わせて,本書「糖尿病学」をお届けできる運びとなった。毎年この時期に刊行できることは非常に喜ばしいことである。
さて,様々な科学の分野において進歩の源になるのは,一つには研究開発がある。この研究開発によって得られる様々な知見が,医学領域においても進歩の大きな柱になっている。これまでわからなかった事象が明らかになっていくことで,新たな研究テーマが生まれ技術の開発へとつながっていく。その逆もまた然りである。
本書はおもに日本人による研究の成果を取りあげており,また,糖尿病学の進歩を刻むマイルストーン的役割を果たしてきた.今年も18編の論文をこの一冊に収載することができた。
様々なアプローチで研究が進んでいる膵β細胞の分化誘導について,モーター蛋白質KIFファミリーとインスリン分泌との関連,2型糖尿病患者のランゲルハンス島の病理,近年話題の腸内フローラの肥満や糖尿病との関連,褐色脂肪細胞の熱産生制御のメカニズム,脂肪組織炎症における新たな制御因子であるMincleの意義と役割,スリーブ状胃切除術が保険適用となった減量手術の有効性や安全性,慢性腎臓病の成因としてのメチルグリオキサールの意義と役割,2型糖尿病合併症のリスク評価モデルであるJJリスクエンジン,等々非常に興味深いテーマではないだろうか。また,日本人の食事摂取基準や特定保健指導の効果や減量目標に関するテーマも収載した。そのほか「基礎研究」から「展開・臨床研究」まで素晴らしい価値ある成果であり,いずれも研究者の熱意と英知がこめられた論文ばかりである。
最後に,できるかぎり新しい情報を発信するため非常に短い期間でご執筆をいただいた著者の先生方に深謝申し上げる.
平成 27年 5月
門脇 孝