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新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2015診断と治療社 | 書籍詳細:新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2015

日本先天代謝異常学会(にほんせんてんたいしゃいじょうがっかい) 編集

初版 B5判 並製 232頁 2015年11月20日発行

ISBN9784787821874

定価:本体5,200円+税
  

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本書は,新生児マススクリーニング対象疾患に,糖原病・Wilson病を加えた22疾患の診療ガイドラインで構成されている.各項目とも基本的に,疾患概要,診断基準,マススクリーニングで疑われた場合の対応,診断確定後の治療,フォローアップ指針,成人期の課題から成り,実地臨床に即した内容となっている.全国都道府県でタンデムマス・スクリーニングが開始され,難病制度が大きく変わった今,これら疾患の診療に携わる医師必携の書である.

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目次

序 文 …井田博幸
新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2015の発刊に際して …遠藤文夫
本書で使用される略語一覧

ガイドライン作成にあたって …深尾敏幸

1 代謝救急診療ガイドライン
2 フェニルケトン尿症および類縁疾患
3 メープルシロップ尿症
4 ホモシスチン尿症(シスタチオニンβ合成酵素欠損症)
5 シトリン欠損症
6 尿素サイクル異常症
7 メチルマロン酸血症
8 プロピオン酸血症
9 イソ吉草酸血症
10 HMG―CoAリアーゼ欠損症
11 メチルクロトニルグリシン尿症
12 複合カルボキシラーゼ欠損症
13 β―ケトチオラーゼ欠損症
14 グルタル酸血症I型
15 グルタル酸血症II型
16 極長鎖アシル―CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症
17 三頭酵素(TFP)欠損症
18 中鎖アシル―CoA脱水素酵素(MCAD)欠損症
19 全身性カルニチン欠乏症(OCTN―2異常症)
20 カルニチンサイクル異常症
21 ガラクトース血症
22 糖原病
 22―1肝型糖原病
  ①糖原病I型,III型,VI型,IX型
  ②糖原病IV型
  ③Fanconi―Bickel症候群(糖原病XI型)
 22―2筋型糖原病
 22―3その他の糖原病
  ①糖原病0a型(肝グリコーゲン合成酵素欠損症)
  ②糖原病0b型(筋グリコーゲン合成酵素欠損症)
 22―4糖新生異常症 フルクトース―1, 6―ビスホスファターゼ(FBPase)欠損症
23 Wilson病

索 引

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序文

序 文

 先天代謝異常症は基礎医学と臨床医学が密接に関係して発展してきた臨床医学である.以前は先天代謝異常症の基礎的側面が強調され化学構造式・酵素名・代謝マップなどが解説書の記載のおもな部分を占めていたため,また先天代謝異常症が希少疾患であるため臨床家にとって非常に馴染みにくい分野であった.しかし,近年,診断法・治療法の進歩により先天代謝異常症は実地臨床に密接に関係するようになってきた.そこで日本先天代謝異常学会では遠藤文夫前理事長が中心となり,日本先天代謝異常学会セミナーを2005年以降,毎年開催するとともに,「症例から学ぶ先天代謝異常症」,「先天代謝異常症 Diagnosis at a Glance」,「引いて調べる 先天代謝異常症」を編集・発行し,実地臨床医に対する先天代謝異常症の卒後教育を推進している.
 また,先天代謝異常症に関する最近の大きな出来事は,2014年から全国都道府県・政令指定都市においてタンデムマス・スクリーニングが開始されたことである.マススクリーニング対象疾患は従来の6疾患から19疾患に拡大され,パイロットスタディによると9,000人出生に1人の割合で患者が同定されると報告されている.そして,新たな小児慢性特定疾患治療研究事業制度と指定難病制度が2015年1月から実施されたことに伴い,これら対象疾患の診断・治療ガイドラインの作成が必須事項となってきた.
 以上のような背景のもと本書が刊行されたので,各項とも基本的に疾患概要・診断基準・マススクリーニングで疑われた場合の対応・診断確定後の治療・フォローアップ指針・成人期の課題で構成されている.まさに「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン」のタイトルにふさわしく,そして時代に,かつ実地臨床に即した内容になっている.「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2015」を実地臨床の場で活用していただくことによって患者のQOLが改善されていくことを願っている.
 最後になりましたが本書を作成するにあたり,ご尽力いただきました執筆者の先生,特に責任者である日本先天代謝異常学会診断基準・診療ガイドライン委員会委員長である深尾敏幸先生に深謝申し上げます.

2015年10月
日本先天代謝異常学会 理事長
井田博幸


新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2015の発刊に際して

 このたび,日本先天代謝異常学会において,新生児マススクリーニングに関連した22疾患の診療ガイドラインが作成され,出版の運びとなった.ご承知のように,難病制度は大きく変わった.2015年7月1日からは,新しい難病制度のもとで,先天代謝異常症の多くが指定難病に新たに追加された.指定難病制度では,対象疾患は成人に達した患者への医療費補助が行われる.フェニルケトン尿症,尿素サイクル異常症,メチルマロン酸血症など,小児期に発症する多くの先天代謝異常症があらたに指定された.これにより研究のより一層の推進が期待されるとともに,これまで費用の点から成人期に達した患者の診療が制限されていた部分も解消される.
 日本先天代謝異常学会では作成した新しい診療ガイドライン,重症度分類の制定等の研究成果がこの指定に生かされた.その経緯は,まず先行して,日本先天代謝異常学会で深尾敏幸理事を中心としてガイドライン委員会が立ち上げられ,診断基準およびガイドラインの作成が始められた.これには多くの会員が委員として参加し,多種類の先天代謝異常症の診断・治療ガイドラインの作成が同時に進められてきた.診断基準の作成から始まり,およそ5年間の研究と作業が行われ,その成果は膨大なものとなった.このような学会での取り組みとともに,平成24〜25年度厚生労働科学研究,研究奨励分野「新しい新生児代謝スクリーニング時代に適応した先天代謝異常症の診断基準作成と治療ガイドラインの作成および新たな薬剤開発に向けた調査研究」(主任研究者:遠藤文夫),平成26〜27年度厚生労働科学研究,領域別基盤研究分野「新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究」(主任研究者:遠藤文夫)でも,ガイドラインの作成の基礎となる調査研究を行ってきた.そして日本先天代謝異常学会において井田博幸理事長のもとで,学会および研究班の研究成果を生かして,難病対策に用いられている診断基準,重症度分類が制定された.そのうえで今回のガイドラインが作成され,出版の運びになったわけである.

 先天代謝異常症はどれをとっても超希少疾患であり,欧州あるいは米国においても,診療ガイドラインの作成は順調には進んでこなかった.最も頻度の高い疾患であるフェニルケトン尿症,あるいは尿素サイクル異常症においても,この数年で初めてガイドラインといえるものが公開された.私は欧州における尿素サイクル異常症および有機酸血症のガイドラインの作成会議にも参加し,その作業をともにしてきたが,多額の予算,何年にもわたる会議を経て,その作成に至っている.にもかかわらず,エビデンスレベルの高い項目は極めて限られている.とりわけ治療の部分では,まことに残念ながら,一部の疾患を除いては,満足のいく治療の成果は出ているとはいえない.これはひとえに疾患の希少性によるものである.わが国におけるガイドラインの作成においても,上述の欧米のガイドラインの記載に準じて,エビデンスレベル重視の診療ガイドラインにはなっていない.

 先天代謝異常症に対する治療薬の開発は,国内ではなかなか進んでこなかった.平成16〜18年度厚生労働科学研究費補助金医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業「小児等の特殊患者群に対する医薬品の有効性,安全性情報の収集とそれらの情報に基づくリスク評価・管理手法に関する研究」(松田一郎班長)において,先天代謝異常症の治療薬についても取り上げられた.その研究において『先天代謝異常症関連領域における適応外使用医薬品および国内未承認薬医薬品のプライオリティリスト』は本学会理事である東北大学(当時)の大浦敏博先生を中心としてまとめられた.このなかで,10数種類の薬剤が優先的に開発しなければならない薬剤としてリストアップされ,このなかで取り上げられたビオプテリン,ニチシノン,ベタイン,システアミン,フェニル酪酸ナトリウムなどの開発が進んだ.しかし,いまだに開発のめどが立っていない薬剤もある.先天代謝異常症の分野では疾患特異的な治療薬は数少なく,また国内での開発も遅れていることは,ガイドラインを作成するうえで大きな課題として認識されている.

 このような課題はあるものの,最近では,マススクリーニングを中心として診断法は大きく進歩し,治療法は少しずつ改良され,成人後も健やかに生活できる患者も増えてきている.これには薬物治療だけでなく,移植医療などの発展が大きく寄与している.その一方で,成人に達した患者の生活の質は満足いくものではない.平成23年に実施された平成23年度厚生労働科学研究「小児慢性特定疾患のキャリーオーバー患者の実態とニーズに関する研究」によれば,小児慢性特定疾患治療研究事業受給者であった20歳以上の患者の成人後の就労状況をみると,就労している人は全体の51%にしかなっていない.現在,上記の厚生労働省班研究においても成人期の先天代謝異常症患者の治療と生活の質の改善についての研究を行っているが,成人期に十分な治療体制とよりよい生活の質を達成するには治療,診療体制,生活支援など多岐にわたって様々な改善が必要であり,患者の生活の質が一般の成人と変わりなくなったときに初めて,少しの達成があったといえるのではないかと思う.

 そのような努力があり,ここに日本先天代謝異常学会のガイドラインが出版されることの意義は大変重要なものがあると考える次第である.小児科医,内科医,その他関係する医療従事者の皆様,さらには行政などで難病の担当をされている専門職の皆様には,このガイドライン集を診療,教育,研修などにおおいに役立てていただきたいと思う.ただ,難病対策からみると,先天代謝異常症のなかのごく一部が難病指定されたにすぎない.まだ難病指定を受けていない疾患のほうが多い状況である.さらに多くの疾患でのガイドラインの作成が求められている.ガイドライン作成委員会では,今後もさらに疾患ごとのガイドラインの作成を進めるとともに,今回作成されたガイドラインの改定も進めていくことになる.これについても皆様方のご指導,ご鞭撻,ご協力をお願い申し上げる.最後に,このガイドラインによって,患者様方がよりよい診療を受けられ,より長く健やかな生活が送れることを,心から希望いたします.

2015年10月

日本先天代謝異常学会 前理事長
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究」班 班長
熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野 教授
遠藤文夫