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ダウン症児の学びとコミュニケーション支援ガイド診断と治療社 | 書籍詳細:ダウン症児の学びとコミュニケーション支援ガイド

大阪医科大学小児科 教授

玉井 浩 (たまい ひろし) 編集

大阪府立大学地域保健学域教育福祉学類 准教授

里見 恵子(さとみ けいこ) 編集

初版 B5判 並製 136頁 2016年08月31日発行

ISBN9784787822635

定価:本体2,500円+税
  

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ダウン症児の身体的特徴・神経心理学的特徴を理解するための「総論」に始まり,続く「実践編」では彼らの学び・コミュニケーションを支援するための療育/インリアル・アプローチの基礎から実践まで,豊富な事例とともにわかりやすく解説.療育・保育・教育関係者をはじめ,ダウン症児の保護者の方々にもぜひ読んでほしい1冊.

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目次

序 文  玉井 浩   
執筆者一覧   

 1 総 論 
 A ダウン症児の特徴と育ちを理解する    
  1.疫 学  玉井 浩   
  2.心身の特徴  玉井 浩   
  3.さまざまな合併症・健康管理  玉井 浩   
  4.ダウン症児の療育  玉井 浩  
  5.自立を目指した幼児期からの支援  松原未知  
  6.自立を目指した学童期からの支援―特別支援学校の立場から―  槙場政晴  
  7.ダウン症児をとりまく総合的な支援―とりまく人々の役割―  里見恵子  
  コラム:出生前診断(検査)の現況  玉井 浩  
  コラム:新しい小児慢性特定疾病  玉井 浩  
 B ダウン症児をもっと理解するために   
  1.ダウン症児の性格・能力・世界  玉井邦夫  
  2.ダウン症児・者への誤解・対人関係・問題点  玉井邦夫  
  3.対人的なかかわりへの消極性,指示を拒む,引きこもるなどの課題の理解  里見恵子  
  4.ダウン症児の見る力と支援  奥村智人  
  5.ダウン症児の不器用さに対する見方と支援  黒澤路子  
  6.食べる・飲むを支える―摂食機能訓練―  中川由紀子  

 2 実践編 療育 
 A ダウン症児に対する早期療育のプログラム   
  1.大阪医科大学LDセンタータンポポ教室の取り組み  栗本奈緒子  
 B 日常生活における学びとコミュニケーション   
  1.発達のための基礎  中島順子,玉井るか  
  2.初期の発達を支える:赤ちゃん体操教室  玉井るか,中島順子,栗本奈緒子  
  3.小集団で遊びを支える:ことばとリズム(2〜4歳)  中島順子  
  4.遊びを通じて学びを支える:ことばと学び(4〜6歳)  栗本奈緒子  
  5.やりとりを支える:ことばとやりとり  中島順子  
  6.学びを支え続ける:フォローアップクラス(小学生)  竹下 盛  
 C 日常生活・園生活での支援   
  1.自律神経発達の弱さを補う援助  玉井るか  
  2.集団生活で「わかる」「支える」支援  中島順子  

 3 実践編 インリアル・アプローチ 
 A 言語とコミュニケーションを育てる―インリアル・アプローチの基礎―    
  1.インリアル・アプローチとは  里見恵子  
  2.ダウン症児の言語・コミュニケーションの発達の特徴  里見恵子  
  3.ダウン症児へのインリアル・アプローチの適用  里見恵子  
 B 実践事例   
  1.言語とコミュニケーション支援:幼児期   
    ①非言語コミュニケーションが上手なために,発話につながりにくい子ども 里見恵子  
    ②聴覚障害を伴うダウン症児への取り組み  河内清美 
    ③見え方に困難があり,やりとりが難しいダウン症児の支援  水田めくみ 
    ④文字で文の指導を行い,伝達内容が豊かになった事例  栗本奈緒子 
  2.言語とコミュニケーション支援:学童期  
    ①ダウン症児への文字の習得の支援  玉木啓之 
    ②自閉スペクトラム症の特徴を併存するダウン症児の支援  石田朋子 
    ③会話段階のダウン症児のことばの問題  玉井るか 
  コラム:ダウン症としての特性と一人の子どもとしての個性  玉井 浩 

索 引 

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序文

 ダウン症候群(以下,ダウン症)は,写真がまだ一般的ではなかった19世紀後半に,イギリスのJ. Langdon H. Down医師が自身で撮りためた多くの「写真」を観察することによって,共通する身体的特徴をもち,知的発達の遅れを示す疾患概念を報告しました1).しかし,長らくその原因はわかりませんでした.20世紀に入り,フランスのJérôme Lejeune医師によって初めて染色体異常であることが明らかにされました2).染色体異常であることが判明してから,50年あまりの間に医学の進歩と相まって,合併症などの身体的特徴だけでなく,神経心理学的な特徴も次第にわかってきました.心臓疾患に対する手術成績も向上し,整形外科的疾患に対しても装具が進歩しています.学校や保育園・幼稚園の受け入れもよくなり,早期療育の進歩によって,運動発達や言葉発達の促進が図られています.このようにダウン症をもつ子どもをとりまく環境はずいぶん変化してきました.ダウン症療育に関する研究会も設立され,国際連合では世界ダウン症の日も制定され,世界ダウン症会議も開催されています.米国の先進的な病院ではダウン症の総合外来も設置され,ダウン症に関する研究もさかんにされています.世界はダウン症を障がいとみるより特性とみて,その子らしいパフォーマンスが発揮できるように支援するという空気に満ちています.
 しかし,一方で社会からの偏見や家族内での意見の相違から,母親あるいは父親,あるいは両親が孤立する場合も現実には存在します.どのような環境のなかでも子どもが周囲の理解や援助を得ながら成長することによって,家族は次第に満たされていくものと信じて周囲は支援する必要があります.
 ダウン症をもつ人のすべてが特別な優れた才能をもっているわけでもありません.しかし,健常の子どもと同じように応援や励ましに応えようとするごく普通の存在です.
 本書が療育関係・保育・教育関係者,そして保護者の方々の役に立ち,ダウン症をもつ子どもが周囲の大人や友だちとうまくコミュニケーションがとれるようになり,幸せな暮らしができることを切望しています.

2016年7月
大阪医科大学小児科 教授
玉井 浩



1)Down JLH:Observations on the ethnic classification of idiots. Clinical Lecture Reports, London Hospital 3:259–262, 1866
2)Lejeune JM, et al:Etude des chromosomes somatique de neuf enfants mongoliens. CR Acad Sci 248:172 1, 1959