厚労省難治性疾患政策研究班「先天性骨髄不全研究班」では,症例数が極めて稀でいずれも難治性である8疾患の医療水準向上に取り組む.造血系だけではなく様々な臓器に症状が現れる本疾患の診断は容易ではないが,遺伝的背景からの発症が多いことがわかりつつある.本書では平成26年度からの研究成果をまとめ,遺伝子診断など最新の臨床的知見を追加.専門医のみならず小児科や一般内科でも活用されたい診療ガイドラインである.
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目次
口 絵
発刊によせて
序 文
はじめに
作成組織一覧
先天性骨髄不全症の患者数
Ⅰ 本ガイドラインについて
1.はじめに
2.本ガイドラインの基本的な考え方,記載方法
3.先天性造血不全症の診断,治療
4.利益相反
5.ガイドラインの検証と改訂
Ⅱ Diamond‒Blackfan貧血
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 疾患概念
② 診断基準
③ 鑑別診断
④ 重症度分類
▎疫 学
① 発症頻度
② 自然歴・予後
▎病因・病態
▎臨床症状
① 貧 血
② 合併奇形
③ 悪性腫瘍の合併
▎治療法
① 輸 血
② 薬物療法
③ 造血幹細胞移植
▎フォローアップ,問題点・将来の展望
❖文 献
Ⅲ Fanconi貧血
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 疾患概念
② 診断基準
③ 鑑別診断
④ 重症度分類
▎疫 学
① 発症頻度
② 自然歴・予後
▎病因・病態
▎臨床症状
① 身体奇形
② 悪性腫瘍の合併
▎治療法・治療指針
① 輸 血
② 薬物療法
③ 造血幹細胞移植
▎フォローアップ
❖文 献
Ⅳ 遺伝性鉄芽球性貧血
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 疾患概念
② 診断基準
③ 鑑別診断
④ 重症度分類
▎疫 学
① 発症頻度
② 自然歴・予後
▎病因・病態
▎臨床症状・検査所見
① 身体奇形
② 悪性腫瘍の合併
③ 検査所見
▎治療法・治療指針
① 薬物療法
② 輸血療法
③ 造血幹細胞移植
▎フォローアップ
❖文 献
Ⅴ Congenital dyserythropoietic anemia
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 疾患概念
② 診断基準
③ 鑑別診断
④ 重症度分類
▎疫 学
① 発症頻度
② 自然歴・予後
▎病因・病態
▎臨床症状・検査所見
▎治療法,治療方針
① 輸血療法
② 除 鉄
③ 摘 脾
④ インターフェロン
⑤ その他の薬物療法
⑥ 造血幹細胞移植(HSCT)
▎フォローアップ,問題点・将来の展望
❖文 献
Ⅵ 先天性角化不全症
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 疾患概念
② 診断基準
③ 鑑別診断
④ 重症度分類
▎疫 学
① 発症頻度
② 自然歴・予後
▎病因・病態
▎臨床症状・検査所見
① 身体奇形
② 悪性腫瘍の合併
③ 検査所見
▎治療法・治療指針
① 薬物療法
② 輸血療法
③ 造血幹細胞移植
▎フォローアップ,問題点・将来の展望
❖文 献
Ⅶ Shwachman‒Diamond症候群
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 緒 言
② 疾患概念
③ 診断基準
④ 鑑別診断
⑤ 重症度分類
▎疫 学
① 発症頻度
② 自然歴・予後
▎病因・病態
▎臨床症状
① 臨床症状ならびに身体奇形
② 悪性腫瘍の合併
▎治療法・治療指針
① 血液学的合併症
② 膵外分泌異常,栄養
③ 骨異常
④ 歯科的合併症
⑤ 神経発達
▎フォローアップ
❖文 献
Ⅸ 先天性好中球減少症
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 緒 言
② 疾患概念
③ 診断基準
④ 鑑別診断
⑤ 重症度分類
▎疫 学
▎病因・病態
①SCN1
②SCN2
③SCN3
④SCN4
⑤SCN5
⑥ 周期性好中球減少症
▎臨床症状
① 臨床症状,身体所見
② 検査所見
▎治療法・治療指針
① 対症療法
② 根治療法
▎フォローアップ
❖文 献
Ⅹ 先天性血小板減少症
▎診断のフローチャート
▎診断へのアプローチ
① 疾患概念
② 分 類
③ 診断基準
④ 鑑別診断
⑤ 重症度分類
▎疫 学
① 発症頻度
② 予 後
▎病因・病態
▎臨床症状
① 出血症状
② 貧 血
③ 合併症
▎治療法
① 出血症状
② 骨髄不全
▎フォローアップ
❖文 献
索 引
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序文
主要な先天性骨髄不全症には,Diamond-Blackfan貧血,Fanconi貧血,遺伝性鉄芽球性貧血,先天
性赤血球形成異常症,Shwachman-Diamond症候群,先天性角化不全症,先天性好中球減少症,先天性
血小板減少症の8疾患がある.わが国における発症数は最も多いDiamond-Blackfan貧血でも年間約10
例と極めて稀で,いずれの疾患も難治である.平成26年度から,発症数が少なく共通点の多いこれら
の8疾患の医療水準の向上をより効率的に進めるために,一つの研究班に統合した厚労省難治性疾患
政策研究班「先天性骨髄不全研究班」(伊藤班)が発足し,研究を推進してきた.本研究班は,8つ
の疾患別研究拠点から構成され,各研究拠点は疫学調査,臨床データおよび検体の収集,既知の原因
遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当している.これらの研究は,日本小児血液・がん
学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し行われてきた.これまでの研究により,既知の原因遺
伝子の解明が進み,わが国の50%以上の症例で原因遺伝子が同定された.次世代シークエンサーを用
いた網羅的遺伝子解析を担当する「稀少小児遺伝性血液疾患研究班」(小島班)と連携して新規遺伝
子探索を行い,Diamond-Blackfan貧血,Fanconi貧血や先天性血小板減少症の新規原因遺伝子が同定
された.また,この解析の過程で,遺伝子診断により臨床的な診断が誤りであった症例が複数存在す
ることも明らかとなった.平成27年7月1日に,指定難病として,Diamond-Blackfan貧血,Fanconi貧
血,遺伝性鉄芽球性貧血,先天性赤血球形成異常症が追加されたが,その指定に本研究班の研究成果
が大きく貢献した.
平成28年度より新たに「先天性骨髄不全症研究班」(伊藤班)が発足した.本研究班では,その研
究成果を医療現場に還元するために,これまでに研究班に集積された臨床的な知見を含め現状におけ
る最新の知見も整理し,「2017年版診療ガイドライン」を作成し,日本小児血液・がん学会の認証を
受けた後,書籍として出版することにした.ただし,先天性骨髄不全症は症例数が少なく,エビデン
スレベルの高いガイドラインを示すにはまだ多くの問題があるため,現在推奨されているMindsの形
式には沿っていない.また,この領域は,研究の進歩が日進月歩であるため,定期的に診療ガイドラ
インの改訂が必要である.
本ガイドラインは,研究班の総力を挙げて取り組んだ成果であり,改訂作業に取り組んでいただい
た多くの先生方に心から深謝するとともに,本書が,血液の専門医ばかりではなく,一般の小児科医
や内科医の日常診療に役立つ実践的な書籍として活用されることを期待したい.
2017年4月
先天性骨髄不全症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの確立に関する研究班
主任研究者 弘前大学大学院医学研究科小児科学
伊藤 悦朗