糖尿病学2018診断と治療社 | 書籍詳細:糖尿病学2018
東京大学医学部附属病院 特任研究員/帝京大学医学部 常勤客員教授
門脇 孝(かどわきたかし) 編集
初版 B5版 1色(口絵カラーあり) 184頁 2018年06月20日発行
ISBN9784787823472
定価:10,450円(本体価格9,500円+税)冊
日進月歩の進歩を遂げる糖尿病学のなかでも特にわが国発の研究に重点を置いて重要な課題を取り上げ,専門的に解説したイヤーブック.今年もこの 1 年の基礎的研究,臨床・展開研究の成果が 20編の論文に凝集されている.糖尿病研究者のみならず,一般臨床医にとっても必読の書.
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目次
口絵
序文
執筆者一覧
基礎研究
1.マウス多能性幹細胞由来の膵臓作製
[山口智之]
■はじめに
■胚盤胞補完法とは
■胚盤胞補完法を利用した同種膵臓作製
■異種間胚盤胞補完法による膵臓作製
■異種動物で作製した膵島を利用した糖尿病治療
■おわりに
2.時計遺伝子とインスリン分泌障害
[太田康晴]
■はじめに
■概日時計とは
■時計遺伝子とその分子モデル
■コア時計遺伝子と膵β細胞機能
■小胞体(ER)ストレスと時計遺伝子
■DBPシグナルと膵β細胞機能
■概日時計を意識した糖尿病治療への期待
3.GIP分泌制御機構
[原田範雄,稲垣暢也]
■はじめに
■ヒトにおける栄養素に対するGIP分泌
■グルコースに対するGIP分泌
■脂質に対するGIP分泌
■GIP産生に関与する分子
■GIP分泌制御を主眼とした臨床応用の可能性
■おわりに
4.脂肪組織マクロファージによる前駆脂肪細胞の調節を介したインスリン感受性の調節機構
[瀧川章子,アラーナワズ,角 朝信,藤坂志帆,戸邉一之]
■はじめに
■M1マクロファージと前駆脂肪細胞の相互作用の発見の経緯
■M2マクロファージは前駆脂肪細胞の増殖と分化を抑制し全身のインスリン感受性を負に調節している
■まとめ
5.メトホルミン作用の分子機構
[小川 渉]
■はじめに
■メトホルミンと肝糖産生抑制
■遺伝子発現制御を介した糖新生抑制作用
■AMPキナーゼを介したその他のメトホルミン作用
■メトホルミンの新規な標的分子:アデニルシクラーゼとグリセロリン酸デヒドロゲナーゼ
■メトホルミンの消化管での作用
■消化管/中枢経路を介した肝糖産生抑制
■腸内細菌とメトホルミン作用
■おわりに
6.脂肪細胞におけるインスリン受容体の役割
[阪口雅司,荒木栄一]
■はじめに
■インスリン受容体とそのシグナル伝達
■白色脂肪細胞
■白色脂肪細胞とインスリンシグナル
■褐色脂肪細胞とインスリンシグナル
■マイクロバイオームによる脂肪細胞への影響
■脂肪組織再生
■脂肪前駆細胞の増殖および分化にかかわる因子の探索
■おわりに
7.褐色脂肪細胞のエピゲノム制御におけるNFIAの役割
[脇 裕典]
■はじめに
■エピゲノムと次世代シークエンサーによる解析
■褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞
■褐色脂肪組織のオープンクロマチン解析
■NFIAによる褐色脂肪細胞分化の制御
■NFIAとPPARγの褐色脂肪エンハンサー上における共局在
■NFIA欠損マウスおよびヒト褐色脂肪細胞の解析
■今後の展望
8.ホスホリパーゼA2と代謝性疾患
[村上 誠]
■はじめに
■cPLA2と代謝性疾患
■sPLA2と代謝性疾患
■iPLA2と代謝性疾患
■おわりに
9.ヘパトカインセレノプロテインPによる運動抵抗性
[御簾博文,篁 俊成]
■運動抵抗性
■2型糖尿病関連ヘパトカインセレノプロテインPの同定
■SeP欠損マウスでは運動トレーニングに対する反応性が増強する
■SeP欠損は急性運動後にマウスの筋でROS産生量・AMPKリン酸化・PGC-1α遺伝子発現を増強させる
■SePはC2C12筋管細胞でROS誘導性のAMPKリン酸化およびPGC-1α遺伝子発現を抑制する
■培養筋管細胞でのSeP作用は受容体であるLRP1を介する
■マウスにおける筋特異的LRP1欠損はSeP取り込みとその作用を減弱させた
■SePはヒト筋細胞で機能し,被験者のトレーニングに対する無効性を予知する
■おわりに
10.インスリン受容体異常症とインスリン受容体の機能ドメイン
[細江 隼,庄嶋伸浩,山内敏正,門脇 孝]
■はじめに
■インスリン受容体異常症について
■INSRの蛋白質立体構造と機能
■FnIIIドメインに存在するインスリン受容体異常症の変異の特徴
■INSR遺伝子変異が蛋白質立体構造に及ぼす影響と表現型の相関(structure-phenotype correlations)
■おわりに
臨床研究・展開研究
11.日本糖尿病学会の60年
[葛谷 健]
■糖尿病の化学療法研究班と糖尿病研究班
■日本糖尿病学会の発足とIDFへの加盟
■学会設立から現在までのおもな出来事
■新会則の頃,行政とのかかわり
■学会設立当時と現在の比較
■患者数の増加
■死因と合併症
■診断と分類,成因
■食事療法
■インスリンと経口薬
■治療目標の変化
12.J-DOIT3
[門脇 孝,植木浩二郎,笹子敬洋]
■はじめに
■J-DOIT3のプロトコール
■J-DOIT3の危険因子のコントロール状況
■J-DOIT3におけるイベント状況
■J-DOIT3の安全性
■考察
13.インクレチンからみた糖尿病の食事療法のサイエンス
[桑田仁司,矢部大介,清野 裕]
■はじめに
■インクレチンによる血糖制御
■食べる順番とインクレチン
■DPP-4阻害薬の血糖改善作用と食事内容
■まとめ
14.ICTを用いた生活習慣介入
[脇 嘉代]
■はじめに
■DialBeticsの概要
■DialBeticsを用いた臨床研究
■受診中断歴のある糖尿病患者とICTシステム
■ICTシステムの利用意向調査
■GlucoNoteを用いた2型糖尿病患者・糖尿病予備群の生活習慣調査
■おわりに
15.IoT(Internet of Things)を用いた「七福神」からのフィードバックによる生活習慣改善支援
[野村恵里,津下一代]
■はじめに
■IoT(Internet of Things)の活用
■毎日の糖尿病管理に“七福神”が伴走!
■「七福神アプリ」を用いた介入研究(平成28年度経済産業省モデル事業)の概要
■生活習慣改善指導におけるIoT活用の留意点
■IoTを用いた介入研究の発展と概要
■今後に向けて
16.糖尿病における脂質異常症と動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版
[山下静也]
■はじめに
■糖尿病患者の脂質異常症
■動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版
■糖尿病患者における脂質異常症治療の最近の話題
■糖尿病治療薬の脂質異常症と心血管イベントに及ぼす効果
■おわりに
17.糖尿病と心不全:糖尿病合併症のラストフロンティア
[田中敦史,野出孝一]
■はじめに
■糖心連関に対する予防・治療戦略
■大規模アウトカム試験における心不全アウトカムへの注目
■SGLT2阻害薬の心不全予防に対する多面的効果
■心不全診療におけるSGLT2阻害薬のポジショニング
18.GLP-1受容体作動薬アップデート
[大友 瞳,山田祐一郎]
■GLP-1受容体作動薬について
■臨床研究について
■GLP-1受容体作動薬の今後について
19.SGLT2阻害薬アップデート
[下田将司,加来浩平]
■はじめに
■CANVAS programの試験方法
■CANVAS programにおけるカナグリフロジンによるベネフィット
■SGLT2阻害薬によるリスク
■さいごに
20.持続グルコース測定機器の進歩と臨床応用
[西村理明]
■はじめに
■リアルタイムCGM
■リアルタイムCGMと持続皮下インスリン注入(CSII)療法の連携
■リアルタイムCGMと持続皮下インスリン注入(CSII)療法におけるインスリン注入の自動化
■Flash Glucose Monitoring(FGM)機器
■おわりに
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序文
序 文
2018年も従来どおり日本糖尿病学会年次学術集会に合わせて,本書「糖尿病学」をお届けできる運びとなった.毎年この時期に刊行できることは非常に喜ばしいことである.
さて,この一年も様々なテーマが話題となった.糖尿病に対する移植治療の一方法としてマウス多能性幹細胞からの膵臓再生に関する研究成果,時計遺伝子のインスリン分泌における役割,食事の内容や食べ方の工夫によるインクレチンの血糖改善効果の増強に関する研究,血糖降下薬としてだけでなく多面的な効果が期待できるSGLT2阻害薬の最新の研究報告など,新しい話題を含め,毎年のことながらそのテーマは多岐にわたる.本書ではおもに日本人による研究の成果を取りあげており,今年も20編の論文をこの一冊に収載することができた.
「糖尿病学2018」では,上記の話題に加えて,脂肪細胞におけるインスリン受容体の役割,ICT(Information and Communication Technology)やIoT(Internet of Things)を活用した生活習慣への介入,糖尿病と心不全の密接な連関,GLP-1受容体作動薬アップデート,など非常に興味深いテーマも取り上げている.また,学会設立60周年にちなんでまとめていただいた日本糖尿病学会の60年やJ-DOIT3についても収載した.そのほか「基礎研究」から「臨床研究・展開研究」まで素晴らしい価値ある成果であり,いずれも研究者の熱意と英知がこめられた論文ばかりである.
最後に,できるかぎり新しい情報を発信するため非常に短い期間でご執筆をいただいた著者の先生方に深謝申し上げる.
平成30年5月
門脇 孝