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脊椎関節炎診療の手引き2020診断と治療社 | 書籍詳細:脊椎関節炎診療の手引き2020

日本脊椎関節炎学会 編集

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究」班 編集

初版 A4判 並製 2色刷り(口絵カラー有り) 168頁 2020年07月21日発行

ISBN9784787824288

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定価:4,180円(本体価格3,800円+税)
  

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強直性脊椎炎や乾癬性関節炎といった脊椎関節炎について,「体軸性」「末梢性」の2つの視点を軸に取り上げる.病態から診断・治療まで,欧米の最新のガイダンスなど,最新の情報を盛り込みながら詳細に解説した.特に画像検査や診断においては,多数の画像を用い解説している.日本では患者数が少ないこともあり,まだまだ診断が難しいとされる本疾患についての,これからの診療の指針となる1冊.

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目次

口絵カラー
発刊に寄せて
序文
執筆・協力一覧
略語一覧

A 総 論
 1 脊椎関節炎の歴史・概念
 2 分類基準
Column “診断基準”と“分類基準”
B 体軸性脊椎関節炎
 1 体軸性脊椎関節炎の概念
 2 疫学
 3 強直性脊椎炎
  a 病因・病態
  b 臨床症状・臨床検査
  c 画像検査
  d 診断
 4 X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
 5 臨床評価の指標
 6 治療
  a 治療目標と治療方針
  b 患者教育・運動療法
  c 治療薬の選択と各薬剤の位置づけ
  d 外科治療
C 末梢性脊椎関節炎
 1 乾癬性関節炎
  a 概念
  b 疫学
  c 病因と病態
  d 臨床症状
  e 画像検査
  f 診断と鑑別診断
  g 臨床評価の指標
  h 合併症・併存症
  i 治療
 2 反応性関節炎
  a 概念
  b 臨床症状・臨床検査
  c 診断と鑑別診断
  d 治療
  e その他の反応性関節炎
Column BCGによる反応性関節炎
 3 炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎
  a 概念
  b 疫学
  c 臨床症状・臨床検査
  d 治療
 4 分類不能脊椎関節炎
Column 線維筋痛症
D 小児の脊椎関節炎
  若年性脊椎関節炎
  a 概念・定義
  b 疫学
  c 病態
  d 臨床症状・臨床検査
  e 画像検査
  f 診断と鑑別診断
  g 治療
  h 経過と予後
E その他
 1 脊椎関節炎の眼病変
 2 脊椎関節炎診療における診療科間の連携

付 録
治療薬一覧
参考資料

索引

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序文

発刊に寄せて

 このたび,厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究」班(研究代表者:冨田哲也)を中心に,日本脊椎関節炎学会も編集に加わった『脊椎関節炎診療の手引き2020』が発刊されることになった.本手引きは学際的なアプローチの必要な脊椎関節炎(SpA)の診療に携わるすべての医師を対象とした,国内外の最新情報をもとに作成された手引き書である.
 SpAは強直性脊椎炎,乾癬性関節炎,反応性関節炎,炎症性腸疾患に伴うSpA,分類不能SpAなどの疾患群に対する包括的分類名で,体軸関節炎や付着部炎など関節リウマチとは異なった特徴を有している.国際脊椎関節炎評価会(ASAS)は,罹患関節の分布の違いから体軸性SpAと末梢性SpAに大別することを提唱している.体軸性SpAはX線基準を満たす体軸性SpA(強直性脊椎炎)とX線基準を満たさない体軸性SpA(nr―axSpA)に分類され,末梢性SpAには乾癬性関節炎,反応性関節炎,炎症性腸疾患に伴うSpA,分類不能SpAが含まれる.近年,強直性脊椎炎に対する早期治療介入の視点から,nr―axSpAと強直性脊椎炎の関連が論議されているところである.
 一方,SpAの病因・病態の解明も大きく進展している.疾患の発症には遺伝的要因(HLA―B27など)と環境要因(メカニカルストレス,細菌など)の相互連関が関与し,骨増殖を伴う関節破壊の進行にはTNFとIL―23/IL―17基軸が重要な役割を担っている.強直性脊椎炎や乾癬性関節炎においては,TNF,IL―17,IL―23を標的とする生物学的製剤の高い有効性が明らかになり,これら炎症性サイトカインのSpA病態への関与が証明された.
 欧米ではSpA有病率は関節リウマチとほぼ同程度であり,診断・治療に関する知見が多数蓄積されてきた.その歴史をもとに,新たにEBMに基づいた診療ガイドライン/リコメンデーションがASAS,欧州リウマチ学会,米国リウマチ学会から発表されている.一方,わが国ではSpAはまれな疾患群であり,調査・研究の歴史も浅く,わが国独自の診療ガイドライン策定に十分なエビデンスは確立されていない.このような状況下で,本書は診療の基本になる欧米のEBM論文をもとに,わが国の知見を交え,SpAの標準的な診断・治療について網羅的に解説されている.また,重要なポイントがわかりやすく説明されており,医療現場での臨床的判断に役立つ内容になっている.本手引きを策定された冨田哲也研究代表者,田村直人編集委員長をはじめ執筆者の皆様のご努力に対して,この場を借りて深謝申し上げる.
 生物学的製剤の登場により,SpAはこれまでにない関心が注がれるようになった.その特有な病態と診療の理解を深めることは,リウマチ診療の質の向上に繋がるものと考える.本手引きが多くの方々にSpAに興味を持っていただくきっかけになることを願っている.

2020年6月15日
日本脊椎関節炎学会 理事長
山村 昌弘



序 文

 強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)はわが国に3,000人程度の患者がいるとされる希少疾患で,2015年に指定難病に追加されました.一方世界に目を向けると強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎は関節リウマチに匹敵するほどの患者数が存在する疾患であり,近年病態解明が進み,さまざまな新規治療薬が登場しています.2009~2011年にかけて国際脊椎関節炎評価会(ASAS)より体軸性,末梢性脊椎関節炎の分類基準が提唱されました.体軸性脊椎関節炎ではnon―radiographicな体軸性脊椎関節炎が示されましたが,non―radiographicな体軸性脊椎関節炎の病態は自然経過も含めて,いまだに完全には解明されていません.臨床現場ではこの分類基準が診断基準と混同して理解され使用されることで世界的に混乱が生じています.体軸性脊椎関節炎はわが国では患者数が極端に少ないことから,臨床現場の医師すべてが体軸性脊椎関節炎患者を経験できるわけではありません.一方でnon―radiographicな体軸性脊椎関節炎に対する複数の新規治療薬の国際共同治験にわが国からも参加し,近い将来承認される可能性が指摘され,臨床現場で混乱が生じないように体系だった診療ガイドラインが求められています.
 2016年より発足した厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究」班(研究代表者:大阪大学冨田哲也)では,体軸性脊椎関節炎の初めての全国疫学調査を厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「難治性疾患の継続的な疫学データの収集・解析に関する研究」班(研究代表者:自治医科大学中村好一教授)と共同で実施し,わが国における体軸性脊椎関節炎患者の実態を明らかにするとともに,このたび順天堂大学田村直人教授らの編集のもと,日本脊椎関節炎学会(理事長:岡山済生会総合病院山村昌弘先生)の協力を得ながら『脊椎関節炎診療の手引き2020』を作成しました.
 脊椎関節炎の臨床症状は多岐にわたり,その診断・治療には単一診療科では対応が不十分になることが多く,横断的診療連携が求められます.また小児期での発症も認められ患者の成長とともに小児期から成人期へのシームレスな医療連携も求められます.本手引きの作成にあたり,リウマチ膠原病内科,整形外科,小児科,消化器内科,眼科,公衆衛生学などさまざまな立場からご執筆いただきました.特に厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「ベーチェット病に関する調査研究」班(研究代表者:横浜市立大学水木信久教授),「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(研究代表者:東邦大学鈴木康夫教授)にはご協力に対して厚く御礼申し上げます.
 残念ながら今回の『脊椎関節炎診療の手引き2020』は,本分野での治療エビデンスに関する論文がわが国ではほとんどないためMinds準拠の診療ガイドラインではありません.しかし今後近い将来に保険適用を取得する可能性のある薬剤もあり,公表前にはパブリックコメントおよび関連学会にも広く意見を求め透明性を高めております.さらにわが国でも患者数が増加している乾癬性関節炎に関しては,厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「乾癖性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究」班(研究代表者:東京慈恵会医科大学朝比奈明彦教授)が中心となり2019年に作成された「乾癬性関節炎診療ガイドライン」に準拠して記載されています.
 臨床現場では末梢性脊椎関節炎については患者が混乱しないように,それぞれの基礎疾患に則した診断名が使用されることが的確で重要と考えられます.一方で体軸性脊椎関節炎については欧米諸国では体軸性脊椎関節炎をnon―radiographicとradiographicに分けるのみで体軸性脊椎関節炎を診断名に用いる傾向があり,さらに病態を含めまだまだ解明されていないことが多く,体軸性脊椎関節炎の概念などについては“moving”という表現がよく使用されているのも事実です.約10年前に提唱されたASASの分類基準ですら見直すかどうかの世界規模のコホート研究が開始されています.わが国では強直性脊椎炎のみが指定難病であり,制度上の観点からも的確な鑑別除外診断が求められます.
 まだまだ混沌とした状況かもしれませんが,多くの方々の多大なご協力により作成された『脊椎関節炎診療の手引き2020』が専門医のみならず,脊椎関節炎診療に携わる医師,初期・後期研修医,コメディカルスタッフ,医学生,患者およびそのご家族にとってわが国での脊椎関節炎診療を理解する良き友になることを期待してやみません.

2020年6月15日

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と
診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究」班

研究代表者
冨田 哲也