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動画で学ぶTCR診断と治療社 | 書籍詳細:動画で学ぶTCR
SSCIとRoBEEMで子宮筋腫治療はここまで進化する 新時代子宮鏡手術のGOLD STANDARD

佐野病院 切らない筋腫治療センター 施設長

井上 滋夫(いのうえ しげお) 編著

初版 B5判 並製 120頁 2021年09月24日発行

ISBN9784787824974

定価:19,800円(本体価格18,000円+税)
  

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新時代子宮鏡手術のGOLD STANDARDを提示する画期的な動画教本.
レゼクトスコープの構成パーツの選び方・使い方を基本から説明,安全で効率的なメソッドを豊富なイラストと写真で紹介.実践で遭遇する疑問を70のQ&Aで回答.基礎的例から症例数が多い高難度例,穿孔・破損電極回収などトラブル対処例まで43症例180分の動画で解説.手元操作とモニター画面を同時収録し,モニター画面だけではわからなかった通電タイミング・凝固と切開モードの使い分け・ハンドル操作を詳説.

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目次

推薦文  大須賀 穣
自序  井上 滋夫

総論 

1 TCRの適応
2 診断・術前検査 MRIの重要性
3 術前治療 GnRHa(agonist, antagonist)
4 インフォームドコンセント
5 使用機器,資材
6 術前処置 吸水性頸管拡張器挿入のコツ サイトテックの拡張効果
7 麻酔
8 手術手技解説

動画症例紹介
手術動画DVDについて
1-1 セッティングと持ち方の基本
1-2 二重シース持続潅流とSSCIの比較 上向き・下向きの持ち方の比較(前屈例)
1-3 SSCIコック開閉による視界明瞭度の変化 上向き・下向きの持ち方の比較(後屈例)
2 後壁 type0 3.1cm 0G-0P 31歳 有茎筋腫
3 後壁左側 type1 2.2cm 0G-0P 38歳
4 後壁 type2 3.3cm 1G-0P 30歳 バッグ交換
5 前壁左側 type1 3.4cm 3G-2P 46歳
6 前壁右側 type2 3.0cm 3G-2P 42歳 バッグ交換
7 前壁 type0 4.3cm 筋腫分娩 3G-2P 48歳
8 頸部前壁上部 type2 5.4cm 漿膜側筋層菲薄 1G-0P 33歳
9 前壁下部 type2 5.7cm 漿膜側筋層菲薄 0G-0P 40歳
10 底部後壁 type2 6.1cm 漿膜側筋層菲薄 0G-0P 35歳 妊娠出産例
11 底部 type1 8.1cm 肥満(153cm 82kg) 0G-0P 29歳
12 前壁 type3 3.9cm 石灰化 内膜アブレーション 2G-2P 44歳
13 後壁 type1 6.4cm 茎が太い筋腫分娩 0G-0P 45歳
14 diffuse leiomyomatosis 0G-0P 26歳 妊娠出産例
15 前壁 type2 5.1cm 線状切開剥離内膜温存法 0G-0P 37歳 妊娠出産例
16 後壁 type3 7.4cm 一掻き内膜温存剥離法 0G-0P 39歳 妊娠出産例
17 前壁右側底部 type2 漿膜側筋層菲薄 6.0cm 1G-0P 29歳 妊娠出産例
18 後壁 type2 13cm 0G-0P 37歳 内膜広範切除・偽被膜全面凝固 妊娠出産例
19 底部 type2 9.5cm 2G-1P 39歳
20 底部 type2 漿膜側筋層菲薄例 7.3cm CSx2 42歳
21 前壁 type2 14.5cm 0G-0P 41歳 155cm 47kg リュープリン3.75奏効巨大例
22 左側頸管内 type1 17.4cm 3G-3P 46歳 閉鎖神経反射
23 多発 type1,type2,type3 0G-0P 28歳 子宮中隔に発生した多発筋腫
24 子宮腺筋症 1G-0P 46歳 腺筋症切除内膜全面切除
25 前壁底部 type2 6.0cm 1G-0P 41歳 TCRis 出力設定と気泡排除のコツ
26 後壁 type2 4.6cm 0G-0P 36歳 カールストルツバイポーラ使用
27 後壁右側 type2 5.8cm 2G-2P 45歳 TCRis・モノポーラハイブリッド
28 後壁左側 type1 6.6cm 2G-2P 45歳 TCRis・モノポーラハイブリッド
29 後壁 type3 7.2cm 右側 type0 3.1cm 40歳 内膜蒸散 TCRis・モノポーラハイブリッド
30 立ち上がり部が両側卵管口に近接した後壁底部 type2 6.3cm 0G-0P 25歳 TCRis
31 右側底部 type2 6.1cm 3G-2P 39歳 縫合せずに自然治癒した微小穿孔例
32 底部 type2 漿膜側筋層菲薄例 7.3cm 42歳 穿孔修復例
33 後壁 type2 9.4cm 3G-2P 46歳 頸管拡張時ヘガール穿孔例
34 後壁 type0 3.9cm 0G-0P 51歳 露出してきた筋層内筋腫摘出による穿孔
35 ループ電極背側での組織損傷・穿孔
36 電極の破損と破損電極の回収
37 初学者が陥るピットフォール 前壁左側 type0 3cm 39歳 2G-2P

Q&A トラブルシューティング

1 術前に必要な検査と処置
Q1 術前診断に子宮鏡検査は必要でしょうか?
Q2 術前診断にMRIは必要でしょうか?
Q3 術前診断にソノヒステログラフィーは必要でしょうか?
Q4 術前画像診断の注意点は?
Q5 GnRHagonistの術前投与は必要でしょうか? 必要とすれば,どの程度行うのがいいでしょうか?
Q6 GnRHagonist,antagonistの投与開始時期は,月経開始から5日以内となっていますが,なぜなのでしょうか?
Q7 筋腫分娩にGnRHagonistを使ってもいいでしょうか?
Q8 ジェノゲストを術前治療として使ってもいいのでしょうか?
Q9 GnRHagonistとantagonist(レルミナ)との使い分けについて教えてください
Q10 術前偽閉経療法の副作用対策は?
Q11 術前説明のポイントは?
Q12 TCRが困難な症例とは?

2 使用機器 資材
Q13 モノポーラレゼクトスコープとバイポーラレゼクトスコープの違いは?
Q14 バイポーラレゼクトスコープの注意するべき点は何でしょうか?
Q15 バイポーラTCRでは水中毒は起こらないのでしょうか?95
Q16 バイポーラTCRでは閉鎖神経反射は起こらないのでしょうか?
Q17 TCRにはモノポーラとバイポーラのどちらを選ぶべきでしょうか?
Q18 持続潅流には二重シースレゼクトスコープが必須でしょうか?
Q19 レゼクトスコープの滅菌はどのようにしますか?

3 手術の実際
Q20 スムースなスコープ挿入のコツは?
Q21 レゼクトスコープのセットを購入するとマンドリンが付属していますが,使っている医師を見たことがありません.使ったほうがいいのでしょうか?
Q22 経腟エコー挿入困難例や頸管拡張困難例の対処法は?
Q23 頸管拡張器挿入のコツは?
Q24 頸管拡張はどの程度必要でしょうか?
Q25 筋腫は上から削るのか下から削るのかどちらがいいでしょうか?
Q26 通電しながら押す操作「押し切り」は禁忌でしょうか?
Q27 技術認定試験では,「押し切り」は「一発落ち」になりますか?
Q28 切開の切れ味が悪い,凝固止血がうまくいかない場合の対策は?
Q29 長い大きな切片で切削するコツは? 
Q30 隆起していた筋腫が偽閉経療法で縮小し,わからなくなってしまった場合は?
Q31 有茎性で茎を離断した筋腫が大きくて鉗子で搬出できない場合は?
Q32 筋腫核剥離におけるボール電極と水平ループ電極の違いは
Q33 潅流液の水圧を高めることは剥離に有用ですか?
Q34 剥離を進めて筋腫が筋層から完全に遊離するとモノポーラで切削できなくなりますか?
Q35 筋腫と筋層を見分けるコツは?
Q36 底部発生筋腫の注意点は?
Q37 大きな筋腫の摘出のコツ,注意点は?
Q38 切除している部分が筋層に入り込んでしまっているかを見極めることは難しいと感じますが,術中にどう評価すればいいでしょうか?
Q39 type2 筋腫では筋層内に筋腫が残存してもいいでしょうか?
Q40 一期的に完全摘出できなかった場合はどうすればいいでしょうか?
Q41 筋腫を覆う内膜は温存するべきでしょうか?
Q42 筋腫を包む偽被膜の温存は必要でしょうか?
Q43 術中出血量の測定はどうすればいいでしょうか?
Q44 出血しやすい部位というものはありますか?
Q45 術中の止血のコツは? 止血はループかボールかどちらを使うべきでしょうか?
Q46 潅流液の水圧を高めることは止血に有用ですか?

4 術中合併症対策 術中トラブル対処法
Q47 子宮穿孔はどのような場合に起こるのでしょうか?
Q48 子宮穿孔すると視界不良になるのでしょうか?
Q49 子宮穿孔時はただちに開腹または腹腔鏡に移行すべきですか?
Q50 水中毒を防ぐには手術時間はどれくらいまでにするべきでしょうか?
Q51 潅流液ウロマチックSは何バッグくらいまで使用してもいいのでしょうか?
Q52 潅流液の気泡除去のコツは?
Q53 潅流液バッグ更新時に潅流液が途絶して見にくくなりますが,良い方法はないでしょうか?
Q54 潅流が十分できず視界不良の場合は加圧バッグを使用したほうがいいでしょうか?
Q55 通電時にモニター画面がノイズで乱れますが,対策は?
Q56 使用時にループ電極が変形しますが,矯正できれば使用してもいいでしょうか?
Q57 術中に電極が破損脱落した時はどうすればいいですか?
Q58 胎盤鉗子での筋腫搬出で,子宮腔内から鉗子が抜けなくなった場合の対処法は?

5 術後処置 術後管理
Q59 術後癒着防止にIUDやエストロゲン投与は必要でしょうか?
Q60 TCR後の妊娠では帝王切開が必要でしょうか?
Q61 TCR後の妊娠待期期間はどのくらい必要でしょうか?

6 TCRの適応と限界
Q62 TCRの禁忌症例はどのようなものがありますか?
Q63 「画像診断で非典型的な筋腫」にTCR を試みることに問題はないでしょうか?
Q64 筋層内筋腫のTCRは可能でしょうか?
Q65 TCR可能な筋腫サイズの上限は?
Q66 筋層の厚み(漿膜筋腫間距離)が5mm以下ではTCRは危険でしょうか?
Q67 頸部筋腫のTCRは可能でしょうか?
Q68 筋腫分娩のTCRは可能でしょうか?
Q69 子宮腺筋症はTCRの対象になるでしょうか?
Q70 TCRとLMのわかりやすい選択基準はありますか?
Q71 LM/TCR併施はどのような例に選択するのがいいでしょうか?
Q72 子宮鏡下子宮内膜焼灼術はレゼクトスコープで可能ですか

コラム:ちょっと ひとこと
 TCRisはバイポーラではない?
 視野角と視野方向
 添付文書の不適切な記述 その1
 ウロマチックSは子宮鏡用の潅流液ではない
 内視鏡学会技術認定 子宮鏡と腹腔鏡の統合を
 視野と視界
 回収と搬出
 添付文書の不適切な記述 その2
 術中に発生する気体は可燃性
 TCRとTURの相違点
 カメラヘッド 被写界深度

著者紹介

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序文

推薦文

子宮筋腫は産婦人科医が日常的に遭遇する疾患である.少子化晩産化の現代においては,いかに子宮を温存して治療し,より良い将来の妊娠出産につなげていくかが取り扱いの鍵となる.このため子宮筋腫核出術の需要が増しており,より優れた手術が期待されている.これまで腹腔鏡下手術の進歩と普及により手術の低侵襲化が進んできたが,まだまだ改善の余地が残されている.子宮鏡をもちいるTCR はそのひとつの答えになると考えられる.TCR は一見シンプルであるが,その奥は深く,適切に技術を習得することにより安全に多くの手術が可能である.シンプルな道具で様々なテクニックを使って筋腫を核出する状況は,相撲取りが多彩な技で相手を負かす状況を想起させる.逆に言うと,しっかりとした基礎の上にひとつひとつの技を着実に習得しないと大怪我をするかも知れない.産婦人科においてTCR の経験がある医師は多いと思うが,どれほどの医師が基礎から上級の技までを系統的に学んでいるだろうか? なんとなく出来ているではその先の進歩が心もとない.本書ではTCR における第一人者である井上滋夫先生が豊富な症例数の経験をもとに基礎的な理論から独自に開発されたテクニックまで余すところなく披露されている.読み進めるうちに,多くの読者が「なるほど,そういうことだったのか」,「そんな手もあったのか」,などと納得しながら引き込まれていくテキストブックとして仕上がっている.本書の特徴である数多くの症例動画では手術を疑似体験しながら理論とテクニックを確認していくことができる.気になる部分は何回も見直して理解を深めていいただけるのではと思う.また,Q&A トラブルシューティングの項では実に多くのクエスチョンに答えていただいており,まさに痒い所に手が届く内容となっている.本書は一人のエキスパートの理論,考え方,テクニック,トラブルシューティングのすべてが詰まっている直伝の書であり,読者にはそれぞれの状況に応じて活用していただき,TCR の世界を広げていただきたいと思う.


2021年8月
日本産科婦人科内視鏡学会 理事長
日本子宮鏡研究会 顧問
東京大学産婦人科学講座 教授
大須賀 穣





自序 ―SSCIとRoBEEMで子宮筋腫治療は進化する

黎明期には一部の熟達者の特殊な術式だった腹腔鏡手術は,機器の発達・改良と技術の向上により,適応が拡大され婦人科領域にも広く普及しました.片や,TCR は婦人科で最も多い子宮筋腫を対象としながらも,かつての腹腔鏡手術のようなminor surgery の扱いに甘んじています.「メスで切り,糸で縫う」古典的手技の延長にない純粋な内視鏡手術であること,教育と技術習得が困難なsolo surgery であること,そして,「適応は小さな粘膜下筋腫」と限定されたこと,これらがTCR の進化と発達を滞らせる枷となっているからです.
TCR は粘膜下筋腫の標準術式となりましたが,「二重シース持続潅流下に隆起腫瘤を切削する」泌尿器科のTUR の慣習と常識から抜け出せず,子宮筋腫のための合理的なスタンダード術式を示すに至っていません.私は3,000件超の子宮筋腫内視鏡手術を手がける中で,TCR の安全と効率を高める「筋腫核剥離向中心切削法」を2008 年より提唱し,適応を拡大し手術の70%をTCR に置き換えるに至りました.本書では,症例数が多い大きなtype2が適応となる安全で効率的で汎用性が高い手法として,SSCI : Single Sheath ContinuousIrrigation(単シース持続潅流)と,RoBEEM : Roller Ball Electrode Enucleation of theMyoma(ロービーム : ローラーボール電極筋腫核出)を紹介します.「スコープのハンドル操作,モニター画面,電気メスの作動音」を同時収録し,安全の担保と効率の確保に必要な基本情報である「電気メスの切開・凝固の選択と通電タイミング」が初学者にも理解できるようにしました.伝えたいのは「匠の技ではなく安全と効率のメソッド」です.
子宮温存を望む患者が増え,近年では腹腔鏡よりもさらに低侵襲なTCR への期待が高まっています.本書のメソッドにより,過多月経,月経困難,不妊の原因となる,ほとんどの子宮筋腫はTCR の適応となります.婦人科内視鏡手術に携わる新進気鋭の若手の皆さんが,帝王切開を要さない筋腫核出術として,尿路損傷リスクのない子宮全摘の代替手術として,TCR の進化を推し進められることを願います.
2021年8月
井上 滋夫