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書籍詳細

難治性下痢症診断の手引き診断と治療社 | 書籍詳細:難治性下痢症診断の手引き
-小児難治性下痢症診断アルゴリズムとその解説-

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「小児期から移行期・成人期を包括する希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」(研究代表:田口 智章) 編集

近畿大学奈良病院 小児科

虫明 聡太郎(むしあけ そうたろう) 責任編集

大阪母子医療センター 臨床検査科

位田 忍(いだ しのぶ) 責任編集

初版 B5判 並製 42頁 2021年10月20日発行

ISBN9784787825254

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定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
  

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「乳幼児において2週間以上続く下痢をきたす疾患」において,様々な病態を理解し鑑別するためのアルゴリズムが,厚生労働科学研究「小児期からの希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」(研究代表:田口智章)の難治性下痢症グループにより作成された.本書は診断アルゴリズムの概要を解説し,そのアルゴリズムに「含まれる疾患」および「含まれない疾患」それぞれの「概念・定義」「症状」「診断」「治療・予後」等を簡潔に解説した実臨床にも役立つ一冊.

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目次

発行に寄せて 清水俊明
発行に寄せて 田口智章
序文 虫明聡太郎・位田 忍
執筆者一覧

緒言 虫明聡太郎
I 難治性下痢症診断アルゴリズムの解説
 1 「乳幼児において2週間以上続く下痢」の診断アルゴリズムと特発性難治性下痢症の定義 虫明聡太郎
 2 病原体検査において病原体が検出される場合 虻川大樹
 3 bacterial overgrowthをきたす背景疾患 米倉竹夫
 4 血便・粘血便・便潜血反応陽性の下痢 新井勝大
 5 絶食で止まらない水様下痢 水落建輝
 6 絶食で止まる水様下痢 虫明聡太郎・工藤孝広
 7 脂肪便 工藤孝広
 8 原因不明の下痢疾患:特発性難治性下痢症 虫明聡太郎
II 疾患各論1:難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:アルゴリズムに含まれる疾患の解説
 1 腸炎後症候群(感染後腸症) 虻川大樹・新井勝大
 2 免疫不全状態 虻川大樹
 3 後天性サイトメガロウイルス感染症 虻川大樹
 4 ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症) 虻川大樹
 5 短腸症候群 米倉竹夫
 6 Hirschsprung病 米倉竹夫
 7 Hirschsprung病類縁疾患 米倉竹夫
 8 自己免疫性腸症・IPEX症候群 本間貴士・虻川大樹
 9 消化管ホルモン産生腫瘍 杉山彰英・土岐 彰
  ❶VIP産生腫瘍
  ❷Zollinger-Ellison症候群
  ❸カルチノイド腫瘍
 10 胆汁酸性下痢症 虫明聡太郎
 11 微絨毛封入体病 江田慶輔・水落建輝
 12 トランスポーター異常症 小西健一郎・水落建輝
  ❶先天性クロール下痢症
  ❷先天性ナトリウム下痢症
  ❸先天性グルコース・ガラクトース吸収不良症
  ❹果糖吸収不全症
 13 刷子縁酵素欠損症 虫明聡太郎
  ❶先天性乳糖不耐症
  ❷ショ糖イソ麦芽糖分解酵素欠損症
 14 シュワッハマン・ダイアモンド症候群 工藤孝広・幾瀬 圭
III 疾患各論2:難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:アルゴリズムに含まれていない疾患の解説
 1 toddler’s diarrhea 虫明聡太郎
 2 ミトコンドリア呼吸鎖異常症腸症 虫明聡太郎
 3 無βリポ蛋白血症 髙木祐吾・水落建輝
 4 アミラーゼ欠損症 新井勝大
 5 エンテロキナーゼ欠損症 工藤孝広
 6 先天性小腸上皮異形成症 本間貴士・虻川大樹
 7 カイロミクロン停滞症 白濵裕子・水落建輝
 8 neurogenin-3遺伝子異常症 虫明聡太郎
 9 代理ミュンヒハウゼン症候群 虻川大樹


巻末資料
難治性下痢症診断アルゴリズム簡易版 工藤孝広・幾瀬 圭

索引

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序文

 平成23(2011)年から当時九州大学小児外科の田口智章先生を研究代表者として始まった厚生労働省班会議「小児期からの希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」において,平成26(2014)年に外科的に治療できない小児の消化器疾患として「先天性吸収不全症」を取り上げていただき,診療ガイドライン作成に向けたグループ研究が立ち上げられたことが,本書編纂の緒である.グループでは,まず小児期に消化吸収不全を症候とする19疾患の症例数調査を行い,平成27(2015)年にわが国において有病患者数の多かった乳児難治性下痢症を含む7疾患について二次調査を行った.しかし,単一の疾患とは異なり,「先天性吸収不全症」は様々な病態と疾患を包含した概念であるために,その診療ガイドラインの作成には至らなかった.
 平成29(2017)年,この活動は厚生労働省班会議「小児期から移行期・成人期を包括する希少難治性慢性消化器疾患の医療政策に関する研究」における「難治性下痢症グループ」に引き継がれた.ここでは,小児期に発症して成人期の難病に移行する政策的医療補助の対象となる疾病の見直しがテーマとなった.難治性下痢症グループでは,小児期に発症して遷延する下痢を診るときに考えられる様々な病態と疾病を系統的に理解し,鑑別するための指針となるべきアルゴリズムとその解説を作成した.本書は,これに基づいて実臨床で遭遇する様々な下痢の病態の理解と診断を進める手助けとなることを願って編纂したものである.
 アルゴリズムの外に位置する「特発性難治性下痢症」とは,診断アルゴリズムで成因診断に行き当たらない小児の慢性下痢症に与えられる用語である.今後,このなかから次世代の新しい診断技術によって新規な疾患原因が発見されることが期待される.また,「特発性難治性下痢症」は特定の病因によらない除外診断であるために,政策医療的には単一疾患として認められていない.本書が将来,この疾患が政策的医療補助の対象となるための根拠を与えるものとなれば幸いである.

2021年9月

近畿大学奈良病院 小児科 教授
虫明聡太郎
大阪母子医療センター 臨床検査科 主任部長
位田 忍