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内科医のための
認知症のBPSD(行動・心理症状)への向精神薬の使い方診断と治療社 | 書籍詳細:認知症のBPSD(行動・心理症状)への向精神薬の使い方

田崎病院副院長・東京医科歯科大学名誉教授

松浦 雅人(まつうら まさと) 編著

田崎病院薬剤室 編集協力

嬉野が丘サマリヤ人病院薬剤室 編集協力

初版 B5判 並製 192頁 2022年11月04日発行

ISBN9784787825629

定価:5,500円(本体価格5,000円+税) 電子書籍はこちら
  

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認知症の患者には,もの忘れ,注意障害といった中核症状に加えて,人によっては,拒絶,不穏,興奮,暴言,暴力,徘徊,性的逸脱行動などの行動症状と,不安,焦燥,抑うつ,幻覚,妄想,誤認などの心理症状がみられる.本書では,こうした多彩な行動・心理症状(BPSD)について,認知症を診察する機会のある医師向けにエビデンスやガイドラインの推奨を示しながら,使用されることの多い向精神薬について情報を整理・紹介した.

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目次

はじめに
本書で参考としたガイドライン等
執筆者一覧

第1章 クリニカルクエスチョン(Q&A)

A 認知症一般 タイプ別に認知症の特徴を確認する
 Q 1 認知症とは?
 Q 2 軽度認知障害(MCI)とは?
 Q 3 せん妄とは?
 Q 4 日常診療で認知症を見逃さないためには?
 Q 5 四大認知症とは?
 Q 6 認知症の重症度分類とは?
 Q 7 アルツハイマー型認知症(AD)の脳病理学的変化とは?
 Q 8 レビー小体型認知症(DLB)の脳病理学的変化とは?
 Q 9 血管性認知症(VaD)は多彩?
 Q10 前頭側頭型認知症(FTD)の脳病理学的変化とは?
 Q11 最も多い認知症とは?
 Q12 混合型認知症とは?
 Q13 若年性認知症とは?
 Q14 仮性認知症とは?
 Q15 回復可能な認知症(treatable dementia)とは?
 Q16 認知症は予防できる?
 Q17 認知症は今後増える?
 Q18 認知症の診療ガイドラインとは?
 Q19 認知機能検査とは?

B 抗認知症薬 認知症の薬の最新情報をフォローする
 Q20 抗認知症薬とは?
 Q21 抗認知症薬の実力は?
 Q22 抗認知症薬の副作用は?
 Q23 抗認知症薬の選択法は?
 Q24 抗認知症薬の剤形による使い分けとは?
 Q25 抗認知症薬は血管性認知症(VaD)に効く?
 Q26 脳血管障害の再発予防薬との併用はできる?
 Q27 前頭側頭型認知症(FTD)には抗認知症薬が効かない?
 Q28 抗認知症薬はいつまで使用する?
 Q29 軽度認知障害(MCI)に抗認知症薬を使用する?
 Q30 認知症患者の服薬アドヒアランスを上げるには?
 Q31 アルツハイマー型認知症(AD)の根本的治療薬(疾患修飾薬)開発の現状は?

C BPSD 認知症から生じるBPSDの基本を確かめる
 Q32 BPSDとは?
 Q33 BPSDにはどんなものがある?
 Q34 BPSDは認知症のどの時期に出現する?
 Q35 BPSDの評価スケールはどのようなものがある?
 Q36 認知症の違いによってBPSDに差異がある?
 Q37 若年性認知症のBPSDには特徴がある?
 Q38 BPSDへの対応の原則とは?
 Q39 BPSDの非薬物的アプローチとは?
 Q40 家族・介護者をサポートするには?
 Q41 身体拘束・行動制限とは?

D BPSDの薬物療法 向精神薬やその他の薬剤を用いる際の基本原則を理解する
 Q42 抗認知症薬はBPSDに効果がある?
 Q43 抗認知症薬がBPSDの悪化要因となる?
 Q44 DLBには薬剤過敏性がある?
 Q45 BPSDに対する向精神薬使用の実態は?
 Q46 適応外処方の保険診療上の取り扱いは?
 Q47 BPSDの向精神薬療法の目標は?
 Q48 ベンゾジアゼピン系薬物は認知症を誘発する?
 Q49 抗精神病薬は死亡率を上昇させる?
 Q50 BPSDに用いられる抗精神病薬は?
 Q51 抗精神病薬はいつ中止する?
 Q52 BPSDに用いられる気分安定薬/抗てんかん薬は?
 Q53 BPSDに用いられる抗うつ薬は?
 Q54 BPSDに用いられる睡眠薬は?
 Q55 BPSDに用いられる漢方薬は?
 Q56 頓用薬の使用法は?
 Q57 向精神薬で副作用被害救済が申請されるのはどんな場合が多い?
 Q58 認知症と誤嚥性肺炎の関係は?
 Q59 嚥下障害・誤嚥性肺炎に関連する薬剤は?
 Q60 向精神薬の併用に関する診療報酬上の取り扱いは?
 Q61 ベンゾジアゼピン系薬剤に制限はあるか?

E 併存疾患 認知症とともにみられる症状を知って備える
 Q62 高齢者にとくに慎重な投与を要する薬剤とは?
 Q63 高齢者にベンゾジアゼピン系薬剤の使用が許容される場合とは?
 Q64 薬剤起因性の認知機能低下とは?
 Q65 抗コリン薬は認知症を誘発するか?
 Q66 抗コリン薬は緑内障に禁忌か?
 Q67 認知症とてんかんの関係は?
 Q68 認知症と糖尿病の関係は?
 Q69 NSAIDsと認知症の関係は?
 Q70 スタチンと認知症の関係は?
 Q71 消化器疾患治療薬と認知症の関係は?
 Q72 循環器疾患治療薬と認知症の関係は?
 Q73 腎障害・透析例への注意点とは?
 Q74 重篤な肝障害例への注意点とは?
 Q75 認知症のポリファーマシー(多剤併用)の問題点とは?
 Q76 認知症高齢者では薬物投与の副作用が生じやすい?

F 社会資源 認知症の人と家族を支える仕組みを把握する
 Q77 認知症疾患医療センターとは?
 Q78 認知症初期集中支援チームとは?
 Q79 かかりつけ医あるいは認知症サポート医に期待される役割とは?
 Q80 成年後見制度とは?
 Q81 認知症の人の運転適性とは?
 Q82 認知症の人および家族の法的責任とは?
 Q83 自立支援医療とは?
 Q84 医療保護入院とは?
 Q85 認知症ケア加算と精神科リエゾンチーム加算とは何か?
 Q86 認知症カフェとは?
 Q87 介護保険と要介護認定とは? 
 Q88 介護保険の主治医意見書とは?

第2章 各種のBPSDに対する治療法

A BPSDの心理症状
 1 不安・焦燥
 2 幻覚・妄想
 3 易怒性・攻撃性・衝動性
 4 アパシー(無為・無関心)
 5 脱抑制・多幸
 6 抑うつ・希死念慮
 7 夜間不眠・日中傾眠

B BPSDの行動症状
 1 不穏・興奮(いわゆる過活動性BPSD)
 2 大声・暴言・暴力
 3 拒絶(拒薬・拒食・介護拒否)
 4 徘徊・周遊・常同行動
 5 食行動異常(不食・過食・異食・盗食)
 6 脱衣・性的逸脱行動
 7 過干渉・まとわりつき
 8 濫集・溜め込み
 9 不潔行為・弄便

C せん妄
 1 夕暮れ症候群(sundowning syndrome)
 2 せん妄

第3章 BPSDに用いる向精神薬

A 抗認知症薬
 1 ドネペジル(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬〈AChE-I〉)
 2 ガランタミン(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬〈AChE-I〉)
 3 リバスチグミン(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬〈AChE-I〉)
 4 メマンチン(NMDA受容体拮抗薬)

B 抗精神病薬
 1 リスペリドン
   その他のSDA
 2 クエチアピン
   その他のMARTA
 3 アリピプラゾール
 4 ブレクスピプラゾール
 5 ハロペリドール

C 気分安定薬/抗てんかん薬
 1 バルプロ酸
 2 カルバマゼピン
   その他の抗てんかん薬

D 抗うつ薬
 1 エスシタロプラム
 2 セルトラリン
   その他のSSRI
 3 デュロキセチン
   その他のSNRI
 4 ミルタザピン
 5 ミアンセリン
 6 トラゾドン

E 睡眠薬
 1 ラメルテオン
 2 スボレキサント
 3 レンボレキサント
 4 エスゾピクロン
   その他のベンゾジアゼピン受容体作動薬(Z薬)

F 漢方薬
 1 抑肝散(54)
 2 抑肝散加陳皮半夏(83)
 3 黄連解毒湯(15)
 4 半夏厚朴湯(16)
 5 人参養栄湯(108)
 6 加味帰脾湯(137)

付 録
 1 BPSDに使用する薬剤
 2 BPSDに使用する薬剤の剤形・用量
 3 BPSDに使用する薬剤の薬物動態
 4 肝障害・腎障害例への投与

索引

Column
①最初に報告されたアルツハイマー病患者アウグステ・D
②アミロイドβを脳内から排泄するグリンパティックシステム説
③麻薬及び向精神薬取締法
④高齢者の処方量に制限のある向精神薬
⑤喫煙と認知症
⑥コーヒー・緑茶・紅茶と認知症
⑦患者・家族は処方能力の高い精神科医を望んでいる
⑧ビタミンと認知症
⑨食事と認知症
⑩レーガン大統領とサッチャー首相の認知症
⑪最初に報告されたレビー小体型認知症患者
⑫精神的葛藤のない地域ではBPSDが生じない?
⑬アルコールと認知症
⑭介護訴訟の増加
⑮スウィフトのガリバー旅行記に描かれた認知症「ストラルドブラグ」
⑯ドン・キホーテはレビー小体病?
⑰哲学者カントは前頭側頭型認知症(FTD)?

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序文

はじめに

現在,日本にはおおよそ600万人の認知症患者がいるといわれる.すべての認知症に共通してみられる物忘れや注意障害などの中核症状に加えて,認知症には拒絶,不穏,興奮,暴言,暴力,徘徊,性的逸脱行動などの行動症状と,不安,焦燥,抑うつ,幻覚,妄想,誤認などの心理症状(精神症状)がある.これらの行動および心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)は,中核症状以上に患者の生活の質(QOL)を低下させ,介護者の負担を増大させ,入院あるいは施設入所の要因となる.
各種の認知症治療ガイドラインには,BPSDに対して非薬物療法を優先させ,やむを得ないときに薬物療法を行うことが推奨されている.しかし実臨床の現場では,目の前に緊急性を要する興奮や易怒性などのBPSDを示す患者がいて家族が疲労困憊している状況で,どのような非薬物療法を行えばよいのかと戸惑うことが少なくない.
認知症に適応をもつ薬剤は,アセチルコリン増強作用をもつアリセプト,ガランタミン,リバスチグミンと,グルタミン拮抗作用をもつメマンチンの計4剤しかない.向精神薬は認知症に適応をもたないためBPSDに向精神薬を使用することは適応外処方となる.最高裁判決では医師は特段の合理的理由がないかぎり添付文書に従って処方を行わなければならず,適応外使用は基本的に義務違反となる.
しかし,医師が医学的・薬学的なエビデンスに基づいた合理的理由を立証できれば責任を問われない可能性がある.すなわち,認知症に向精神薬を使用する際には,認知症診療ガイドラインに記載されているか,認知症に有効性を示す論文があるなどのエビデンスを提示できる知識が求められる.
2011年に厚生労働省はクエチアピン,ハロペリドール,ペロスピロン,リスペリドンといった抗精神病薬について,「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対して処方した場合,当該使用事例を審査上認める」と「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」を発出した.適応外処方であっても,レセプト審査において保険償還を認めると通知したわけである.
さらに,2016年には厚生労働省研究班が「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」(第2版)を公表した.そこでは認知症の通院患者においても,適応外使用に関するインフォームドコンセントが得られている場合に,抗精神病薬,抑肝散,気分安定薬,抗うつ薬,抗不安薬,睡眠導入薬の使用を考慮するとした方針を公表した.認知症に向精神薬を使用するときは標的症状を明確にし,適切な時期に適切な用量を短期間用いることが望ましい.
認知症高齢者はさまざまな身体疾患や精神神経疾患を合併し,すでに多剤を服用している例が多い.BPSDに向精神薬を使用するときは患者の背景疾患に応じて薬物相互作用に関する知識も必要とされる.本書ではBPSDに使用されることの多い向精神薬について,認知症を診察することのある医師が知っておくべき向精神薬の情報を整理して伝えることを目的とした.発刊時点で最新の情報を提供するように努めたが,薬剤情報は日々更新されており読者は折に触れて薬剤添付文書に目を通すことを勧めたい.

2022年10月 松浦雅人