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総合診療で診逃さない!むくみの原因とピットフォール診断と治療社 | 書籍詳細:総合診療で診逃さない!むくみの原因とピットフォール

沖縄県立中部病院 総合内科

金城 光代(きんじょう みつよ) 編著

今村総合病院 救急・総合内科

西垂水 和隆(にしたるみず かずたか) 編著

初版 A5判 並製 368頁 2022年12月21日発行

ISBN9784787825773

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定価:6,270円(本体価格5,700円+税)
  

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1冊まるごと,むくみ診療! 74の症例と写真から学ぶむくみ診断の問題集!
症例を「鑑別に注意」「病態に注目」「覚えておきたい疾患」の3つに分類し,難易度を★~★★★で明記.まず考えることから鑑別の流れ,診断,治療・経過の順に解説.最後にポイントとピットフォールをまとめました.アルゴリズム通りにいかない……むくみの奥深~い世界の臨床像を解き明かす指南書!

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目次

執筆者一覧
序文  金城光代,西垂水和隆
略語一覧

第1章 総論
1 病態から考えるむくみ  金城光代
2 病歴・身体所見のとり方  西垂水和隆
3 浮腫の検査  西垂水和隆
4 画像診断  吉田 剛
5 浮腫の治療(利尿薬の使い方,リンパ浮腫のマネージメント)  須藤 航
6 難治性浮腫へのアプローチ  西垂水和隆

第2章 下肢のむくみ
 下肢浮腫に対する実践的アプローチ
1  痛み・発赤を伴う浮腫  矢野裕之
2  皮下出血と圧痛を伴う片側下肢のむくみ  須藤 航
3  激痛を伴う下腿浮腫  須藤 航
4  痛みが先行する発赤を伴う浮腫  矢野裕之
5  急性発症の右大腿部腫脹  金城光代
6  体重減少のある下腿浮腫  西垂水和隆
7  若い女性の四肢の浮腫  板金正記
8  紫斑と痺れを伴う浮腫  矢野裕之
9  褐色調の浮腫  金城紀与史
10 息切れのある両下腿浮腫  金城紀与史
11 原因を明かさない浮腫  市來征仁
12 癌患者の浮腫  西垂水和隆
13 筋肉痛を伴う非圧痕性浮腫  板金正記
14 Parkinson病治療中患者の浮腫  原瀬翔平
15 肥満女性のむくみ  金城紀与史
16 周期的に繰り返す浮腫  西垂水和隆
17 左に強い両側下肢腫脹  金城光代
18 利尿薬不応性の浮腫  板金正記
19 疼痛を伴う慢性下肢浮腫  伊藤加菜絵
20 右から左へ広がる浮腫  西垂水和隆
21 排膿を伴う浮腫  吉田 剛

第3章 上肢のむくみ
 上肢浮腫に対する実践的アプローチ
22 入院患者の痛みを伴う関節周囲の浮腫  吉田 剛
23 過剰な上肢の運動後の腫脹  金城光代
24 急性発症の左上肢浮腫  西垂水和隆
25 全介助の人の片側浮腫  原瀬翔平
26 るい痩患者の上肢浮腫  西垂水和隆
27 若い女性の手背の痛みと腫脹  金城光代
28 脳梗塞後に生じる手足の痛みとむくみ  原瀬翔平
29 痺れのない非圧痕性のむくみ  金城光代
30 両手の関節痛と発赤を伴うむくみ  吉田 剛
31 高齢者の手背の圧痕性浮腫  吉田 剛
32 爪周囲の変化が目立つ手指のむくみ  吉田 剛
33 爪の所見がヒントになるむくみ  西垂水和隆
34 ラインが入っている人のむくみ  矢野裕之
35 痺れを伴うむくみ  原瀬翔平
36 Raynaud症状を伴う手のむくみ  須藤 航
37 手背に浮腫がない上肢のむくみ  金城光代

第4章 全身のむくみ
 全身浮腫に対する実践的アプローチ
38 腹部膨満が目立つ全身浮腫  板金正記
39 寝たきりの人の体幹・背部の浮腫  畠中成己
40 全身真っ赤なむくみ  須藤 航
41 比較的急な体重増加を伴う非圧痕性浮腫  矢野裕之
42 薬剤が効かないむくみ  矢野裕之
43 輸液中に出現した浮腫  須藤 航
44 原因不明の浮腫と漏出性胸水  西垂水和隆
45 陰嚢の浮腫  板金正記
46 呼吸困難を伴う浮腫  西垂水和隆
47 腹部膨満  西垂水和隆
48 経管栄養開始後のむくみ  須藤 航
49 急性発症の顔面を含む全身性浮腫  須藤 航
50 急性呼吸不全を伴う全身性浮腫  須藤 航
51 妊娠中の浮腫  西垂水和隆

第5章 顔面のむくみ
 顔面浮腫に対する実践的アプローチ
52 頭痛を伴う眼瞼浮腫  西垂水和隆
53 眼のむくみ  西垂水和隆
54 発熱を伴う眼瞼浮腫  西垂水和隆
55 口唇浮腫も伴う顔面の浮腫  板金正記
56 慢性呼吸不全に伴う浮腫  西垂水和隆
57 意識障害を伴う顔面浮腫  板金正記
58 眼瞼の腫脹  矢野裕之
59 頸部の腫れ・むくみ  金城光代
60 呼吸困難を伴う口唇浮腫  金城紀与史
61 長期喫煙者の顔面のむくみ  矢野裕之
62 口唇のむくみ  矢野裕之

第6章 小児のむくみ
63 頸部腫れ  吉年俊文
64 顔面・耳下腺腫脹  吉年俊文
65 全身浮腫(陰嚢)  吉年俊文

第7章 複合的な原因によるむくみ
66 凹凸のある皮膚と両下肢の浮腫  金城光代
67 両下肢と顔面にみられる浮腫  西垂水和隆
68 色素沈着を伴うむくみ  金城紀与史
69 眼瞼のむくみと発赤  金城光代
70 赤黒いむくみ  金城紀与史
71 入院中のむくみ  金城紀与史
72 紫斑を伴う浮腫  大塚 暢
73 利尿薬無効の浮腫  大塚 暢
74 尿閉を伴う浮腫  大塚 暢

索引

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序文

 むくみ(浮腫)は頻度の高い主訴である.一般的には,片側・両側,圧痕性・非圧痕性,というフレームワークに従って全身性か局所性か鑑別を考えていけばよい.ところが,むくみのむずかしさは単一の疾患では説明できないことが多い点である.すなわち,むくみは複数の背景疾患の組み合わせが互いに干渉し合いながら表現する動的な臨床像を示している.むくみ診療が全身性か局所性かを考えて始まるにもかかわらず,慢性心不全(全身性)に下肢の静脈還流不全(局所性)を合併しているのはよくあることで,アルゴリズムの通りにいかない.
 むくみの面白さは,病歴と身体診察を行き来しながらその臨床像を解き明かしていく点である.診察時には,症状の動的な変化を静的・横断的な特徴で捉えている.検査所見が加わってもあまり鑑別診断が変わらない.例をあげてみる.蜂窩織炎疑いとして紹介された若い男性が前日からの手背のむくみと発赤を主訴に来院した.なぜ上肢の蜂窩織炎をきたしたのかおかしいと感じて,蜂窩織炎ミミックスの一つである関節炎を鑑別として考慮し,患者本人の訴えはないものの足関節周囲腫脹・炎症の所見があったとしたら,どう考えるだろうか.これは淋菌性関節炎を想起したから関節炎の所見を捉えるためにほかの身体診察を行ったのであって,炎症反応上昇が判断を変えたのではない.病歴と身体診察に基づいた臨床推論がすべてである.
 むくみはその特性上,時間軸を入れた症状・所見の変化をフォローすることが重要である.原因を一つに絞りきれない場合,特に中高年以上では複数の組み合わせでむくみを生じていることのほうが多い.時間をかけて具体的な変化を追うことで病態が理解でき,適切な治療介入の時期も判断できる.遭遇する例としては,慢性腎臓病と慢性心不全があり長期利尿薬投与されている高齢患者の両側下腿浮腫に対して,アムロジピン中止は奏効しないが,塩分制限をしっかり行ってもらったら改善し,患者からも感謝される場合で,病態と原因となりうる複数の可能性について吟味しながらフォローすることが大切である.このような経験は臨床医の日常診療で喜びとなる瞬間である.
 本書の構成は,総論にて浮腫の考え方を病態・臨床・画像・治療という軸でまとめた.各論は下肢・上肢・全身・顔面の浮腫・複合的な浮腫という枠で紹介している.各論は実臨床で出会った症例集である.ぜひ読者の皆様にも自分が診療していると想定しながら診断を考えていただきたい.実臨床の診断の流れが順守できるよう,ケースサマリーのあと,可能な限り写真を供覧し,現病歴・身体所見・基本検査を提示している.ここでページ右下に「診断は?」という矢印が出てくるので,想定する鑑別診断をあげていただきたい.次のページでは,まず考えること,鑑別の流れ,診断,治療・経過という流れで構成されている.各症例の難易度を★1~3つで表示し,「鑑別に注意」「病態に注目」「覚えておきたい疾患」のマークをつけている.それぞれの症例で学ぶポイントまたはピットフォールを最後に示している.
 むくみの各症例に基づいて塩水の動きや局所のコンパートメントの動き,時間軸の動的なむくみの病態・臨床像を考えながら,本書を通じてむくみの面白さを実感し,日々の臨床で少しでもお役立ていただければ幸いである.ご協力いただいた患者の皆様に深謝申し上げたい.

金城光代


 この本の話をいただいたときに頭に浮かんだのは,自分には最初原因がすぐにわからなかった浮腫の患者たちだった.
 足背の浮腫だけで受診した患者(実際は痺れもあった)では,熱や炎症反応がない血管炎(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)が浮腫の原因だった.
 Raynaud症状のない全身浮腫で受診した患者では,puffy hand症候群ではあったが顔も手足もむくんでいて,抗核抗体も40倍で,強皮症を鑑別にあげることができなかった.
 そのほか,片側性の漏出性胸水なのにアミロイドーシスだった患者,頻度は最も高いが超音波検査を依頼しても正常といわれる慢性静脈不全の患者,慢性咳嗽で受診し徐々にむくんできたTAFRO症候群,不明熱と治療抵抗性の全身浮腫を呈したCastleman病,いつの間にか麻痺になっていたが浮腫で気づかされた脳梗塞,訴えのない寝たきり患者の密かな骨折,膝の関節炎より末梢の浮腫などが思い浮かぶ.
 浮腫の原因が心臓・腎臓・肝臓以外にもこんなにいろいろあるなら,それは知っておいたほうがよく,それならこの本の意味もあるかもしれないと思った.
 今回この企画の一部を担当させていただいてから,浮腫への見方が変わってきた.
 同じ寝たきりの患者の下腿浮腫でも,下腿後面だけにあるdependent edemaなのか,前脛骨まで及んでいるのか?顔面浮腫でも上眼瞼なのか下眼瞼なのか?非圧痕性浮腫に圧痕性浮腫が加わっているのでは?など,病態を考えながら身体所見をとるようになった.
 多くの症例で複合的な要因があるため,1対1の病態では説明できないことがほとんどであろうが,様々な原因を考慮できるようになれたかと思う.
 たかが浮腫という気もするが,これをきっかけに診断され,全く異なる治療で改善する疾患もある.内科医の取る一つの大事な症候として捉えられるようになるとよいと思う.

西垂水和隆