てんかん専門医として長年治療に携わっている著者の豊富な経験に基づき,小児てんかんの薬物治療について丁寧に解説した実践書.診療現場ですぐに役立てられるようポイントを見やすくチャートと表にまとめ,実際の治療手順を実感できるよう症例を多数掲載した.また,治療についてのみでなく,学校への対応や公費負担制度など小児てんかん患者の生活を支援する内容も盛り込んだ充実の一冊.
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目次
序 文
表・チャート一覧
てんかん治療の流れ
本書で扱う抗てんかん薬について
第1章 てんかんの治療の概説
1 てんかんの治療方針
2 てんかんの薬物治療の具体的手順
3 薬物治療と実際の手順
4 治療における私の処方の工夫
第2章 薬物療法の実際―治療開始と薬の動かし方
1 薬剤選択
2 分服,配分
3 開 始
4 増 量
5 外来での薬の増量
6 外来での薬の減量
7 多剤併用時の注意―合理的な多剤併用療法
第3章 薬物治療がうまくいかない場合の対応
1 薬物治療がうまくいかない場合の基本的検討
2 不適切な薬物療法の原因
3 不適切な治療の鑑別と対応
4 真の薬剤抵抗性てんかん
5 真の薬剤抵抗性てんかんへの対応
第4章 薬物動態と血中濃度モニター
Ⅰ 薬物動態
1 薬理学的な考慮のまとめ
2 抗てんかん薬の処方に必要な薬理項目とその意義
3 薬物動態に影響を与える要因
4 血中濃度の解釈で注意すべきこと
5 開始時,中止時に注意すべき薬
6 抗てんかん薬の睡眠に対する影響
Ⅱ 抗てんかん薬の血中濃度モニター
1 どんな場合に検査すべきか
2 検査時期と検査時間
第5章 抗てんかん薬の作用機序とその応用
1 抗てんかん薬の作用機序と臨床的効果
2 作用機序の臨床応用
3 作用機序の臨床応用における注意
4 興奮抑制の作用機序
5 抑制増強の作用機序
第6章 発作性のエピソード
1 てんかん発作とまぎらわしい突発的症状
2 小児期のてんかん以外の発作性疾患
3 乳幼児期のけいれん性疾患と鑑別
4 てんかんと間違われやすいおもな疾患
第7章 ILAEのてんかん症候群
Ⅰ 新生児期~幼児期
1 自然終息性新生児けいれん,自然終息性家族性新生児てんかん
2 自然終息性家族性乳児てんかん,自然終息性非家族性乳児てんかん
3 早期ミオクロニー脳症(EME)
4 大田原症候群
5 West症候群(点頭てんかん)
6 Dravet症候群
7 乳児ミオクロニーてんかん(乳児良性ミオクロニーてんかん)
8 遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん
9 非進行性疾患のミオクロニー脳症
10 熱性けいれんプラス(FS+),熱性けいれんプラスを伴う素因性てんかん(GEFS+)
Ⅱ 小児期
1 ミオクロニー脱力発作てんかん
2 眼瞼ミオクロニーを伴うてんかん
3 Lennox-Gastaut症候群
4 小児欠神てんかん
5 ミオクロニー欠神てんかん
6 Panayiotopoulos症候群
7 小児後頭葉てんかん(Gastaut型)
8 光過敏性後頭葉てんかん
9 中心側頭部棘波を示す小児てんかん
10 中心側頭部棘波を示す非定型小児てんかん
11 徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症
12 Landau-Kleffner症候群
13 常染色体優性夜間前頭葉てんかん
Ⅲ 青年期/成人期
1 若年欠神てんかん
2 若年ミオクロニーてんかん
3 全身性強直間代発作のみを示すてんかん
4 聴覚症状を示す常染色体優性遺伝性てんかん
5 その他の家族性側頭葉てんかん
Ⅳ 種々の年代
1 多様な焦点を示す家族性焦点性てんかん
2 反射てんかん
3 進行性ミオクローヌスてんかん
4 症候性全般てんかん
第8章 潜因性・症候性焦点性てんかん
1 前頭葉てんかん
2 側頭葉てんかん
3 頭頂葉てんかん
4 後頭葉てんかん
5 持続性部分てんかん
6 補 遺
第9章 小児の良性けいれん
1 熱性けいれん
2 泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)
3 良性乳児けいれん
4 軽症胃腸炎関連けいれん
5 早期乳児良性ミオクローヌス
6 叩頭(head banging)
7 身震い発作(shuddering attack)
8 点頭けいれん(spasmus nutans)
9 過剰驚愕症(hyperekplexia)
10 小児良性発作性めまい
11 マスターベーション
第10章 重症心身障害児(者)におけるてんかん治療
1 重症児(者)のてんかん治療の問題点
2 重症児(者)施設でのてんかん治療における有利・不利
3 脳 波
4 重症児(者)のてんかんへの対応―薬の選択
5 薬の使い方
6 重症児(者)施設におけるてんかん治療マニュアル
第11章 治療終結・抗てんかん薬の断薬
1 発作の抑制と断薬後の再発
2 断薬開始のめやす
3 断薬の準備―断薬可能か否かの検討
4 断薬の手順―実際の断薬方法
5 断薬後の再発とフォローアップ
第12章 てんかんと学校生活
1 学校が知りたい情報,指示書とそれに対する記載内容
2 返答のために必要な事項
3 発作に対する対応
4 学校で制限が必要なこと
第13章 けいれん発作時の救急薬
1 家庭,学校での対応
2 外来や病棟で長引くけいれんを止めるためのワンショット静注
第14章 てんかん治療における迷信・誤解
1 てんかん児ではグレープフルーツ,グレープフルーツジュースはすべて禁止か?
2 てんかん児では抗ヒスタミン薬はすべて禁止か?
3 DZP坐薬で今起こっている発作を止められるか?
4 熱性けいれんで解熱剤を使うと,また熱が上がるときにけいれんが起こるので使ってはいけないか?
第15章 小児のてんかんにかかわる公費負担制度
索 引
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序文
序 文
私が国立精神・神経センター武蔵病院(現在の国立精神・神経医療研究センター病院)の常勤にしていただいて外来でてんかん診療をはじめたとき,二つの点で大変困った.一つは病棟ではWest症候群やLennox-Gastaut症候群のような難治てんかんばかり受けもっていたので,普通のてんかんに対してどの薬からはじめたらよいかわからなかった.もう一つは,お辞めになった前任者からてんかん患者を多数引き継いだが,難治てんかんばかりで発作は全く止まらなかった.つまり,よくある普通のてんかんも難治てんかんも治療できなかった.必死にいろいろな本や文献を読んだが,あまり具体的でなく,また書いてあることはあてはまらないことも少なくなかった.
四苦八苦しているうちに,初期治療がうまくいき,また難治てんかんでもたまに止まることがあり,楽しくなって,てんかんの専門家を目指したわけではないのに,いつの間にかてんかんを専門にして現在に至っている.
国立精神・神経センターでは非常に多くの患者を診療させていただき,たくさんの経験をさせていただいた.その経験をお伝えし,これからてんかん診療をはじめる若手医師,てんかん診療にかかわる非専門医,そして中堅以上の方々にもお役に立てるように,自分の初期の経験からてんかん治療に関してこういう本があったらいいな,という考えで作成した.通読するのではなく,実際の診療にすぐその場で役立つように,困ったときにその部分を開いて役立つように,多くの表にまとめた.また,治療手順を実感していただくためには症例が不可欠であるので,個人情報保護のためにてんかん治療に不可欠な発作症状,脳波,治療経過以外は変更して,多くの症例を入れた.なお,通常はてんかんの診断と治療は発作間欠期の脳波を元に行うので,脳波は基本的には発作間欠期のものを示した.
本書はてんかん治療を目指しているが,治療に必要な診断等に関することも入れてあり,また,小児てんかんと
謳っているが,小児期発症で成人に至った例や項目も入れてある.
本書が少しでも先生方のお役に立ち,少しでも子どもたちのてんかんがよくなり,本人およびご家族のお役に立てれば幸いです.
最後に,小児神経に,てんかんにお導きいただいた恩師,元国立精神・神経センター武蔵病院長 有馬正高先生に本書を捧げます.また多数の経験をさせていただいた指導医,同僚,レジデントの諸先生,そして患者およびご家族の皆様に深く感謝申し上げますとともに,本書の発刊にご尽力いただいた診断と治療社の皆様にも感謝申し上げます.
2020年12月
須貝研司