自作の質問紙(アンケート用紙)を用いて,これから調査研究をはじめようとする看護・福祉・医療系スタッフ,また学生向けに書かれたわかりやすいワークブック.最初から順序良く読み進めながら,みずからの研究テーマに沿って書き込んでいけば,よりよい質問紙作成のノウハウと基本的なルールが自然と身につくように構成されている.聞きたいことをきちんと対象者に聞ける質問紙を作りたい方,必携の書.巻末付録:コピーして使える質問項目作成ワークシート.
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目次
著者プロフィール
序 文
第1章 質問紙をみてみよう
1.1 標準化されている質問紙の例~SF―36 v2TM
1.2 標準化されている質問紙の例~ピッツバーグ睡眠質問票日本語版
1.3 筆者作成の質問紙の例~PsDS
第2章 質問紙を用いた調査について理解しよう
2.1 どのような研究で質問紙を使う?~研究目的と研究デザイン
1 実態の把握
2 要因の特定
3 介入効果の検討
2.2 どのような方法で対象者を選定する?~サンプリング
1 全例調査vs.標本調査
2 簡便法
2.3 どのような方法で質問紙を配布し回収する?~データ収集方法
1 配布方法(手渡し・郵送法)
2 回収方法(その場で直接回収・回収箱で後日回収・郵送法)
3 配布・回収時の困りごとをなくすために
2.4 どの質問紙を使用する?~質問紙の選定
1 一般に広く使われている質問紙の利点と欠点
2 独自作成の質問紙の利点と欠点
2.5 どのような点に気をつけて質問紙を作る?
1 質問紙の構成(教示文,質問文,回答の選択肢)
2 研究目的,対象者と質問文の関係
3 わかりやすい質問文を作るための約束事
2.6 どのようにして測定したいことを明確にする?~操作的定義
1 研究目的と変数との関係
2 概念,操作的定義と質問文との関係
2.7 どのようにして質問文の数を決定する?~単一項目と複数項目(尺度)
1 単一項目と複数項目(尺度)の利点と欠点
2 複数項目を作成するときの概念的枠組みの作り方
2.8 どのようにして回答の選択肢を作る?
1 回答の選択肢の種類の説明
2 回答の選択肢,得られるデータと統計解析の関係
第3章 質問紙を自分で作ってみよう
3.1 この章の使い方を理解しよう
1 この章の使い方
2 3つの質問紙の作成過程
3.2 調査の枠組みを決めよう~研究目的と研究デザインの明文化
1 何のために研究を行うのか
2 どのような型の研究に質問紙を使うのか
3.3 調査の対象者を決めよう~サンプリング
1 誰について知りたいのか
2 どのようにしてアクセスするのか
3.4 質問紙の配布と回収の方法を決めよう
1 調査対象集団に何回アクセスが可能か
2 配布方法と回収方法に見合った教示文を考えよう
3.5 質問紙に含める項目を書き出そう
1 対象者の背景情報について
2 対象者の行動面について
3 対象者の身体面について
4 対象者の心理面について
5 対象者の社会面について
3.6 質問紙に含める項目の内容をよく考えよう
1 対象者の背景情報について
2 対象者の行動面について
3 対象者の身体面について
4 対象者の心理面について
5 対象者の社会面について
3.7 質問文を作ろう
1 対象者の背景情報について
2 対象者の行動面について
3 対象者の身体面について
4 対象者の心理面について
5 対象者の社会面について
3.8 質問文の数を決定しよう
1 単一項目vs.複数項目(尺度)
2 対象者の背景情報について
3 対象者の行動面について
4 対象者の身体面について
5 対象者の心理面について
6 対象者の社会面について
3.9 質問文を精練しよう
3.10 回答の選択肢を作ろう
1 集めたデータのまとめ方を考えておこう
2 1で考えたデータのまとめ方から候補となる回答の選択肢
3 回答の選択肢例
第4章 データをまとめよう
4.1 対象者の背景情報は必ずまとめよう~記述統計
1 質問紙上の回答確認とコード化
2 データ入力
3 対象者の背景情報のまとめ方
4.2 単一項目と複数項目のまとめ方の違いを理解しよう
1 単一項目
2 複数項目
4.3 研究目的別にまとめ方をみてみよう
1 実態の把握
2 要因の特定
3 介入効果の検討
4.4 図・表の作成
1 記述統計の結果:図の作成
2 統計解析(検定)結果:表の作成
付録:質問項目作成ワークシート
索 引
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序文
『看護・医療系研究のためのアンケート・面接調査ガイド』の上梓から約3年が経ちました.今日まで多くの方にご活用いただき,著者として大変嬉しく思います.
本書は,診断と治療社の土橋氏・川口氏,前回の共著者である齋藤氏が「さらに読者のお役に立てる何かができないか」と話し合いを重ねて企画されました.私は,常々,質問紙の作成や集計は手軽で簡単と多くの方が考えられているなあと感じていましたので,執筆のお話をいただいた時は,これも何かのご縁と,お引き受けいたしました.
世の中には数え切れないほどのアンケート用紙,質問紙,尺度とよばれるものが存在します.(私も尺度を作成し,世に送り出している者の1人ですが)聞きたいことをきちんと聞くことができる,つまり著作者の意図通りに,対象者が質問文を理解し,回答を返してくれるような質問紙は案外少ないものです.質問紙の作成は,研究計画を立案する段階から始まっています.「何を目的に,誰に,どのような内容を尋ねる必要があるのか,そして収集した回答をどのように集計,統計解析するのか」が定まっていませんと,質問内容や回答の選択肢を詰めて考えていくことができません.さらに,よりよい質問紙作成のためにはルールがあります.それを押さえながら,常に「こう尋ねたら,どう回答してくるか」といった対象者の思考をシミュレーションしながら作成することも大切です.
本書は,これから質問紙作成を自分でやってみようと考えている医療・保健・福祉従事者や学生向けに書かれたワークブックです.まず,既存の質問紙の例を3つ示します.比較してみるとおもしろいでしょう.先述の通り,「質問紙作成は研究計画立案時から」と考えていますので,質問紙調査実施に必要と思われる研究デザインについて簡単に解説しています.次に,質問紙作成の過程(研究目的の設定から回答の選択肢の決定まで)を10のセクションに分けて解説し,全セクションを1つずつワークできるように工夫をしました.さらに,データのコード化,Excelを使ってのデータのまとめ方を解説し,アメリカ心理学会のAPAマニュアル(第6版)に沿った図表の作成例を紹介しています.本書を通して,よりよい質問紙の作成方法に出会っていただけましたら,筆者として幸甚です.
最後になりましたが,本書の企画にご協力いただきました齋藤友博先生,筆の遅い私を温かく見守ってくださり,適切なご助言をくださいました,診断と治療社編集部の土橋幸代氏,川口晃太朗氏に心から感謝いたします.
2014年6月
土屋 雅子