1909不随意運動の診断と治療 改訂第2版
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33第2章不随意運動の診かたはじめに 不随意運動(または異常運動)について学ぼうとするときに一番の障害になる点はその用語の多さと実際の運動を診ることの困難さであろう.本書は実際の動画を見ながら学べる点が特色であるが,まず,用語の定義に親しんでおく必要がある.本書では,運動障害(movement disorder)とは,“脱力によらずに,随意または自動運動が過剰になるか過小になる病態”を指すこととしたい.前者は運動過多(hyperkinesia)といい,しばしば,(広義の)ジスキネジア(dyskinesia)や異常運動または不随意運動(広義)とも呼ばれる.振戦(tremor),舞踏症(chorea),アテトーゼ(athetosis),バリズム(ballism),ジストニア(dystonia),(狭義の)ジスキネジア(dyskinesia),ミオクローヌス(myoclonus),チック(tic),筋痙攣・スパズム(cramp,spasm).心因性(psychogenic)運動障害,その他に大別される.脳卒中後などの痙縮(spasticity)は,主働筋と拮抗筋の共収縮などジストニアと共通する特徴をもつため本書では運動障害に含める.また,心因性は従来上記の特徴や病態に合致しないからという理由で診断がなされることが多かったが,決して「気の病」ではなく,何らかの生物学的な背景が考えられているものもある.したがって,積極的に共通する臨床的特徴を認識することにより診断されるべきであり,治療可能な例も少なくないため,本総論では別途扱う. 運動が過小になる病態(運動過小または広義のhypokinesia)については,運動が現象として少なくなる寡動(paucity of movement)という表現のほか,hypokinesiaという用語が運動の振幅の減少という意味にも用いられ,その他bradykinesia(運動緩慢)やakinesia(無動)という表現も用いられる.これら運動過小症の大半はパーキンソニズムによることが多い(本書ではParkinson病の症状のことをパーキンソニズム,Parkinson病とそれ以外のパーキンソニズムを示す疾患を併せてParkinson症候群と呼ぶことにする).したがって,ここで定義する運動障害はパーキンソニズムとその他不随意運動に大別される.しかし同一の患者で両方が並存することがある.たとえばParkinson病の症状として運動過多である振戦がみられ,一方筋痙攣では目的とする運動が遂行困難になる点は運動過小であるが,片側顔面痙攣でみられる痙攣は明らかに運動過多である.表1にこれらの分類を示す.1.医療機関における運動障害をきたす疾患・病態の頻度 米国の代表的なMovement Disorder Centerでの疾患頻度を表2に示す1).パーキンソン病をおもに診療するわが国の施設とは異なり,ジストニアが2番目に多く,同一のセンターで種々の不随意運動を診療していることがわかる.2.運動の分類 われわれ健常者にとってすべての日常生活でみられる運動は随意運動であると考えがちであるが,実際はそうではない.多くの運動は気づかないうちに遂行されていたり,あまり意識せずに行われていたりする.これらを含めて,次のように分類される3,4).

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