2093代謝性ミオパチー
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40各論Ⅰ 筋型グリコーゲン代謝異常症・Muscle glycogenoses(筋型糖原病)リコーゲンの分解にはじまる解糖は,「グリコーゲン代謝の項」で述べたように筋肉と肝臓ではその目的性に違いがある.筋肉では筋収縮のためのエネルギーとしてのATP供給が解糖の目的で,嫌気であれば乳酸が生成され,好気状態ではミトコンドリアのTCAサイクルへ入るためピルビン酸からアセチルCoAが生成される.生理的条件下では解糖系は脳,肝臓では乳酸を生成しないが,筋,赤血球では乳酸を生成する.生体のATP合成系は,細胞質における解糖系以外には,ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化がある.グルコースが乳酸に至るまでの過程で11種類の解糖系酵素がかかわっているが,この過程で1 molのグルコースから,3ホスホグリセリン酸キナーゼ とピルビン酸キナーゼの段階で4 molのATPがADP+Pi→ATPとして生成されるが,グルコースをリン酸化するヘキソキナーゼおよびフルクトース6-リン酸からフルクトース1,6-2リン酸への代謝を触媒するホスホフルクトキナーゼの段階で2 molのATPを消費するために,全体としては+2 molのATPが解糖系で生成されることになる.つまり解糖系の進行過程には,ATPの利用と産生が表裏一体となっており,ATP産生をするにはADPが必要であることから,解糖系の流れはADPの細胞内濃度によってある意味律速されている.ATPの消費がADPを生み,そのADPが利用されてATPが産生されるという仕組みである.またグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素はNADを還元してNADHを生ずるが,好気解糖ではミトコンドリアで酸素を用いて酸化されてNADを生じる.一方嫌気解糖が進行し,乳酸を生成する方向に進むには,NADHのNADへの酸化が必要である.図6のようにピルビン酸から乳酸への反応とグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素の反応が共役することで巧妙に解糖を進行させている.解糖系におけるグルコースの供給はグリコーゲン分解からグルコース1-リン酸として解糖系に入る系と,血中のグルコースを細胞に取り入れヘ図5 解糖経路と酵素グルコースライソゾームでの分解グリコーゲングルコース-1-PUDPGPLDAcid-glucosidase グルコース6-Pフルクトース6-Pフルクトース1,6-Pグリセルアルデヒド3-P1, 3-ビスホスホグリセロール-P3-ホスホグリセリン酸2-ホスホグリセリン酸ホスホエノールピルビン酸ピルビン酸乳酸Phosphorylase a Phosphorylase b Phosphorylase kinaseDebranching enzymephosphofruktokinasePhosphoglycerate kinasePhosphoglycerate mutaseLactic dehydrogenaseジヒドロキシアセトン-PAldolaseenolasephosphoglucomutaseグルコースGlucose-6-Phosphatase complex Glycogen synthaseBranching enzymeGlycogeninhexokinaseiso, meraseGlyceraldehyde-3-Pdehydrogenasee Fructose diphophatase Pyruvate kinase

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