2129エキスパートが答える!アトピー性皮膚炎Q&A
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27Question10QuestionAnswerAnswerステロイド外用薬は炎症のある部位に塗る アトピー性皮膚炎では,皮膚バリア機能の低下 によって,刺激物質やアレルゲンが表皮内に侵入しやすくなっている.これらによって皮膚の炎症が起こると,表皮角化細胞のターンオーバーが亢進するため,皮膚バリア機能がますます低下する.また,皮膚炎の部位では表皮角化細胞や浸潤細胞が産生するサイトカインなどによって,これらの細胞は活性化しやすい状態になっており,軽微な刺激でさらに活性化して炎症が悪化する.さらに,皮膚炎の痒みに伴う搔破行為によって皮膚炎が悪化していく.つまり,皮膚炎は適切に治療しないと非特異的な要因でますます悪化していく,いわゆる“悪循環”を起こす可能性がある病態である(図1).皮膚炎を慢性化させないために,あるいはこじれて慢性化した状態から脱却するために,炎症を十分に制御する治療を行うことが必要になる.ステロイド外用薬は,皮膚炎に対して優れた抗炎症作用を発揮し,皮膚の炎症を軽快させ,その結果,皮疹の痒みを軽減させる働きを持っている.すなわち,ステロイド外用薬を皮膚炎の部位に外用する理由は,症状を和らげる“対症療法”としての側面がある.さらに重要なことは,ステロイド外用薬によって,炎症に伴う皮膚の易刺激性亢進や搔破行為による“悪循環”を止め,無用の悪化因子を減らす効果を得ることである. 一方で,ステロイド外用薬を長期に外用すると,皮膚萎縮や毛細血管などの副作用が出る可能性がある.また,ステロイド外用薬をアトピー性皮膚炎の炎症が沈静化してから6か月を経た部位に外用すると,皮膚バリア機能が低下したという報告1)もみられる.したがって,ステロイド外用薬によって皮膚の炎症が十分に軽快したら,ステロイド外用薬を漫然と使用せず,中止するのが基本である.Point1keywordステロイドはどのような皮疹にいつまで塗るようにすればよいか,教えてください10ステロイド外用薬は皮膚炎のある部位に塗り,皮膚炎が治ったらやめるのが基本である.皮膚炎の有無は,“皮膚が赤い”“搔き傷がある”などの外見だけでなく,皮疹を触診して浸潤を触れるか否かで判断する.皮疹の浸潤がなくなるまでステロイドを外用し,浸潤がなくなれば中止するようにする.Point 1Point 2Point 3図1 皮膚炎における悪循環皮膚バリア機能低下搔破アレルゲンの侵入アレルギー痒み皮膚炎刺激

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