2129エキスパートが答える!アトピー性皮膚炎Q&A
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31Question11鱗屑,多数の搔破痕,痒疹結節あるいは痂皮の付着,小水疱,びらんなど,炎症が強い急性期の皮疹や慢性に経過した頑固な皮疹に対しては,必要かつ十分な効果を有するベリーストロングないしストロングクラスのステロイド外用薬を第一選択とする.なお成人では,体幹や四肢の皮疹には小児より1ランク強いステロイド外用薬を使用するのが基本である. 顔面や頸部,陰部の皮膚は薄く経毛包性吸収も高いため,ステロイド外用薬の吸収がよく,効果が得られやすい.その一方で,皮膚萎縮や毛細血管拡張などの副作用が出現する可能性や,とくに眼瞼周囲では眼圧上昇の可能性にも配慮する必要がある.したがって,顔面や頸部,陰部の炎症性皮疹に対しては,一般的にミディアムクラス以下のステロイド外用薬を選択する.これらの部位にミディアムクラスのステロイド外用薬を1週間塗布しても効果に乏しい場合には,皮膚科専門医に紹介すべきである.ベリーストロングクラスでも十分な効果が得られない痒疹結節には,ストロンゲストクラスを使用することもある 痒疹結節(図2)は,炎症や搔破の刺激などで慢性化した皮疹で,ベリーストロングクラスでも十分な効果が得られないことも少なくない.そのような場合には,その部位に限定してストロンゲストクラスが使用されることもある.また,ステロイドを含有したテープ剤が奏効することもある.文献1) 古江増隆,佐伯秀久,古川福実,ほか:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン.日皮会誌 119:1515-1534, 2009〈加藤則人〉Point2苔癬化【licheni cation】 皮膚科学では「苔癬化」とともに「苔癬」という用語もあるが,両者はまったく違うものを表しているため,注意が必要である.苔癬化(licheni cation)とは,表皮の肥厚を伴う皮溝と皮丘の形成(皮膚紋理)がはっきり認められるようになった状態をいい,慢性化した皮膚の炎症でみられる(図1).一方,苔癬(lichen)は,直径5mm大までのほぼ同じ大きさの小丘疹が多数集簇または散在し,長くその状態を持続し,かつ他の皮疹に変化しないものを表す.アミロイド苔癬,毛孔性苔癬,扁平苔癬,光沢苔癬などの皮膚疾患でみられるが,アトピー性皮膚炎とは直接の関係がない.keyword図1 苔癬化図2 痒疹結節

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